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第一話 聖女の帰還と婚約破棄
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「やっと帰ってきた……私の故郷に……!」
体も服もボロボロになりながらも、私の前に広がる町並みや、大きなお城の姿を見て、私は目を輝かせていました。
私の名前はシエル・マリーヌ。こんなボロボロの姿ではわからないと思うけど……実は聖女です。
聖女と言うのは、魔法で人の怪我や病気を治してあげる人を差します。聖女は、国から回復魔法が使える人を任命して派遣し、各地を回って困ってる人を助けるお仕事です。
他にも数は少ないですが、回復術師という方もいますが、こちらは各地で病院を開いていたり、身分の高い方に仕えていたりします。
巡礼の旅では、沢山の出会いと別れがありました。父を治してほしいと願う小さな女の子、母を治してくれと頼み込んできた、偉い人の息子さん。あとはペットの怪我を治してなんていうのもありましたね。
色んな出会いと別れを経験したそのお仕事が、六年かけてようやく終わりました。いつの間にか幼かった私も、十六歳になっていました。
旅は過酷なものでした。野営は当たり前、何も食べられない日もありましたし、何度死にかけたかわかりません。
何度も逃げ出したくなるほどつらかったけど、出会いと別れは素敵なものでした。それに、私にはどうしても巡礼をやり遂げなければならない理由がありました。
それは……お母さんを助ける為です。
実は……私の家は貧乏なんです。私のお母さんは病気で……そのお薬代でお金はほとんど消えてしまい、満足にごはんなんて食べられませんでした。
そんな時、お母さんを治せる力が欲しいと思ったら、私に回復魔法の力が目覚めました。
しかし……治せませんでした。会得したての私では、まだ魔法のコントロールがうまくいかなかったんです。
症状を抑えるお薬代でいっぱいいっぱいの我が家で、回復魔法が使える人を呼ぼうにも、そんな大金は無い。そんな我が家に、神様がくださった力があるのに、完全に宝の持ち腐れ……私は自分の力を呪いました。
それでも何とか治して、二人で幸せに暮らしていきたいと思っていた時……私はとある方にお城へと招かれました。
彼の名は、アンドレ・プロスペリテ様……この国の王子様です。彼は私にこう言いました。
この国の聖女として、各地を巡礼してほしい、と。
その条件として、私がいない間のお母さんへの援助、巡礼終了後に、自分と結婚しても良いという話でした。この事は、彼の父である国王様と相談した結果、私に持ちかけたと仰ってました。
聖女の話は、私には魅力的でした。それに、ずっと髪のせいで気持ち悪がられていた私が、誰かの役に立てるのが嬉しかった。
……彼の事は好きではありませんが、結婚すればきっとお金の面での心配が無くなります。更に言うと、巡礼の中で回復魔法が上手になって、お母さんを治せるかもしれない!
そう思った私は、すぐに行く事を決意しました。そして、出発前にある程度の振る舞い方と回復魔法の練習をお城の方にしてもらってから、旅立ちました。
お母さんと離れ離れになるのは寂しかったけど、手紙のやり取りをしていたので、何とか耐えられたんです。
――色々ありましたが、とにかくこうして巡礼を終えて帰ってこれたんです。これから待っているのは、お母さんとの裕福で幸せな日常です。嬉しくて、今にも小躍りしてしまいそう。
「私の力も上手にコントロールできるようになったし……きっとお母さんを治療できますよね……」
「シエルさん。まずはお城でアンドレ様にご報告をお願いします!」
「あ、はい!」
この六年間、私の面倒を見てくれて、護衛もしてくれた、綺麗な女性の案内の元、私はお城の謁見の間へと赴きました。
この部屋に来るのも久しぶりです。六年経っても、部屋の内装は特に変わってないせいか、懐かしさで少し涙ぐみそうです。
「ようやく帰ったか」
ふんぞり返るように座っていた一人の男性が、フンッと鼻を鳴らしながら言葉を漏らしました。
彼がアンドレ・プロスペリテ様。茶色のサラサラな髪と精巧なお顔、そしてまるでそこに夜が広がってると思わせる真っ黒な瞳が特徴的な男性です。
「シエル、ただいま戻りました」
「ふん、くだらん挨拶はいらん。それで、ちゃんと巡礼を済ませたのか?」
「はい、もちろんです。事前に仰られた通り、各地を回ってきました」
「そうか。とりあえずご苦労とだけ言っておこう。オレ様からこんな言葉が聞けるなんて、本当に幸せ者だな」
「は、はあ……ありがとうございます」
相変わらず態度がよろしくないお方です。昔からではありますが、この六年でかなり悪化してしまったようです。
私としては、昔から知っていたので何とも思いませんが、一国の王子様がこんな態度を取っていたら、普通の人は驚きそうですね。
「それで、その……無事に巡礼を終えたので……」
「お前との婚約と、お前の母の生活の援助の件だったな」
「は、はい」
「その件だが、全て無かった事にした」
「…………え?」
「言葉の意味が分からないか? 婚約は破棄したし、お前の母の援助もしないと言っている」
いえ、言っている意味自体は分かります。でも、それでは私が六年前に聞いた話と全く違うじゃないですか!
「そもそも、六年前の約束なんて守るつもりなんて全くなかったんだがな」
「そ、そんな!? 私を騙したんですか!?」
「平たく言えばその通りだ。巡礼という過酷な旅なんて行きたがる物好きは、この城にはいないからな。利用しやすいお前を唆したに過ぎない。回復魔法さえ使えりゃ誰でも良いしな」
「な、なんて酷い事を……!」
あまりにも酷いアンドレ様は、突然俯きながら体を小さく揺らし始めました。それから間もなく、大きな声で笑い始めました。
「てめぇのような気持ち悪い人間と、結婚などするはずもねえだろバーカ! なんだその真っ白な髪! 気持ち悪いんだよ!」
「っ……!」
「それに、仮にお前との約束を守ったとしても、死んでる人間の援助なんてどうやってするんだ?」
「し、死んで……る……?」
「そうかお前は知らないんだったな! お前の母親はとっくに死んでるんだよ!」
こ、この人は一体何を言っているんでしょうか? お母さんが死んでるなんて……冗談にしては笑えなさすぎます!
「そんなわけありません! お母さんは確かに病弱でしたけど……あなた達が私の代わりに……!」
「そんなどうでもいい女の為に、人員と金を割くわけねえだろ。あんな話を聞いた後に、どうして面倒をみていたなんて思える?」
「うっ……で、でもずっと手紙のやり取りを……!」
「それが本人が書いてた証拠があるのか?」
証拠……うぅ、認めたくないですが……確かにその証拠はありません。
「そんな……どうして、そんな事を……」
「お前の根底にあった目的は、母親を救う事だろ? そんなお前に母親が死にましたーなんて愉快な報告をして、巡礼をやめて逃げられたら困るからな。さすがオレ様は賢いな!」
私を心の底から馬鹿にするようにニヤニヤするアンドレ様。それとは対照的に、私は全身から血の気が引くような感覚を覚えながら、その場にペタンと座り込んでしまいました。
「ククッ……ギャハハハハ! 今思い出しても笑えるぜ! もうこの世にいない母親がまだ生きてると思い込み、頻繁に大量の手紙を送ってたって思うと、面白くてしょうがねえ! 本当に滑稽だよお前!」
「ぐすっ……そんなの、信じません……お、お母さんは……今もお家で……私におかえりって……」
「いねえって言ってんだろ! おい、この用済みの女を城の外に追い出せ! そして二度と城に入れるな!」
「かしこまりました!」
座り込む私を無理やり立たせた兵士様達は、そのまま私を歩かせて城の外に放り出しました。
いまだに信じられない……お母さんが亡くなってるなんて。早く家に帰って真相を確かめないと!
