囁き少女のシークレットボイス

うみだぬき

文字の大きさ
82 / 233

82話 天使たちは仲良し

しおりを挟む
 約四メートルの高さとはいえ、普通に降りるだけでも衝撃は凄い。しかも今回は、菖蒲と同じぐらいの体格だが、ある程度の重さがある美神を抱えての着地、ある程度の怪我は覚悟しなければいけない。

「っ高」

 落ちる時間は他者から見れば刹那的だが、響としては数分の長さに思えた。
 落下地点は子どもたちが遊ぶ用の砂場があり、そこに着地出来れば少しの衝撃は分散されるだろう。

「ミカエル、大丈夫だからな」

 口に出したのか言った気になっているだけか分からないが、美神の表情が少し和らいだ気がした。
 地面が近づき、美神をより強い力で抱きしめる。

「っ仮氏さん!美神ちゃん!!」

 着地した足先からふくらはぎ、腿の順に衝撃が走る。

「っふん!」

 鼻で荒く呼吸をし、足の痛みに耐える。
 美神を優しく下ろすと、響は膝から崩れ落ちた。

「怪我人はいますか!?」
「こ、ここです!ここに二人います!」

 永流の案内のおかげで比較的早く救急車に乗り込んだ。
 急を要することもあり一つの救急車に乗り込み、付き添いとして永流が同乗した。

「仮氏さん、大丈夫…ではなさそうですよね」
「ミカエルよりは大丈夫だ」

 アドレナリンもあるのか、足の痛みはそれほどまではなく、椅子に座り話せる程度には余裕があった。
 救急隊の人に怒られながら病院へ向かい、怪我人二人は治療を受けた。


「ほんと奇跡だからね?普通なら骨が粉々になっててもおかしくないんだから、もう二度としないように。でも、今回はよく頑張った」
「牛乳沢山飲んだおかげですかね」

 医師から呆れながら頭にチョップされ、診察を終えた。

「仮氏さん、どうだった?」
「牛乳パワーで無傷だったぞ。ちょっと火傷したのと、服が焦げたのを除けばな」
「…良かった?のかな」

 とりあえず響は無事だったことに、永流は胸を撫で下ろす。
 肝心の美神は入院することになり、それからまるまる一日目を覚まさなかった。


「…どこ?」
「美神ちゃん!?」

 火事から翌日、美神は永流に撫でられながら目を開けた。

「おはようミカエル」
「あ…響殿、おはようございます…」

 美神はまだ状況を整理出来ていないのか、虚ろな目で響たちを見つめる。

「っ子どもたちはどうなった!?火事は!?」

 火事のことを思い出したのか、ガバッと布団を払い起きあがろとする。

「まだ寝ててっ」
「サマエル?」

 永流に抑え込まれ、美神は大人しく横になる。
 響は何が起きたのかを美神に伝え、永流がその捕捉をする。

「仮氏さんが火の中に飛び込んだと思ったら、窓から飛び降りてきたんだよ」
「さながら、不死鳥フェニックスのようであるな!」
「バカ言わないで…」

 永流はしりすぼみになりながら下を見つめる。

「私すごく心配したんだよ?真っ赤に燃える中から出てきた美神ちゃんは、ボロボロで目を閉じてて…」
「…すまない」

 突然、美神の頬に手のひらが飛んでいく。

「っ永流!?」
「っ美神ちゃんはいっつも守るために自分を犠牲にして!その度に変わらない笑顔で話しかけてくる!」
「サマエル…」

 永流の長年の気持ちが溢れるように涙が零れる。

「美神ちゃんの周りが笑顔でも、美神ちゃんの心が泣いてたら…私、嬉しくないよっ」

 永流は子どものように泣き、美神を強く抱きしめる。
 美神はどうしたいいのか分からないように、目で響に助けを求めるが、響は下手な口笛を吹きながら目を逸らす。

「…サマエルすまなかった」

 美神は永流の背中を撫でながら、ポツリと話し出す。

「昔、サマエルに言われた話を聞いてくれるか?」
「あぁ」

 話は響が美神を庇った時の事だった。

「響殿に助けられた話を何となくサマエル…永流ちゃんに話したことがあったんだ」


『ならその人は美神ちゃんの神様だねっ』
『その通り!』

 中学の頃、今と同じの永流の病室でそんな話をしていた。

『なら美神ちゃんは大天使ミカエルってことになるのかな?』
『ミカエル?』
『知らない?なら私が説明してあげるね』

 永流は長い長い物語を要約して話し始めた。

『昔ミカエルとサマエルっていう天使たちがいたの』
『おぉ!我らに似ている名だな!』
『サマエルが天国から追放された時、ミカエルも道連れにしたらしいの』
『全く似ていないな!永流ちゃんはそんなことはしない!』

 永流は笑いながら続きを話した。

『一度は堕ちたミカエルだったけどそれを神様自身が救いあげたらしいの』
『さすがゴッドだな』
『ふふっ、なんか今の私たちに似てるよね。一つ違うのは美神ちゃんが私、サマエルを救ったところっ』
『サマエルは悪いヤツなのだろう!?そうなれば永流ちゃんとは全くの別物!』

 永流は美神の手を握り、心配そうに見つめる。

『私のせいで美神ちゃんが…嫌なことされてるの私…知ってるの』
『な、何を言っているっ、我は何時でも元気であるぞ?』
『んーん、私が美神ちゃんの羽を掴んで道連れにした…ごめんね』


「それから二人はミカエルとサマエルになったのです!」
「いやいや端折りすぎだろ…永流のセリフ的にそこに落ち着く理由が分からないんだが?」

 美神はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに、響に言い放つ。

「我らを丸ごと引っ括めて、どちらも堕天せずにしてくれた殿の功績である!!」
「ん?」
「簡単に言えば仮氏さんのおかげということだよ」

 永流は涙と鼻水を美神の服に付けながら、話す。

「仮氏さんのおかげでミカエルとサマエルは仲良く出来てる。歴史とは違うけど、ハッピーエンドならそっちの方がいいっ」
「つまり俺最高ってこと?」

 美神と永流は二人、微笑みながら呟く。

「「はい!」」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん

菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村
恋愛
 みんなと同じようにプレーできなくてもいいんじゃないですか? 先輩には、先輩だけの武器があるんですから——。  後輩マネージャーのその言葉が、彼の人生を変えた。  全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。  練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。  武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。  そのため、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。  そうすれば、香奈は自分のモノになると錯覚していたから。  武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。そこに現れたのが、香奈だった。  香奈に励まされてサッカーを続ける決意をした巧は、彼女のアドバイスのおかげもあり、だんだんとその才能を開花させていく。  一方、巧が成り行きで香奈を家に招いたのをきっかけに、二人の距離も縮み始める。  しかし、退部するどころか活躍し出した巧にフラストレーションを溜めていた武岡が、それを静観するはずもなく——。 「これは警告だよ」 「勘違いしないんでしょ?」 「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」 「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」  先輩×後輩のじれったくも甘い関係が好きな方、スカッとする展開が好きな方は、ぜひこの物語をお楽しみください! ※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。 ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

処理中です...