特進クラスのふざけかた

やすを。

文字の大きさ
4 / 48

4話 特進の見え方

しおりを挟む
 「ちょっと本屋付き合ってくれる?」

 「いいよ。」

 彩白は唐突に僕にそんなお願いをした。僕にはこの後特に予定もなかったから、即座にオッケーした。

 「どう今のクラス?」

 「慣れたよ、もう。あんなにぶっ飛んでた人ばっかで、初めは驚いたし、印象と真逆で少し安心した部分もあった。」

 「でも、一番キャラ濃いのキー君だからね?」

 「嘘つけよ! 僕ただのツッコミだから、キャラの濃淡ないよ!」

 ほとんど乗客のいないバスの中、僕らは2人で下校していた。

 人がいないからこそ、この声量で話せるわけだ。

 「いやいや、キー君。自分のキャラクター性はね自分には分からないものだよ~!」

 いや、分かってるわ!! クラスであれだけキャラの濃いボケ陣が揃ってて、それをただ捌いている僕とじゃ、キャラ性なんて比べ物にならないだろ!

 「彩白さんや……。僕の個性はですね、ボケあってのものなんですよ。」

 「ほうほう。続けたまえ。」

 「濃いキャラのボケがいないと、僕のキャラは濃くないわけで。」

 「なるほどですねー。じゃあ君のキャラは薄いんだよ!」

 「おい! そこはさ、食い下がらないで、僕を褒めるとこでしょ!?」

 「えっ、そうなの?」

 「あれ? 違った?」

 流れ的にはそうのはずだし、もっとこう僕に都合の良いようになる感じじゃないのか?

 「まあ、何でも良いよ。……私さ、思うんだ。」

 「あ、うん。」

 「何で特進クラスの雰囲気が怖がられるんだろうってさ。」

 「あー、確かにね。」

 「あれ、興味ない感じ?」

 「そうじゃなくて、確かになと思ってさ。」

 僕がこのクラスに始めて入った時、不安感と恐怖心しかなかった。

 別に何か酷いことをされた訳でもなく、ただイメージとして怖い印象があった。

 「内輪でずっと話してるからじゃない?」

 「というと?」

 「特進クラスの人達って、怖いぐらい全員と仲良くてさ。そこに入り込む隙がないんだよね。だから、その中で何が行われてるのか分からないんだよ。」

 結論、僕が中に入って思ったことは、何も無かったということ。誰かの悪口を言う訳でもなく、いじめることもしない。

 ただ、内輪で全てが完結しているだけだった。

 「なるほどね。やっぱり、外から見た景色が私たちには分からないのよ。」

 そうだと思うよ。主観と客観は反対だからね、見え方が違うのは仕方ない。

 そんな、彩白と柄にもなく真面目な話を繰り広げた後は、他愛もない笑い話をした。

 そして、バスは最後の停留所に着くと、僕らは荷物を持って下車し、駅に併設されている百貨店の上の方の階の本屋に立ち寄った。

「彩白って漫画とかラノベ読むんだな。」

 「えっ、逆に読まないって選択肢ないと思うけど。」

 うわ、ガチのオタクだ。本を見る顔もガチだし、話しかけづらっ!

 「僕来た意味ある?」

 「うん。だって女子1人じゃ怖いじゃん。」

 「何が?」

 「もしかしたら、誰かに襲われるかもしれないじゃない!!」

 「もしかしたら過ぎる……。」

 そんな可能性信じてたら、何も出来なくなるぞ。

 次に彩白はおもむろにある本を手に取り僕に見せてきた。

 「えっ、彩白もリ○ロ読んでんの?」

 「全部読んだよ。キー君はどのキャラ推し?」

 「白い髪のキャラ。」

 「うわ……。分かってないね。そこは青髪のショートのキャラでしょ!」

 「いや、そこは譲れないな!」

 「こっちだって。そこだけは譲らない!」

 そんなオタトークを30分ほど繰り広げた後、僕らは本屋を後にし、帰路に着いた。

 「私こっちだから、バイバイ。あっ、女子が1人で暗闇の道を歩くのが危険だ。なんてカッコいい理由でついてくるならいいけど、どうする?」

 「えっと、女子?」

 「キー君、それ言っちゃうんだ。あー、こんな美少女に対してそんなこと言うんだ。」

 「うわっ、自分で美少女とか、キモいって……。」

 「何を!? 次会った時は覚えてなさい!」

 「いやさ、彩白って本当に顔とか可愛い方だし、スタイルいいから、ボケにならないんだよ。」

 彩白からそういう類のボケ振られると困るんだよな……。だってボケがボケじゃないんだもん。

 「ねえ、口説いてる?」

 「は? 何で僕が彩白を口説くのさ。」

 「だって可愛いとか、スタイルいいとか、そんな歯の浮くようなセリフ、そうじゃなきゃ言えないなと思って。」

 「ん? だって事実を述べただけだし。そんなつもりないよ。」

 僕は彩白の意図がいまいち見えてこなかった。

 「ま、まあいいよ。また明日ね。」

 「う、うん。」

 そう言って僕らはお互い別々の帰路に着いた。僕は彩白の挙動のおかしくなったのが、少し気がかりだった。

 




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

処理中です...