【完結】お飾りの婚約者としての価値しかない令嬢ですが、少し変わった王子様に気に入られて溺愛され始めました

ゆうき

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第三十五話 久しぶりの社交界へ

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 楽しくて幸せな時間というものは、あっという間に過ぎていくものだ。気が付いたらもうパーティーの時間となり、使用人が私達を呼びに来た。

「失礼します。お時間ですので、ご移動くださいませ」

 ああ、もう幸せな一時は終わってしまうのね。出来ることなら、もっとルーク様と二人きりでいたかった。

「わかった。シャーロット、行こうか」

「はい」

 もはや移動する時は、当たり前になってきたエスコートをされながら、一緒に部屋を出て行くと、一人の男性と鉢合わせた。

 この人は……国王様と謁見をした時に、ハリー様と一緒にいた人だ。
 小柄な私だと、見上げないと顔が見えないほど大きいが、子供のように純粋な笑顔が特徴的なこの人は、アルバート・クレマン第三王子様。ルーク様のもう一人の実弟だ。

「あ~ルークお兄ちゃん。間に合って良かったよぉ」

「アルバート、どうかしたのかい? 僕に何か用事かな?」

「ううん、ルークお兄ちゃんじゃなくてねぇ。そっちのお嫁さん~」

「わ、私でございますか?」

 内心では、お嫁さんと言われて嬉しく思ったが、一瞬にしてその浮ついた心は消えた。

 何故なら、一瞬だけだったが、アルバート様から言いようのない悪寒を感じたからだ。

「ほら、ぼく達ってほとんど話したことがないでしょ~? 家族になるのに、知らないって悲しいからねぇ。だから、挨拶をしておこうって思って~」

 この人に家族と言われると、形容しがたい嫌悪感を感じる。
 なにも間違ったことは言っていないはずだが、事前にこの人もハリー様と同じく、女性に酷いことをすると聞いているのだから、当然ではある。

「そうだったんだね。ごめんよ、僕の配慮が足りなかったよ」

「大変失礼いたしました。その……シャーロット・ベルナールと申します」

「いいんだよぉ。こうしてちゃんと会えたからねぇ。それにしてもルークお兄ちゃん、こんな美人で可愛らしい女性と婚約できるなんて、羨ましいなぁ。本当に……羨ましいなぁ」

「ひっ……」

 悪寒は更に強くなり、思わず小さな悲鳴を上げてしまった。

 ハリー様の時も、ルーク様と兄弟と思えないほどの嫌悪感があったが、この人も好きになれそうもない。

 しかし、ここでルーク様の後ろに隠れてしまえば、これから先もルーク様に頼って逃げてしまうようになるだろう。私は……ルーク様の妻として支えると決めたのだから、逃げてはいけないわ。

「お、お褒めにあずかり、大変恐縮にございます。本当でしたら、もっと交流を深めたいところではございますが、パーティーの開始時刻が間もなくですので」

「君はとっても真面目だねぇ。それじゃあ、ぼくも向かうとしようかな~。ばいば~い」

 巨人といっても差し支えないくらい見た目に反して、可愛らしく手を振りながら去っていくアルバート様。
 ギャップが可愛いという人がいるかもしれないが……私には、恐ろしく見える。

「シャーロット、大丈夫かい?」

「はい……なんといいますか、そこが知れないお方ですわね……」

「いつも子供みたいにニコニコしているけど、彼もハリーと同類の人間だから、気をつけた方が良い」

 そうね、いつもルーク様が一緒にいてくださるわけじゃないのだから、いざという時は自分で自分を守れるように、気をつけておかないと。

「さあ、行こうか。こっちだよ」

 ルーク様に手を引かれてたどり着いた場所は、会場の裏口だった。てっきり表から入るものだと思っていたから、少々驚きだ。

「普通なら、既に会場に入って色々な人と挨拶をするんだけどね。今回は少々事情が異なるから、婚約の発表になったら表に出る算段になっているんだ」

「事情とは、私の消息についてですか?」

「ああ。混乱するのは避けられないだろうから、せめて発表の時にまで先延ばしにしようってことさ」

 私としても、私のせいでせっかくのパーティーが台無しになるのは嫌だから、その配慮はとてもありがたい。

「ルーク王子、こちらの控室でお待ちください」

「わかった。案内してくれて、ありがとう」

 裏口から入ってすぐのところにあった小さな控室に入ると、そこにあったソファに私を座らせてくれた。

「ルーク様、今のうちに確認しておきたいのですが……挨拶の際に、私はどうすればよろしいでしょうか?」

「う~ん、特になにかしてほしいことはないかな? 僕が君のことを紹介するから、挨拶をしてくれればいいかなってぐらいだね。ああ、もしかして王族の婚約の発表だから、なにか普通と違うことを要求されると思った?」

「はい。私か存じ上げない、王家のしきたりのようなものがあるかもと思いまして」

「ずいぶん昔は、儀式みたいなことはあったという記録はあるけど、今はそういうのはないよ。だから、いつもパーティーに参加していた時のように、普通に振舞っていれば大丈夫さ」

 いつも通り? そう言われても……パーティーに参加すると、基本的に誰ともかかわらないように、隅っこの方にいた。それをいつも通りしたら、ルーク様の婚約者として相応しいとは言えない。

 ……とりあえず、ルーク様と一緒に行動して、挨拶が必要だったら、その都度行動をすればいいかしら? 貴族とお話するのは、あまり得意ではないけど……頑張らなきゃ。

「お待たせいたしました。どうぞこちらに」

 私達を呼びに来てくれた男性の後についていくと、大きな扉の前に到着した。

「ルーク様、ただいま国王様がご挨拶と、あなた様の婚約のお話をされてますので、それが終わり次第、会場に入場をお願いいたします」

「うん、わかった」

 控室を後にして、会場の入口までやってきたが、防音がしっかりしているのか、ここには声が聞こえてこない。
 でも、彼には中の状況はわかっているようで、すぐに合図を出してくれた。

「行こうか」

「はい」

 ルーク様にエスコートされながら、ゆっくりと会場に入っていくと、鳴り響いていた拍手が止み、参加者の視線が一斉に私に集中した。
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