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第二十二話 剣聖と賢者
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「おやおや、こんな所にあのジーク様がいるなんて、ビックリしたものだ!」
私の試験の時に補佐をしていた男子生徒が、大げさに驚きながら、一歩前に歩み寄ってきました。それを見越していたのか、ジーク様はすぐに私の前に立って守ってくださいました。
「俺達はこれから帰る。どけ」
「え~? 私達、せっかくだから訓練したいのよ。そこの聖女様と!」
「……え、私??」
えっと、どういう事でしょう? 私なんかと訓練しても、何のお役にも立てないと思うんですけど……?
「ほら、傷を治せる魔法が使えるんでしょ? それなら的当てに最適じゃん!」
「……貴様、シエルを的にするつもりか!?」
「ピンポーン! 怪我しても治せばいいし、いけるでしょ! もちろん殺さない程度に手加減してあげるし?」
「ひいっ!?」
その場にいた男子生徒二人、そして女子生徒三人――計五人が私の方を見ながら、不敵な笑みを浮かべた。
この人達は、私に恥をかかされたと思い込んでる、もしくは私がベルモンド兄弟を奪ったと思い込んでる……共通の敵を排除しようとしてるんですね……こ、怖い……。
「それをよくも俺の前で言えたものだ。俺が許可すると思ってるのか?」
「別に許可するなんて思ってないさ。だから……ジーク・ベルモンド。俺達と勝負しろ。俺達が勝ったら、聖女を使わせてもらう」
「負けたら?」
「もうその女に絡まないでやるよ」
「いいだろう。そのねじ曲がった根性、叩き直してやる。対人用の大広間の部屋を貸してほしい」
「かしこまりました。こちらをどうぞ」
ジーク様が代表して、受付の方から石を貰います。先程とは番号が違う以外は、特に変化があるようには見えませんね……。
「俺に斬られるやつは石に触れ」
「前々からその態度、気に入らなかったんだ。その自信、へし折ってやる……」
「私の凄いところを見せて、ジーク様に認めてもらうんだから!」
「全員触ったな。起動」
私以外の人が触り終えてから、ジーク様の掛け声でまた消えてしまいました。
あ、あれ? 私……これからどうすればいいのでしょうか!? まさかここでボーっと待ってる事しか出来ないのでしょうか!?
「そこの方、目の前の大きな石に、番号が書いてあるでしょう? さっき彼らに渡した番号を触ると、中の状況がその大きな石に映されますよ」
「本当ですか!?」
急いで大きな石に書いてある番号を触れる、そこは空っぽの部屋でした。
あ、あれ……どうやら間違えてしまったようです……落ち着いて私。さっきジーク様の持ってた石の番号は……これだ!
「あ、映りました!」
落ち着いて正しい番号に触れると、そこにはジーク様達の姿がありました。そこでは、皆様がそれぞれの武器を持ち、静かに佇んでいました。
うぅ、こんな戦いを間近で見る日が来るなんて思ってもみませんでした……緊張でどうにかなってしまいそうです。どうか無事に帰ってきますように……。
『相手はあのジーク・ベルモンドだが、こっちは五人! 囲んでしまえば勝てない相手じゃない!』
『……舐められたものだ。来い……全て斬る』
ジーク様が剣を構えると、男子生徒二人がそれぞれ剣を振りかざして突撃しました。それに続くように、後ろに下がった女子生徒達が、それぞれ炎や岩を飛ばして援護します。
ああ、危ないジーク様! 避けてくださ――駄目、見ていられません。そう思いながら目を閉じると、ガキンッ!! と、金属がぶつかるような音がしました。
「ジーク様……!?」
恐る恐る目を開けると、ジーク様に突撃した二人が吹き飛ばされ、炎や岩は細かい粒子となって、ジーク様の周りをフワフワと浮かんでいました。
えっと……わ、私が見ていない間に何が起こったのでしょうか? ジーク様が魔法を使って防いだのでしょうか? なんにせよ、怪我が無くて何よりです。いくら私が治せるからといっても、痛い思いはしてほしくないので……。
『くそ、死角から魔法で攻めたのに!』
『その程度の戦術で……俺に勝つつもりか?』
ジーク様は小さく息を漏らしてから、目にも止まらぬ速さで男子生徒達に接近すると、そのまま剣を振り抜き、持っていた武器を弾き飛ばしてしまいました。
そして、そのままの勢いで回し蹴りを放ち、二人をその場で倒しました。
凄い……! ジェニエス学園にいる時に、強いと噂には聞いていましたが、あんなに素早く、的確に攻撃が出来るなんて……!
『はわぁ……ジーク様、素敵……じゃないわ! 私達も攻撃するわよ!』
ジーク様の華麗な動きに見惚れていた女子生徒達は、武器を掲げてみせると、先程を炎と岩が周りに生成されました。
『何をしても関係ない……斬る』
先程と同じように、素早い動きで接近します。しかし、ジーク様と彼女達の間に大きな岩の壁が地面から突き出るように生み出されてしまい、それ以上近づく事が出来ません。
その隙に、彼女達は先程使った魔法を、壁の後ろから放ちます。丁度ジーク様の位置からは彼女達は見えません……あれは当た――え?
「うそっ……全部、斬った?」
ジーク様は文字通り、自分に向かってきた魔法を全て斬り落としました。まるで踊るように、一つも残らず斬るその姿には、もはや芸術すら感じてしまいます。
「す、すげえ……さすが剣聖と謡われる方だぜ……」
「きゃあ!? い、いつの間に……?
「ああ、ごめんごめん! ついさっき剣の練習を終えて帰ってきた、通りすがりの者さ」
「は、はあ……練習、お疲れさまでした」
「ありがとう!」
突然隣に現れた男性は、にこやかに笑ってから、大きな石を一緒に眺め始めました。丁度そこでは、ジーク様が岩の後ろにいた女子生徒達の武器を弾き飛ばし、戦意を喪失させたところでした。
「ジーク様、凄い……!」
「だよなぁ! さすが剣聖だぜ!」
「剣聖?」
「知らないのか……って、よく見たらその風貌……噂の転入生か。それじゃ知らないのも無理はない。ベルモンド家の兄弟は、学園でも最強の二人なんだ。剣だけで全てをひれ伏せさせる……『剣聖』ジーク・ベルモンド。そして魔法を極め、本気を出せばあらゆるものを氷像に変えてしまうほどの魔力の持ち主……『賢者』クリス・ベルモンドだ!」
「な、なるほど」
別名みたいな部分が、ちょっと子供が考えたみたいな名前ですけど、お二人が凄い人というのと、ジーク様のあの鍛え抜かれた体の理由がわかりました。そんな人達がいるベルモンド家は、今後も安泰でしょう。
……あれ? 元々私は恩返しをするつもりでしたが……こんな凄い人達相手に返せる事なんてあるのでしょうか? 私がやる事なんて、たかが知れてるような……??
「しかも、あの人には全く魔法の才能が無い。それでも諦めずに剣の道を究めた凄い人なんだ」
魔法が使えない!? 確かにジーク様が魔法を使ってるのを見た事はありませんけど……本人から聞いたことが無かったので、全然知りませんでした。
「俺もあまり魔法が得意じゃないけど、あの人みたいに頑張れば、いつかはあの人みたいになれるって信じて、毎日頑張っているんだ」
「そうなんですね。きっとなれますよ! 私、陰ながら応援してます!」
「ああ、ありがとう! おっと、そろそろ帰ってくるようだ。それじゃ俺はこの辺で」
彼は小さく手を振りながら建物を後にしました。それと入れ替わるように、ジーク様達が訓練場から帰ってきました。
「ジーク様! お怪我はありませんか!?」
「問題ない。心配してくれて……その、感謝する」
「心配しますよ! 最初緊張で倒れるかと思ってたんですよ! でも……無事でよかったです……」
どうやら、本当に怪我はされていないようです。勝負の時間は短かったとはいえ、戦った事には違いないのに……ジーク様って、本当に凄すぎて、ドキドキしてしまいます……。
「くっそぉ……五人がかりでも勝てないなんて……」
「貴様らが何人束になっても、俺には勝てない。わかったら……さっさと帰れ」
「ふ、ふんっ! いつかは私達の魅力をジーク様に伝えてあげる!」
物語に出てくる敵役が言うような捨て台詞を残して、彼らはそそくさと建物から出ていきました。これで少しは懲りてくれるといいのですが……。
「ジーク様、あんな煽るような事を言わなくても……」
「ああでも言って牽制しておかないと……また調子に乗るかもしれないだろ」
「そ、そういうものなんでしょうか?」
「そういうものだ。さて、変な邪魔が入ったが……今度こそ帰るとしよう。家で兄上を出迎えるのだろう?」
「そうでした! 早く帰りましょう! あっ……歩けそうですか? 疲れてないですか? 駄目そうなら私が治しますよ!」
「問題ない。あの程度……兄上と訓練をしてる時に比べれば可愛いものだ」
そう言いながら、ジーク様は乏しい表情のまま、小さく溜息を漏らしました。
二人の訓練って、そんなに大変なんでしょうか……? ジェニエス学園のツートップと言われるくらいですし……うん、私には想像もできません!
