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第三十八話 姉妹の魔法
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「な、なにこの人達!?」
「これは……どうやらこの屋敷を守る兵達ですね。先程の門番と、同じ装備をしております」
突然のことだというのに、ラルフはとても冷静に分析をしながら、私の壁になるように前に立ってくれた。その隣には、マーヴィン様もいてくれていた。
た、確かに言われてみれば、さっきの人達と同じ格好だ。突然のことでパニックになっていたせいで、全然気が付かなかったよ!
「何かあったら来ると、先程の兵が言っていたが……随分と物騒なお出ましだな。貴様ら、何が目的だ?」
「無駄ですわ。彼らには、何を言っても通じませんことよ」
あまりにも聞き覚えがあり、そして聞きたくもない声に応えるように、兵達が一斉に部屋の入口の前を開ける。すると、部屋の中に二人の女性が入ってきた。
「ヴィオラお姉様に……リンダ……!?」
「やっほーシエルお姉様! 久しぶりだね!」
「ふふっ……本当に生きているとはね」
不敵な笑みを浮かべるヴィオラお姉様に、楽しそうにケラケラと笑うリンダ。その姿は、私がマーチャント家を出るまで、嫌と言うほど見せられたものだった。
色々とあったせいで、家を出てかなりの年月が経ったように思えるけど、よく考えるとあまり月日は経っていないんだから、変わってないのも当然だよね。
「なぜあなた達がここに?」
「そんなの、招待されたからに決まってるじゃん! 普通に考えればわかるよね?」
「でも、会場には……」
「さっきまでは、ダニエル様の屋敷の方にいましたのよ。ああ、ここに誘導したのは、邪魔が入らないようにするためですわ。ダニエル様を使って、兵にあなた達をここに誘導するように仕向けましたの」
リンダはマーヴィン様のことをバカにしながら、招待状を取り出して私達に見せた。
招待されたとか、されてないとかなんて、この際どうでもいい。今知りたいのは、こんな状況下で、二人がここに来た理由についてだもん。
「どうして二人がここに来たの? どうして私達がパーティーに参加してるのを知ってたの?」
「焦らないで。ちょっとお話がしたくて、こうしてお邪魔させてもらったのよ」
お話? 今更ヴィオラお姉様とリンダと話したいことなんて無い……と言いたいところだけど、どう考えてもこの状況は二人が招いたことだろう。
そうと仮定するなら、どうやってこんなことを実現したのかとか、どうしてこんなことをしたのかとか、聞かなければならないことが沢山あるよね。
「話だと? ふん、こんなに圧倒的にそちらが有利な状況でする話など無い。さっさとこの兵を下がらせろ」
「あら、マーヴィン様は随分とご機嫌斜めですのね。申し訳ございませんが、あなたには全く用がありませんの。だから……」
ヴィオラお姉様が言葉を区切らせた瞬間、背中が一気に冷たくなった。
この嫌な感じ……なんだろう。凄く悪いことが起きそうな気がする。私のこういう勘って、結構当たるんだ。早く、ラルフとマーヴィン様に伝えないと!
