特進クラスのふざけかた

やすを。

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14話 天才ってなんなんだ?

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 「キー君ってさ、天才っていると思う?」

 「なんだよ唐突に。いるんじゃないか? アインシュタインとか、ニュートンとか。」

 何だって言うんだよ。そんな突拍子もない質問を投げかけて。何が言いたいんだ……。

 「そうね。それが世間一般で言われてる天才達。優れた才能を持ち、天才だともてはやされた人々。」

 ん? なんか様子がいつもと違う気がする……。

 「どうしたんだよ。いきなりそんな……」

 「私、結構飽き飽きしてたんだよね。中学時代から今にかけて、『天才』だ何だ言われるの。」

 「……何だ、それって自分が天才だって誇示したいのか?」

 僕は冗談ぽく彩白に言った。いつもならノッてくるとこだが、今日は違うようだった。

 「みんなそう言うのよ……!」

 「お、おう……。ごめんなさい。」

  調子崩れるな……。

 「別に私は自分のこと天才だなんて思わないし、思ってほしくもないの。」

 「何で? 天才って思われた方が良いんじゃないのか?」

 僕がそう言うと、彩白は首を振ってこう言った。

 「私が思う天才って、努力してない人のこと言うのね。」

 「ほっ、ほう……?」

 漫画を読みながら、一切僕と目を合わせようとはしない。その理由が僕には分からなかった。

 彼女曰く、天才は才能と努力量が反比例しているらしい。正直難しい話すぎて、僕には理解不能だった訳だけど……。

 「ある有名人が言ってたんだけどね。」

 「うん。」

 「目標に到達するためには、『正しいベクトル×努力量』だって。」

 「うん……? どう言う意味なんだ?」

 「正しい方法で沢山努力をすれば、目標には必ず辿り着く。そういう意味なの。」

 まだ彼女の話の意図が見えてはこないけど、とある有名人のそれがとても深く感じた。

 「特進クラスのみんなって、基本的に『天才だ』とか『才能あるから』とか平気で言われるの。」

 ふと僕の言動を振り返ってみる。高一の頃僕も同じような事を言っていなかったかどうか。

 多分、口に出してはいなかったけど、彼らのことを殿上人だと思っていたのは確かだ。

 「でも、違うのよ。私たちが勉強で成績を、結果を残しているのって、全員が必ず努力をしているからなの。」

 「それは見てて思うよ。僕より何倍も時間をかけて、丁寧に知識を蓄えてる感じがする。」

 それが3ヶ月、僕が見てきたクラスのみんなの姿だった。朝早く学校で参考書開いて問題解いてる人、単語帳開いて知識を増やそうとしている人。

 そんな姿を見て、僕が感化されている部分も多い。

 「さっき『正しいベクトル』って言ったけど、それを見つけるのも自分で考えたり、先生と面談したり、友達と話し合ったりして見つけてるのよ。」

 声色は決して変わらない。視線の向きも体勢も一切変えようとしない。ただ彼女の熱いものだけが僕の胸に火をつけていた。

 「だからさ、『天才』って私たちの努力を馬鹿にする発言なの。」

 僕は黙って聞き入っていた。

 いつもハッチャけて笑顔を絶やさない彼女が、内に秘めたる想いを持っているとか微塵も思っていなかった。

 「みんな努力した結果なのよ。一生懸命に考えた成果なの。」

 「……なるほどね。」

 「才能の差異はある。それは特進の中にもあるし、個性豊かなのよ。でもそれを開花させて磨くのは、自分達の努力でしか成し遂げられないの。」

 世界のスポーツ選手のトレーニングや日々の日課を聞いて驚愕するのは、やはり僕らの認識の甘さなのかもしれない。

 結果を出す人は皆一律に努力する。報われるかどうか悩めるのは、努力した人にしかその権利はない。

 彼女はそう締めくくった。何というか、説得力と重みのある話だったも思う。

 「彩白ってさ、いつもあんなんなのに、凄い考え持ってんだな。」

 「別にすごくはないよ。ただ思った事を言葉にしただけだからさ。」

 そう言って彩白はトイレに向かった。その時一つの懸念が生まれた。

 あの、作者さんや……。これコメディだよな。このまま終わって良いのか?

 僕はそう問いかけた。果たして、作者の答えは如何に…………。

 「よし! スッキリしたところで、昼ごはん奢って~!」 

 「えっ、どういう流れ!?」

 結局最後はコメディチックに終わった。どうやら作者はこのまま終わらせたくなかったらしい。

 なんて一貫性求める作者なんだよ……。

 

 
 
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