42 / 58
第四十二話 帰ってこい
しおりを挟む
■ジーク視点■
「なんだ……これは……!」
寝る前にシエルと話をしようと部屋に来たら、ノックに反応が無かった。この時間はいつも自室にいるのに、いないなんておかしい……何かあったのかと思い、部屋に入ると、そこにシエルの姿は無かった。
代わりにあったのは、一通の手紙だけだった。
『皆様、この度は私の勝手な行動をお許しくださいませ。私がいると、皆様にアンドレ様からの報復を受けてしまう可能性がございます。私はそれを望みません。ここは私にとって、第二の家と家族です。そんな方達が、私のせいで苦しむのを見たくないです。本当は……回復術師になって、恩返しをしたかったのですが、このままでは逆効果になってしまいますので……お別れが最後の恩返しです。皆様、大変お世話になりました。本当に……本当に幸せでした。 シエル』
手紙を読み終えた俺は、あまりに怒りで手紙をぐしゃぐしゃに握りつぶしていた。
何を勝手に決めている! 俺達はアンドレの報復程度で倒れる程、やわな家じゃない! 向かってくるというなら、全て叩き潰してやる!
それになんだ!? 別れが恩返しになるわけないだろ! むしろ恩を仇で返している! これで喜ぶ奴は、この屋敷には誰もいないぞ!
「とにかく探さないと……おい! 兄上や父上達に事の顛末を伝えて、捜索隊を派遣してくれ! まだ遠くに入ってないはずだが……この雨だから、周りに気を付けろ!」
「わかりました!」
シエルのお付きのメイドに任せた俺は、即座に窓から屋敷の外に出て捜索を開始する。外はまるでシエルの悲しみを表しているように、強い雨が降っていた。
「一体シエルはどこに行ったんだ?」
考えろ……考えろ俺! 再会してから、俺はずっとシエルを見てきた。シエルの事なら、大体の事がわかっているはずだ!
シエルが屋敷を出て頼る所……行きたくなる所……そんなのかなり限られているはず……そうか!
「もしかしてあそこか……? 徒歩で行くにはそれなりに距離があるが……闇雲に探すよりかは……」
自分の推理に望みを託して、俺は山の中へと入っていった。夜で暗いのに加えて、雨も降る森は驚く程暗い。ランプの明かりが無ければ、進む事は困難を極めただろう。
「シエル……シエル……!」
シエルの後を追いながら、強い後悔に襲われていた俺は、強く拳を握りし閉めていた。
優しいシエルが交流祭の事を聞いたら、自分のせいだと思うのは、火を見るよりも明らかだったのに、俺はそんなのを気にせずに兄上と話をして……くそっ! 自分の迂闊さが腹立たしい!
「……あれは……シエル!」
「え……ジーク様?」
シエルの後を追ってしばらく歩いていると、びしょ濡れになりながら、母親の墓の前で立ち尽くすシエルの姿があった。
その姿はあまりにも弱々しくて……今すぐにでも消えてしまいそうな儚さがあった。
「どうしてここに……?」
「あの手紙を見て、お前の後を追ってきた。屋敷以外に行く所は、ここしかないとおもってな」
「凄いですね……ジーク様は何でもお見通しですね」
「お前、一体何を考えている?」
「何って……そんなの決まってますよ。ベルモンド家の皆様の幸せです。皆様とっても優しくて、私のような人間を迎え入れてくれました……でも、私がいたら……不幸になってしまいます」
「…………」
「だから私は……また旅に出ようと思うんです。その前に、お母さんに最後のお別れをしておこうと思って……」
「ふざけるな!!」
シエルの言っている事に我慢が出来なくなった俺は、シエルの肩を強く掴みながら、思わず声を荒げてしまった。いや……もはや怒声と言っても過言ではない。それくらい、俺はシエルの気持ちを肯定する事が出来なかった。
