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74話 囁き少女と夏祭り
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静寂の中黙々とペンを走らせ、ちょっとした誘惑に耐えながら夏休みの課題を進めていた。
対面には同じくペンを走らせる、ワンピース姿の菖蒲が居る。
「進捗はどうだ?」
「まずまずといったところです。響さんはどうですか?」
「俺も同じくらいだな」
特にイベント事をせずとも、夏休みは時の流れによってあっという間に過ぎていく。
夏休みは残り一週間と少し、そろそろ課題を終わらせた方が何かと楽な日数だ。
「今日で八割ぐらいは終わらせたいですね」
「夏祭りも近いもんな」
「…そうですね」
旅行の際、菖蒲と約束した夏祭り。
その日は夏休みが終わる数日前に開催されるため、終わらせおくことで思う存分楽しむことが出来る。
「一旦休憩しますか?」
「そうだな。菖蒲もコーヒーでいいか?あ、砂糖は多めだよな」
「はいっお願いします!」
菖蒲の分のコーヒーも用意し、ちょっとしたお菓子と共にテーブルへ運ぶ。
固まりきった首と腰をほぐしながら、今日進んだ課題をペラペラと捲る、
「もう響さんはほとんど終わってそうですね」
「コツコツやってたからな。そういう菖蒲もだろ?」
「っえへん!」
菖蒲は腰に手を当て、自慢げに鼻を鳴らす。
響は呆れながらテレビにリモコンを向けた。
「あ、夏祭りの特集みたいですね」
「他の地域じゃ、もう既にやってるとこもあるのか」
テレビには夏祭りの振り返りの特集や、祭りを楽しんでいる人たちのインタビューなどが流れていた。
「やっぱりお祭りは屋台が楽しみですよね!」
「焼きそばもいいが、個人的にはトルネードポテトが楽しみだな」
「通ですねっ」
屋台を楽しむ人たちのインタビューも行われており、各々の楽しそうな表情が印象的だった。
夏祭りへの思いが高まり、より楽しみ感が増す。
「それじゃあ本腰入れて終わらせるか」
「そうですねっ」
その日は夜の十九時頃まで勉強を行い、予定を超える九割ほど終わらせることが出来た。
夏祭りの前日、佑馬から電話が掛かってきた。
『響!明日の夏祭り一緒に行こうぜ!』
『すまん、先約がいるんだ』
『そうなのか…残念だな。でも何となく相手は分かるし、楽しんで来いよ!』
友人が多い佑馬であれば、響に断られたとしても残弾は沢山あるだろう。
そんな佑馬に対し、響は慣れないお願いをする。
『ほんと響は可愛いな!』
『う、うるせぇよ!男に言われても嬉しくないっ』
『まぁ分かった。明日の夕方ぐらいに俺ん家来いよ』
佑馬との電話を切ると、響はクローゼットを見渡す。
「母さんのお節介がこんなとこで役に立つとはな」
翌日、響は約束通り佑馬の家へと向かった。
「お、響来たな」
「…今日はよろしく頼んだ…」
「気にすんな!早く上がれよっ」
響は洗面所へ向かうと、佑馬が様々な道具を持ってくる。
「お客さん、今日はどうなさいますか?」
「…おまかせで」
「はいよっ!」
佑馬は手馴れた動きで響の髪の毛をセットし、いつもとは全く違う印象の人物が鏡に映る。
鏡に映る自分を角度を変えながら眺める。
「俺じゃないみたいだな」
「毎日セットすればいいのになー」
「毎朝はめんどくさいだろ」
いつもカッチリとキマった髪型をしている佑馬に相談して正解だった。
響はカバンから袋を取り出し、佑馬に渡す。
「着付けもお願いしていいか?」
「任せろよっ」
こういった服を着ることはほとんどなく、何度か着付けをしたことがある佑馬に頼む。
「やっぱり流石だな」
「馬子にも衣装ってやつだな」
いつもよりも整った髪型に、夏祭りらしい甚平姿に変貌を遂げた響は、心做しか自信が高まる。
「じゃあ響!頑張ってこいよ!」
「何をだよ…今日はありがとな」
「親友なんだから当たり前だろっ」
佑馬と拳を合わせ、夏祭りの会場へ向かった。
「約束の場所はここだよな」
響は階段を登った鳥居の前でソワソワしながら待つ。
菖蒲との約束よりも三十分ほど早く到着し、辺りを見渡しながら菖蒲の姿を探す。
「…響さんお待たせしました」
見た目通りの奥ゆかしい浴衣に身を包み、後ろで緩いお団子を作っており、いつもとのギャップに胸を貫かれる。
「…どうです…か?」
菖蒲は紫色の袖で口元を隠しながら、上目遣いをする。
「菖蒲らしくて可愛いな」
「ふぇっ!ありがとうございますっ。…響さんも似合ってますよ」
