婚約者に騙されて巡礼をした元貧乏の聖女、婚約破棄をされて城を追放されたので、巡礼先で出会った美しい兄弟の所に行ったら幸せな生活が始まりました

ゆうき

文字の大きさ
52 / 58

第五十二話 告白

しおりを挟む
「えっと……シエル?」

 とんでもない爆弾発言の後だというのに、ジーク様は至って冷静に見えます。一方の私は、体中を真っ赤にさせて、アワアワしていました。

 だ、だって……私、今……好きって……ジーク様の前で好きって言っちゃって……! 確かに私の正直な気持ちですが、でも……今言うつもりは……!

「す、すみません! 今のは忘れてください!」
「忘れなくてはいけないのか?」
「そ……それはどういう……?」
「俺は忘れたくない」

 くっついたまま、私の顔をジッと見つめるジーク様のお考えが、私にはよくわかりません。忘れたくないって……?

「ひょっとして、今のも誰かに唆されたのか?」
「ち、違います! あのその、あうぅぅぅぅぅ……」
「落ち着け。大丈夫、ここにはお前が間違っていても、笑う奴も怒る奴もいない。だから落ち着け……深呼吸だ」
「すー……はー……」

 ジーク様の言う通りに深呼吸をしたら、だいぶ緊張がほぐれたような……気がします、はい。

「あのですね、今の言葉はわたしの本当の気持ちなんです……ご迷惑ですよね! やっぱり忘れてください!」
「俺は忘れない。これから先、死んだ後も忘れない」
「重すぎますよ!? そんな覚えておくようなものじゃないですから!」
「大切に決まっているだろ。好きな女から告白されたのだから」

 うんうん、そうですよね。好きな人にそんな事を言われたら嬉しいですよね。私だって、ジーク様にそんな事を言われたら、嬉しくて卒倒するでしょう。

 ……ちょっとまって。今のって、私の好きに対しての回答ですよね? え、ええ?

「はうぅ……」

 互いに顔を真っ赤にしながらも、一切離れる事なく、その場で唸る事しか出来ませんでした。

 ここで私がするべき事って……? 告白? 言い訳? 逃走? ああもう、全然わかりません! お母さーん! ココ様ー! 助けてくださいー! 私は今……ある意味人生で一番のピンチなんですー!!

 って、一人で騒いでても仕方ないです。変な結論を出されてしまう前に、私から話さないと。

「あの……」
「なあ……」
「あ、ジーク様からどうぞ」
「シエルからでいい」

 お互いに譲り合いの精神を見せ続けた結果、先に折れたジーク様は、呆れたような笑い声を漏らしていた。

「全く……俺の話だが、俺はお前に好意を持たれたのは、素直に嬉しい」
「え……どうしてですか?」
「そこは察してほしかったが……単刀直入に言う。俺は……その、なんだ……俺は……お前が好きだ」

 え、私の聞き間違えでしょうか? 今確かに好きって……わかりました! これは夢ですね! それならほっぺをつねれば……。

「い、いひゃい……」
「お前はこの大事な時に何をしてるんだ……」
「ゆ、夢かどうかの確認をしてました……あ、今度こそわかりました! 友人的な意味で好きなんですよね!?」
「違う。異性的な意味での好きだ。結婚もしたいと思っている」
「うぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」

 明らかに奇声と言われてもおかしくないような、変な声を出してしまいました。だって、それくらいビックリしてしまったんです! やっぱり夢なんじゃないでしょうか……?

「唐突で驚いただろうが……俺は巡礼の時にお前を見た時、長旅でボロボロの体で走り回り、母上の治療をしてくれた。その時のひた向きさや慈悲深さ、そして治った母上を見た時の、お前の笑顔で完全に俺は虜にされた」
「あ、ちょ……」
「巡礼を止める事は出来ない。だからお前に言葉を残して見送った。まさかこんな形で屋敷に来て、一緒に住むようになったのは想定外だったが」

 私も……あの巡礼の時に会って、優しくて素敵な人だって思って……私の知らない心の奥底で、ジーク様の事を好きになっていました。きっかけや自覚の仕方は違いますが、好きになった事に違いはありません。

 ああもう、どうしましょう……嬉しすぎて、体が熱くて仕方がありません。汗も凄いですし……これで汗が臭って嫌われたら、一生引きずりそうです。

「俺は……シエルを心から愛している。これから先、永遠に平穏とは言えないだろう。それでも、それ以上に楽しい事や、嬉しい事……幸せな事が待っている。俺は……それをシエルと分かち合いたい。ずっと苦労をしてきたシエルに、幸せだって笑ってもらいたい。だから……その……」

 ジーク様は言葉を詰まらせると、真っ赤になった顔を私から逸らしました。でも……すぐに真っ直ぐと、その凛々しくて綺麗な顔を私に向けてくれました。

「俺と結婚して、暖かな家庭を一緒に作ろう、シエル」

 それは飾り気のない……でも、この世で一番心がこもった言葉でした。その言葉が嬉しくて、胸が幸せで一杯になって……それが涙という形になって、私の目から零れ落ちました。

「私は回復魔法しか才能がない女です。髪色も真っ白で変で、天涯孤独で、生まれた場所は劣悪なスラム……ジーク様にふさわしいとは言えません。それでも……私を愛してくれますか?」
「ああ」
「嬉しい……はい、不束者ですが、末永くよろしくお願い致します……!」

 私はジーク様の手を取り、大きく頷いて見せました。すると、ジーク様も嬉しそうに微笑んでくれました。

 互いの気持ちがわかったからでしょうか。胸の奥から溢れ出る、好きって気持ちが抑えきれません。でも、せっかく結ばれたのに変な事をして嫌われたくありません……。

 そう思っていたら、私の気持ちを汲み取ってくれたかのように、ジーク様は少しだけ屈むと、そのまま私の顔に自分の顔を近づけて……。

 ……目の前まで来て止まりました。

「……え、えっと……ジーク様?」
「……すまない、こういう事は得意じゃなくてな……失敗したらと思うと……」

 人付き合いはあまり得意じゃないのは知ってましたが……恋愛事も苦手だったんですね。思い返すと、時々私の前で照れてるような素振りもありました。でも、結構大胆な事を涼しい顔でやっていた事もあります。

 ジーク様の基準はよくわかりませんが……なんにせよ、ジーク様にも可愛い一面があるって事ですね。えへへ、私しか知らないジーク様の秘密ですね。

「大丈夫ですよ、ジーク様。私達にはこれからがあります。だから、焦る必要はありません。それに、失敗したからって、嫌いになったりもしません」
「シエル……」
「私なんて、失敗ばっかりでご迷惑をおかけしてばかり……むしろ、嫌われるのは私の方です」
「そんな事は無い」
「なら……お互いゆっくり進みましょう……ね?」
「……ああ、そうだな」

 互いに安心し合った私達は、目と鼻の先で笑い合いながら、どちらからともなく顔を近づけて……そのまま口づけを交わしました――
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

