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第二十八話 一緒にデートに行こう
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城でお世話になるようになってから、一ヶ月の時が過ぎた。今日も朝から湖畔で魔法の練習をしているが、いまだに成果は現れていない。
このままダラダラと過ごしていたら、今年の宮廷魔術師の試験の日程になってしまう。それまでに何とか魔法が使えるようにならないといけないのに、成果は感じられない。その結果、気持ちばかりが焦ってしまう。
「落ち着いて、落ち着いて地脈の力を……この杖に……!」
ただでさえうまくいかないのに、焦ればさらにうまくいかないのは明白だ。だから、必死に自分に言い聞かせて、魔法に集中する。
しかし、いくら集中しても成功するはずもなく……最後にいつもの様に爆発し、尻餅をついてしまった。
「どうしてうまくいかないのかしら……」
ルーク様からやり方は教わった。その通りにやれている自覚もある。でもうまくいかない……やはり、私には魔力がどうこうよりも、根本的に才能が無いのだろうか……。
「弱気になっては駄目よ、私。もう一回……!」
立ち上がってもう一度魔法を使おうとするが、始めてからずっと休みなしで練習していたから、足に力が入らないで、また尻餅をついてしまった。
「シャーロット、まだ練習していたのかい?」
「あ、ルーク様。おかえりなさい。公務は終わったのですか?」
「ああ、今日の分は終わったよ」
朝から公務で出かけていたルーク様が、少し疲れた表情を浮かべながら様子を見に来てくれた。
ここはいつも明るいから、時間の感覚が鈍くなってしまう。ルーク様が戻ってきたということは、もう六時間くらいは経っているということだ。
……なんだか、時間のことを考えたら、急にお腹がすいてきた。お腹の音が鳴って、聞かれなければいいのだけど……。
「随分と疲れているみたいだね。少し休んだ方が良いと思うよ」
「……そうですわね。あ、杖を使いますか?」
「ああ、お願いしてもいいかな?」
「はい、どうぞ」
私から杖を受け取ったルーク様は、少しだけ表情を歪めながらも、杖と私の手を持って小屋に戻っていった。
だいぶ慣れてきたのか、それとも杖が許しているのかは定かではないが、少なくとも杖の拒絶反応が、前よりかは弱くなっている気がする。
「さてと……」
ルーク様は、私と一緒に小屋の中に戻ると、中に魔法陣を描き、その上に杖を置く。すると、杖は宙にフワフワと浮かび始める。
杖を使った研究は、最初こそ念の為に外で行っていたが、最近はもっぱら家の中で行っているのよ。
「この前の術式だと、安定感がなかったからな……そこをどうにかしてあげられれば……」
いつものように独り言をつぶやくルーク様の表情は、真剣そのものだ。
そんなルーク様を、休憩しながら黙って見つめているのが、私の密やかな楽しみだったりする。
『シャーロット、練習、お疲れ様。お茶、飲む? お菓子、食べる?』
「いいのですか? では、ありがたくいただきますわ」
ルーク様が集中して研究しているのを邪魔しないように、いつもよりも小声で話すホウキが、私のためにお茶とクッキーを持ってきてくれた。
今日のお茶はカモミールね。この香りを楽しむだけでも、疲れた体が癒される感じがする。
私は、そんな癒しを感じながら、ルーク様のことを静かに見守り続けた――
****
「んん~……!」
あれから何時間が過ぎただろうか。杖を見つめたり、宙に魔法陣を描いたり、唸ったりと、色々なことをしていたルーク様が、大きく体を伸ばした。
「お疲れ様でした、ルーク様。よければ、お茶を淹れましょうか?」
「いや、大丈夫だよ。シャーロットだって疲れているのだから、僕のことは気にしなくてもいいよ」
「そんな、ルーク様は公務だってされているのですから、私よりも疲れているでしょう?」
「ん~どうだろう? もうずっと公務はしているから、これが当たり前なんだよね」
だからといって、それが疲れない理由にはならない。私だって、実家にいる時には、誰もやりたがらないような仕事をするのが当たり前になっていたが、疲れないわけじゃなかったもの。
『ふたり、お茶!淹れる、 一緒!』
