特進クラスのふざけかた

やすを。

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29話 初々しい夫婦(仮)

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 「彩白と輝波君、ちょっと来てくれるかな?」

 「あ、うん。」

 「オッケー!」

 僕らは文化祭の裁縫班に連れられて、被覆室に向かうのだった。

 「ジャーン!!! どうよ、出来栄えは!」

 「えーー! これみんなで作ったの?」

 「そうだよ! 一週間以上掛けて、家でも作業して、徹夜で。」

 「マジか……。これは言葉失うな……。」

 正直僕が着るのには勿体ないレベルの衣装だった。

 恐らく、僕らがカップルという設定で衣装を作ったんだろうけど、手が込みすぎていて、少し怖くなってしまった。

 「二人とも早速着てきて! 合わないところがあったら、これから直すから!」

 そう、一つしかない試着室に強引に連れて行かれる彩白の背中を見て、僕は少し笑っていた。

 「ねえ、彩白とどこまでやったの?」

 「えっ、やったって?」

 「とぼけなくてもいいじゃん! 彩白とさ、あんな事やそんな事したんでしょ?」

 そう、近くのパイプ椅子に座っていた女子が問いかけてきた。

 「あのな……僕ら付き合ってすらいないんだぞ?」

 「えっ……付き合ってなかったの?」

 どこから、付き合ってるという勝手な憶測が浮かんだのやら。

 「うん。手繋いだ事ないし。」

 「そうなんだ……じゃあ彩白が言ってたのって嘘なの?」

 「嘘っちゃ嘘だけど、本当っちゃ本当だな……。」

 それしか言いようがないんだよな。真実の部分もあるし、扱い難しいんだよね。

 「一緒に寝たのは本当だけど、一切手は出してないよ。」


 「あっでも、一緒に寝たんだ! もしかしたら彩白、輝波のこと好きなんじゃない?」

 僕はそれを聞いて少し笑ってしまった。

 「ないない! それは無いよ、あいつに限って!」

 「何でそう言い切れるのよ! 彩白に確認したの?」

 「してないけど、僕のどこに惚れる部分があるんだよ。」

 自分で言うのも悲しいけど、自分自身に魅力がないことくらい自負してるからさ。

 「まあ、確かに……輝波君のどこに惚れたのかしらね……。そうね、その線はなさそうだわ。」

 「お前、一気に反応変えすぎだろ……。」

 マジでいじられる事増えたよな……。まあ、クラスに馴染めてる証拠なんだけどさ。複雑だよね……。

 「よし! 彩白が着替え完了したから、みんな注目!!」

 そして、元気の良いクラスメイトの声の後に出てきた彩白は、僕の知っている彩白ではなかった。

 「ジャーン!! 良いよね!」

 「これは、すごいな……。」

 「やっぱり過激すぎない? みんなこれ着るんだよね?」

 「そう? 普通だと思うけどな?」

 それが普通なら、お前の感覚狂ってるよ。

 彩白のメイド服は、谷間がガッツリ空いていて、高校生のコスプレにしては過激な服装だった。

 「じゃあ輝波君、君はこれを着て来てくれ!」

 そう言って渡された衣装は何の変哲もない、ただのウエイターのコスプレだった。

 ただ、彩白の件があって少し不安があった。

 僕は試着室に入った。そしてその服を広げて全貌を見た時に、少し首を傾げた。

 「あのさ……。」

 僕は衣装を着た後、試着室から出てみんなの前に立った。

 「良いじゃん、似合ってる……ぷっ!」

 「ほらもう笑っちゃってるじゃん!!」

 この後ろに付いた長い生地は何? 確かに種類によっては付いてるものもあるけど、それにしても長すぎる!!

 「絶対、転ける……。」

 その反応を見て、裁縫班はお腹を抱えながら笑っていた。

 「……あー、笑った……!」

 「頼むから、直してくれ……!」

 「流石に直すよ。じゃないと当日着られないからね。」

 直すなら初めからちゃんとしたやつを作ってくれよ。

 「私のもよろしく!」

 「えっ、彩白のは直さないよ?」

 「う、嘘でしょ? 流石にお願い!!」

 「だめだよ! これで男を釣るんだから!」

 別にこれにしなくても釣れると思うんだけどね……。

 「でもさ、夫婦設定なら、やっぱり谷間はしまって欲しいかな。」

 「……いや、そんな所で、カップル見せられても!」

 「あのさ……見せてないし……設定守ってるだけだから。」

 僕はそう言った。すると、折れたのか。

 「まあ、旦那がそう言うなら仕方ないよね。」

 「本当!? 直してくれるの?」

 「あんまり気は進まないけどね。でも、旦那からそう言われたら仕方ないでしょ!」

 「旦那よ、ありがとう。」

 そう、彩白は僕に敬礼を向けた。

 「……頼むから、旦那の部分は否定してくれ……。」

 「えっ、何で? 面白いじゃん!」

 「それで済ますなよ……。」

 もう、彩白の事だから、考えなしにやってるんだろうけどさ。まあ、あれを見れただけでもよかったのかな。

 僕はそう思って、裁縫班にお礼を言って、教室に戻っていくのだった。

 


 

 




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