32 / 82
第三十二話 美しい国と民のために
しおりを挟む
「……今のは……?」
こんな場所で、私達以外の声が聞こえたことに驚いて、辺りを見渡す。当然ではあるが、その声の主と思われる存在など、どこにもない。
「どうかしたのかい?」
「誰かが、私達のことを見ながら笑っていたんです」
「誰か? こんなところに?」
「そうですよね……普通の人が、いるはずないですわよね」
きっと私の聞き間違いだろう。そう思っていると、ルーク様は真剣な表情を私に向けた。
「もしかしたら、精霊かもしれないよ」
「精霊? そんなことは……」
私は、お母様が亡くなってから、精霊の声が聞こえなくなってしまった。そんな私に、精霊の声が聞こえるだなんて、考えられない。
「ここには僕ら以外誰もいない。そもそも、普通は空を飛ぶなんてできないからね。でも、精霊なら人間に出来ないことなんて簡単にできるだろうし、見えないことにも納得がいく」
「それは……確かにそうですわ。ですが、どうして私に声が聞こえたのでしょう……?」
「それは僕にもさっぱり……精霊の声が聞こえるってだけでも、僕からしたら凄すぎることだからね」
いくら色々と知っているルーク様といえど、知らないことだってある。ルーク様に頼りっきりになるんじゃなくて、自分で考えないと。
「もし本当に精霊の声が聞こえるようになってきているのなら、とても喜ばしいことだね」
「どうしてですか?」
「君の魔法が使えない原因は、精霊の妨害だって話しただろう? もし彼らと話せるなら、どうして妨害するか聞けるかもしれないじゃないか」
「あっ……!」
声の主が精霊というのもそうだけど、どうして私は、自分のことなのに自分で気づけないのだろう。自分の間抜けさが嫌になる。
「楽観視出来るわけではありませんが、魔法が使えるようになるために、一歩前進したかもってことですのね」
「その通りだ。ははっ、僕達が結婚出来るのも、そう遠くない未来かもしれないね」
だ、だから急に恥ずかしいことを言わないでほしい。恥ずかしくてムズムズしてしまう。
「どうしたんだい、急に背中に顔をうずめて。もしかして、照れているのかな?」
「そ、そんなことはありませんわ。ただ、風が少し冷たいから、隠れただけです」
「ふふっ、そういうことにしておこうか」
今日のルーク様は、少々意地悪かもしれない。でも、そんなルーク様も良いと思っている自分がいる。
「照れてる可愛いシャーロットと、もう少し空中デートを楽しみたいところだけど、そろそろ僕の魔力が限界みたいだ。このまま城に戻って、裂け目を通って帰宅でも良いかな?」
「は、はい。どこかで降りて歩いても大丈夫ですわよ?」
「シャーロットは優しいね。でも、もう少しくらいなら大丈夫だよ。それに、こんなに合法的にシャーロットに沢山触れられる機会を逃すなんて、僕はしたくないなぁ」
「る、ルーク様っ!」
「あははははっ! ごめんよ、もうからかわないから!」
やっぱり今日のルーク様は意地悪だわ! もうっ!
「あー……こんなに笑ったのは久しぶりだ。これもシャーロットに、この素敵な国と民を紹介したおかげかな」
「ルーク様……」
「ここは本当に良い国で、民も素敵な人ばかりだ。君もその目で見て、実感したのではないかい?」
ルーク様の問いに、私は小さく頷いて見せる。
今日の視察兼デートの間に、私は多くの民達が楽しそうに笑ったり、遊んでいたり、お店を切り盛りしたり……多くのことを見た。
それは、ひとえにこの国が豊かで素晴らしく、民も良い人ばかりということの証明に思えた。
「僕はそんな国も彼らも愛している。だからこそ、僕はこの国と民を幸せに導き、誰も不幸にさせない王になりたいんだ」
「はい、あなたならきっと……いえ、必ず目指す王になれますわ」
「シャーロット……ありがとう。君にそう言ってもらえると、とても心強いよ」
満天の星空の明かりでほんのりと見えるルーク様の表情は、その輝きなんて足元にも及ばないほど、キラキラと輝いていた。
その表情を見て、胸の高鳴りを覚えると同時に……私は理解した。
ああ、私はこの人に、人生で初めての恋をしているのだと。
****
無事に城まで戻ってきた後、何事もなく裂け目を通って小屋に戻ってきた私達は、ホウキ達に出迎えられた。
『おかえり!おかえり!』
『たのしかった?』
「ああ、最高だったよ。シャーロットは今日のデート、どうだったかな?」
「すっっっっごく良かったですわ!! こんな素敵な体験、生まれて初めてです!!」
この感動を少しでもルーク様に伝えたくて、溜めに溜めて感想を伝えると、ルーク様は満足げに表情を緩ませた。