「一緒? ああ、なるほど! たまには一緒にお茶を淹れるのも悪くない! ははっ、僕のホウキは天才だな! きっと主に似ているんだな!」
「ええ、きっとそうですわ」
「じょ、冗談だったんだけどなぁ……」
じょ、冗談? ルーク様が冗談を仰るだなんて……もっと気の利いたことを言えばよかった。
そんな後悔をする私を叱るように、お腹の虫が盛大に鳴いた。
「あっ……い、いまのはその……」
「……シャーロット、もしかして……僕がいない間、何も食べていない?」
「えっと、ご一緒に朝食を食べたの以外ですと、ホウキが用意してくれたクッキーだけですわ」
「なんだって!? ああもう、僕としたことが……研究に夢中になって、シャーロットの空腹の具合を考慮していなかったなんて! 本当に申し訳ない!」
「どうしてルーク様が謝られるのですか? 悪いのは、自己管理ができていない私ですわ」
色々とお世話になっているのに、食事の時間管理まで任せていたら、私は駄目人間になってしまうだろう。
「でも、なにかしてあげないと僕の気が……そうだ、今日はこの後、町に視察に行こうと思っていてね。シャーロットも一緒に行って、食事でもしようじゃないか」
「視察、ですか……でも、それですと視察というより、デートのような……」
「それも兼ねてるかな。視察ってどんな感じなのかとか、未来の妻の紹介とか、デートとかって感じだね。それで、どうかな?」
ルーク様の仕事を近くで見守り、支えられるうえに、生まれて初めてのデートが体験できる……こんなの、断る理由なんて思い浮かばない……のだが。
「魔法の練習もしないで遊んでいていいのかしら……」
「息抜きは必要だよ。ここに来るようになってから、たくさん練習しているだろう?」
「それは……わかりました。少しは息抜きも必要ですわよね。では、是非お供させてくださいませ」
「よかった。ああでも、これはデートでもあるんだから、お供だなんて言って、へりくだる言い方をする必要は無いんだよ」
「はい。それで、すぐに出発しますか?」
「えっと……いや、出発の予定の時間まで、少し時間がある。少し休憩をしてから、出発しようか」
――こうして、今日の予定は滞りなく決まった。
ルーク様とのデート、楽しみだわ……って、浮かれてる場合じゃない。ルーク様にとっては仕事でもあるのだから、気を引き締めないと。
このままダラダラと過ごしていたら、今年の宮廷魔術師の試験の日程になってしまう。それまでに何とか魔法が使えるようにならないといけないのに、成果は感じられない。その結果、気持ちばかりが焦ってしまう。
「落ち着いて、落ち着いて地脈の力を……この杖に……!」
ただでさえうまくいかないのに、焦ればさらにうまくいかないのは明白だ。だから、必死に自分に言い聞かせて、魔法に集中する。
しかし、いくら集中しても成功するはずもなく……最後にいつもの様に爆発し、尻餅をついてしまった。
「どうしてうまくいかないのかしら……」
ルーク様からやり方は教わった。その通りにやれている自覚もある。でもうまくいかない……やはり、私には魔力がどうこうよりも、根本的に才能が無いのだろうか……。
「弱気になっては駄目よ、私。もう一回……!」
立ち上がってもう一度魔法を使おうとするが、始めてからずっと休みなしで練習していたから、足に力が入らないで、また尻餅をついてしまった。
「シャーロット、まだ練習していたのかい?」
「あ、ルーク様。おかえりなさい。公務は終わったのですか?」
「ああ、今日の分は終わったよ」
朝から公務で出かけていたルーク様が、少し疲れた表情を浮かべながら様子を見に来てくれた。
ここはいつも明るいから、時間の感覚が鈍くなってしまう。ルーク様が戻ってきたということは、もう六時間くらいは経っているということだ。
……なんだか、時間のことを考えたら、急にお腹がすいてきた。お腹の音が鳴って、聞かれなければいいのだけど……。
「随分と疲れているみたいだね。少し休んだ方が良いと思うよ」
「……そうですわね。あ、杖を使いますか?」
「ああ、お願いしてもいいかな?」
「はい、どうぞ」
私から杖を受け取ったルーク様は、少しだけ表情を歪めながらも、杖と私の手を持って小屋に戻っていった。
だいぶ慣れてきたのか、それとも杖が許しているのかは定かではないが、少なくとも杖の拒絶反応が、前よりかは弱くなっている気がする。
