悲哀人形日記 

龍賀ツルギ

文字の大きさ
68 / 71
第二部 蘭から薔薇へ 第二章

作戦

しおりを挟む
和希とツカサが浣腸地獄を味合わされているのと同時刻。
真希と紗季を中心にして和希とツカサの救出作戦が話し合われていた。
最初は皆ニックネームで呼びあっていたのだが、さすがに和希救出作戦に参加する仲間となるので、本名で呼び合う様になった。

紗季「問題は稲垣がこの県内に絶大な力を持っている人間だって事ね。
その影響力は県会だけでなく地元選出の国会議員にまで及んでいるわ。
実際この区から選出された議員の山縣圭介は稲垣が後ろ盾になって当選させたようなものだからね。」

明奈「そんなに地方有力者と言う者は力が有るのですか?」

明奈が紗季に質問する。
まだ高校生の明奈には世の中の仕組みの構造が分からないのだ。
SNSやネットの世界の事なら詳しいのだが。

紗季「首都圏では国会も近いし、警視庁やマスメディアの本社も有るから地方の有力者って言われてもピンとは来ないでしょうね。
でも都会にいる人間はつい忘れがちだけど、国会議員の数は地方で選ばれた人間の方が圧倒的に多いの。
地方には国会に行ける力は有るけどあえて地元に残ってその地方で権勢を振るう実力者がいるのよ。
稲垣はその典型ね。」

友江「今時そんな奴らがいるのか?
そんなの国会議員なりマスメディアなりが力を使って潰せばいいじゃねーか。」

友江は横浜のヤクザの娘で実際に10代の頃は地元の戸塚や隣の大船や藤沢辺りまで名を轟かせた不良だった。
その為かつい力任せに物事解決しようとする癖が有る。

麻里子「そう簡単には行かないさ。
私も大学バレーの推薦選手だから東京の大学に来ているけど、元々地方出身だからね。
私の地元にも有力者はいたよ。
私自身も支援を受けていたしね。」

友江「へっ…あれ麻里子って東京の人間じゃないんだ?」

麻里子「まあね。私は岡山県の美作地方の出身だから。地元の有力者で支援してくれる人もいたよ。」

明奈「その割には麻里子さんは訛りがありませんですねえ…」

麻里子「訛りなんて東京で一月も暮せば自然と消えるわよ。
それより紗季さん。
和希を救い出すのにはどうするの?」

友江「いっそ殴り込むか?たいていの奴らなら私ひとりでボコッてやるけどな。」

紗季「さすがにそれは駄目でしょ。『笑』
友江は良くても麻里子や明奈には後々迷惑がかかるわよ。『苦笑』」

麻里子「それじゃあ和希ともう一人の男の子。えーと、名前は…?」

真希「ツカサです。水樹ツカサ。」

麻里子「そうそう。和希とツカサをいっそ攫ってしばらく匿おうか?
東京に連れて行って私が匿ってもいいけど。」

紗季「稲垣は有力者よ。人手を使って二人を探し出すわ。
そうなると麻里子の身も危ないわよ。」

麻里子「ああっ。私の心配なら大丈夫。
私は幼少期から古武術を習っていてこれでも師範格の腕前なのよ。
ただ荒っぽい武術だから実戦で使ったら相手がヤバいけどね。『笑』」

真希が思わず身を乗り出した。
真希も幼少期から空手を学び段持ちなのだ。

真希「麻里子さん、なんて言う古武術です?」

麻里子「まあ…一般的じゃない流派だけどね…
伊庭流古武術って言うのよ。
技の中にはこれって殺人技じゃないの?って怖い技もあるしね。」

真希「伊庭流…古武術…聞いた事あるわ…
噂だけど恐ろしい流派だって…」

麻里子「恐ろしい…そうかな…まあ…ただの噂よ。『苦笑』」

友江「殺人技?麻里子は使えるのか?」

麻里子は友江の物騒な質問に思わず苦笑い。
麻里子は伊庭流の分家で有る武田家の娘で伊庭流をしっかりと叩き込まれた為に、伊庭流古武術の技をほぼ使えた。
武田の家には弟がいて伊庭流武田派の継承者は弟が跡を継ぐから問題はなかったのだが、麻里子自身は伊庭流などと言うマイナーな武術はメジャーな大会があるわけでもなく、また大したお金にも名誉にもならない事から高校からバレーボールを始めて、優れた運動神経と伊庭流古武術で鍛え上げられた体幹で高校で有力バレー選手になり、東京の大学に特待生で進学したのだ。