「勝手に決めつけるな! お前が思っているほど、俺達ベルモンド家は弱くない! それに、お前がいなくなったら幸せになると、本気で思っているのか!?」
「っ……でも……でも……!!」
「何度言わせればわかる!? 俺達はお前に幸せになってほしいし、恩を重荷にしてほしくない! 今のお前は、本当に幸せなのか!?」
「私……幸せ……うぅっ……」
気まずそうに俺から顔を背けていたシエルは、その大きな瞳から大粒の涙を流しながら、俺に救いを求めるように見つめてきた。
「嫌だよぉ……みんなと一緒に過ごして幸せだったのに……離れたくないよぉ……! でも、みんなが私のせいで不幸になってほしくない……! 私……どうすればいいの……!?」
「そんなの簡単だ。俺達を信じて、いつも通り過ごせばいい。俺達はお前を守り、お前の信頼を絶対に裏切らない。それが……大恩人への恩返しであり、新しい家族への愛情だ」
「ぐすっ……ジーク様……ジーク様ぁ……!」
「シエル……」
俺の胸に体を預けてきたシエルの事を、優しく抱きしめて受け入れる。この雨のせいで冷え切っているシエルの体と、悲しみによって冷え切った心を、俺の熱で温める為に。
「あ、いた! おーいシエルー!」
「ああよかった……! もし何かあったらと思って、凄く心配したのよ!」
「グザヴィエ様……セシリー様にクリス様……使用人の方々まで……!」
背後から、もう聞き飽きたくらい聞いた声が聞こえてきた。そこには、雨の中傘も差さずにずぶ濡れになっていた、俺の家族と使用人達だった。
全く、最近は夜は冷えるというのに、揃いも揃ってずぶ濡れで……俺も人の事は言えないが。一緒に住んでいると、変な所も似てしまうのは困りものだ。
「よくここがわかったな」
「うむ。セシリーが、シエルならここにいるのではないかと予測をたてて、クリスにこの周辺を魔力探知させたところ、シエルの魔力を探知したのだ。なんにせよ、無事でなによりだ」
「その……ご心配をおかけして申し訳ありません……でも、私がいたらベルモンド家は……」
「話は大体聞いているわ。ベルモンド家の事は気にしなくていいのよ。こんなの、ピンチの内にも入らないしね」
「シエル、君が本当に心の底からベルモンド家との繋がりを断ちたいというなら、我々はそれを尊重する。でも、今の君にはそんな事は望んでいないというのは、全員がわかっているんだ。だから……戻ってきてくれないかい?」
母上と兄上の優しい言葉の前でも、シエルはうんと言わない。一体どうすれば……後もうひとつ、背中を押せるものがあれば……。
「……戻ってこい、シエル。俺はお前のいない人生は考えられない」
「っ……!」
至極単純な願いなのは重々承知だ。だが、俺の頭に浮かんできたのは、これだった。変に小難しい事をダラダラ並べるよりも、俺の気持ちを伝えるには適していると思う。
「戻ってくるなら、俺のこの手を取れ」
「…………本当に、いいんですか……? これから先、アンドレ様からどんな嫌がらせを受けるか……わかりませんよ? それでもみなさんいいんですか?」
不安そうに俺達を見るシエルの体は、小刻みに震えていた。俺はそれを止める為に肩をそっと抱くと、少し震えが止まってくれた。
「家長として、大恩人シエルを守るのは至極当然! 我々の事は気にしなくても良いから、安心して過ごすといい」
「私達は、あなたの事が大好きなの。もう家族と思ってるくらい。恩人とか、そういう堅苦しいのを抜きにしてね。だから……私はあなたに戻ってきてほしいのよ」
セシリー様は、とても優しい抱擁で、私の事を包んでくれました。雨で濡れて冷たいはずなのに、心も体もポカポカしてきたように思えます。
「やれやれ、私の言いたい事を二人に取られてしまったよ。ジークはちゃんと伝えられたかい?」
「ああ、問題無い」
「ずいぶん強気だな? 私たちが来る前に、何を話したんだい?」
「答える必要は無い。いや、そんな事より……シエル、どうする?」
シエルはその場でペタンと座り込むと、ポツリポツリと話し始めた。
「私……今までずっと考えてました。助けてもらった恩を、どうやって返そう……そればかりでした。最初は学園に入って、ジーク様を一人ぼっちから助ける……これは簡単に終わりました。次に回復術師になって、誰でも回復できるようになれば……家の人も、領地の人も助けられる。まさに最高の恩返しです!」
そこで一度話を区切ったシエルは、大きく溜息を吐きながら、更に言葉を続けた。
「でも……アンドレ様との再会をきっかけに、私は嫌がらせをされて……ジーク様とクリス様を巻き込みました。それに、あの黒い人に襲われた時も……交流祭の事も……全部、全部私がいなければ、起こらなかった事なんです。だから、出ていけば解決するかもって……」
「シエル……お前は……」
「でも、それは間違ってたんですね……私ってば、いつも間違えてばかり……こんな私でもよければ、これからもよろしくお願いします……!」
先程までの悲しそうな顔から打って変わり、シエルはヒマワリのような明るい笑顔を浮かべながら、俺の手を取って立ち上がるのだった――
「なんだ……これは……!」
寝る前にシエルと話をしようと部屋に来たら、ノックに反応が無かった。この時間はいつも自室にいるのに、いないなんておかしい……何かあったのかと思い、部屋に入ると、そこにシエルの姿は無かった。
代わりにあったのは、一通の手紙だけだった。
『皆様、この度は私の勝手な行動をお許しくださいませ。私がいると、皆様にアンドレ様からの報復を受けてしまう可能性がございます。私はそれを望みません。ここは私にとって、第二の家と家族です。そんな方達が、私のせいで苦しむのを見たくないです。本当は……回復術師になって、恩返しをしたかったのですが、このままでは逆効果になってしまいますので……お別れが最後の恩返しです。皆様、大変お世話になりました。本当に……本当に幸せでした。 シエル』
手紙を読み終えた俺は、あまりに怒りで手紙をぐしゃぐしゃに握りつぶしていた。
何を勝手に決めている! 俺達はアンドレの報復程度で倒れる程、やわな家じゃない! 向かってくるというなら、全て叩き潰してやる!
それになんだ!? 別れが恩返しになるわけないだろ! むしろ恩を仇で返している! これで喜ぶ奴は、この屋敷には誰もいないぞ!
「とにかく探さないと……おい! 兄上や父上達に事の顛末を伝えて、捜索隊を派遣してくれ! まだ遠くに入ってないはずだが……この雨だから、周りに気を付けろ!」
「わかりました!」
シエルのお付きのメイドに任せた俺は、即座に窓から屋敷の外に出て捜索を開始する。外はまるでシエルの悲しみを表しているように、強い雨が降っていた。
「一体シエルはどこに行ったんだ?」
考えろ……考えろ俺! 再会してから、俺はずっとシエルを見てきた。シエルの事なら、大体の事がわかっているはずだ!
シエルが屋敷を出て頼る所……行きたくなる所……そんなのかなり限られているはず……そうか!
「もしかしてあそこか……? 徒歩で行くにはそれなりに距離があるが……闇雲に探すよりかは……」
自分の推理に望みを託して、俺は山の中へと入っていった。夜で暗いのに加えて、雨も降る森は驚く程暗い。ランプの明かりが無ければ、進む事は困難を極めただろう。
「シエル……シエル……!」
シエルの後を追いながら、強い後悔に襲われていた俺は、強く拳を握りし閉めていた。
優しいシエルが交流祭の事を聞いたら、自分のせいだと思うのは、火を見るよりも明らかだったのに、俺はそんなのを気にせずに兄上と話をして……くそっ! 自分の迂闊さが腹立たしい!
