囁き少女のシークレットボイス

うみだぬき

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83話 二週目の観覧車

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 二人の天使を救った響は、両手に別々の味のクレープを持ちながら、それを美味しそうに食べる菖蒲を眺めていた。

「やっぱりチョコが一番です!いや…バナナも捨て難い…まっ!どっちも食べれば問題無いですね!」
「太るぞ」
「はい禁句です。絶対に言っちゃいけないこと言いましたね!」

 頬をぷくりと膨らませ睨む菖蒲に対し、試しにクレープを近づけると一瞬躊躇う素振りを見せたが、二秒後にはかぶりついていた。

ほんはいはゆうします今回は許します
「寛大な心に感謝だ」
「っん、響さんもどうぞ!」

 ほとんど具が残っていないクレープを食べ、店を後にしようとする。
 すると、女性の店員が呼び掛けながら駆けて来る。

「っお客様ー!これを渡すの忘れてましたー!」
「これは?」
「そこで使える福引券ですっ」

 この一週間の間に一定以上の買い物をした場合、値段に応じて福引券が貰えるらしく、三枚の紙を渡される。

「持ってても意味無いし引きに行くか」
「一等賞はなんですかね!」

 タオルやタワシが関の山だろうと思っていた響だったが、結果は違うものだった。

「二等おめでとうございますっ!!」
「まじか」
「二等のテーマパークペアチケットです!」

 タワシ二個とペアチケットを手にした響の横で、菖蒲は空中に浮きそうな程はしゃいでいた。

「ペアチケットですよ響さん!」
「ラッキーだな、佑馬でも誘うかー」

 先程までのテンションが嘘のように下がり、硬直した菖蒲に思わず笑みがこぼれる。

「悪かった、俺と一緒に行ってくれるか?」
「…佑馬さんはいいんですか?」
「菖蒲と行きたいからな」

 菖蒲は目を開き唇を震わせると、俯き前髪で顔を隠す。

「…そういうのずるいです」
「一緒に行ってくれるか?」
「っはい!か、彼女…ですから?」

 天使は二人だけじゃなかったのだと響は確信した。


 週末、入口でチケットを見せ二人はテーマパークに飛び込んだ。

「っ響さん!どれから乗りますか!?」
「優しい乗り物がいいな」
「ならあれが良さそうですね!」

 菖蒲に手を引かれ長い列を尻目に、ペアチケットの特典であるファストパスを使うことで数分で乗り込めた。

「…なぁ菖蒲」
「なんです?わっ!高いですね!!」

 乗り物が頂上に登り、テーマパーク全貌が見渡せるようになった時、響は気づいた。

「…これ絶叫系じゃないのか?」
「ん、そうですけど?」

 菖蒲の頬を引っ張ろうと思った時には時すでに遅し、響を乗せた乗り物は勢いよく落下し、車輪のように身体が回転する。

「っうわあぁあ!!」
「っきゃー!!!」

 恐怖から叫ぶ響と楽しさから叫ぶ菖蒲の声が混ざり、降りる頃には足はフラフラだった。

「響さん楽しかったですね!響さん?どこです?」
「…ここです」
「あ、また地面に頬ずりしてたんですか」

 誰のせいでこんな目に合っているのかと、心の中で思いながら、響は菖蒲に支えられベンチにへたり込んだ。

「これお水です、少しは気分良くなりますよ」
「…助かる」

 数分休むと次第に気分は良くなり、様子を見ながら別の乗り物に向かう。

「これは絶叫じゃないよな?」
「はい!これはカップの中で優雅に回る淑女の遊びです!」

 コーヒーカップに乗り込むと、コーヒーカップごと大きく回り始める。

「これくらいなら余裕だな」
「ここを回すとより楽しくなりますよ」
「これを回すのか?」

 思い切りハンドルを回すと本体が一気に回転する。

「っ早い早い!」
「止めるにはもっと回転が必要らしいですよ!」

 菖蒲に騙されハンドルを回しに回した響は、その日の誰よりも叫んでいたと思う。

「っ嘘つき!!」
「てへっ?っ痛いですぅー…」

 頬が赤くなるまでつねり、菖蒲は頬を擦りながらアイスを舐めていた。

「反省しました。でも、あと残ってるアトラクションはシューティング系や、見るだけの物なので安心してください!」


 昼前に来た響たちだったが、全てのアトラクションを遊び倒そうと奔走し、現在は夕日が暮れ始めている。

「遊んだな」
「えぇ、遊び尽くしましたね」

 ベンチに座り、少なくなり始めるパーク内を眺めながら疲れた足を休ませていた。

「最後にあれ乗って帰るとするか」
「あれって…ふーんっ」

 響たちはキャストに見送られ観覧車に乗り込んだ。

「ジェットコースターの時は怖くてちゃんと見れなかったからな。今回はじっくり見るとするか」
「…そーですね」
「どうしたんだ?」

 乗り込む前からソワソワしている菖蒲を心配すると『なんでもないです』とそっぽを向いてしまう。
 響を乗せた観覧車は頂上に近づき、夕暮れも相まって壮観な光景が広がる。

「菖蒲見ろ!めちゃくちゃ綺麗だぞ!」
「っわぁ!凄い綺麗です!」
「菖蒲の方が綺麗だな」
「キメ顔で変なこと言わないでください」

 冷たい菖蒲にあしらわれ、拗ねて他の景色を眺めていると響の頬に菖蒲の唇が触れる。

「っ菖蒲!?」
「こ、こういうのは響さんからするべきなんですからね!」

 菖蒲がソワソワしていた理由がやっと分かり、恥ずかしさから顔が熱くなる。

「…菖蒲」
「なんですっ!?」

 響が顔を近づけようと思った瞬間、観覧車は元の場所へ戻って来てしまった。
 仕方なく降りようとすると、菖蒲はノートに文字を書き始め、響を抑える。

『もう一周します!』
「っはい!?」

 再度キャストに見送られ、二週目の回転を始めた。

「これならまだ…

 二週目は景色を見ている余裕など無かった。
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