麻里子「まあ…それは言わない方がいいでしょ。
でも紗季さん。和希とツカサって言ったっけ。攫って匿う手はどうする。」

紗季「ずっと匿える訳もないしね。
結局問題は稲垣は力を持った有力者だって事ね。」

真希「私は稲垣を潰したい!どうせろくでもない奴なんでしょう!」

明奈「私がネットで稲垣を徹底的に探って弱みを探るで有りますか?
ハッキングで稲垣関係のパソコンに潜る事も可能だと思いますが。」

眼鏡の縁を摘みながら明奈が得意のネット関連を使う策を提案する。

紗季「うーん…確かに有効的な手では有るけど、もしその情報を掴んで稲垣に和希とツカサとの交換交渉したら、和希とツカサを助け出す場で稲垣の使う裏社会の人間に拉致られて始末されてしまう可能性が有る。
私や友江なら構わないけど、まだ高校生の真希や明奈にそこまでリスクを負わせるのもなあ…」

真希「私は構いません!元々これは私が言い出した話だもん!」

明奈「私も平気で有ります!
私は和希とまたSMを楽しみたいであります!」

真希は強い瞳で紗季を見て、明奈は天井を見あげて両拳を握り力を込める。

紗季は目を瞑りながら考えていた。
確かに稲垣の情報を探り出す事にはネットに強い明奈の力が必要。
それに和希を救い出すにはいずれは稲垣とは対峙しなければならなくなる時が来る。
稲垣の力をそのままにしておいたら和希とツカサを救い出してもいずれは奪い返されて私たち5人共に報復を受けて、下手すれば命の危険すら有るだろう。
なら稲垣自身を社会的に抹殺してしまう事が肝要!
武力なら友江と麻里子は腕が立ちそう。
明奈もネットに強い。
真希は和希を救い出したい気持ちが一番強いし、何よりも真希自身が九藤学園の生徒だから明奈でも手に入らない有力情報を得る事も可能だろう。
そうして稲垣にとって都合の悪い情報を手に入れたらどうする?
どうすればいい!

そうだ!
世論を徹底的に利用する。
それも日本国内では稲垣が手を回せる可能性があるかもしれない…
それならば海外のメディアで稲垣を晒し者にしてやる!
特にイギリスメディアはそのような題材には特に敏感で純粋な道義心を持って報道するから稲垣でも手の下しようがない!
日本国内ではメディアが取り上げなかった問題が海外メディアに取り上げられた事がきっかけで公になった事例も有る。
そうすれば日本のメディアも海外メディアに煽られて動かざるを得ない!
日本の国会すら動かざるを得なくなる。
ましてや稲垣が推して当選した国会議員の山縣圭介は与党の最大派閥である早川派のホープ。
早川派はつい1年近く前に早川派の前派閥だった森田派の会長である森田の急死で跡を継いだ派閥でまだ基礎は固まってない。
森田の死には謎が多く、報道では病死と言う事だが、実は暗殺されたとの噂がある。
あくまでも噂に過ぎないが。
政治家と言う者は、派閥の都合次第でホープの山縣をだろうが、平然と切り捨てる。
国政議員の山縣は稲垣にとって貴重な外堀。
稲垣が力を失って行けば稲垣とつるんでいる裏社会の組織も稲垣と距離を取り始めるだろう。
力を失った稲垣からなら…堂々と和希とツカサを救い出せる。

紗季は組んでいた腕を解き、目を開けると真希、明奈、麻里子、友江の顔を見渡して微笑んだ。

紗季「みんな構想がまとまったわ。
和希とツカサを救い出す策がね❗️『笑』」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

上司と俺のSM関係

雫@不定期更新
BL
タイトルの通りです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 1000 Thank_You!!

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...