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第一章︰転生
第09話
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この二日間は地獄だった。
危険が少ないといわれる平野でキャンプしたが、三回も奇襲を受けるとは・・・
1回目はまた糞の話になって申し訳ないが、
用を足していたときに後ろからデカイ蛾に襲われてしまった。
幸い強くなくて、俺が全力で投げた石がクリーンヒットしたので助かったが・・・
運がよかったとしか言えない。だって蛾が口から針飛ばしてくるんだぞ?
石が一撃であたらなかったからと思うと恐ろしい。
2回目はラルフが事前に追い払った猪みたいな魔物。
3回目は・・・人だ。
三人の見るからにヤバそうな盗賊。
俺と寝ているタカハラしかいなかったので仕掛けてきたんだろう。
俺の捻り出した叫び声にラルフが気付いて狩猟から戻り応戦。
人間相手なら戦えるから戦えといわれてタカハラを守りながら戦ったが、
というか戦うほど技術がないので、タカハラを背負って逃げただけだけだが。
背負ったタカハラの首の横から見たラルフの本性。
まさに地獄絵図。人の首を食いちぎっていた。
脱糞は何度もしているが、嘔吐はこの世界で初めてだった。
現在、タカハラは体力回復待ちなので魔法は使えない。
それどころか歩くのもふらつく状態だ。
俺は通訳と漏らすことしかできないし、頼みはラルフ先生だけ。
そう考えると、もっと攻撃的な能力が欲しかったのは事実だ。
しかし命を失う恐怖をこの世界で体験したので、出来る事なら戦いは避けたい。
などと考えにふけっていると、乙女のお花摘みから戻ったラルフが言う。
「お前、さすがにこれじゃマズイぞ。戦う力を身につけろ。」
無茶を言ってくれる。ただの30歳超えたリーマンの体力に何を求めるのか。
「そうはいっても前の世界ではただのおじさんだったんだぞ?」
「前の世界は知らんが、戦士から最低限教えてもらったりしないのか?
この世界では子供ですら教えてもらって自己防衛するぞ。」
・・・ダメだな。説明しても暖簾に腕押しだ。
この世界は生と死が隣り合わせすぎるんだよなぁ。
のんきにスマホいじってVtuberになりてぇとか言ってる世界じゃない。
「俺の前の世界は平和だったんだ。戦いなんてよほど起きない。」
「随分退屈な世界だな。カンが鈍るぞ。」
さすがハンター。
「すみません迷惑かけてしまって。」
タカハラが目を覚まして謝ってくるが責めることなんて出来ない。。
「体力はどうだ?」
「半分ほど回復しました。あと半日もすれば動けるようになります。」
「そうかよかったよかった。」
俺は決意をした。
「なぁ、お前の体力が回復したらさ・・・」
こんな序盤で死ぬのは嫌だ。
「なんです?」
「魔法を・・・俺に教えてくれないか?」
----全然違います。
「あああああああああああ!」
「お前、ホントに何にも才能ないな。」
ラルフのキツイ言葉。
クソが!何が(大丈夫です。これなら5歳の子でも使える魔法ですよ。)だ!
「一度深呼吸してリセットです。気を落ち着かせて下さい。」
「ふーふー・・・Foo~↑気持ちi」
「気分がハイになって言動がおかしくなってますね。落ち着いてください。」
うるさい。少しお茶目しただけだ。
「もう一度頭の中でイメージを作って下さい。手が熱くなり火が出るイメージを。」
今やってるのは火系魔法の初歩中の初歩である。
マッチのような火を指先から出す魔法だ。
攻撃魔法ではなく生活に用いられる程度の魔法。
ここから段階を踏んで放出コントロール→火力UP→コントロール→放出...
と何度も繰り返して魔法の威力をあげていくらしい。
だが、俺はその第一歩で躓いた。
(前の世界で魔法なんてないからなぁ。実は体の構造的に無理なんじゃないの?)
