特進クラスのふざけかた

やすを。

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28話 無意味な回り道

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  「段ボール少し分けてくれませんか?」

 僕は、とある普通クラスの教室を訪れていた。

 「おい、みんな! 特進クラスのやつが来たぞ! 段ボール分けてくれってさ。」

 その男子はそう言って、ここに来たことを馬鹿にした。

 正直、ここまであからさまに馬鹿にする、アニメのDQN的な性格の人物が実在したとは、全く思わなかった。

 それからその男子の声に反応した数人の男子が、作業しながら声をあげた。

 「帰れ! 帰れ! 帰れ!」

 「だそうだ! お前にやる段ボールなんか無えよ!!」

 「そっか。それは残念だよ。」

 僕はすました顔をして、その場を後にした。それはある感情を隠していたからである。

 クラスに戻ると、真斗が聞いてきた。

 「どうだった?」

 「ダメだった。とりあえず他のみんなが帰ってくるまで待ってよ。」

 「ったく、あいつらめ……! なんであんなクズみたいな行動が取れんだろうな。」

 そこに色んなクラスメイトが入ってきた。

 「クズみたいな、じゃなくてクズなんだよ。」

 「あんな、クソ野郎見たことないものね。」

 「たまに、輝波もあんな事するけどさ、流石にやりすぎだよな。」

 「……おいおい、勝手に僕をクズ人間扱いするの、やめてもらって良いかな……。」

 まったく……。まともなのか、ふざけてるのか、マジで分からないな……。

 その後、他のクラスに段ボール集めに当たっていた人たちが帰ってきた。

 収穫は、ほぼゼロに近い。1クラスだけ協力があったようで、珍しいなと心底思った。

 「彩白、別に教室残っててよかったのに。」

 「私も、少しくらい段ボールもてるからね? そんな女の子扱いしたらいかんよ!」

 「じゃあ、ボディタッチ増やして良いって事?」

 「いや、そういうこと言ってんじゃないのよ……。」

 あれ、珍しくボケてみたんだけど、あんまりハマんなかったのかな。

 「やっぱ、お前ら仲良いな!! 俺も仲良い女子欲しいぜー!!」

 「別に彩白とも、他2人の女子とも仲良いだろ。つうかさ、お前ゴツくて怖いんだよ!!」

 「なんだとお前! 絶対お前より先に彼女作ってやっからな!!」

 「冗談は顔だけにしてよ。俺が先に作るからな!」

 僕らは2人の言い合いがを傍観していた。そして終わった後に、少し小さな声で会話をしていた。

 「こういう男子、女子的にどうなの?」

 「ん……。あんまり言いたくないけど、モテないよね……。」
 
 「あっ……やっぱそうなんだ……。」

 2人とも……どんまい! これからだからさ。もっと考え変えていこう!

 今、僕らはスーパーに段ボールをもらいに行っているとこだった。委員長の提案でそれが決まり、男子半分と女子数人で向かっていた。

 スーパーの店員さんとの交渉は難航した。まあ、当然といえば当然で、買った商品を持ち帰るための物。表情が険しくなるのも頷けた。

 それでもそこの店長が、優しい人で男子の手が埋まるほどの段ボールを分けてもらえた。

 もう補充がいらないほどの量に、僕ら一同頭を下げて感謝した。

 僕らの顔は少しだけ明るくなって、そのまま学校へと引き上げていくのだった。

 
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