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第五十四話 絶体絶命
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なにこれ……一体どういう事ですか!? それにこの傷……まだ息があるのが不思議なくらいに深いです! 早く治さないと……!
「おい、しっかりしろ! 意識をしっかり保て!」
「退いてください! 私が治療します!」
「シエル、君はまだ――」
クリス様の制止を振り切って回復魔法を使うと、彼の傷はなんとか塞がりました。
でも、油断はできません。意識は戻ってませんし、傷が深すぎてすぐに完治とはいきませんでしたし。
「……緊急事態だし、今のは見なかった事にしようか。それで、一体何が……?」
「十中八九、奴が来たんだろうな。思った以上に早かった……それに、ベルモンド家の守りを突破してくるとは」
「もしかして……アンドレ様が!?」
正直あまり信じられませんが、お二人の神妙な顔を見ていると、それが本当なんじゃないかと思わされます。
確かにアンドレ様は酷いお方ですが、まさかこんな犯罪に手を染めるだなんて……!
「とにかく止めに行くぞ。奴は既に王族でもなければ、ただの犯罪者だ。多少手荒にしても問題無いだろう」
「ああ。全く、父上と母上がいないタイミングに来るとは……頭が回るのか、偶然か……どちらにせよ運が悪いな」
「私も行きます! アンドレ様を止めないと!」
「あ、あの……私も力になれるかはわかりませんけど……傷を治す事は出来るので行きます!」
「ココ、お前はシエルの護衛をしてくれ。シエルは逃げてきた怪我人の治療を頼む。戦闘は俺達に任せろ」
きっぱりとジーク様に言われてしまった為、私達はそれに従うように頷く事しか出来ませんでした。
本当は一緒に行きたかったですが……冷静に考えれば、私が前線に行ってもただの足手まといでしょう。それなら、私は後方支援に徹するべきですし、私をずっと守ってくれたココ様が一緒の方がいいでしょう。
「わかりました。お二人もお気をつけて……!」
「シエルもな」
「……あぁ……? どこに行くつもりだぁ……?」
それぞれの目的を果たす為に部屋から出ていこうとした瞬間、背後から気味の悪い声が聞こえてきました。急いで振り返ると……そこには体の至る所が血で赤く染まった、アンドレ様の姿がありました。
「ちっ……下から飛んで窓から入ってきたのか」
「あいつの風の魔法なら、それくらい容易です!」
「ふぅ……アンドレ殿、あなたの心境がどうなっているのかは定かではありませんが……私達の大切な人間や家を荒した罪は重いですよ」
「くだらねぇ……実にくだらねぇ! ゴミ共がどうなろうと知った事か! オレ様は……てめぇらを地獄に道連れしにきたんだよ!!」
そう言うと、アンドレ様は自信の周りに大量に魔法陣を展開すると、風の刃を無数に放ってきました。
風の刃は、部屋の窓やカーテン、壁や天井にも深い傷をつけている事から、凄い切れ味なのだとわかります。
しかし、それを黙って受ける皆様ではありません。ジーク様はいつも持っている剣を手にして刃を切り裂き、クリス様は氷で相殺します。ココ様も障壁を張って、私を守ってくれました。
うぅ……こういう時に私もなにか役に立てる魔法があれば……自分の力の無さが憎いです。
「何度やっても変わらん。お前の全てを……斬る!」
「果たして……同じか?」
ニヤリと笑うアンドレ様を見て、何か嫌な予感がしたのも束の間――巨大で鋭利な風の刃が地面から突き出て、ココ様の胸を貫きました。
「えっ……ココ、様……?」
私の前で、力なく倒れるココ様は、私の声に一切反応しません。叩いても、何の反応も返ってきません。怪我も酷すぎて、急いで治療をしても、すぐに完治とまで持っていく事も不可能そうです。
そんな、ウソですよね……? ココ様が……ココ様が死んじゃうだなんて……そんなの……!
「いや……やだよ……置いていかないで……!」
「シエル、落ち着くんだ! 息があるなら、すぐに回復魔法を使えば助かる! 後の事は考えなくていい!」
「後の事……? おもしれぇ事言うじゃねえか。てめえらに後なんて無いんだよ!!」
「黙れ! 散々我慢してきたが……ここまでの暴挙をしたあなたを、私は許す事が出来ない!」
私がココ様を支えながら泣いている間に、クリス様は怒気を孕んだ声で叫びながら、大量の氷柱をアンドレ様に放ちました。
それらは四方八方からアンドレ様に向かっていき……そのままアンドレ様に命中しました。
「このまま更に凍らせて身動きを――」
「ぐふっ……勝ったと、思ったか? オレ様の作戦にはまったとも知らずに……いい気なもんだぜ」
「なっ……!?」
「さっき言っただろ? 地獄に……道連れにすると!」
確かに攻撃は当たりました。口や体から血が出ていますし、確実に傷を負わせたはずなのに……アンドレ様は笑っていました。
「吹き飛べぇぇぇぇ!!」
アンドレ様の叫びと共に、彼を中心に凄まじい暴風が巻き起こりました。その風は部屋の中にあるものを全てを吹き飛ばしてしまいました。もちろん、私達も例外じゃありません。
「いたた……み、皆様は!?」
幸いにも軽傷で済んだ私は、その場で起き上がって辺りを確認しました。ココ様は近くで倒れていますが、お二人の姿が見えません。
「どこですか……!? あ、クリス様!!」
よろよろとしながらも辺りを探すと、クローゼットの下敷きになってしまったクリス様を発見しました。意識も無いのか、ぐったりしています。
この状態でも、手当てはもちろんできますが……これでは手当てしても意味がありません。だからといって、私一人じゃクローゼットを持ち上げる事もできません。
「くそっ、随分と無茶苦茶な事をする……奴め、俺らと心中するつもりか?」
「ジーク様! ご無事だったんですね!」
「シエルも無事でよかった……左腕をやられたが、なんとか生きてはいる。それよりも……まずは兄上を!」
「は、はい!」
私はジーク様と力を合わせて、なんとかクローゼットの下からクリス様を救出しました。意識は既に無く、腕や足が変な方向に曲がっています。
今まで骨折を治した事はありますが、かなり酷い状態です……ココ様も治療をしないといけないのに……!
「シエル、焦らずに急いで二人の治療を。俺が奴の息の根を止める」
「い、息の根って……」
「このままでは奴は死ぬまで暴れ続け、犠牲者は増え続ける。大切な家族や屋敷の使用人に新しい友人……そして、愛する人をこれ以上傷つけさせない!」
「ジーク、様……」
とても真剣で、覚悟が決まっている横顔に小さく頷くと、ジーク様は一気にアンドレ様へと接近し、剣を振りかぶりました。
「ククッ……ジークぅ……てめぇは最後の最後まで……オレ様にたてつく愚か者として死にてえようだな!」
「死ぬのは貴様だ、愚かな大罪人め!」
ジーク様に反撃をしようと魔法陣を展開しますが、怪我をした状態でジーク様の剣に追いつけるはずもなく……ジーク様の剣はアンドレ様の胸を引き裂きました。
うぅ、いくら相手が酷い人とはいえ……目の前で斬られるのは、見ていて気分の良いものではありません……うっぷ……は、吐きそう……。
「これで……終わりだ!」
「ああ、終わりだな……オレ様の人生はもう終わりだ。だが、終わるのは……てめえらもだ!!」
先程の魔法陣から、風の刃が一つ生成され、真っ直ぐ射出されました。その対象は……ジーク様ではなく、私でした。
「なっ……!?」
「早く行かないと、大切なご主人様が死んじまうぞぉ?」
「シエル、今行く!」
「あ、あぁ……!」
私に向かってくる風の刃を避けないといけないのに、恐怖で足に力が入りません。その間にも、風の刃は周りの瓦礫や壊れた家具を切り裂きながら、私に向かってきます。
も、もう逃げられない……! せめて、近くで倒れているクリス様を守る為に、この身を盾にするしかありません。
そう咄嗟に判断した私は、クリス様の体に覆いかぶさるように丸くなりました。
「…………」
……い、痛い……あれ、痛くない? てっきり体中に痛みが走ると思っていたのに、どこも痛くありません。
もしかして、攻撃が外れたのでしょうか? それが一番ですが……と、とにかく周りの状況を……。
「っ……!?」
ゆっくりと顔を上げると、確かに風の刃は私の目の前にありました。今も薄い緑色の輝いているそれは、恐怖を覚えると共に、美しさも感じるものでした。
そしてその風の刃は……私達を庇いように仁王立ちしていた、ジーク様の背中に深々と突き刺さっていました……。
「おい、しっかりしろ! 意識をしっかり保て!」
「退いてください! 私が治療します!」
「シエル、君はまだ――」
クリス様の制止を振り切って回復魔法を使うと、彼の傷はなんとか塞がりました。
でも、油断はできません。意識は戻ってませんし、傷が深すぎてすぐに完治とはいきませんでしたし。
「……緊急事態だし、今のは見なかった事にしようか。それで、一体何が……?」
「十中八九、奴が来たんだろうな。思った以上に早かった……それに、ベルモンド家の守りを突破してくるとは」
「もしかして……アンドレ様が!?」
正直あまり信じられませんが、お二人の神妙な顔を見ていると、それが本当なんじゃないかと思わされます。
確かにアンドレ様は酷いお方ですが、まさかこんな犯罪に手を染めるだなんて……!
「とにかく止めに行くぞ。奴は既に王族でもなければ、ただの犯罪者だ。多少手荒にしても問題無いだろう」
「ああ。全く、父上と母上がいないタイミングに来るとは……頭が回るのか、偶然か……どちらにせよ運が悪いな」
「私も行きます! アンドレ様を止めないと!」
「あ、あの……私も力になれるかはわかりませんけど……傷を治す事は出来るので行きます!」
「ココ、お前はシエルの護衛をしてくれ。シエルは逃げてきた怪我人の治療を頼む。戦闘は俺達に任せろ」
きっぱりとジーク様に言われてしまった為、私達はそれに従うように頷く事しか出来ませんでした。
本当は一緒に行きたかったですが……冷静に考えれば、私が前線に行ってもただの足手まといでしょう。それなら、私は後方支援に徹するべきですし、私をずっと守ってくれたココ様が一緒の方がいいでしょう。
「わかりました。お二人もお気をつけて……!」
「シエルもな」
「……あぁ……? どこに行くつもりだぁ……?」
それぞれの目的を果たす為に部屋から出ていこうとした瞬間、背後から気味の悪い声が聞こえてきました。急いで振り返ると……そこには体の至る所が血で赤く染まった、アンドレ様の姿がありました。
「ちっ……下から飛んで窓から入ってきたのか」
「あいつの風の魔法なら、それくらい容易です!」
「ふぅ……アンドレ殿、あなたの心境がどうなっているのかは定かではありませんが……私達の大切な人間や家を荒した罪は重いですよ」
「くだらねぇ……実にくだらねぇ! ゴミ共がどうなろうと知った事か! オレ様は……てめぇらを地獄に道連れしにきたんだよ!!」
そう言うと、アンドレ様は自信の周りに大量に魔法陣を展開すると、風の刃を無数に放ってきました。
風の刃は、部屋の窓やカーテン、壁や天井にも深い傷をつけている事から、凄い切れ味なのだとわかります。
しかし、それを黙って受ける皆様ではありません。ジーク様はいつも持っている剣を手にして刃を切り裂き、クリス様は氷で相殺します。ココ様も障壁を張って、私を守ってくれました。
うぅ……こういう時に私もなにか役に立てる魔法があれば……自分の力の無さが憎いです。
「何度やっても変わらん。お前の全てを……斬る!」
「果たして……同じか?」
ニヤリと笑うアンドレ様を見て、何か嫌な予感がしたのも束の間――巨大で鋭利な風の刃が地面から突き出て、ココ様の胸を貫きました。
「えっ……ココ、様……?」
私の前で、力なく倒れるココ様は、私の声に一切反応しません。叩いても、何の反応も返ってきません。怪我も酷すぎて、急いで治療をしても、すぐに完治とまで持っていく事も不可能そうです。
そんな、ウソですよね……? ココ様が……ココ様が死んじゃうだなんて……そんなの……!