ぶっちゃけそう思ってる。
「ラルフ、俺って魔法自体使えない体なんじゃない?」
「それはないな、魔力の流れは感じる。ただ・・・馬鹿なだけだろ。」
こいつ・・・
「やってやるぞコラぁ!(プリッ)」
力んで屁が出てしまう。
6時間かかった。
マッチ程度の火を出すのに6時間。
一般的な5歳の子供で大体1時間ぐらいのものに6時間をかける33才児。
TOEIC395点の俺の出来の悪さは理解しているが、ちょっと酷すぎない?
「お前、明日には出発するのにこんなんで大丈夫か?」
「・・・・」
「イレーさんが連れているタヌキって魔力の流れ分かるんですね。
タヌキの中でも相当な上位種ですよ。」
「タカハラァ・・・タヌキの言葉分かるの?」
「まさか。目を見れば分かりますよ。魔力波を適切に追ってます。」
ほほう・・・ラルフ先生は博識なだけあって狩猟馬鹿じゃないということか。
「もう少し練習しましょうか。次は風の初級魔法を。」
「バッチこいやコラァ!(プリッ)」
気付いたら夜が明けていた。
なんとか火・風・雷の初級魔法を会得できた・・・と思う。
内容は
・マッチみたいな火をつける
・暑い時にそよ風を起こす
・静電気を起こす
使えねぇ。
石の上にも三年てのは分かるが、絶望的に才能がないと断言された。
なんでこうも・・・なんでこうもうまくいかないんや!
「ちなみに僕は全部入れて1時間で出来ましたね。ええ。」
なんなんこいつ、教えてる最後の方とか見下してなかった?ねぇ?
「お前には間違いなく魔法はあってないな。」
「分かってるよラルフ先生・・・言わんでくれ。」
ずっと見ていたラルフ先生まで言ってきやがる。
「魔法の才能がないのは間違いないが、違う才能はあるかもな。」
「・・・・まじ?」
「あぁ、多分だが妖精術がな。」
危険が少ないといわれる平野でキャンプしたが、三回も奇襲を受けるとは・・・
1回目はまた糞の話になって申し訳ないが、
用を足していたときに後ろからデカイ蛾に襲われてしまった。
幸い強くなくて、俺が全力で投げた石がクリーンヒットしたので助かったが・・・
運がよかったとしか言えない。だって蛾が口から針飛ばしてくるんだぞ?
石が一撃であたらなかったからと思うと恐ろしい。
2回目はラルフが事前に追い払った猪みたいな魔物。
3回目は・・・人だ。
三人の見るからにヤバそうな盗賊。
俺と寝ているタカハラしかいなかったので仕掛けてきたんだろう。
俺の捻り出した叫び声にラルフが気付いて狩猟から戻り応戦。
人間相手なら戦えるから戦えといわれてタカハラを守りながら戦ったが、
というか戦うほど技術がないので、タカハラを背負って逃げただけだけだが。
背負ったタカハラの首の横から見たラルフの本性。
まさに地獄絵図。人の首を食いちぎっていた。
脱糞は何度もしているが、嘔吐はこの世界で初めてだった。
現在、タカハラは体力回復待ちなので魔法は使えない。
それどころか歩くのもふらつく状態だ。
俺は通訳と漏らすことしかできないし、頼みはラルフ先生だけ。
そう考えると、もっと攻撃的な能力が欲しかったのは事実だ。
しかし命を失う恐怖をこの世界で体験したので、出来る事なら戦いは避けたい。
などと考えにふけっていると、乙女のお花摘みから戻ったラルフが言う。
「お前、さすがにこれじゃマズイぞ。戦う力を身につけろ。」
無茶を言ってくれる。ただの30歳超えたリーマンの体力に何を求めるのか。
「そうはいっても前の世界ではただのおじさんだったんだぞ?」
「前の世界は知らんが、戦士から最低限教えてもらったりしないのか?
この世界では子供ですら教えてもらって自己防衛するぞ。」
・・・ダメだな。説明しても暖簾に腕押しだ。
この世界は生と死が隣り合わせすぎるんだよなぁ。
のんきにスマホいじってVtuberになりてぇとか言ってる世界じゃない。
「俺の前の世界は平和だったんだ。戦いなんてよほど起きない。」
「随分退屈な世界だな。カンが鈍るぞ。」
さすがハンター。
「すみません迷惑かけてしまって。」
タカハラが目を覚まして謝ってくるが責めることなんて出来ない。。
「体力はどうだ?」
「半分ほど回復しました。あと半日もすれば動けるようになります。」
「そうかよかったよかった。」
俺は決意をした。
「なぁ、お前の体力が回復したらさ・・・」
こんな序盤で死ぬのは嫌だ。
「なんです?」
「魔法を・・・俺に教えてくれないか?」
----全然違います。
「あああああああああああ!」
「お前、ホントに何にも才能ないな。」
ラルフのキツイ言葉。
クソが!何が(大丈夫です。これなら5歳の子でも使える魔法ですよ。)だ!
「一度深呼吸してリセットです。気を落ち着かせて下さい。」
「ふーふー・・・Foo~↑気持ちi」
「気分がハイになって言動がおかしくなってますね。落ち着いてください。」
うるさい。少しお茶目しただけだ。
「もう一度頭の中でイメージを作って下さい。手が熱くなり火が出るイメージを。」
今やってるのは火系魔法の初歩中の初歩である。
マッチのような火を指先から出す魔法だ。
攻撃魔法ではなく生活に用いられる程度の魔法。
ここから段階を踏んで放出コントロール→火力UP→コントロール→放出...
と何度も繰り返して魔法の威力をあげていくらしい。
だが、俺はその第一歩で躓いた。
(前の世界で魔法なんてないからなぁ。実は体の構造的に無理なんじゃないの?)
ぶっちゃけそう思ってる。
「ラルフ、俺って魔法自体使えない体なんじゃない?」
「それはないな、魔力の流れは感じる。ただ・・・馬鹿なだけだろ。」
こいつ・・・
「やってやるぞコラぁ!(プリッ)」
力んで屁が出てしまう。
6時間かかった。
マッチ程度の火を出すのに6時間。
一般的な5歳の子供で大体1時間ぐらいのものに6時間をかける33才児。
TOEIC395点の俺の出来の悪さは理解しているが、ちょっと酷すぎない?
「お前、明日には出発するのにこんなんで大丈夫か?」
「・・・・」
「イレーさんが連れているタヌキって魔力の流れ分かるんですね。
タヌキの中でも相当な上位種ですよ。」
「タカハラァ・・・タヌキの言葉分かるの?」
「まさか。目を見れば分かりますよ。魔力波を適切に追ってます。」
ほほう・・・ラルフ先生は博識なだけあって狩猟馬鹿じゃないということか。
「もう少し練習しましょうか。次は風の初級魔法を。」
「バッチこいやコラァ!(プリッ)」
気付いたら夜が明けていた。
なんとか火・風・雷の初級魔法を会得できた・・・と思う。
内容は
・マッチみたいな火をつける
・暑い時にそよ風を起こす
・静電気を起こす
使えねぇ。
石の上にも三年てのは分かるが、絶望的に才能がないと断言された。
なんでこうも・・・なんでこうもうまくいかないんや!
「ちなみに僕は全部入れて1時間で出来ましたね。ええ。」
なんなんこいつ、教えてる最後の方とか見下してなかった?ねぇ?
「お前には間違いなく魔法はあってないな。」
「分かってるよラルフ先生・・・言わんでくれ。」
ずっと見ていたラルフ先生まで言ってきやがる。
「魔法の才能がないのは間違いないが、違う才能はあるかもな。」
「・・・・まじ?」
「あぁ、多分だが妖精術がな。」
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