「それは何よりだよ。僕も民の普段を生活を改めて見られたし、君と楽しく過ごせて本当に良かった!」
『大成功!』
「それで、あの……次はいつかなぁ……なんて……」
今終わったばかりなのに、もう次のことを気にしているなんて、何ともせっかちというか……それくらい、次にデートや視察が楽しみだ。
「残念ながら、直近ではないかな」
「そうですか……」
「でも、かわりになんとかできる日を探しておくよ」
「いいのですか? ありがとうございます! それで、ルーク様はこの後どうされるのですか? 研究をされるなら、杖をお貸ししますが」
「さすがに寝るよ。あれだけ魔法を使った後だしね」
体を伸ばすルーク様の表情は、確かに疲れているように見える。私をおんぶしたり、お姫様抱っこをしながらの魔法……疲れるのも当然だ
「今日はどちらでお休みで?」
「小屋の方で寝るよ。こっちの方が、起きてすぐに研究しやすいしね」
「では、私はお城で休ませてもらいますわ」
本当は一緒にいたいところだけど、これ以上のワガママはよろしくないのはわかっている。
だから、裂け目で城に帰ろうとしたら、ルーク様が私の肩に手を乗せた。
「どうしましたか?」
ルーク様は、私の問いには答えず、その小さな唇を、私の頬にそっと押し当てた。
やられた方は顔が真っ赤なのに、仕掛けた本人はけろっとした顔をしている。
「さあ、今日は帰って休むと良い」
そのまま時空の裂け目に押し込まれ、一人で城に戻ってきた私は、そのまま自室のベッドに頭からダイブした。
「…………」
急に頬にキスだなんて、ビックリしない方が無理だ。思い出すだけでも、顔から火が出そうだ。
「ああ……うぅ~……無理……むりぃ……!今日は絶対に眠れませんわ……!」
こんな場所で、私達以外の声が聞こえたことに驚いて、辺りを見渡す。当然ではあるが、その声の主と思われる存在など、どこにもない。
「どうかしたのかい?」
「誰かが、私達のことを見ながら笑っていたんです」
「誰か? こんなところに?」
「そうですよね……普通の人が、いるはずないですわよね」
きっと私の聞き間違いだろう。そう思っていると、ルーク様は真剣な表情を私に向けた。
「もしかしたら、精霊かもしれないよ」
「精霊? そんなことは……」
私は、お母様が亡くなってから、精霊の声が聞こえなくなってしまった。そんな私に、精霊の声が聞こえるだなんて、考えられない。
「ここには僕ら以外誰もいない。そもそも、普通は空を飛ぶなんてできないからね。でも、精霊なら人間に出来ないことなんて簡単にできるだろうし、見えないことにも納得がいく」
「それは……確かにそうですわ。ですが、どうして私に声が聞こえたのでしょう……?」
「それは僕にもさっぱり……精霊の声が聞こえるってだけでも、僕からしたら凄すぎることだからね」
いくら色々と知っているルーク様といえど、知らないことだってある。ルーク様に頼りっきりになるんじゃなくて、自分で考えないと。
「もし本当に精霊の声が聞こえるようになってきているのなら、とても喜ばしいことだね」
「どうしてですか?」
「君の魔法が使えない原因は、精霊の妨害だって話しただろう? もし彼らと話せるなら、どうして妨害するか聞けるかもしれないじゃないか」
「あっ……!」
声の主が精霊というのもそうだけど、どうして私は、自分のことなのに自分で気づけないのだろう。自分の間抜けさが嫌になる。
「楽観視出来るわけではありませんが、魔法が使えるようになるために、一歩前進したかもってことですのね」
「その通りだ。ははっ、僕達が結婚出来るのも、そう遠くない未来かもしれないね」
だ、だから急に恥ずかしいことを言わないでほしい。恥ずかしくてムズムズしてしまう。
「どうしたんだい、急に背中に顔をうずめて。もしかして、照れているのかな?」
「そ、そんなことはありませんわ。ただ、風が少し冷たいから、隠れただけです」
「ふふっ、そういうことにしておこうか」
今日のルーク様は、少々意地悪かもしれない。でも、そんなルーク様も良いと思っている自分がいる。
「照れてる可愛いシャーロットと、もう少し空中デートを楽しみたいところだけど、そろそろ僕の魔力が限界みたいだ。このまま城に戻って、裂け目を通って帰宅でも良いかな?」
「は、はい。どこかで降りて歩いても大丈夫ですわよ?」
「シャーロットは優しいね。でも、もう少しくらいなら大丈夫だよ。それに、こんなに合法的にシャーロットに沢山触れられる機会を逃すなんて、僕はしたくないなぁ」
「る、ルーク様っ!」
「あははははっ! ごめんよ、もうからかわないから!」
やっぱり今日のルーク様は意地悪だわ! もうっ!