「さてと……」
ルーク様は、私と一緒に小屋の中に戻ると、中に魔法陣を描き、その上に杖を置く。すると、杖は宙にフワフワと浮かび始める。
杖を使った研究は、最初こそ念の為に外で行っていたが、最近はもっぱら家の中で行っているのよ。
「この前の術式だと、安定感がなかったからな……そこをどうにかしてあげられれば……」
いつものように独り言をつぶやくルーク様の表情は、真剣そのものだ。
そんなルーク様を、休憩しながら黙って見つめているのが、私の密やかな楽しみだったりする。
『シャーロット、練習、お疲れ様。お茶、飲む? お菓子、食べる?』
「いいのですか? では、ありがたくいただきますわ」
ルーク様が集中して研究しているのを邪魔しないように、いつもよりも小声で話すホウキが、私のためにお茶とクッキーを持ってきてくれた。
今日のお茶はカモミールね。この香りを楽しむだけでも、疲れた体が癒される感じがする。
私は、そんな癒しを感じながら、ルーク様のことを静かに見守り続けた――
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「んん~……!」
あれから何時間が過ぎただろうか。杖を見つめたり、宙に魔法陣を描いたり、唸ったりと、色々なことをしていたルーク様が、大きく体を伸ばした。
「お疲れ様でした、ルーク様。よければ、お茶を淹れましょうか?」
「いや、大丈夫だよ。シャーロットだって疲れているのだから、僕のことは気にしなくてもいいよ」
「そんな、ルーク様は公務だってされているのですから、私よりも疲れているでしょう?」
「ん~どうだろう? もうずっと公務はしているから、これが当たり前なんだよね」
だからといって、それが疲れない理由にはならない。私だって、実家にいる時には、誰もやりたがらないような仕事をするのが当たり前になっていたが、疲れないわけじゃなかったもの。
『ふたり、お茶!淹れる、 一緒!』
「一緒? ああ、なるほど! たまには一緒にお茶を淹れるのも悪くない! ははっ、僕のホウキは天才だな! きっと主に似ているんだな!」
「ええ、きっとそうですわ」
「じょ、冗談だったんだけどなぁ……」
じょ、冗談? ルーク様が冗談を仰るだなんて……もっと気の利いたことを言えばよかった。
そんな後悔をする私を叱るように、お腹の虫が盛大に鳴いた。
「あっ……い、いまのはその……」
「……シャーロット、もしかして……僕がいない間、何も食べていない?」
「えっと、ご一緒に朝食を食べたの以外ですと、ホウキが用意してくれたクッキーだけですわ」
「なんだって!? ああもう、僕としたことが……研究に夢中になって、シャーロットの空腹の具合を考慮していなかったなんて! 本当に申し訳ない!」
「どうしてルーク様が謝られるのですか? 悪いのは、自己管理ができていない私ですわ」
色々とお世話になっているのに、食事の時間管理まで任せていたら、私は駄目人間になってしまうだろう。
「でも、なにかしてあげないと僕の気が……そうだ、今日はこの後、町に視察に行こうと思っていてね。シャーロットも一緒に行って、食事でもしようじゃないか」
「視察、ですか……でも、それですと視察というより、デートのような……」
「それも兼ねてるかな。視察ってどんな感じなのかとか、未来の妻の紹介とか、デートとかって感じだね。それで、どうかな?」
ルーク様の仕事を近くで見守り、支えられるうえに、生まれて初めてのデートが体験できる……こんなの、断る理由なんて思い浮かばない……のだが。
「魔法の練習もしないで遊んでいていいのかしら……」
「息抜きは必要だよ。ここに来るようになってから、たくさん練習しているだろう?」
「それは……わかりました。少しは息抜きも必要ですわよね。では、是非お供させてくださいませ」
「よかった。ああでも、これはデートでもあるんだから、お供だなんて言って、へりくだる言い方をする必要は無いんだよ」
「はい。それで、すぐに出発しますか?」
「えっと……いや、出発の予定の時間まで、少し時間がある。少し休憩をしてから、出発しようか」
――こうして、今日の予定は滞りなく決まった。
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