私の試験の時に補佐をしていた男子生徒が、大げさに驚きながら、一歩前に歩み寄ってきました。それを見越していたのか、ジーク様はすぐに私の前に立って守ってくださいました。
「俺達はこれから帰る。どけ」
「え~? 私達、せっかくだから訓練したいのよ。そこの聖女様と!」
「……え、私??」
えっと、どういう事でしょう? 私なんかと訓練しても、何のお役にも立てないと思うんですけど……?
「ほら、傷を治せる魔法が使えるんでしょ? それなら的当てに最適じゃん!」
「……貴様、シエルを的にするつもりか!?」
「ピンポーン! 怪我しても治せばいいし、いけるでしょ! もちろん殺さない程度に手加減してあげるし?」
「ひいっ!?」
その場にいた男子生徒二人、そして女子生徒三人――計五人が私の方を見ながら、不敵な笑みを浮かべた。
この人達は、私に恥をかかされたと思い込んでる、もしくは私がベルモンド兄弟を奪ったと思い込んでる……共通の敵を排除しようとしてるんですね……こ、怖い……。
「それをよくも俺の前で言えたものだ。俺が許可すると思ってるのか?」
「別に許可するなんて思ってないさ。だから……ジーク・ベルモンド。俺達と勝負しろ。俺達が勝ったら、聖女を使わせてもらう」
「負けたら?」
「もうその女に絡まないでやるよ」
「いいだろう。そのねじ曲がった根性、叩き直してやる。対人用の大広間の部屋を貸してほしい」
「かしこまりました。こちらをどうぞ」
ジーク様が代表して、受付の方から石を貰います。先程とは番号が違う以外は、特に変化があるようには見えませんね……。
「俺に斬られるやつは石に触れ」
「前々からその態度、気に入らなかったんだ。その自信、へし折ってやる……」
「私の凄いところを見せて、ジーク様に認めてもらうんだから!」
「全員触ったな。起動」
私以外の人が触り終えてから、ジーク様の掛け声でまた消えてしまいました。
あ、あれ? 私……これからどうすればいいのでしょうか!? まさかここでボーっと待ってる事しか出来ないのでしょうか!?
「そこの方、目の前の大きな石に、番号が書いてあるでしょう? さっき彼らに渡した番号を触ると、中の状況がその大きな石に映されますよ」
「本当ですか!?」
急いで大きな石に書いてある番号を触れる、そこは空っぽの部屋でした。
あ、あれ……どうやら間違えてしまったようです……落ち着いて私。さっきジーク様の持ってた石の番号は……これだ!
「あ、映りました!」
落ち着いて正しい番号に触れると、そこにはジーク様達の姿がありました。そこでは、皆様がそれぞれの武器を持ち、静かに佇んでいました。
うぅ、こんな戦いを間近で見る日が来るなんて思ってもみませんでした……緊張でどうにかなってしまいそうです。どうか無事に帰ってきますように……。
『相手はあのジーク・ベルモンドだが、こっちは五人! 囲んでしまえば勝てない相手じゃない!』
『……舐められたものだ。来い……全て斬る』
ジーク様が剣を構えると、男子生徒二人がそれぞれ剣を振りかざして突撃しました。それに続くように、後ろに下がった女子生徒達が、それぞれ炎や岩を飛ばして援護します。
ああ、危ないジーク様! 避けてくださ――駄目、見ていられません。そう思いながら目を閉じると、ガキンッ!! と、金属がぶつかるような音がしました。
「ジーク様……!?」
恐る恐る目を開けると、ジーク様に突撃した二人が吹き飛ばされ、炎や岩は細かい粒子となって、ジーク様の周りをフワフワと浮かんでいました。
えっと……わ、私が見ていない間に何が起こったのでしょうか? ジーク様が魔法を使って防いだのでしょうか? なんにせよ、怪我が無くて何よりです。いくら私が治せるからといっても、痛い思いはしてほしくないので……。
『くそ、死角から魔法で攻めたのに!』
『その程度の戦術で……俺に勝つつもりか?』
ジーク様は小さく息を漏らしてから、目にも止まらぬ速さで男子生徒達に接近すると、そのまま剣を振り抜き、持っていた武器を弾き飛ばしてしまいました。
そして、そのままの勢いで回し蹴りを放ち、二人をその場で倒しました。
凄い……! ジェニエス学園にいる時に、強いと噂には聞いていましたが、あんなに素早く、的確に攻撃が出来るなんて……!