「……あれは……シエル!」
「え……ジーク様?」
シエルの後を追ってしばらく歩いていると、びしょ濡れになりながら、母親の墓の前で立ち尽くすシエルの姿があった。
その姿はあまりにも弱々しくて……今すぐにでも消えてしまいそうな儚さがあった。
「どうしてここに……?」
「あの手紙を見て、お前の後を追ってきた。屋敷以外に行く所は、ここしかないとおもってな」
「凄いですね……ジーク様は何でもお見通しですね」
「お前、一体何を考えている?」
「何って……そんなの決まってますよ。ベルモンド家の皆様の幸せです。皆様とっても優しくて、私のような人間を迎え入れてくれました……でも、私がいたら……不幸になってしまいます」
「…………」
「だから私は……また旅に出ようと思うんです。その前に、お母さんに最後のお別れをしておこうと思って……」
「ふざけるな!!」
シエルの言っている事に我慢が出来なくなった俺は、シエルの肩を強く掴みながら、思わず声を荒げてしまった。いや……もはや怒声と言っても過言ではない。それくらい、俺はシエルの気持ちを肯定する事が出来なかった。
「勝手に決めつけるな! お前が思っているほど、俺達ベルモンド家は弱くない! それに、お前がいなくなったら幸せになると、本気で思っているのか!?」
「っ……でも……でも……!!」
「何度言わせればわかる!? 俺達はお前に幸せになってほしいし、恩を重荷にしてほしくない! 今のお前は、本当に幸せなのか!?」
「私……幸せ……うぅっ……」
気まずそうに俺から顔を背けていたシエルは、その大きな瞳から大粒の涙を流しながら、俺に救いを求めるように見つめてきた。
「嫌だよぉ……みんなと一緒に過ごして幸せだったのに……離れたくないよぉ……! でも、みんなが私のせいで不幸になってほしくない……! 私……どうすればいいの……!?」
「そんなの簡単だ。俺達を信じて、いつも通り過ごせばいい。俺達はお前を守り、お前の信頼を絶対に裏切らない。それが……大恩人への恩返しであり、新しい家族への愛情だ」
「ぐすっ……ジーク様……ジーク様ぁ……!」
「シエル……」
俺の胸に体を預けてきたシエルの事を、優しく抱きしめて受け入れる。この雨のせいで冷え切っているシエルの体と、悲しみによって冷え切った心を、俺の熱で温める為に。
「あ、いた! おーいシエルー!」
「ああよかった……! もし何かあったらと思って、凄く心配したのよ!」
「グザヴィエ様……セシリー様にクリス様……使用人の方々まで……!」
背後から、もう聞き飽きたくらい聞いた声が聞こえてきた。そこには、雨の中傘も差さずにずぶ濡れになっていた、俺の家族と使用人達だった。
全く、最近は夜は冷えるというのに、揃いも揃ってずぶ濡れで……俺も人の事は言えないが。一緒に住んでいると、変な所も似てしまうのは困りものだ。
「よくここがわかったな」
「うむ。セシリーが、シエルならここにいるのではないかと予測をたてて、クリスにこの周辺を魔力探知させたところ、シエルの魔力を探知したのだ。なんにせよ、無事でなによりだ」
「その……ご心配をおかけして申し訳ありません……でも、私がいたらベルモンド家は……」
「話は大体聞いているわ。ベルモンド家の事は気にしなくていいのよ。こんなの、ピンチの内にも入らないしね」
「シエル、君が本当に心の底からベルモンド家との繋がりを断ちたいというなら、我々はそれを尊重する。でも、今の君にはそんな事は望んでいないというのは、全員がわかっているんだ。だから……戻ってきてくれないかい?」
母上と兄上の優しい言葉の前でも、シエルはうんと言わない。一体どうすれば……後もうひとつ、背中を押せるものがあれば……。
「……戻ってこい、シエル。俺はお前のいない人生は考えられない」
「っ……!」
至極単純な願いなのは重々承知だ。だが、俺の頭に浮かんできたのは、これだった。変に小難しい事をダラダラ並べるよりも、俺の気持ちを伝えるには適していると思う。
「戻ってくるなら、俺のこの手を取れ」
「…………本当に、いいんですか……? これから先、アンドレ様からどんな嫌がらせを受けるか……わかりませんよ? それでもみなさんいいんですか?」
不安そうに俺達を見るシエルの体は、小刻みに震えていた。俺はそれを止める為に肩をそっと抱くと、少し震えが止まってくれた。
「家長として、大恩人シエルを守るのは至極当然! 我々の事は気にしなくても良いから、安心して過ごすといい」
「私達は、あなたの事が大好きなの。もう家族と思ってるくらい。恩人とか、そういう堅苦しいのを抜きにしてね。だから……私はあなたに戻ってきてほしいのよ」
セシリー様は、とても優しい抱擁で、私の事を包んでくれました。雨で濡れて冷たいはずなのに、心も体もポカポカしてきたように思えます。
「やれやれ、私の言いたい事を二人に取られてしまったよ。ジークはちゃんと伝えられたかい?」
「ああ、問題無い」
「ずいぶん強気だな? 私たちが来る前に、何を話したんだい?」
「答える必要は無い。いや、そんな事より……シエル、どうする?」
シエルはその場でペタンと座り込むと、ポツリポツリと話し始めた。
「私……今までずっと考えてました。助けてもらった恩を、どうやって返そう……そればかりでした。最初は学園に入って、ジーク様を一人ぼっちから助ける……これは簡単に終わりました。次に回復術師になって、誰でも回復できるようになれば……家の人も、領地の人も助けられる。まさに最高の恩返しです!」
そこで一度話を区切ったシエルは、大きく溜息を吐きながら、更に言葉を続けた。
「でも……アンドレ様との再会をきっかけに、私は嫌がらせをされて……ジーク様とクリス様を巻き込みました。それに、あの黒い人に襲われた時も……交流祭の事も……全部、全部私がいなければ、起こらなかった事なんです。だから、出ていけば解決するかもって……」
「シエル……お前は……」
「でも、それは間違ってたんですね……私ってば、いつも間違えてばかり……こんな私でもよければ、これからもよろしくお願いします……!」
先程までの悲しそうな顔から打って変わり、シエルはヒマワリのような明るい笑顔を浮かべながら、俺の手を取って立ち上がるのだった――
4
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
結婚して3年経っても子供ができないという理由で離縁されたエマは、前世の記憶を思い出して幸せになる。周りが勝手に復讐してくれました。
山田 バルス
恋愛
結婚三年目の春、エマは伯爵家の夫アンドレオから突然、側室を迎える話を告げられる。子をなせなかったことを理由に、彼女は僅かな補償のみで離縁された。妻として過ごした三年間は「無価値だった」と突きつけられ、エマは貴族社会から静かに切り捨てられる。
また実家の父母の墓参りに行くと、当主になっていた兄に離縁金を奪われてしまう。
大ピンチのエマには、秘密があった。なんと彼女は幼少期に前世の記憶を思い出していたのだ。
かつて観光地で石を磨き、アクセサリーを作り、人に喜ばれる仕事をしていた人生。何も持たない今だからこそ、もう一度「自分の手で生きる」ことを選び、あの人が住む商業国家スペイラ帝国へ向かう決意をする。
国境への道中、盗賊に襲われるが、護衛兵ロドリゲスの活躍で難を逃れる。彼の誠実な態度に、エマは「守られる価値のある存在」として扱われたことに胸を打たれた。
スペイラ帝国では身分に縛られず働ける。エマは前世の技術を活かし、石を磨いてアクセサリーを作る小さな露店を始める。石に意味を込めた腕輪やペンダントは人々の心を掴み、体験教室も開かれるようになる。伯爵夫人だった頃よりも、今の方がずっと「生きている」と実感していた。
ある朝、ロドリゲスが市場を訪れ、エマの作ったタイガーアイの腕輪を購入する。ところがその夜、彼は驚いた様子で戻り、腕輪が力を一・五倍に高める魔道具だと判明したと告げる。エマ自身は無意識だったが、彼女の作るアクセサリーには確かな力が宿っていた。
後日二人は食事に出かけ、エマは自分が貴族の妻として離縁された過去を打ち明ける。ロドリゲスは強く憤り、「最悪な貴族だ」と彼女と一緒になって怒ってくれた。その気持ちが、エマにとって何よりの救いだった。彼は次に防御力を高める腕輪を依頼し、冒険者ギルドで正式な鑑定を受けるよう勧める。
翌日、冒険者ギルドで鑑定を行った結果、エマの腕輪は高い防御効果を持つことが判明。さらに彼女自身を鑑定すると、なんと「付与特化型聖女」であることが明らかになる。聖女が付与した魔道具は現実の力として強く発現するのだ。
価値がないと切り捨てられた人生は、ここでは確かな力となった。スペイラ帝国で、聖女エマの新しい人生が、静かに、そして輝かしく始まる。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
【完結】転生したら断罪イベントの真っ最中。聖女の嘘を暴いたら、王太子が真っ青になりました
丸顔ちゃん。
恋愛
王太子は私――エリシアに婚約破棄を宣言し、
隣では甘ったるい声の“聖女”が「こわかったんですぅ♡」と泣き真似をしている。
だが私は知っている。