「お、おう…」
菖蒲と共に鳥居をくぐり、夏の集大成のような景色が広がる世界へ繰り出して行く。
対面には同じくペンを走らせる、ワンピース姿の菖蒲が居る。
「進捗はどうだ?」
「まずまずといったところです。響さんはどうですか?」
「俺も同じくらいだな」
特にイベント事をせずとも、夏休みは時の流れによってあっという間に過ぎていく。
夏休みは残り一週間と少し、そろそろ課題を終わらせた方が何かと楽な日数だ。
「今日で八割ぐらいは終わらせたいですね」
「夏祭りも近いもんな」
「…そうですね」
旅行の際、菖蒲と約束した夏祭り。
その日は夏休みが終わる数日前に開催されるため、終わらせおくことで思う存分楽しむことが出来る。
「一旦休憩しますか?」
「そうだな。菖蒲もコーヒーでいいか?あ、砂糖は多めだよな」
「はいっお願いします!」
菖蒲の分のコーヒーも用意し、ちょっとしたお菓子と共にテーブルへ運ぶ。
固まりきった首と腰をほぐしながら、今日進んだ課題をペラペラと捲る、
「もう響さんはほとんど終わってそうですね」
「コツコツやってたからな。そういう菖蒲もだろ?」
「っえへん!」
菖蒲は腰に手を当て、自慢げに鼻を鳴らす。
響は呆れながらテレビにリモコンを向けた。
「あ、夏祭りの特集みたいですね」
「他の地域じゃ、もう既にやってるとこもあるのか」
テレビには夏祭りの振り返りの特集や、祭りを楽しんでいる人たちのインタビューなどが流れていた。
「やっぱりお祭りは屋台が楽しみですよね!」
「焼きそばもいいが、個人的にはトルネードポテトが楽しみだな」
「通ですねっ」
屋台を楽しむ人たちのインタビューも行われており、各々の楽しそうな表情が印象的だった。
夏祭りへの思いが高まり、より楽しみ感が増す。
「それじゃあ本腰入れて終わらせるか」
「そうですねっ」
その日は夜の十九時頃まで勉強を行い、予定を超える九割ほど終わらせることが出来た。
夏祭りの前日、佑馬から電話が掛かってきた。
『響!明日の夏祭り一緒に行こうぜ!』
『すまん、先約がいるんだ』
『そうなのか…残念だな。でも何となく相手は分かるし、楽しんで来いよ!』
友人が多い佑馬であれば、響に断られたとしても残弾は沢山あるだろう。
そんな佑馬に対し、響は慣れないお願いをする。
『ほんと響は可愛いな!』
『う、うるせぇよ!男に言われても嬉しくないっ』
『まぁ分かった。明日の夕方ぐらいに俺ん家来いよ』
佑馬との電話を切ると、響はクローゼットを見渡す。
「母さんのお節介がこんなとこで役に立つとはな」
翌日、響は約束通り佑馬の家へと向かった。
「お、響来たな」
「…今日はよろしく頼んだ…」
「気にすんな!早く上がれよっ」
響は洗面所へ向かうと、佑馬が様々な道具を持ってくる。
「お客さん、今日はどうなさいますか?」
「…おまかせで」
「はいよっ!」
佑馬は手馴れた動きで響の髪の毛をセットし、いつもとは全く違う印象の人物が鏡に映る。
鏡に映る自分を角度を変えながら眺める。
「俺じゃないみたいだな」
「毎日セットすればいいのになー」
「毎朝はめんどくさいだろ」
いつもカッチリとキマった髪型をしている佑馬に相談して正解だった。
響はカバンから袋を取り出し、佑馬に渡す。
「着付けもお願いしていいか?」
「任せろよっ」
こういった服を着ることはほとんどなく、何度か着付けをしたことがある佑馬に頼む。
「やっぱり流石だな」
「馬子にも衣装ってやつだな」
いつもよりも整った髪型に、夏祭りらしい甚平姿に変貌を遂げた響は、心做しか自信が高まる。
「じゃあ響!頑張ってこいよ!」
「何をだよ…今日はありがとな」
「親友なんだから当たり前だろっ」
佑馬と拳を合わせ、夏祭りの会場へ向かった。
「約束の場所はここだよな」
響は階段を登った鳥居の前でソワソワしながら待つ。
菖蒲との約束よりも三十分ほど早く到着し、辺りを見渡しながら菖蒲の姿を探す。
「…響さんお待たせしました」
見た目通りの奥ゆかしい浴衣に身を包み、後ろで緩いお団子を作っており、いつもとのギャップに胸を貫かれる。
「…どうです…か?」
菖蒲は紫色の袖で口元を隠しながら、上目遣いをする。
「菖蒲らしくて可愛いな」
「ふぇっ!ありがとうございますっ。…響さんも似合ってますよ」
「お、おう…」
菖蒲と共に鳥居をくぐり、夏の集大成のような景色が広がる世界へ繰り出して行く。
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