『はわぁ……ジーク様、素敵……じゃないわ! 私達も攻撃するわよ!』
ジーク様の華麗な動きに見惚れていた女子生徒達は、武器を掲げてみせると、先程を炎と岩が周りに生成されました。
『何をしても関係ない……斬る』
先程と同じように、素早い動きで接近します。しかし、ジーク様と彼女達の間に大きな岩の壁が地面から突き出るように生み出されてしまい、それ以上近づく事が出来ません。
その隙に、彼女達は先程使った魔法を、壁の後ろから放ちます。丁度ジーク様の位置からは彼女達は見えません……あれは当た――え?
「うそっ……全部、斬った?」
ジーク様は文字通り、自分に向かってきた魔法を全て斬り落としました。まるで踊るように、一つも残らず斬るその姿には、もはや芸術すら感じてしまいます。
「す、すげえ……さすが剣聖と謡われる方だぜ……」
「きゃあ!? い、いつの間に……?
「ああ、ごめんごめん! ついさっき剣の練習を終えて帰ってきた、通りすがりの者さ」
「は、はあ……練習、お疲れさまでした」
「ありがとう!」
突然隣に現れた男性は、にこやかに笑ってから、大きな石を一緒に眺め始めました。丁度そこでは、ジーク様が岩の後ろにいた女子生徒達の武器を弾き飛ばし、戦意を喪失させたところでした。
「ジーク様、凄い……!」
「だよなぁ! さすが剣聖だぜ!」
「剣聖?」
「知らないのか……って、よく見たらその風貌……噂の転入生か。それじゃ知らないのも無理はない。ベルモンド家の兄弟は、学園でも最強の二人なんだ。剣だけで全てをひれ伏せさせる……『剣聖』ジーク・ベルモンド。そして魔法を極め、本気を出せばあらゆるものを氷像に変えてしまうほどの魔力の持ち主……『賢者』クリス・ベルモンドだ!」
「な、なるほど」
別名みたいな部分が、ちょっと子供が考えたみたいな名前ですけど、お二人が凄い人というのと、ジーク様のあの鍛え抜かれた体の理由がわかりました。そんな人達がいるベルモンド家は、今後も安泰でしょう。
……あれ? 元々私は恩返しをするつもりでしたが……こんな凄い人達相手に返せる事なんてあるのでしょうか? 私がやる事なんて、たかが知れてるような……??
「しかも、あの人には全く魔法の才能が無い。それでも諦めずに剣の道を究めた凄い人なんだ」
魔法が使えない!? 確かにジーク様が魔法を使ってるのを見た事はありませんけど……本人から聞いたことが無かったので、全然知りませんでした。
「俺もあまり魔法が得意じゃないけど、あの人みたいに頑張れば、いつかはあの人みたいになれるって信じて、毎日頑張っているんだ」
「そうなんですね。きっとなれますよ! 私、陰ながら応援してます!」
「ああ、ありがとう! おっと、そろそろ帰ってくるようだ。それじゃ俺はこの辺で」
彼は小さく手を振りながら建物を後にしました。それと入れ替わるように、ジーク様達が訓練場から帰ってきました。
「ジーク様! お怪我はありませんか!?」
「問題ない。心配してくれて……その、感謝する」
「心配しますよ! 最初緊張で倒れるかと思ってたんですよ! でも……無事でよかったです……」
どうやら、本当に怪我はされていないようです。勝負の時間は短かったとはいえ、戦った事には違いないのに……ジーク様って、本当に凄すぎて、ドキドキしてしまいます……。
「くっそぉ……五人がかりでも勝てないなんて……」
「貴様らが何人束になっても、俺には勝てない。わかったら……さっさと帰れ」
「ふ、ふんっ! いつかは私達の魅力をジーク様に伝えてあげる!」
物語に出てくる敵役が言うような捨て台詞を残して、彼らはそそくさと建物から出ていきました。これで少しは懲りてくれるといいのですが……。
「ジーク様、あんな煽るような事を言わなくても……」
「ああでも言って牽制しておかないと……また調子に乗るかもしれないだろ」
「そ、そういうものなんでしょうか?」
「そういうものだ。さて、変な邪魔が入ったが……今度こそ帰るとしよう。家で兄上を出迎えるのだろう?」
「そうでした! 早く帰りましょう! あっ……歩けそうですか? 疲れてないですか? 駄目そうなら私が治しますよ!」
「問題ない。あの程度……兄上と訓練をしてる時に比べれば可愛いものだ」
そう言いながら、ジーク様は乏しい表情のまま、小さく溜息を漏らしました。
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