「マーヴィン様、聞いてください。あなたは今後、私達の言う事だけを聞けばいいのです。そうすれば、あなたもあなたの家も、未来永劫繁栄の道を辿ることでしょう」
「急に何を……な、なんだ……あ、頭の中に何か入って……貴様、何をした!?」
マーヴィン様の前に立ったヴィオラお姉様は、フッと口角を上げてみせた。一方のマーヴィン様は、頭を抱えて苦しんでいる。
「あれあれー? なんか時間かかってない? もしかしてヴィオラお姉様ってば、また一人じゃダメな感じ?」
「またとは何ですの。私を愚弄する気ですの?」
「うわ~怖い怖い! ちょっと暇だし、あたしにもやらせてよ!」
そう言うと、今度はリンダがマーヴィン様の前に立つと、上目遣いでウィンクをした。
二人が一体何をしているのか、全然意味がわからない。でも、急にマーヴィン様が、苦しみだしたということだけはわかる。
「マーヴィン様!? どうしたんですか!?」
「シエル様、離れてくださいませ。何か様子がおかしい……我々も巻き込まれてしまうかもしれません!」
「でもっ!」
「大丈夫だよ。そんなに抵抗しなくても、別に食べちゃったりしないからさ! あ、気分次第では、夜は食べるかも? ねえマーヴィン様。あたしの言うことを聞いて、あたしを愛して。そうすれば、最高な一夜をあげるから!」
「ぐっ……あ、あぁ……!!」
先程よりも苦しむマーヴィン様は、手当たり次第に暴れまわる。しかし、周りの兵達は一切動揺せず、簡単にマーヴィン様の動きを止めてしまった。
「この……頭がかき混ぜられるような感覚……ボーっとした頭に、彼女達の声が心地いい……ヴィオラ様の言葉が、全て正しく聞こえる……それに、リンダ様が……リンダ様が欲しくてたまらない……なる、ほど……そういう、こと……か!!!!」
「ま、マーヴィン様!?」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
マーヴィン様は雄たけびを上げたと同時に、自らの拳を、自らの顔に目掛けて振り抜いた。殴った時に発生したメリッという音が、その威力の高さを物語っている。
その衝撃に、マーヴィン様は耐えられずに、その場で膝から崩れ落ちてしまった。
「マーヴィン様、しっかりしてください! どうして自分を……!」
「いきなり自分を殴り倒すとか、意味わかんないんだけどー? こんな人初めて見た! ちょーおもしろーい!」
「ふぅん。無理やり意識を断って、私達の支配から逃れたのね。随分思い切りがいい芸ですこと」
ヴィオラお姉様は、つまらさそうに舌打ちをした。
な、何がなんだかわからないけど、とにかくマーヴィン様が苦しみ出したのは、ヴィオラお姉様とリンダが原因だってことは、なんとなくわかったよ!
「なるそど。おそらくですが、なにか魔法をかけられていたのでしょう」
「ま、魔法!?」
「はい。その魔法から逃れるために、わざと自分の意識を断った……そう考えるのが妥当かと」
「それじゃあ、もしかしてこの人達も!」
「ええ。その魔法を受けてしまい、操り人形にされてしまったということでしょう。その魔法とは……あなたの魔法ですね」
ラルフの視線の先にいたのは、優雅に佇むヴィオラお姉様だった。
「残念ですが、半分正解ですわ」
「半分? どういうこと?」
「あたしの魔法も関係してるから、半分ってこと!」
「なるほど。お二人の魔法で、彼らを操っているのですね。いや……ダニエル様や、他の貴族達も手中に収めているんですね」
「ええ、そうよ。あなた達が生きてるという情報を手に入れてから、私はダニエルを操って招待状を出し、裏でコツコツと駒を増やしたの。全ては、この時の準備のために」
そうか、ダニエル様が急に結婚すると言い出したこととか、私やラルフの居場所を知っていたことは、そういう理由だったんだね。
「そうだわ、こうして話すのもこれが最後だろうから、教えてあげるわ。私の魔法は、私の言葉に信憑性を持たせて、それを信じ込ませることができるの」
「……??」
え、えっと……? 言っていることはもちろん理解しているよ? でも、それを魔法として落とし込めていないというか……どういうこと?
「なるほど。兵達は、あなたかダニエル様辺りから、指令が出たら従うように、それ以外は何も聞かないように仕向けたのですね」
「つまり……?」
「大雑把にお伝えするなら、洗脳魔法ということです」
洗脳魔法!? それって、さっき会場の外で、洗脳魔法のせいかもって話をしたばかりなのに! まさか本当にそうだったなんて!
「大体それであっているわ。私はこの魔法で商談を有利にしているのよ」
「まさか、最近の市場がおかしくなっているのは!」
「ええ、私の手腕ですわ」
ま、またよくわからなくなってきた……とりあえずヴィオラお姉様の魔法が、危ないものだって認識を持ってれば良い感じなのかな……?
「ドレスを探していた時、職人様が良い布が手に入らないと仰っておりましたよね?」
「うん……あっ!」
そっか! 布も含めて色々と買い占めて、それを高く売っているんだね! 契約も、魔法を使えば簡単にできるもんね! やっと理解できた!
