75 / 233
75話 囁き少女と屋台
しおりを挟む
屋台の呼び込みや老若男女の和気あいあいとした声、浴衣姿の人も多く、世界が変わったように思えた。
「響さん!あれっあれ食べましょ!?」
「お、おい!走るなってっ」
「行きますよ!」
菖蒲に手を引かれ、イカ焼きが売られている屋台へ足を運ぶ。
響の腹具合的にそこまで食に興味はそそられなかったが、いざ屋台に向かうと腹は現金なものでぐぅと、情けない音を上げる。
「響さんどーぞ!」
「ありがと…奢ってもらっちゃっていいのか?」
「いつものお礼です!その代わりに焼きそば奢ってくださいね!」
その場合同価値の物を奢りあっているだけなのだが、祭りの熱に浮かされた響にはどうでもいい事だった。
「んっ!美味しいですね!」
「美味いな。菖蒲、顔にソース付いてるぞ」
「おこでふか?」
響は笑いながら菖蒲のおでこに付いたソースを紙ナプキンで拭う。
なぜおでこにソースが付いたのかは謎だが、おそらくおでこにも美味しさを共有したかったのであろう。
「響さん!次はあれ食べましょう!」
腹ぺこの菖蒲につられ、響も食欲が高まる。
ちょっとした石垣に腰を下ろし、焼きそばを頬張った。
「次は何行きましょうか」
菖蒲は浴衣が崩れない程度に足をブラブラとさせ、まだまだ広がる屋台の通りを一望していた。
夏祭りということもあり、子ども連れの親子ももちろんのこと、学生カップルの姿も多かった。
「あれってB組のやつだよな?」
「確かに…学校で見た事ある気がしますね」
「やっぱり祭りはカップルが多いんだな」
焼きそばを啜っている響の隣で、菖蒲がボソッと呟く。
「…周りから見れば私たちも…そう見えるんですかね…」
焼きそばが器官に入り、大きく咳き込んでしまう。
菖蒲は慌てて響の背中をトントンと叩き、咳き込んだ響を落ち着かせてくれる。
「いきなり!へ、変なこと言うなよっ」
「っ変なことってなんですか!?」
菖蒲は最後の一打を響の背中に叩き込み、食べ終わった焼きそばのプラゴミを捨てに行く。
大きなプラスチックの容器の中で、スイスイと泳ぐ金魚たちと相見え、ポイを片手に袖を捲る。
「どっちがたくさん金魚さんをすくえるか勝負ですよ!」
「子どもの頃からこういうのは得意だ」
金魚を追いかけ優しくすくい上げる。
耳に髪をかける菖蒲の目はメラメラと燃え、金魚を捉えて離さない。
「俺は二匹だ、菖蒲はどうだ?」
「ふふっ!私も二匹です!」
両者の勝負には決着は着かず、お互い家で育てる環境も無いため仲間たちの元に戻した。
「さようなら…チビきさん、デメきさん」
「名付けが早いな」
響の名前を模された金魚たちは、仲間たちと合流し生き生きと泳ぎ始める。
「勝負はお預けですねっ」
「そうだな。ん?あれって…」
響の目の先には、見慣れたギャルたちと仲睦まじい姉妹が一緒に居た。
響たちが声を掛けるよりも先に透子が声を上げる。
「あやっちと道元じゃーん」
「ちょ透子っ!はぁ…二人ともごめんねー」
有咲は透子の額にチョップをお見舞いし、申し訳なさそうに歩いてくる。
「あ!響お兄ちゃんと菖蒲お姉ちゃんだ!」
『お久しぶりです!』
四人は共に夏祭りに来ていたらしく、手には様々な棒物の食べ物を持っていた。
一華は双葉の口元をハンカチで拭きながら、前髪を指先で整える。
「響君たちはデートかなー?」
『違いますよ!?響さんがお祭りに行きたいって言うので仕方なく!』
「そうか仕方なくだったのか」
菖蒲は一華と響を交互に振り向き、アワアワと両方に訂正を加えた。
「道元一口食べる?」
「なら遠慮無く…」
「あ!有咲っ道元に肉二つも食べられた!」
肉が五個刺さった串の半分近くを取られ、有咲に助けを求めると有咲にも一つ食べられてしまった。
「あぁっ…」
「二人の邪魔した罰だよ」
人通りも多くなり始め、留まっているのも邪魔になってしまうため、別れを告げる。
『お互い夏祭り楽しみましょうね!』
「あやっちも頑張って楽しんでね」
響たちは有咲たちに背を向けると、響の臀部に衝撃が走る。
臀部を抑えながら振り向くと、一華が立っており深呼吸をすると響の耳元に口を近づけ、小さく囁いた。
「シャキッとして頑張ってよ」
「っ痛…意図は分からないがそうする」
一華はクルリと振り向くと、後ろを向いたまま声を掛ける。
「バイバイ、響君っ」
一華たち別れ、リンゴ飴に苦戦する菖蒲と屋台を見て回っていた。
「全然食べれませんっ」
「もっと歯を立てるといいぞ」
リンゴ飴の飴の部分に歯を当てる菖蒲の横で、響は一枚のポスターを見つける。
「あと一時間ぐらいで花火やるみたいだぞ?」
「そうですよっ!ここの花火大きくてすごいんですから!それに恋の…」
「『恋の』なんだ?」
菖蒲は飴の部分を噛み砕くと、たい焼きを指差す。
「鯉じゃなくて鯛でした!たい焼き買いに行きましょ!ね!?」
花火まで一時間ほど、まだまだ見てない屋台もあるため、たい焼きの頭にかぶりつきながら人混みを歩いていく。
「響さん!あれっあれ食べましょ!?」
「お、おい!走るなってっ」
「行きますよ!」
菖蒲に手を引かれ、イカ焼きが売られている屋台へ足を運ぶ。
響の腹具合的にそこまで食に興味はそそられなかったが、いざ屋台に向かうと腹は現金なものでぐぅと、情けない音を上げる。
「響さんどーぞ!」
「ありがと…奢ってもらっちゃっていいのか?」
「いつものお礼です!その代わりに焼きそば奢ってくださいね!」
その場合同価値の物を奢りあっているだけなのだが、祭りの熱に浮かされた響にはどうでもいい事だった。