「いや……やだよ……置いていかないで……!」
「シエル、落ち着くんだ! 息があるなら、すぐに回復魔法を使えば助かる! 後の事は考えなくていい!」
「後の事……? おもしれぇ事言うじゃねえか。てめえらに後なんて無いんだよ!!」
「黙れ! 散々我慢してきたが……ここまでの暴挙をしたあなたを、私は許す事が出来ない!」
私がココ様を支えながら泣いている間に、クリス様は怒気を孕んだ声で叫びながら、大量の氷柱をアンドレ様に放ちました。
それらは四方八方からアンドレ様に向かっていき……そのままアンドレ様に命中しました。
「このまま更に凍らせて身動きを――」
「ぐふっ……勝ったと、思ったか? オレ様の作戦にはまったとも知らずに……いい気なもんだぜ」
「なっ……!?」
「さっき言っただろ? 地獄に……道連れにすると!」
確かに攻撃は当たりました。口や体から血が出ていますし、確実に傷を負わせたはずなのに……アンドレ様は笑っていました。
「吹き飛べぇぇぇぇ!!」
アンドレ様の叫びと共に、彼を中心に凄まじい暴風が巻き起こりました。その風は部屋の中にあるものを全てを吹き飛ばしてしまいました。もちろん、私達も例外じゃありません。
「いたた……み、皆様は!?」
幸いにも軽傷で済んだ私は、その場で起き上がって辺りを確認しました。ココ様は近くで倒れていますが、お二人の姿が見えません。
「どこですか……!? あ、クリス様!!」
よろよろとしながらも辺りを探すと、クローゼットの下敷きになってしまったクリス様を発見しました。意識も無いのか、ぐったりしています。
この状態でも、手当てはもちろんできますが……これでは手当てしても意味がありません。だからといって、私一人じゃクローゼットを持ち上げる事もできません。
「くそっ、随分と無茶苦茶な事をする……奴め、俺らと心中するつもりか?」
「ジーク様! ご無事だったんですね!」
「シエルも無事でよかった……左腕をやられたが、なんとか生きてはいる。それよりも……まずは兄上を!」
「は、はい!」
私はジーク様と力を合わせて、なんとかクローゼットの下からクリス様を救出しました。意識は既に無く、腕や足が変な方向に曲がっています。
今まで骨折を治した事はありますが、かなり酷い状態です……ココ様も治療をしないといけないのに……!
「シエル、焦らずに急いで二人の治療を。俺が奴の息の根を止める」
「い、息の根って……」
「このままでは奴は死ぬまで暴れ続け、犠牲者は増え続ける。大切な家族や屋敷の使用人に新しい友人……そして、愛する人をこれ以上傷つけさせない!」
「ジーク、様……」
とても真剣で、覚悟が決まっている横顔に小さく頷くと、ジーク様は一気にアンドレ様へと接近し、剣を振りかぶりました。
「ククッ……ジークぅ……てめぇは最後の最後まで……オレ様にたてつく愚か者として死にてえようだな!」
「死ぬのは貴様だ、愚かな大罪人め!」
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うぅ、いくら相手が酷い人とはいえ……目の前で斬られるのは、見ていて気分の良いものではありません……うっぷ……は、吐きそう……。
「これで……終わりだ!」
「ああ、終わりだな……オレ様の人生はもう終わりだ。だが、終わるのは……てめえらもだ!!」
先程の魔法陣から、風の刃が一つ生成され、真っ直ぐ射出されました。その対象は……ジーク様ではなく、私でした。
「なっ……!?」
「早く行かないと、大切なご主人様が死んじまうぞぉ?」
「シエル、今行く!」
「あ、あぁ……!」
私に向かってくる風の刃を避けないといけないのに、恐怖で足に力が入りません。その間にも、風の刃は周りの瓦礫や壊れた家具を切り裂きながら、私に向かってきます。
も、もう逃げられない……! せめて、近くで倒れているクリス様を守る為に、この身を盾にするしかありません。
そう咄嗟に判断した私は、クリス様の体に覆いかぶさるように丸くなりました。
「…………」
……い、痛い……あれ、痛くない? てっきり体中に痛みが走ると思っていたのに、どこも痛くありません。
もしかして、攻撃が外れたのでしょうか? それが一番ですが……と、とにかく周りの状況を……。
「っ……!?」
ゆっくりと顔を上げると、確かに風の刃は私の目の前にありました。今も薄い緑色の輝いているそれは、恐怖を覚えると共に、美しさも感じるものでした。
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