結婚して3年経っても子供ができないという理由で離縁されたエマは、前世の記憶を思い出して幸せになる。周りが勝手に復讐してくれました。

山田 バルス
恋愛
 結婚三年目の春、エマは伯爵家の夫アンドレオから突然、側室を迎える話を告げられる。子をなせなかったことを理由に、彼女は僅かな補償のみで離縁された。妻として過ごした三年間は「無価値だった」と突きつけられ、エマは貴族社会から静かに切り捨てられる。  また実家の父母の墓参りに行くと、当主になっていた兄に離縁金を奪われてしまう。  大ピンチのエマには、秘密があった。なんと彼女は幼少期に前世の記憶を思い出していたのだ。  かつて観光地で石を磨き、アクセサリーを作り、人に喜ばれる仕事をしていた人生。何も持たない今だからこそ、もう一度「自分の手で生きる」ことを選び、あの人が住む商業国家スペイラ帝国へ向かう決意をする。  国境への道中、盗賊に襲われるが、護衛兵ロドリゲスの活躍で難を逃れる。彼の誠実な態度に、エマは「守られる価値のある存在」として扱われたことに胸を打たれた。  スペイラ帝国では身分に縛られず働ける。エマは前世の技術を活かし、石を磨いてアクセサリーを作る小さな露店を始める。石に意味を込めた腕輪やペンダントは人々の心を掴み、体験教室も開かれるようになる。伯爵夫人だった頃よりも、今の方がずっと「生きている」と実感していた。  ある朝、ロドリゲスが市場を訪れ、エマの作ったタイガーアイの腕輪を購入する。ところがその夜、彼は驚いた様子で戻り、腕輪が力を一・五倍に高める魔道具だと判明したと告げる。エマ自身は無意識だったが、彼女の作るアクセサリーには確かな力が宿っていた。  後日二人は食事に出かけ、エマは自分が貴族の妻として離縁された過去を打ち明ける。ロドリゲスは強く憤り、「最悪な貴族だ」と彼女と一緒になって怒ってくれた。その気持ちが、エマにとって何よりの救いだった。彼は次に防御力を高める腕輪を依頼し、冒険者ギルドで正式な鑑定を受けるよう勧める。  翌日、冒険者ギルドで鑑定を行った結果、エマの腕輪は高い防御効果を持つことが判明。さらに彼女自身を鑑定すると、なんと「付与特化型聖女」であることが明らかになる。聖女が付与した魔道具は現実の力として強く発現するのだ。  価値がないと切り捨てられた人生は、ここでは確かな力となった。スペイラ帝国で、聖女エマの新しい人生が、静かに、そして輝かしく始まる。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

【完結】転生したら断罪イベントの真っ最中。聖女の嘘を暴いたら、王太子が真っ青になりました

丸顔ちゃん。
恋愛
王太子は私――エリシアに婚約破棄を宣言し、 隣では甘ったるい声の“聖女”が「こわかったんですぅ♡」と泣き真似をしている。 だが私は知っている。 原作では、この聖女こそが禁術で王太子の魔力を吸い取り、 私に冤罪を着せて処刑へ追い込んだ張本人だ。 優しい家族を守るためにも、同じ結末は絶対に許さない。 私は転生者としての知識を武器に、 聖女の嘘と禁術の証拠を次々に暴き、 王太子の依存と愚かさを白日の下に晒す。 「婚約は……こちらから願い下げです」 土下座する王太子も、泣き叫ぶ聖女も、もう関係ない。 私は新しい未来を選ぶ。

短編)どうぞ、勝手に滅んでください。

黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。 あらすじ) 大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。 政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。 けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。 やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。 ーーー ※カクヨム、なろうにも掲載しています

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

【完結】白い結婚を終えて自由に生きてまいります

なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。  忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。  「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」 「白い結婚ですか?」 「実は俺には……他に愛する女性がいる」   それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。 私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた ――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。 ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。 「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」 アロルド、貴方は何を言い出すの? なにを言っているか、分かっているの? 「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」 私の答えは決まっていた。 受け入れられるはずがない。  自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。    ◇◇◇ 設定はゆるめです。 とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。 もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!

【完結】婚約破棄して泥を投げつけた元婚約者が「無能」と笑う中、光り輝く幼なじみの王子に掠め取られました。

ムラサメ
恋愛
​「お前のような無能、我が家には不要だ。今すぐ消えろ!」 ​婚約者・エドワードのために身を粉にして尽くしてきたフィオナは、卒業パーティーの夜、雨の中に放り出される。 泥にまみれ、絶望に沈む彼女の前に現れたのは、かつての幼なじみであり、今や国中から愛される「黄金の王子」シリルだった。 ​「やっと見つけた。……ねえ、フィオナ。あんなゴミに君を傷つけさせるなんて、僕の落ち度だね」 ​汚れを厭わずフィオナを抱き上げたシリルは、彼女を自分の屋敷へと連れ帰る。 「自分には価値がない」と思い込むフィオナを、シリルは異常なまでの執着と甘い言葉で、とろけるように溺愛し始めて――。 ​一方で、フィオナを捨てたエドワードは気づいていなかった。 自分の手柄だと思っていた仕事も、領地の繁栄も、すべてはフィオナの才能によるものだったということに。 ボロボロになっていく元婚約者。美しく着飾られ、シリルの腕の中で幸せに微笑むフィオナ。 ​「僕の星を捨てた報い、たっぷりと受けてもらうよ?」 ​圧倒的な光を放つ幼なじみによる、最高に華やかな逆転劇がいま始まる!

処理中です...