「お母さん……!!」
長旅で疲れているのなんて全て忘れて、私は家に向かって走り出しました。私の家はお城のある城下町から離れた所にあるスラム街だから、ここからは遠いけど……そんなの関係ありません。
「はぁ……はぁ……信じないんだから……きっとアンドレ様の悪い冗談だ……!」
今の私には、祈りながら走る事しか出来ません。とにかく走って、走って……途中で転んじゃったりしましたが、私はなんとかスラムへと到着しました。
六年前と全然変わらないスラム街。街に住んでる人に生気は感じられず、まさに死んだ街と言うのがしっくりきます。
そんな中を走って……ようやく私は家に着きました。
「……そん、な……」
家に帰ってきた私を、お母さんは出迎えてくれませんでした。それどころか……そこには……。
「なにも、ない……?」
そう、家があった所は……完全に更地になっていたのでした……。
体も服もボロボロになりながらも、私の前に広がる町並みや、大きなお城の姿を見て、私は目を輝かせていました。
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他にも数は少ないですが、回復術師という方もいますが、こちらは各地で病院を開いていたり、身分の高い方に仕えていたりします。
巡礼の旅では、沢山の出会いと別れがありました。父を治してほしいと願う小さな女の子、母を治してくれと頼み込んできた、偉い人の息子さん。あとはペットの怪我を治してなんていうのもありましたね。
色んな出会いと別れを経験したそのお仕事が、六年かけてようやく終わりました。いつの間にか幼かった私も、十六歳になっていました。
旅は過酷なものでした。野営は当たり前、何も食べられない日もありましたし、何度死にかけたかわかりません。
何度も逃げ出したくなるほどつらかったけど、出会いと別れは素敵なものでした。それに、私にはどうしても巡礼をやり遂げなければならない理由がありました。
それは……お母さんを助ける為です。
実は……私の家は貧乏なんです。私のお母さんは病気で……そのお薬代でお金はほとんど消えてしまい、満足にごはんなんて食べられませんでした。
そんな時、お母さんを治せる力が欲しいと思ったら、私に回復魔法の力が目覚めました。
しかし……治せませんでした。会得したての私では、まだ魔法のコントロールがうまくいかなかったんです。
症状を抑えるお薬代でいっぱいいっぱいの我が家で、回復魔法が使える人を呼ぼうにも、そんな大金は無い。そんな我が家に、神様がくださった力があるのに、完全に宝の持ち腐れ……私は自分の力を呪いました。
それでも何とか治して、二人で幸せに暮らしていきたいと思っていた時……私はとある方にお城へと招かれました。
彼の名は、アンドレ・プロスペリテ様……この国の王子様です。彼は私にこう言いました。
この国の聖女として、各地を巡礼してほしい、と。
その条件として、私がいない間のお母さんへの援助、巡礼終了後に、自分と結婚しても良いという話でした。この事は、彼の父である国王様と相談した結果、私に持ちかけたと仰ってました。
聖女の話は、私には魅力的でした。それに、ずっと髪のせいで気持ち悪がられていた私が、誰かの役に立てるのが嬉しかった。
……彼の事は好きではありませんが、結婚すればきっとお金の面での心配が無くなります。更に言うと、巡礼の中で回復魔法が上手になって、お母さんを治せるかもしれない!