「んっ!美味しいですね!」
「美味いな。菖蒲、顔にソース付いてるぞ」
「おこでふか?」
響は笑いながら菖蒲のおでこに付いたソースを紙ナプキンで拭う。
なぜおでこにソースが付いたのかは謎だが、おそらくおでこにも美味しさを共有したかったのであろう。
「響さん!次はあれ食べましょう!」
腹ぺこの菖蒲につられ、響も食欲が高まる。
ちょっとした石垣に腰を下ろし、焼きそばを頬張った。
「次は何行きましょうか」
菖蒲は浴衣が崩れない程度に足をブラブラとさせ、まだまだ広がる屋台の通りを一望していた。
夏祭りということもあり、子ども連れの親子ももちろんのこと、学生カップルの姿も多かった。
「あれってB組のやつだよな?」
「確かに…学校で見た事ある気がしますね」
「やっぱり祭りはカップルが多いんだな」
焼きそばを啜っている響の隣で、菖蒲がボソッと呟く。
「…周りから見れば私たちも…そう見えるんですかね…」
焼きそばが器官に入り、大きく咳き込んでしまう。
菖蒲は慌てて響の背中をトントンと叩き、咳き込んだ響を落ち着かせてくれる。
「いきなり!へ、変なこと言うなよっ」
「っ変なことってなんですか!?」
菖蒲は最後の一打を響の背中に叩き込み、食べ終わった焼きそばのプラゴミを捨てに行く。
大きなプラスチックの容器の中で、スイスイと泳ぐ金魚たちと相見え、ポイを片手に袖を捲る。
「どっちがたくさん金魚さんをすくえるか勝負ですよ!」
「子どもの頃からこういうのは得意だ」
金魚を追いかけ優しくすくい上げる。
耳に髪をかける菖蒲の目はメラメラと燃え、金魚を捉えて離さない。
「俺は二匹だ、菖蒲はどうだ?」
「ふふっ!私も二匹です!」
両者の勝負には決着は着かず、お互い家で育てる環境も無いため仲間たちの元に戻した。
「さようなら…チビきさん、デメきさん」
「名付けが早いな」
響の名前を模された金魚たちは、仲間たちと合流し生き生きと泳ぎ始める。
「勝負はお預けですねっ」
「そうだな。ん?あれって…」
響の目の先には、見慣れたギャルたちと仲睦まじい姉妹が一緒に居た。
響たちが声を掛けるよりも先に透子が声を上げる。
「あやっちと道元じゃーん」
「ちょ透子っ!はぁ…二人ともごめんねー」
有咲は透子の額にチョップをお見舞いし、申し訳なさそうに歩いてくる。
「あ!響お兄ちゃんと菖蒲お姉ちゃんだ!」
『お久しぶりです!』
四人は共に夏祭りに来ていたらしく、手には様々な棒物の食べ物を持っていた。
一華は双葉の口元をハンカチで拭きながら、前髪を指先で整える。
「響君たちはデートかなー?」
『違いますよ!?響さんがお祭りに行きたいって言うので仕方なく!』
「そうか仕方なくだったのか」
菖蒲は一華と響を交互に振り向き、アワアワと両方に訂正を加えた。
「道元一口食べる?」
「なら遠慮無く…」
「あ!有咲っ道元に肉二つも食べられた!」
肉が五個刺さった串の半分近くを取られ、有咲に助けを求めると有咲にも一つ食べられてしまった。
「あぁっ…」
「二人の邪魔した罰だよ」
人通りも多くなり始め、留まっているのも邪魔になってしまうため、別れを告げる。
『お互い夏祭り楽しみましょうね!』
「あやっちも頑張って楽しんでね」
響たちは有咲たちに背を向けると、響の臀部に衝撃が走る。
臀部を抑えながら振り向くと、一華が立っており深呼吸をすると響の耳元に口を近づけ、小さく囁いた。
「シャキッとして頑張ってよ」
「っ痛…意図は分からないがそうする」
一華はクルリと振り向くと、後ろを向いたまま声を掛ける。
「バイバイ、響君っ」
一華たち別れ、リンゴ飴に苦戦する菖蒲と屋台を見て回っていた。
「全然食べれませんっ」
「もっと歯を立てるといいぞ」
リンゴ飴の飴の部分に歯を当てる菖蒲の横で、響は一枚のポスターを見つける。
「あと一時間ぐらいで花火やるみたいだぞ?」
「そうですよっ!ここの花火大きくてすごいんですから!それに恋の…」
「『恋の』なんだ?」
菖蒲は飴の部分を噛み砕くと、たい焼きを指差す。
「鯉じゃなくて鯛でした!たい焼き買いに行きましょ!ね!?」
花火まで一時間ほど、まだまだ見てない屋台もあるため、たい焼きの頭にかぶりつきながら人混みを歩いていく。
0
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん
菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。
甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。
平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは──
学園一の美少女・黒瀬葵。
なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。
冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。
最初はただの勘違いだったはずの関係。
けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。
ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、
焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる