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46話 もぬけの殻だった
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「面白いご両親だったね。」
「こっちからしたら恥ずかしくて、穴があったら入りたかったけど……」
30分前。僕らは実家に着いて、チャイムを鳴らすと、僕の母親が出てきたのだが、そこから始まったのは僕に対しての拷問だった。
「あら、あなたが噂の葵ちゃん? 翔太には勿体ないくらいビジュアルいいわね!」
「あのさ、それ上がってからでもいいよな?」
「別にいいじゃない。私、嬉しいのよ? やっとあんたが恋人作って、顔見せに来てくれるの。中学時代なんて喧嘩しかしてなかったんだから。」
「……! 余計なこと言わなくていいよ!」
「あっ! 何でそんなに恥ずかしがってんの? 彼女の前だからいい格好しようとしてるのね。」
母さんは馬鹿にするような表情を浮かべて、僕にそう言った。それから荷を片付け、リビングで休んでいる間もその趣旨の会話が途切れることはなかった。
そして今に至ると言う訳だ。僕らは葵にこの街を案内するという名目で、母さんから逃げてきた。
この街から離れて3年弱。駐車場がコンビニになっていたり、公園がマンションに変わっていたりと変化は想像の遥か上を行っていた。それでもここは僕の地元、そう思える風景は至る所に残っている。小学生の頃、何度も押しかけた友達の家。中学2年の時、夜まで喧嘩をした公園。それらが、僕の薄れていた記憶を呼び起こした。
僕は特に当てもなく、内容のない話をしながらブラブラと歩いていた。ある時、僕らがとあるマンションの角を右に曲がると、見知った人と出会った。
「あれ? 葵と翔太じゃない。2人も帰省してたんだ。」
「まあな。渚も元気そうだな。」
「ええ。それはもちろん…………そうだ、この後時間ある?」
「ああ、あるけどどうしたんだ?」
「家にお母さんもいるからさ、翔太久々にどうかなって。」
「えっ、いいのか?」
「もちろん。積もる話もあるでしょ。」
まさかこんなところで会える事になるなんて、夢にも思ってなかった。
約7年ぶりか……何だか今までにも色々あったな。その話を先生にしよう。まずはお礼からだな、あの頃は先生のおかげで学校に通えていたって、言葉でちゃんと伝えたい。
「それじゃあ、付いてきて。」
渚は僕らを導いてくれるようで、僕らの前を歩きながら久方ぶりの会話を交わしていた。
「あれ? 鍵空いてる…………」
隣の地区のとあるマンションの三階。その一室に渚に住む部屋はあった。渚はチャイムを鳴らし、先生が出てくるのを待っていた。しかし一向に返事はなく、試しに開けてみると、どういう訳かもぬけの殻だった。
「どっか出掛けてんじゃないのか?」
「お母さん、今日は一日中家にいるって言ってたのに。ラインもないし、そんな事ありえないんだけどな……」
渚は一貫して腑に落ちない様子だった。僕と葵は渚の家の前で、渚が出てくるのを待った。どうやら何度も電話をかけているようだが、一向に繋がる気配はなかった。
「お母さんがどっか行っちゃった……」
渚はショックのあまり、崩れ落ちるように膝をついた。
「渚落ち着け。3人で探そうよ、お母さんの事。」
「いいのか……協力してもらって。」
「もちろん。こんなところで見捨てるほど性格終わってないからな。」
「友達のためだもんね。それぐらいするよ。」
「翔太……葵……2人とも良い人だよね。」
3人で探すことは決まったものの、これからどうしたもんだ…………そういえばさっきライン来てたな。なんかあったか?
僕は徐に携帯を取り出し、ラインを開いた。そして僕は1度目を擦った。
「おい! どういう事だよ!」
「そのままの意味っすよ! さっき俺も聞いたばっかで。」
「ああ、分かった。とりあえず一回来てくれ。」
「了解です!」
僕は電話を切った。
「どうしたの?」
不思議そうな目線を送る2人に、僕は躊躇わずに言った。
「渚のお母さん、誘拐されたって……」
「こっちからしたら恥ずかしくて、穴があったら入りたかったけど……」
30分前。僕らは実家に着いて、チャイムを鳴らすと、僕の母親が出てきたのだが、そこから始まったのは僕に対しての拷問だった。
「あら、あなたが噂の葵ちゃん? 翔太には勿体ないくらいビジュアルいいわね!」
「あのさ、それ上がってからでもいいよな?」
「別にいいじゃない。私、嬉しいのよ? やっとあんたが恋人作って、顔見せに来てくれるの。中学時代なんて喧嘩しかしてなかったんだから。」
「……! 余計なこと言わなくていいよ!」
「あっ! 何でそんなに恥ずかしがってんの? 彼女の前だからいい格好しようとしてるのね。」
母さんは馬鹿にするような表情を浮かべて、僕にそう言った。それから荷を片付け、リビングで休んでいる間もその趣旨の会話が途切れることはなかった。
そして今に至ると言う訳だ。僕らは葵にこの街を案内するという名目で、母さんから逃げてきた。
この街から離れて3年弱。駐車場がコンビニになっていたり、公園がマンションに変わっていたりと変化は想像の遥か上を行っていた。それでもここは僕の地元、そう思える風景は至る所に残っている。小学生の頃、何度も押しかけた友達の家。中学2年の時、夜まで喧嘩をした公園。それらが、僕の薄れていた記憶を呼び起こした。
僕は特に当てもなく、内容のない話をしながらブラブラと歩いていた。ある時、僕らがとあるマンションの角を右に曲がると、見知った人と出会った。
「あれ? 葵と翔太じゃない。2人も帰省してたんだ。」
「まあな。渚も元気そうだな。」
「ええ。それはもちろん…………そうだ、この後時間ある?」
「ああ、あるけどどうしたんだ?」
「家にお母さんもいるからさ、翔太久々にどうかなって。」
「えっ、いいのか?」
「もちろん。積もる話もあるでしょ。」
まさかこんなところで会える事になるなんて、夢にも思ってなかった。
約7年ぶりか……何だか今までにも色々あったな。その話を先生にしよう。まずはお礼からだな、あの頃は先生のおかげで学校に通えていたって、言葉でちゃんと伝えたい。
「それじゃあ、付いてきて。」
渚は僕らを導いてくれるようで、僕らの前を歩きながら久方ぶりの会話を交わしていた。
「あれ? 鍵空いてる…………」
隣の地区のとあるマンションの三階。その一室に渚に住む部屋はあった。渚はチャイムを鳴らし、先生が出てくるのを待っていた。しかし一向に返事はなく、試しに開けてみると、どういう訳かもぬけの殻だった。
「どっか出掛けてんじゃないのか?」
「お母さん、今日は一日中家にいるって言ってたのに。ラインもないし、そんな事ありえないんだけどな……」
渚は一貫して腑に落ちない様子だった。僕と葵は渚の家の前で、渚が出てくるのを待った。どうやら何度も電話をかけているようだが、一向に繋がる気配はなかった。
「お母さんがどっか行っちゃった……」
渚はショックのあまり、崩れ落ちるように膝をついた。
「渚落ち着け。3人で探そうよ、お母さんの事。」
「いいのか……協力してもらって。」
「もちろん。こんなところで見捨てるほど性格終わってないからな。」
「友達のためだもんね。それぐらいするよ。」
「翔太……葵……2人とも良い人だよね。」
3人で探すことは決まったものの、これからどうしたもんだ…………そういえばさっきライン来てたな。なんかあったか?
僕は徐に携帯を取り出し、ラインを開いた。そして僕は1度目を擦った。
「おい! どういう事だよ!」
「そのままの意味っすよ! さっき俺も聞いたばっかで。」
「ああ、分かった。とりあえず一回来てくれ。」
「了解です!」
僕は電話を切った。
「どうしたの?」
不思議そうな目線を送る2人に、僕は躊躇わずに言った。
「渚のお母さん、誘拐されたって……」
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