「でも残念なことに、ヴィオラお姉様の魔法は、強い意志があると効きにくいんだよね~。最近も、そのせいで商談を失敗しそうになったんだよ」
「余計なことは言わなくていいのよ」
「きゃー怒らせちゃったー! お詫びに……あたしの魔法でお手伝いをしてあげる! みんな、それ行け~!」
リンダの号令で、ずっと石のようになっていた兵達が、私達に襲い掛かってきた。
「ついでに教えてあげる。あたしの魔法は、男どもを魅了して、強制的にあたしの虜にしていうことを聞かせられる、最高な魔法!」
「リンダの魔法も、洗脳魔法……!?」
「今までは男を無理やり惚れさせて、夜遊びをしていたんだよ! ヴィオラお姉様の魔法と合わせると、超強力な洗脳魔法になるってわけ。まああたしのは、男限定だけし、やたらと女に嫌われる効果もあるけど、女とかどうでもいいし!」
そ、揃いも揃って性格が悪い魔法すぎる……願いを叶えるラルフの魔法とは、全然違う。
「さあ、次の段階ですわ。奴らを捕まえなさい」
「ふざけたことを……シエル様は、必ず私がお守りする! はぁ!!」
ラルフは兵達の剣を狙い、的確に蹴り落としていく。
実はラルフは、足を使った格闘技が得意なの。まだマーチャント家にいた時に、見せてもらったことがあるから知っているんだ。
そして私だって、守られているばかりじゃない。
「ていっ! たぁ!!」
向かってきた兵に、パンチやキックを繰り出して対抗する。
これでも私も、ラルフほどではないけど戦える。まだマーチャント家にいた時に、嫌というほどリンダに付き合わされた武術訓練で、やられ役をやってるうちに、自然と動きが身に付いたんだ!
「あーらら。雑兵じゃダメかー。せっかく今日のために、コツコツ用意したのになぁ。ていうかさ、シエルお姉様のくせに結構動けてて生意気ー」
「所詮は捨て駒ですわ。適当に死ぬまで働かせましょう。ほら、本命はこっち……動かないで」
「くっ……!」
「ラルフ!?」
いつの間にか引き離されていたラルフは、兵の一人に捕まってしまい、ヴィオラお姉様達の前に連れていかれていた――
「これは……どうやらこの屋敷を守る兵達ですね。先程の門番と、同じ装備をしております」
突然のことだというのに、ラルフはとても冷静に分析をしながら、私の壁になるように前に立ってくれた。その隣には、マーヴィン様もいてくれていた。
た、確かに言われてみれば、さっきの人達と同じ格好だ。突然のことでパニックになっていたせいで、全然気が付かなかったよ!
「何かあったら来ると、先程の兵が言っていたが……随分と物騒なお出ましだな。貴様ら、何が目的だ?」
「無駄ですわ。彼らには、何を言っても通じませんことよ」
あまりにも聞き覚えがあり、そして聞きたくもない声に応えるように、兵達が一斉に部屋の入口の前を開ける。すると、部屋の中に二人の女性が入ってきた。
「ヴィオラお姉様に……リンダ……!?」
「やっほーシエルお姉様! 久しぶりだね!」
「ふふっ……本当に生きているとはね」
不敵な笑みを浮かべるヴィオラお姉様に、楽しそうにケラケラと笑うリンダ。その姿は、私がマーチャント家を出るまで、嫌と言うほど見せられたものだった。
色々とあったせいで、家を出てかなりの年月が経ったように思えるけど、よく考えるとあまり月日は経っていないんだから、変わってないのも当然だよね。
「なぜあなた達がここに?」
「そんなの、招待されたからに決まってるじゃん! 普通に考えればわかるよね?」
「でも、会場には……」
「さっきまでは、ダニエル様の屋敷の方にいましたのよ。ああ、ここに誘導したのは、邪魔が入らないようにするためですわ。ダニエル様を使って、兵にあなた達をここに誘導するように仕向けましたの」
リンダはマーヴィン様のことをバカにしながら、招待状を取り出して私達に見せた。
招待されたとか、されてないとかなんて、この際どうでもいい。今知りたいのは、こんな状況下で、二人がここに来た理由についてだもん。
「どうして二人がここに来たの? どうして私達がパーティーに参加してるのを知ってたの?」
「焦らないで。ちょっとお話がしたくて、こうしてお邪魔させてもらったのよ」
お話? 今更ヴィオラお姉様とリンダと話したいことなんて無い……と言いたいところだけど、どう考えてもこの状況は二人が招いたことだろう。
そうと仮定するなら、どうやってこんなことを実現したのかとか、どうしてこんなことをしたのかとか、聞かなければならないことが沢山あるよね。
「話だと? ふん、こんなに圧倒的にそちらが有利な状況でする話など無い。さっさとこの兵を下がらせろ」
「あら、マーヴィン様は随分とご機嫌斜めですのね。申し訳ございませんが、あなたには全く用がありませんの。だから……」
ヴィオラお姉様が言葉を区切らせた瞬間、背中が一気に冷たくなった。
この嫌な感じ……なんだろう。凄く悪いことが起きそうな気がする。私のこういう勘って、結構当たるんだ。早く、ラルフとマーヴィン様に伝えないと!
「マーヴィン様、聞いてください。あなたは今後、私達の言う事だけを聞けばいいのです。そうすれば、あなたもあなたの家も、未来永劫繁栄の道を辿ることでしょう」
「急に何を……な、なんだ……あ、頭の中に何か入って……貴様、何をした!?」
マーヴィン様の前に立ったヴィオラお姉様は、フッと口角を上げてみせた。一方のマーヴィン様は、頭を抱えて苦しんでいる。
「あれあれー? なんか時間かかってない? もしかしてヴィオラお姉様ってば、また一人じゃダメな感じ?」
「またとは何ですの。私を愚弄する気ですの?」
「うわ~怖い怖い! ちょっと暇だし、あたしにもやらせてよ!」
そう言うと、今度はリンダがマーヴィン様の前に立つと、上目遣いでウィンクをした。
二人が一体何をしているのか、全然意味がわからない。でも、急にマーヴィン様が、苦しみだしたということだけはわかる。
「マーヴィン様!? どうしたんですか!?」
「シエル様、離れてくださいませ。何か様子がおかしい……我々も巻き込まれてしまうかもしれません!」
「でもっ!」
「大丈夫だよ。そんなに抵抗しなくても、別に食べちゃったりしないからさ! あ、気分次第では、夜は食べるかも? ねえマーヴィン様。あたしの言うことを聞いて、あたしを愛して。そうすれば、最高な一夜をあげるから!」
「ぐっ……あ、あぁ……!!」
先程よりも苦しむマーヴィン様は、手当たり次第に暴れまわる。しかし、周りの兵達は一切動揺せず、簡単にマーヴィン様の動きを止めてしまった。
「この……頭がかき混ぜられるような感覚……ボーっとした頭に、彼女達の声が心地いい……ヴィオラ様の言葉が、全て正しく聞こえる……それに、リンダ様が……リンダ様が欲しくてたまらない……なる、ほど……そういう、こと……か!!!!」
「ま、マーヴィン様!?」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
マーヴィン様は雄たけびを上げたと同時に、自らの拳を、自らの顔に目掛けて振り抜いた。殴った時に発生したメリッという音が、その威力の高さを物語っている。
その衝撃に、マーヴィン様は耐えられずに、その場で膝から崩れ落ちてしまった。
「マーヴィン様、しっかりしてください! どうして自分を……!」
「いきなり自分を殴り倒すとか、意味わかんないんだけどー? こんな人初めて見た! ちょーおもしろーい!」
「ふぅん。無理やり意識を断って、私達の支配から逃れたのね。随分思い切りがいい芸ですこと」
ヴィオラお姉様は、つまらさそうに舌打ちをした。
な、何がなんだかわからないけど、とにかくマーヴィン様が苦しみ出したのは、ヴィオラお姉様とリンダが原因だってことは、なんとなくわかったよ!
