ローワン

ゲッチュー!

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最終話 成り損ない 二

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最終話 成り損ない 二





 AIによる事件から約一ヶ月半。事件は早くも、終わりかけていた。事件の原因であるのAIは消滅。それの製作者及び運用者の原田はらだあきらは裁判で無期懲役刑の罰を受け、現在は地方の刑務所に投獄されている。事件の何もかもが解決し、誰もが事件は解決したと
 ただし、彼女を除き。





 高校二年生、本田ほんだ愛生めい。彼女は、この事件を解決した探偵、辻本を刃物で傷付け殺そうとした殺人未遂で、偶然現場に居合わせた警官に現行犯逮捕された。








 「やぁ、ごめんね。君の取り調べ相手がよりによって被害者ぼくで。」
彼女は珍しく、僕を視ていた。その眼からは異質な雰囲気が感じられたが、彼女の感情は全く込もっていなかった。
「わざとですよね?」
「バレた?僕が君の取り調べをやりたくて、わざわざ病院から歩いてやってきたよ。十針、縫ったよ。」

ホントは十八針だけど…

彼女はその無機質な顔のまま言った。
「怒ってます?」
「どちらかというと悲しいかな。知ってた?斬られた感覚って気持ち悪くて痛いんだよ。そんな苦しんでるのに君が今みたいな怖い顔で僕を見てるから…」
彼女はやっと下にうつむいた。
「『怒ってます?』は、こっちのセリフかな。ローワンのことでしょ。」
「探偵さん嘘ついたでしょ。」
「どんな?」
「言わなきゃいけないの?彼を動かしたのは私だけじゃないって。」
「嘘じゃなかったよ?君だけの為に人を殺したわけじゃなかった。」
「じゃあなんで…」
「なんで君の言葉をきっかけにローワンが人を殺したのかなんて分かってるでしょ。君の言葉は優しい彼には痛いほど刺さったんだよ。彼は最期に言ってたよ。優しさだけでは世界は救えないって。君が偶然、彼の優しさ弱点を突いただけなんだろ?いや、例えそれが意図的だったとして、君の悪意だったとしても、そもそも簡単に暴走したAIを作った原田が悪かったんだ。だから捕まったのは彼だけ。それに君はまだ高校生だろ。」
「なんで彼を消したの。」
「それは彼が人ごろ…」
「私は彼が生き甲斐だったのに。彼が居るから私の人生は平和だったのに。なんで、なんで…」
彼女は再び僕を見た。今度はさっきと比べるとクドいくらい感情的な顔で、声は震えていた。
「なんで私を先に…」
「なんで名探偵ぼくがそんなことしなきゃいけないんだよ。」
彼女の顔は怒っていたし、悲しんでいた。
「彼も分かってたよ、悩んでたよ。だから回りくどいやり方で、君を僕らに送り込んだんだ。君は彼に依存しすぎだ。」
「…じゃあどうやって生きたら良いの。みんな目標を見つけて、みんなそれに向かって進んで、みんな何もできてない私を見下して。何を理由に明日を待てば良いの。」
彼女の感情が声になって、芋づる式に出た感じ。表現が難しい。彼女も自分の言ったことに動揺したみたいだった。
「そんなの知らないよ。だって少なくとも僕は寝れば明日が来るからね。そこに生きるための理由の有無は関係ない。眠れないなら病院に行けよ。僕は探偵であって君の医者じゃない。贅沢だよ、生きる理由を求めるのは。なんで君は、自分以外の全員がそれを持ってるって、みんな苦労せずそれを手に入れたって思ってるの。」
彼女は納得してないようだった。ただ僕を睨んでいた。
「生きるために理由なんか要らないよ。だってそんなの無くたって生き物は生きることができる。少なくとも僕は。でも、まだ君がそれを望むなら、生きないと。生きることを諦める人が、生きる理由を見つけられるわけ無いでしょ。そして君は一つ罪を犯した。被害者がタフガイぼくだからまだ良かったけどね、違う人を刺してたら違ったよ。まずは向き合わないと、自分の過ちと。」





 ちょっと言い過ぎたんじゃないカ?
部屋を出た僕はまずそう思った。生きることを諦めた人に「生きろ」というのは酷かもしれないと。

 仮にそれが正解だとしても、僕は後ろから彼女に刺されたんだ。痛かったんだ。僕がそれを言う権利は有っただろう。逆に君は彼女にどうするつもりだった?
そうだナ。私だったら……分からないナ。同じことを繰り返していたかもしれなイ。
なら口出さないでくれよ。


「………僕は誰と話してんだよ。」






第六話 成り損ない 二   完




エピローグ




 行きつけのコーヒー店を出て一つ、ため息を吐いてからそれの白さに驚いた。ここ一年色々なことがあったせいで、時間の流れが速く感じる。…桜が散ったのは、つい最近だったはずだ。なのに、田辺さんとの夏休みユニバも、紅葉も終わって、今日は本田さんの受験日だ。




 僕は名探偵の辻本つじもと。「名探偵」と聞くとスマートにカッコよく事件を解決し、「犯人はお前だ‼」みたいな決め台詞ゼリフを言い放つ、こんなイメージがあるかもしれないが、僕はこんなこと言ったことがない。そもそも探偵の経験も浅く、今までに解決した事件数は、たったの三件。事件というより事故で、全て犯人なんて存在しなかった。まぁ、ホイホイ大事件が来られても困るが…そろそろ決め台詞ゼリフを解禁したい‼




 今日も名探偵残念ながら、そんな事を悩んでいた。





 ローワン   完
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