特進クラスのふざけかた

やすを。

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16話 ベビーシッターの本領発揮

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 自宅リビング。そのダイニングテーブルに僕と母さん、彩白と紫音が座り、彼女の周りに子供たちがはしゃぎ回っていた。

 「紫音さん。あなた一回寝なさい。」

 「でも、みんなの面倒は誰がみるのですか?」

 「紫音、そのためにここに来たんだ。」

 「えっ?」

 「うちの母さんは、ベビーシッターの資格を持ってんのよ。いわば子育てのプロ。」

 僕が小学生の頃、お父さんが病気で入院していた時があった。その時に家計を支えるために、ベビーシッターの仕事をしていた。

 結構評判が良くて、指名制のベビーシッターだったが、忙しそうにしていたのをなんとなく覚えている。

 「紫音からしたら、うちの母さんなんでただの他人だし、信用できない部分もあると思う。」

 「まあ、ぶっちゃけ怖いとは思うわね。」

 紫音がそう言うと、母さんが小さく言った。

 「……あんた実の母親になんてこと言うのよ。」

 「母さん、今そう言うのいらないから!」

 「はい……黙ってます……。」

 「あっ、キー君がお母さんの事いじめた!! いけないんだー!」

 「小学生かよ!! ……つうか今そんなことどうでもいいんだよ!!」

 僕がなんとかして話の路線を戻そうと努力していると、目の前に座っていた紫音が笑っていた。

 「輝波のお母さんて、面白いね。少し信用できそうな気がしてきたわ。」

 「本当か!? それなら良かったよ。無いとは思うけど少しでも変なことしようとしたら、僕らがすぐに止めに入るよ。」

 「……それじゃあ頼もうかな?」

 「そうした方がいいよ。紫音、本当に顔色悪いし、やつれた感じするし。ちゃんと寝れてないでしょ?」

 「まあ、ぶっちゃけ二徹なのよね……」

 「ほら言わんこっちゃ無い!! 布団敷くから、紫音さんは寝なさい。」

 「……それじゃあよろしくお願いします……。」

 紫音はそう言うと母さんが和室に敷いた布団に入り、3秒と経たない頃には眠っていた。

 「紫音、あれで勉強してたんだろ? 凄い根性だよな……」

 「うん……。漫画読んでる場合じゃないなって思ったよ……。」

 早速母さんは3人の世話を始めた。やはりベビーシッターは子供の扱いが上手いようで、すぐに懐いてしまった。

 僕らは二階に上がり宿題の続きをやり始めた。その中で、一時間半位経った頃に、母さんが見ていたはずの兄弟の1人が僕の部屋にやってきた。

 「あれ、こん君どうしたの?」

 「お兄ちゃん達ー! 遊んでー!」

 うわっ、可愛いっ! こんな子からお願いされたら断れる訳ないじゃん!

 「いいよ。何して遊ぼっか。」

 そして僕はリビングに降りて、こう君と遊ぶことにした。どうやら闘いごっこの相手が欲しかったらしい。

 僕は怪人役となって、約一時間やられ続けた。

 「おかえり。どうだった?」

 「……死にそう。あの子たち体力えげつない……」

 僕は汗だくになりながら、クーラーの部屋で漫画を読んでいた彩白に言った。

 「キー君だってまだ高2でしょ? 頼りないな、そんなんじゃ! 女の子にモテないぞー!」

 「じゃあ、彩白もやってこい!! 一時間後、同じことが言えるか、やってみろ!」

 「いいじゃないか。やってやろう!」

 喧嘩腰の彩白は階段を降り、戦場へと赴いた。僕はそれを見届けた後、ラストの宿題に取り掛かった。

 「やったー! 宿題全部終わったー!」

 僕はそう歓喜の声をあげて、1人その余韻に浸っていた。

 そこにびしょ濡れの彼女が帰ってきた。

 「……体力すごいね、あの子たち……。」

 「たち? 他の子とも遊んでたのか?」

 「うん、流れでね……。ごめんシャワー借りるわ……。」

 「ごゆっくりどうぞ! 戦友よ……!」

 「ありがとう……。恩に着るよ……。」

 そう言って彩白に服を貸し、彼女は階段を降りていった。

 それから数時間後、僕らはシャワーを済ませて、それぞれ自由時間を過ごしていた。
 
 「2人ともありがとう。おかげでちゃんと休めたよ。」

 「確かに、だいぶ血色良くなったな。」

 まあ、来てから四時間以上経ってるし。その間あれだけ爆睡していれば、疲れも自然と取れるってわけだ。

 「残りの兄弟は大丈夫なの?」

 「ええ。もうすぐ帰路に着く頃だから、全然間に合うわね。とにかくありがとう。」

 「良いって。母さんノリノリで世話してただろうし。」

 母さんも父さんも子供好きだから、この状況を楽しんでるんだろうな。

 2人にとってこれは癒しみたいな感じで捉えてる気がする。

 「また、連れてきてよ。母さんも父さんも喜ぶから。」

 「そうね。凄い目を輝かせてたわね。」

 そう紫音は少し呆れ顔を見せた。でも、どこか嬉しそうに話したいるのが印象的だった。

 「じゃあまたね。本当にありがとう!」

 「ああ、またな。いつでも連れてこいよ。」

 そう言って紫音とその兄弟は僕宅を後にした。

 「つうか、お前はいつまで居んだよ……」

 「げっ……バレた! 後一時間したら帰るから、それまでは慈悲を……。」

 そう言った彩白が帰路に着いたのは、三時間後の話だった。

 



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