「なるそど。おそらくですが、なにか魔法をかけられていたのでしょう」
「ま、魔法!?」
「はい。その魔法から逃れるために、わざと自分の意識を断った……そう考えるのが妥当かと」
「それじゃあ、もしかしてこの人達も!」
「ええ。その魔法を受けてしまい、操り人形にされてしまったということでしょう。その魔法とは……あなたの魔法ですね」
ラルフの視線の先にいたのは、優雅に佇むヴィオラお姉様だった。
「残念ですが、半分正解ですわ」
「半分? どういうこと?」
「あたしの魔法も関係してるから、半分ってこと!」
「なるほど。お二人の魔法で、彼らを操っているのですね。いや……ダニエル様や、他の貴族達も手中に収めているんですね」
「ええ、そうよ。あなた達が生きてるという情報を手に入れてから、私はダニエルを操って招待状を出し、裏でコツコツと駒を増やしたの。全ては、この時の準備のために」
そうか、ダニエル様が急に結婚すると言い出したこととか、私やラルフの居場所を知っていたことは、そういう理由だったんだね。
「そうだわ、こうして話すのもこれが最後だろうから、教えてあげるわ。私の魔法は、私の言葉に信憑性を持たせて、それを信じ込ませることができるの」
「……??」
え、えっと……? 言っていることはもちろん理解しているよ? でも、それを魔法として落とし込めていないというか……どういうこと?
「なるほど。兵達は、あなたかダニエル様辺りから、指令が出たら従うように、それ以外は何も聞かないように仕向けたのですね」
「つまり……?」
「大雑把にお伝えするなら、洗脳魔法ということです」
洗脳魔法!? それって、さっき会場の外で、洗脳魔法のせいかもって話をしたばかりなのに! まさか本当にそうだったなんて!
「大体それであっているわ。私はこの魔法で商談を有利にしているのよ」
「まさか、最近の市場がおかしくなっているのは!」
「ええ、私の手腕ですわ」
ま、またよくわからなくなってきた……とりあえずヴィオラお姉様の魔法が、危ないものだって認識を持ってれば良い感じなのかな……?
「ドレスを探していた時、職人様が良い布が手に入らないと仰っておりましたよね?」
「うん……あっ!」
そっか! 布も含めて色々と買い占めて、それを高く売っているんだね! 契約も、魔法を使えば簡単にできるもんね! やっと理解できた!
「でも残念なことに、ヴィオラお姉様の魔法は、強い意志があると効きにくいんだよね~。最近も、そのせいで商談を失敗しそうになったんだよ」
「余計なことは言わなくていいのよ」
「きゃー怒らせちゃったー! お詫びに……あたしの魔法でお手伝いをしてあげる! みんな、それ行け~!」
リンダの号令で、ずっと石のようになっていた兵達が、私達に襲い掛かってきた。
「ついでに教えてあげる。あたしの魔法は、男どもを魅了して、強制的にあたしの虜にしていうことを聞かせられる、最高な魔法!」
「リンダの魔法も、洗脳魔法……!?」
「今までは男を無理やり惚れさせて、夜遊びをしていたんだよ! ヴィオラお姉様の魔法と合わせると、超強力な洗脳魔法になるってわけ。まああたしのは、男限定だけし、やたらと女に嫌われる効果もあるけど、女とかどうでもいいし!」
そ、揃いも揃って性格が悪い魔法すぎる……願いを叶えるラルフの魔法とは、全然違う。
「さあ、次の段階ですわ。奴らを捕まえなさい」
「ふざけたことを……シエル様は、必ず私がお守りする! はぁ!!」
ラルフは兵達の剣を狙い、的確に蹴り落としていく。
実はラルフは、足を使った格闘技が得意なの。まだマーチャント家にいた時に、見せてもらったことがあるから知っているんだ。
そして私だって、守られているばかりじゃない。
「ていっ! たぁ!!」
向かってきた兵に、パンチやキックを繰り出して対抗する。
これでも私も、ラルフほどではないけど戦える。まだマーチャント家にいた時に、嫌というほどリンダに付き合わされた武術訓練で、やられ役をやってるうちに、自然と動きが身に付いたんだ!
「あーらら。雑兵じゃダメかー。せっかく今日のために、コツコツ用意したのになぁ。ていうかさ、シエルお姉様のくせに結構動けてて生意気ー」
「所詮は捨て駒ですわ。適当に死ぬまで働かせましょう。ほら、本命はこっち……動かないで」
「くっ……!」
「ラルフ!?」
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