原作では、この聖女こそが禁術で王太子の魔力を吸い取り、
私に冤罪を着せて処刑へ追い込んだ張本人だ。
優しい家族を守るためにも、同じ結末は絶対に許さない。
私は転生者としての知識を武器に、
聖女の嘘と禁術の証拠を次々に暴き、
王太子の依存と愚かさを白日の下に晒す。
「婚約は……こちらから願い下げです」
土下座する王太子も、泣き叫ぶ聖女も、もう関係ない。
私は新しい未来を選ぶ。
短編)どうぞ、勝手に滅んでください。
黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。
あらすじ)
大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。
政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。
けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。
やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。
ーーー
※カクヨム、なろうにも掲載しています
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
【完結】白い結婚を終えて自由に生きてまいります
なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。
忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。
「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」
「白い結婚ですか?」
「実は俺には……他に愛する女性がいる」
それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。
私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた
――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。
ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。
「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」
アロルド、貴方は何を言い出すの?
なにを言っているか、分かっているの?
「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」
私の答えは決まっていた。
受け入れられるはずがない。
自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。
◇◇◇
設定はゆるめです。
とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。
もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!
【完結】婚約破棄して泥を投げつけた元婚約者が「無能」と笑う中、光り輝く幼なじみの王子に掠め取られました。
ムラサメ
恋愛
「お前のような無能、我が家には不要だ。今すぐ消えろ!」
婚約者・エドワードのために身を粉にして尽くしてきたフィオナは、卒業パーティーの夜、雨の中に放り出される。
泥にまみれ、絶望に沈む彼女の前に現れたのは、かつての幼なじみであり、今や国中から愛される「黄金の王子」シリルだった。
「やっと見つけた。……ねえ、フィオナ。あんなゴミに君を傷つけさせるなんて、僕の落ち度だね」
汚れを厭わずフィオナを抱き上げたシリルは、彼女を自分の屋敷へと連れ帰る。
「自分には価値がない」と思い込むフィオナを、シリルは異常なまでの執着と甘い言葉で、とろけるように溺愛し始めて――。
一方で、フィオナを捨てたエドワードは気づいていなかった。
自分の手柄だと思っていた仕事も、領地の繁栄も、すべてはフィオナの才能によるものだったということに。
ボロボロになっていく元婚約者。美しく着飾られ、シリルの腕の中で幸せに微笑むフィオナ。
「僕の星を捨てた報い、たっぷりと受けてもらうよ?」
圧倒的な光を放つ幼なじみによる、最高に華やかな逆転劇がいま始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる