雨と晴

やすを。

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5話 少し光が見えた

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 雨森は口を閉じてその場に座り込んでいた。

 「雨森?」

 「……嘘つき。」

 雨森は俯きながら、そう呟いた。

 「……晴山の嘘つき。何が大丈夫よ。怖くて腰が抜けちゃったよ……。」

 「……ごめん。」

 僕には謝ることしかできなかった。全て僕の落ち度で、雨森にはなんの責任もなかった。僕が自分の発言の責任を持てていなかったのだ。

 「……本当だよ。何度誤ったって許さないから。だから……。」

 雨森は顔を上げた。

 「もう、私を一人にしないで! ずっと私のそばにいて! そうじゃないと不安で押し潰れそうだよ……。」

 涙で濡れた顔には、彼女の発言の説得力が込められていた。その言葉に嘘偽りはないという証明には十分すぎるほどだった。

 「ああ。もちろんだよ。もうこの手を話すことはしない。自分の命に変えてもね。」

 元々、その覚悟を持っていたはずだった。でも、それが不十分だったためにこの結果を招いてしまったのだ。もっと周りに気を配って、彼女の気持ちに寄り添うべきだ。

 「立てるか?」

 「うん……。」

 彼女は目を擦りながら、立ち上がった。

 周りを見渡すと、野次馬に囲まれていた。自分の言葉を思い返すと、かなり恥ずかしい気持ちになった。それでも、チンピラ共を追い払ったことで、皆さんから拍手をもらえた事が、唯一の救いだったように思う。

 僕らは、急いでその店を後にした。

 「落ち着くために観覧車でも乗るか?」

 「そうする……。」

 やはり午前中の勢いは完全に無くなっていた。あの後だから致し方ないが、少し変な気分だった。

 「少しは落ち着けたか?」

 涙交じりだった声も、ようやく元に戻ってきて、まともに話せる状態になっていた。

 「それにしても、晴山って何であんなに強いの?」

 「ああっとね、中学時代は柔道やってたからだよ。最近全然やってなかったけど、体が動いてくれてよかったよ。」

 もう3年も前の話だ。別に今更掘り返すようなことでもない。だから変に口外もしないし、気を遣ってくれているようで雨森も詮索はしてこなかった。

 「今日はもう帰ろう。」

 「私も帰りたい……。もう疲れた……。」

 まあ、あんな事があった後だからな、精神的にも肉体的にも疲れているにきまってるよ。特に、久しぶりの外であんな事があったんだ。精神的疲労は凄いだろうな……。

 「どう、また外出したくなった?」

 「どうかな……。まあ、でも……」

 「晴山がいるなら、外出もアリかなって思うよ。」

 ああ、やっぱり。僕の同居人が可愛すぎる。こんなこと言われたら、ずっと外出してたい気分だよ。

 「何が困ったら助けてくれるだろうしね。」

 雨森は珍しく笑顔を見せた。それは僕の目を釘付けにするのには十分な効力があった。

 僕らは観覧車から降りた後に、遊園地を後にした。

 波乱すぎるよな、こんな初外出。もっと、穏やかな気分で回りたかったよ……。
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