そう思った私は、すぐに行く事を決意しました。そして、出発前にある程度の振る舞い方と回復魔法の練習をお城の方にしてもらってから、旅立ちました。
お母さんと離れ離れになるのは寂しかったけど、手紙のやり取りをしていたので、何とか耐えられたんです。
――色々ありましたが、とにかくこうして巡礼を終えて帰ってこれたんです。これから待っているのは、お母さんとの裕福で幸せな日常です。嬉しくて、今にも小躍りしてしまいそう。
「私の力も上手にコントロールできるようになったし……きっとお母さんを治療できますよね……」
「シエルさん。まずはお城でアンドレ様にご報告をお願いします!」
「あ、はい!」
この六年間、私の面倒を見てくれて、護衛もしてくれた、綺麗な女性の案内の元、私はお城の謁見の間へと赴きました。
この部屋に来るのも久しぶりです。六年経っても、部屋の内装は特に変わってないせいか、懐かしさで少し涙ぐみそうです。
「ようやく帰ったか」
ふんぞり返るように座っていた一人の男性が、フンッと鼻を鳴らしながら言葉を漏らしました。
彼がアンドレ・プロスペリテ様。茶色のサラサラな髪と精巧なお顔、そしてまるでそこに夜が広がってると思わせる真っ黒な瞳が特徴的な男性です。
「シエル、ただいま戻りました」
「ふん、くだらん挨拶はいらん。それで、ちゃんと巡礼を済ませたのか?」
「はい、もちろんです。事前に仰られた通り、各地を回ってきました」
「そうか。とりあえずご苦労とだけ言っておこう。オレ様からこんな言葉が聞けるなんて、本当に幸せ者だな」
「は、はあ……ありがとうございます」
相変わらず態度がよろしくないお方です。昔からではありますが、この六年でかなり悪化してしまったようです。
私としては、昔から知っていたので何とも思いませんが、一国の王子様がこんな態度を取っていたら、普通の人は驚きそうですね。
「それで、その……無事に巡礼を終えたので……」
「お前との婚約と、お前の母の生活の援助の件だったな」
「は、はい」
「その件だが、全て無かった事にした」
「…………え?」
「言葉の意味が分からないか? 婚約は破棄したし、お前の母の援助もしないと言っている」
いえ、言っている意味自体は分かります。でも、それでは私が六年前に聞いた話と全く違うじゃないですか!
「そもそも、六年前の約束なんて守るつもりなんて全くなかったんだがな」
「そ、そんな!? 私を騙したんですか!?」
「平たく言えばその通りだ。巡礼という過酷な旅なんて行きたがる物好きは、この城にはいないからな。利用しやすいお前を唆したに過ぎない。回復魔法さえ使えりゃ誰でも良いしな」
「な、なんて酷い事を……!」
あまりにも酷いアンドレ様は、突然俯きながら体を小さく揺らし始めました。それから間もなく、大きな声で笑い始めました。
「てめぇのような気持ち悪い人間と、結婚などするはずもねえだろバーカ! なんだその真っ白な髪! 気持ち悪いんだよ!」
「っ……!」
「それに、仮にお前との約束を守ったとしても、死んでる人間の援助なんてどうやってするんだ?」
「し、死んで……る……?」
「そうかお前は知らないんだったな! お前の母親はとっくに死んでるんだよ!」
こ、この人は一体何を言っているんでしょうか? お母さんが死んでるなんて……冗談にしては笑えなさすぎます!
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「そんな……どうして、そんな事を……」
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「ぐすっ……そんなの、信じません……お、お母さんは……今もお家で……私におかえりって……」
「いねえって言ってんだろ! おい、この用済みの女を城の外に追い出せ! そして二度と城に入れるな!」
「かしこまりました!」
座り込む私を無理やり立たせた兵士様達は、そのまま私を歩かせて城の外に放り出しました。
いまだに信じられない……お母さんが亡くなってるなんて。早く家に帰って真相を確かめないと!
「お母さん……!!」
長旅で疲れているのなんて全て忘れて、私は家に向かって走り出しました。私の家はお城のある城下町から離れた所にあるスラム街だから、ここからは遠いけど……そんなの関係ありません。
「はぁ……はぁ……信じないんだから……きっとアンドレ様の悪い冗談だ……!」
今の私には、祈りながら走る事しか出来ません。とにかく走って、走って……途中で転んじゃったりしましたが、私はなんとかスラムへと到着しました。
六年前と全然変わらないスラム街。街に住んでる人に生気は感じられず、まさに死んだ街と言うのがしっくりきます。
そんな中を走って……ようやく私は家に着きました。
「……そん、な……」
家に帰ってきた私を、お母さんは出迎えてくれませんでした。それどころか……そこには……。
「なにも、ない……?」
そう、家があった所は……完全に更地になっていたのでした……。
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