「あー……こんなに笑ったのは久しぶりだ。これもシャーロットに、この素敵な国と民を紹介したおかげかな」
「ルーク様……」
「ここは本当に良い国で、民も素敵な人ばかりだ。君もその目で見て、実感したのではないかい?」
ルーク様の問いに、私は小さく頷いて見せる。
今日の視察兼デートの間に、私は多くの民達が楽しそうに笑ったり、遊んでいたり、お店を切り盛りしたり……多くのことを見た。
それは、ひとえにこの国が豊かで素晴らしく、民も良い人ばかりということの証明に思えた。
「僕はそんな国も彼らも愛している。だからこそ、僕はこの国と民を幸せに導き、誰も不幸にさせない王になりたいんだ」
「はい、あなたならきっと……いえ、必ず目指す王になれますわ」
「シャーロット……ありがとう。君にそう言ってもらえると、とても心強いよ」
満天の星空の明かりでほんのりと見えるルーク様の表情は、その輝きなんて足元にも及ばないほど、キラキラと輝いていた。
その表情を見て、胸の高鳴りを覚えると同時に……私は理解した。
ああ、私はこの人に、人生で初めての恋をしているのだと。
****
無事に城まで戻ってきた後、何事もなく裂け目を通って小屋に戻ってきた私達は、ホウキ達に出迎えられた。
『おかえり!おかえり!』
『たのしかった?』
「ああ、最高だったよ。シャーロットは今日のデート、どうだったかな?」
「すっっっっごく良かったですわ!! こんな素敵な体験、生まれて初めてです!!」
この感動を少しでもルーク様に伝えたくて、溜めに溜めて感想を伝えると、ルーク様は満足げに表情を緩ませた。
「それは何よりだよ。僕も民の普段を生活を改めて見られたし、君と楽しく過ごせて本当に良かった!」
『大成功!』
「それで、あの……次はいつかなぁ……なんて……」
今終わったばかりなのに、もう次のことを気にしているなんて、何ともせっかちというか……それくらい、次にデートや視察が楽しみだ。
「残念ながら、直近ではないかな」
「そうですか……」
「でも、かわりになんとかできる日を探しておくよ」
「いいのですか? ありがとうございます! それで、ルーク様はこの後どうされるのですか? 研究をされるなら、杖をお貸ししますが」
「さすがに寝るよ。あれだけ魔法を使った後だしね」
体を伸ばすルーク様の表情は、確かに疲れているように見える。私をおんぶしたり、お姫様抱っこをしながらの魔法……疲れるのも当然だ
「今日はどちらでお休みで?」
「小屋の方で寝るよ。こっちの方が、起きてすぐに研究しやすいしね」
「では、私はお城で休ませてもらいますわ」
本当は一緒にいたいところだけど、これ以上のワガママはよろしくないのはわかっている。
だから、裂け目で城に帰ろうとしたら、ルーク様が私の肩に手を乗せた。
「どうしましたか?」
ルーク様は、私の問いには答えず、その小さな唇を、私の頬にそっと押し当てた。
やられた方は顔が真っ赤なのに、仕掛けた本人はけろっとした顔をしている。
「さあ、今日は帰って休むと良い」
そのまま時空の裂け目に押し込まれ、一人で城に戻ってきた私は、そのまま自室のベッドに頭からダイブした。
「…………」
急に頬にキスだなんて、ビックリしない方が無理だ。思い出すだけでも、顔から火が出そうだ。
「ああ……うぅ~……無理……むりぃ……!今日は絶対に眠れませんわ……!」
15
あなたにおすすめの小説
お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました
さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア
姉の婚約者は第三王子
お茶会をすると一緒に来てと言われる
アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる
ある日姉が父に言った。
アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね?
バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た
【完】婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました
さこの
恋愛
婚約者の侯爵令嬢セリーナが好きすぎて話しかけることができなくさらに近くに寄れないジェフェリー。
そんなジェフェリーに嫌われていると思って婚約をなかった事にして、自由にしてあげたいセリーナ。
それをまた勘違いして何故か自分が選ばれると思っている平民ジュリアナ。
あくまで架空のゆる設定です。
ホットランキング入りしました。ありがとうございます!!
2021/08/29
*全三十話です。執筆済みです
拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
さこの
恋愛
ある日婚約者の伯爵令息に王宮に呼び出されました。そのあと婚約破棄をされてその立会人はなんと第二王子殿下でした。婚約破棄の理由は性格の不一致と言うことです。
その後なぜが第二王子殿下によく話しかけられるようになりました。え?殿下と私に婚約の話が?
婚約破棄をされた時に立会いをされていた第二王子と婚約なんて無理です。婚約破棄の責任なんてとっていただかなくて結構ですから!
最後はハッピーエンドです。10万文字ちょっとの話になります(ご都合主義な所もあります)
田舎者とバカにされたけど、都会に染まった婚約者様は破滅しました
さこの
恋愛
田舎の子爵家の令嬢セイラと男爵家のレオは幼馴染。両家とも仲が良く、領地が隣り合わせで小さい頃から結婚の約束をしていた。
時が経ちセイラより一つ上のレオが王立学園に入学することになった。
手紙のやり取りが少なくなってきて不安になるセイラ。
ようやく学園に入学することになるのだが、そこには変わり果てたレオの姿が……
「田舎の色気のない女より、都会の洗練された女はいい」と友人に吹聴していた
ホットランキング入りありがとうございます
2021/06/17
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!
真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう
さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」
殿下にそう告げられる
「応援いたします」
だって真実の愛ですのよ?
見つける方が奇跡です!
婚約破棄の書類ご用意いたします。
わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。
さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます!
なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか…
私の真実の愛とは誠の愛であったのか…
気の迷いであったのでは…
葛藤するが、すでに時遅し…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる