【完結】私を虐げる姉が今の婚約者はいらないと押し付けてきましたが、とても優しい殿方で幸せです 〜それはそれとして、家族に復讐はします〜

ゆうき

文字の大きさ
7 / 39

第七話 本当に恐ろしい方なのかしら……?

しおりを挟む
 先程すでに訪れていた自室に戻ると、まだお話したことが無い女性の使用人の方々が、部屋の中でお出迎えをしてくださいました。

「はじめまして、シエル様。私はエレンと申します。あなた様の生活のお手伝いをさせていただきます。よろしくお願いいたします」

 彼女達の中で、私とさほど歳が離れていなさそうなのに、一番落ち着きのありそうな雰囲気の女性が、とても丁寧にお辞儀をしました。

 とても美人なお方ですわ……藍色のショートカットがとても似合っておりますわ。それに身長も高くて、シュッとした藍色の瞳からは、不思議な暖かさを感じます。

「よろしくお願いいたします、エレン様」

「私のような一介の使用人に、ご丁寧な対応をしていただけるのは、大変光栄でございますが、私のことは、エレンとお呼びください」

「わかりましたわ、エレン」

 人様の事を呼び捨てにすることなんてないので、いざ実践するとなんだかムズムズします。

 実家にいる時は、仕えているはずの使用人が相手でも、なぜか様呼びを強要されておりましたからね。

「彼女達には、私の補佐をしてもらいます。ただいまこちらで、お食事の用意をしておりますので、その間に入浴とお着替えを済ませていただきます」

「入浴って……あなた方と?」

「はい。でないと、お手伝いが出来ませぬゆえ……」

 そ、そうでしたわ。貴族なら、普通は同性の使用人に体を洗ってもらったりしてもらうのは普通でしたわ。

 私はちょっと普通とは違うので、入浴はいつも一人、それも使用人が使う小さめの浴場でした。

 その後の食事も、いつも一人で……何をするにしても、私は一人でした。愛人の子として虐げられているのですから、これは当然のこととして、慣れてしまってます。

 だから、逆に普通の貴族のような対応を取っていただくと、動揺してしまうというわけです。

「……あ、でも……」

 冷静に考えると、私の体には、長い年月をかけてお父様達に付けられた無数の傷跡があります。これを見られてしまった結果、面倒事が起こって、この家に迷惑をかけてしまうのは、極力避けたいのが本音ですわ。

「お気持ちは嬉しいですが、やはり一人でお風呂はいただきますわ。着替えも、一人で出来ますわ」

「そういうわけにはまいりません。お手伝いをしないと、主様に叱られてしまいます」

「……俺が、どうかしたか?」

「ひゃっ!? い、いつの間に……ビックリしましたわ」

 どうやってエレンを説得しよう考えていたら、いつの間にか部屋の中に入ってたエヴァン様に驚いて、思わずその場でピョンッと飛んでしまいましたわ。恥ずかしい……。

「様子を見にきたら、声が聞こえてな。何か不都合でもあるのか? それとも、我々に何か不手際があったか? 我々は何も気にしないから、何でも言ってほしい」

「気にしない……」

「俺を信じろという方が無理かもしれないが、俺にはそれしか言えない」

「…………」

 エヴァン様のまっすぐな瞳。とても社交界で恐ろしいという噂が流れているお方には見えません。

 そんな彼の目を見て、このお方はきっと大丈夫だと思い、私は腕をまくって、傷の一部をお見せしました。

「これは……」

「このような傷が、至る所にあるので、遠慮した次第でございます」

 見た目は酷いかもしれませんが、私には聖女の力があるので、痛み自体はありません。
 しかし、傷跡だけはどうしても消えないものもあって、こうして残ってしまっておりますの。

「……なるほど。この傷の件で、俺が君や家に問い詰めて、面倒ごとになるのを避けたかったのか」

「仰る通りでございますわ。実家の方は私の知ったことではありませんが、この家にはご迷惑をおかけしたくなくて」

「……大丈夫。君が望まない限り、その傷のことを、君の実家に聞いたりはしないし、大事にもしない。話したくなったら、いつでも話してくれ。さあ、ゆっくり湯に浸かって疲れを取るといい」

 エヴァン様に送り出される形で、女性の使用人と一緒に浴場へと向かいはじめました。

 さっきもそうでしたが、一体何が彼をああさせているのでしょうか? 私にはよくわかりませんわ……。





「あの腕……なんだか骨と皮だけだったような……シエル、ちゃんと食事を食べているのか……? あの傷から察するに……そういうことか。コックには栄養価の高いものを追加で用意するようにお願いしよう。あと服は……とりあえず今日の服は、一番肌に優しいものを用意して、他にも肌に優しい生地の物を増やしておいた方がいいか……」


 ****


「はぁ……気持ちいいですわ……」

 エレンを中心に、使用人の女性に体を綺麗にしてもらった後、私は大浴場で足を延ばしてリラックスしていました。

 体を綺麗にする際に、私の数々の怪我のことを考慮して、柔らかいスポンジを使ってくれたり、低刺激で良い匂いのするボディソープやシャンプーを使ってくれたりと、まさに至れり尽くせりでしたわ。

「ご満足いただけたようでなによりです。主様の命により、シエル様に少しでもリラックスしてもらうために、入浴剤やシャンプーといった品にリラックス効果がある物を選ばせていただきました」

 まさか、そこまでしてくれるだなんて……一応、私はお姉様の身代わりで婚約させられた人間ですのよ? どう考えても、こんな歓迎を受けられる立場じゃないと思うのだけど……。

「シエル様、こちらでマッサージをさせていただきますので、うつ伏せで寝てください」

「ま、マッサージまでしてくれるのですか!?」

「はい。主様が用意した。とてもリラックスできる香りと効能のオイルがございます」

 さすがにそこまでしてもらうのは申し訳ないと言おうとしましたが、あれよあれよとマッサージ用のバスローブを着せられて、うつ伏せで寝かせられてしまいました。

「痛かったら仰ってください」

「は、はい」

 痛いだなんてとんでもない。エレンのマッサージはお世辞抜きで絶品でした。そのあまりにも気持ちいいマッサージは、すぐに睡魔を呼び寄せてしまうくらいでしたわ。

「はふぅ……」

「シエル様、遠慮せずにお休みになられても構いませんよ。終わり次第、起こしてさしあげますから」

「はい……ありがとう、ございます……」

 この場で眠っても良いんだと思ったら、更に睡魔が強くなって……私はいつぶりかわからないくらい、安心しながら眠りにつきました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。 侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。 学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。

【完結】転生の次は召喚ですか? 私は聖女なんかじゃありません。いい加減にして下さい!

金峯蓮華
恋愛
「聖女だ! 聖女様だ!」 「成功だ! 召喚は成功したぞ!」 聖女? 召喚? 何のことだ。私はスーパーで閉店時間の寸前に値引きした食料品を買おうとしていたのよ。 あっ、そうか、あの魔法陣……。 まさか私、召喚されたの? 突然、召喚され、見知らぬ世界に連れて行かれたようだ。 まったく。転生の次は召喚? 私には前世の記憶があった。どこかの国の公爵令嬢だった記憶だ。 また、同じような世界に来たとは。 聖女として召喚されたからには、何か仕事があるのだろう。さっさと済ませ早く元の世界に戻りたい。 こんな理不尽許してなるものか。 私は元の世界に帰るぞ!! さて、愛梨は元の世界に戻れるのでしょうか? 作者独自のファンタジーの世界が舞台です。 緩いご都合主義なお話です。 誤字脱字多いです。 大きな気持ちで教えてもらえると助かります。 R15は保険です。

〖完結〗醜い聖女は婚約破棄され妹に婚約者を奪われました。美しさを取り戻してもいいですか?

藍川みいな
恋愛
聖女の力が強い家系、ミラー伯爵家長女として生まれたセリーナ。 セリーナは幼少の頃に魔女によって、容姿が醜くなる呪いをかけられていた。 あまりの醜さに婚約者はセリーナとの婚約を破棄し、妹ケイトリンと婚約するという…。 呪い…解いてもいいよね?

[完結]だってあなたが望んだことでしょう?

青空一夏
恋愛
マールバラ王国には王家の血をひくオルグレーン公爵家の二人の姉妹がいる。幼いころから、妹マデリーンは姉アンジェリーナのドレスにわざとジュースをこぼして汚したり、意地悪をされたと嘘をついて両親に小言を言わせて楽しんでいた。 アンジェリーナの生真面目な性格をけなし、勤勉で努力家な姉を本の虫とからかう。妹は金髪碧眼の愛らしい容姿。天使のような無邪気な微笑みで親を味方につけるのが得意だった。姉は栗色の髪と緑の瞳で一見すると妹よりは派手ではないが清楚で繊細な美しさをもち、知性あふれる美貌だ。 やがて、マールバラ王国の王太子妃に二人が候補にあがり、天使のような愛らしい自分がふさわしいと、妹は自分がなると主張。しかし、膨大な王太子妃教育に我慢ができず、姉に代わってと頼むのだがーー

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

処理中です...