てんあま(転生したけど無双できるほど現実甘くないよね)

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第一章︰転生

第11話

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城下町に入ったが、とてつもなく広い。そしてまさに中世。
日本のゴチャゴチャさと違って凄い整備されており、ファンタジーに浸れる。

見た目以上の広さがあると感じるのは、城と教会?以外に高い建物がないのと、
建物の間隔、そして道の広さから開放感がある為だろう。

「イレーさん、どうしますか?まずは宿をとりますか?」

「そうだな・・・・」

と言いつつ横を見る。横には狼とエルフがいる。
人間の街でこれはどうしたもんかと頭を抱える。事実、視線が痛いのだ。
さすがに街の中に亜人はいいとしても、タヌキ(狼)がいたら視線は集まるな・・・

では何故この状況で兵士に止められずに城下町に入れたかだが、
それはソニンが持っていた宝石のおかげだ。凄く価値がある宝石なんだとか。

「なぁ、タカハラ。この街で亜人・・・エルフはどういう扱いだ?」

「エルフですか?普通にヒューマンと同じですよ。言葉さえ喋られれば。」

なるほど、感じていた視線はやっぱりソニンではなくラルフへのものか。
そりゃ魔獣が街の中にいるんだし警戒するか。

(ん?)

「ちょっと待て、言葉を喋るってどういうことだ?俺のようなコネクターの役割は?」

「コネクターってことを全然隠しませんね・・・まぁいいですけど。」

あぁん!とタカハラが咳払いをする。ちょっとセクシー。

「そりゃ一国に住んでるんですから交流の為に言葉ぐらい覚えますよ。
 魔獣やドラゴンならまだしも、亜人は言葉を喋ることが出来ますからね。」

「じゃ、じゃあコネクターの価値は・・・?」

「どんな種族でも言語を合わせられるということですね。
 それが例え言葉を発しない魔獣やドラゴンであったとしてもです。
 そして・・・妖精や果ては神々とも対話できることが一番の価値ですね。」 

「ほおおおおおお!」
なるほど神とも会話できるのか。

それに普通に話すことが出来る亜人達がいるなら、ある程度は隠し通せるかも。

やべぇ!俺凄い能力手に入れたんじゃないの?
実はクソみたいな能力だったけど最強でしたとかいうお決まりのパターン。

「お前が考えていることに対して、指摘してやろう。
 言語が通じるだけで、お前に交渉スキルないんだから宝の持ち腐れだぞ。」

せっかくニヤニヤしていたのに、ラルフ先生は本当に厳しい。

「あのー・・・」

「おう、どうしたソニン。」

「私、先に同郷の人の所にいって仲裁のお願いをしてこないといけないのです。」

なんか言いにくそうにモジモジしている。

「それで・・・あの・・・偉い人なのでお城にいるらしく・・・通訳を頼みたくて。」

かーわーいーいー。

「よし分かった。(威風堂々)宿探しはあとだ。まずはソニンの協力をしよう。」

「ありがとうございます!何から何まで・・・」

「いやなに!可愛い子が困っていたら助けるのは当然さ!」

「・・・ありがとうございます。あの・・・近いです・・・」

興奮しすぎてしまったか。
タカハラとラルフの方に向き直る。

「そういうわけで。」

「どういうわけですか。」

「いいから。ソニンが紛争仲裁のお願いをしにいかなきゃいかん。
 俺は通訳として助っ人しにいくから。」

「えぇ・・・もうクタクタなんですよ・・・はぁ~~・・・わかりました。
 では日が落ちる頃ここでまたお会いしましょう。勝手にしてください。」

「すまないな。」

「(ラルフも。)」

「勝手にしろ。俺は先に宿にいく・・・が!余計なことに首突っ込みすぎるなよ。」

「大丈夫だって先生。」

魔獣って泊まれんの?などなどそんな疑問はタカハラに任せ、
俺たちはソニンが仲裁をお願いするという偉い人の所に向かうのだった。



城に向かう道中、ソニンから少し色々と情報を入手した。

「その偉い人の話を詳しく聞かせてくれない?」

「あ、はい。私もそこまで詳しくは聞かされていないのですが、私の里では英雄です。
 この国の神官の地位に位置するらしいんですが、最近は話を聞かなくて・・・」

「その影響力と地位を頼りに仲裁の役目をお願いするわけか。」

「はい。でも故郷とはいえ国に仕える人が私のお願いを聞いてくれるかどうか。」

「うーん・・・内輪の揉め事に出向いてくれるかは確かに怪しいな。」

「ですよね・・・」

ソニンが肩を落とす。

「いやいや待て。俺がいるんだから大丈夫だろ!」

「そ、そうですね。そういえばイレーさん。」

「ん?」

「何ら自然に接してましたけど、貴方コネクターですよね?」

うそーん。

「え?いやいや違うよ。言葉を学んだだけだよ。(震え声)」

「顔に出ますねー。魔獣であるタヌキとのアイコンタクト、そして私との言葉・・・」
「バレないほうが無理があると思います。」

「そうか・・うん。まぁそうだな。」

「50年ほど新たなコネクターは出てきていないと聞きますが。」

「あ、いやとりあえずは黙っておいて欲しい。うん、ひっそり修行してたんだ。」

「詮索はしませんが・・・この国では隠し通した方がいいですね。」

「そうだなぁ。騒ぎになるしなぁ。」

「はい。この国にはシエン様もおられますし、コネクターの影響力は絶大ですし。」

「あぁ現存する二人のコネクターの一人だっけ?」

「はい。ドラゴン族とこの国を繋ぎ、アグワートを建国した英雄です。」

「エルフでも知ってるとなると有名人なんだなぁ。」

「有名人どころかコネクターは世界的な人ですからね。」

世界的ですもんね。というどこかの人の言葉が頭に浮かんだ。
それはどうでもいいけど。

世界的な人となると、いずれ俺もそうなるのか?権力手に入れ放題だな。

「もちろん、その人の人徳の裏付けがあってですけど。」

横目で俺を見ながらキツイことをいってくるなこの娘は。



他愛もない話をしながら歩いていると城の前までやってきた。
でっけぇなー最低でも名古屋城の5倍はあるんじゃないの?(ローカル感)
門から実際の入り口までも数百mは離れている。城に入るだけで疲れそうだ。

「イレーさん、兵士の方にこの宝石を見せてソニューさんと会いたいと伝えて下さい。」

「ソニューさんね。了解。」

城門を護る二人の兵士の前まで来たが凄いな。鎧の上からでもガチムチなのが分かる。

「あのー・・・」

「ん?あー城に何か用か?許可証はあるか?」

ラルフ先生がいないとなんか不安でしょうがない。とりあえず宝石を取り出す。

「いえ、これを見てもらいたくて。ソニューさんという方に会いたいのですが。」

「はぁ?ソニュー様に?一般人がおいそれとお会いできる方じゃ・・・」

「ん・・・?この宝石・・・ちょっと待ってろ。人を呼んでくる。」

もう一人の兵士には心当たりがあるようで動いてくれた。よかった。
街の外の兵士はカタログみたいなのを見てすぐ通してくれたしな。

うまくいくことを確信し、俺は後ろのほうにいるソニンにウインクをする。
ソニンは他人の振りをした。明らかに嫌な顔をして。


しばらく待つと衛兵が人を連れて戻ってきた。

「こんな婆さんに急がせて・・・何なのですか?」

出てきたのは・・・すっげぇ美人なエルフ。
婆さんといっているがとても婆さんに見えない。どれだけ多く見ても20代後半だ。

「ソフィ様、この者が宝石を持ってソニューさんに会いたいと。」

「宝石・・・・?」

俺が持つ宝石を見るとみるみる顔が怖くなっていく。

「・・・アナタはヒューマンでしょう。これをどこで手に入れたんですか?」

え・・・この威圧感。

「いえいえ、私は通訳です。宝石は後ろのあのエルフが持っていたもので・・・」

おい、ソニン。いい加減に顔をコチラに向けろ。

「エルフ?あれは・・・ソニン?」

「知り合いか?」

ソニンがコチラを向く。顔が凄い明るくなってコチラに走ってくる。
俺にもその笑顔を向けて欲しい。

「ソフィおばあちゃん!」


ま、そうだよな知り合いだよな。
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