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第三十八話 魅了魔法
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私達の婚約を発表したパーティーから一週間後の夜、私は城の自室でのんびりと本を読んで過ごしていた。
『シャーロット、僕がオススメした本はどうだい?』
「とても興味深く読ませてもらってますわ。ありがとうございます」
読んでいた本は、魔法の歴史書だ。文字を読むのが得意じゃない私でも読みやすいからと、ルーク様に薦められて読んでみたら、想像以上に面白かった。
まだ全部は読めてないから、寝る前とかにコツコツと読み進めようと思う。
「それにしても、こんな遅い時間に公務が入るだなんて、驚きですわ」
『僕も想定外だけど、公務なら仕方がないさ』
今日は、ここからとても遠い場所でパーティーが行われるそうで、それに出席するために出かけている。
遠いのもそうだが、何よりもパーティーの開始時刻が遅い。一般的なパーティーの開始時刻よりも、二時間は遅いだろう。
そんなことが重なった結果、今日はほとんどルーク様と過ごせていない。寂しくて仕方がないわ……早くルーク様と一緒にお茶を飲みながら、お喋りをしたい。
「どれくらいでお戻りになれそうですか……あら、ルーク様?」
『…………』
お話していたのに、ルーク様の人形は突然動かなくなり、何も喋らなくなってしまった。
急に公務で忙しくなってしまったのだろうか? でも、今まではどんな状況だったとしても、接続を切る時は事前に教えてくれていたのに……。
「なにかしら……なんだか、嫌な予感がしますわ……」
「へぇ、すっごいねぇ。小動物ってそういう勘に優れてる感じ~?」
「えっ……!?」
のんびりとした声が、突然部屋の中に聞こえてきた。それに驚いて振り返ると、そこにはアルバート様がニコニコしながら立っていた。
「あ、アルバート様? どうして……部屋には鍵がかかってたはずなのに……」
「そんな鍵、ちょっと力を入れるだけで壊れちゃうじゃん? 意味ないってぇ~」
鍵を壊すって、もしかして魔法で……いや、この城は魔法で壊れないように、全てのものに耐性があると聞いたことがある。
ということは、本当に文字通り、力を入れて壊したんだ。これだけの屈強な肉体ならそれくらい容易いのは、想像できる。
「……何かご用でしょうか。生憎ですが、ルーク様は席を外しておりますわ」
「知ってるよぉ。ぼくが用があるのは、ルークお兄ちゃんじゃなくて、君なんだよぉ~」
「私……?」
目的が私と知った瞬間、一瞬で嫌な予感が確信に変わった。
あまり無い開始時間でのパーティーの参加、突然切れた接続、私に用があるアルバート様……間違いない、確実に彼……いえ、彼らは私に何かしようとしている!
魔法で何とか対抗をしようにも、私の魔法なんて子供騙しの域にしか達していない。それなら、早く逃げるしかないが……窓からは逃げられないし、出入り口もアルバート様の後ろだ。逃げられるとは思えない。
残った方法はただ一つ……この部屋にある裂け目を通って、逃げるしかない。
そう思い、私は杖を出して振ることで、裂け目を出そうとした。
「……ど、どうして……?」
いつもと同じようにしているのに、何故か裂け目が開かれない。何度も何度も試すけど、結果は同じだ。
「どうしてですの!? ひ、開きなさい!」
「無駄無駄ぁ~。この部屋にはね、とある魔道具を使って、ルークお兄ちゃんの魔力を阻害しているんだよぉ」
阻害ですって? そ、そうか! だから突然ルーク様の人形の接続が切れたり、裂け目が開かなくなったのね!
「そこまでして、私に一体何の用があるのですか!」
「そんなに怯えないでよぉ。ちょ~っとぼく達に協力してほしいだけだからさぁ」
「さ、触らないでください!」
アルバート様は、じりじりと私に詰め寄り、私の顎をクイっと持ち上げた。
ルーク様と同じ瞳の色で、少しだけクリッとした目は、一見すると純粋な子供のような目が、突然ぼんやりとピンク色に染まりだし……私の頭も、次第にぼんやりとしはじめた。
「は、なに……これ……あ、頭が……」
「ふふっ、すごいでしょ~。ぼくの魅了魔法はね、どの属性にも属していない、珍しい魔法なんだよぉ。ほぉら、だんだんとぼくのことが魅力的になってきたねぇ」
「あ、あぁ……」
魅了魔法? なんなのそれ、そんな魔法……聞いたことも……だ、だめ……頭が……ボーっとして……だんだん、アルバートさまが……あはっ、アルバートさまぁ……。
「そうそう、良い子だねぇ。そうやってぼくに身も心も委ねて……ルークお兄ちゃんのことなんて考えずに、ぼくだけを見て……そして、ぼくのものになるんだ……それが、君のとっての幸せだよぉ……」
わたしの、しあわせ……そうよね……このひとのものになれば……わたし、しあわせ……。
しあわせ……しあわせ……しあわせ……。
『シャーロット、僕がオススメした本はどうだい?』
「とても興味深く読ませてもらってますわ。ありがとうございます」
読んでいた本は、魔法の歴史書だ。文字を読むのが得意じゃない私でも読みやすいからと、ルーク様に薦められて読んでみたら、想像以上に面白かった。
まだ全部は読めてないから、寝る前とかにコツコツと読み進めようと思う。
「それにしても、こんな遅い時間に公務が入るだなんて、驚きですわ」
『僕も想定外だけど、公務なら仕方がないさ』
今日は、ここからとても遠い場所でパーティーが行われるそうで、それに出席するために出かけている。
遠いのもそうだが、何よりもパーティーの開始時刻が遅い。一般的なパーティーの開始時刻よりも、二時間は遅いだろう。
そんなことが重なった結果、今日はほとんどルーク様と過ごせていない。寂しくて仕方がないわ……早くルーク様と一緒にお茶を飲みながら、お喋りをしたい。
「どれくらいでお戻りになれそうですか……あら、ルーク様?」
『…………』
お話していたのに、ルーク様の人形は突然動かなくなり、何も喋らなくなってしまった。
急に公務で忙しくなってしまったのだろうか? でも、今まではどんな状況だったとしても、接続を切る時は事前に教えてくれていたのに……。
「なにかしら……なんだか、嫌な予感がしますわ……」
「へぇ、すっごいねぇ。小動物ってそういう勘に優れてる感じ~?」
「えっ……!?」
のんびりとした声が、突然部屋の中に聞こえてきた。それに驚いて振り返ると、そこにはアルバート様がニコニコしながら立っていた。
「あ、アルバート様? どうして……部屋には鍵がかかってたはずなのに……」
「そんな鍵、ちょっと力を入れるだけで壊れちゃうじゃん? 意味ないってぇ~」
鍵を壊すって、もしかして魔法で……いや、この城は魔法で壊れないように、全てのものに耐性があると聞いたことがある。
ということは、本当に文字通り、力を入れて壊したんだ。これだけの屈強な肉体ならそれくらい容易いのは、想像できる。
「……何かご用でしょうか。生憎ですが、ルーク様は席を外しておりますわ」
「知ってるよぉ。ぼくが用があるのは、ルークお兄ちゃんじゃなくて、君なんだよぉ~」
「私……?」
目的が私と知った瞬間、一瞬で嫌な予感が確信に変わった。
あまり無い開始時間でのパーティーの参加、突然切れた接続、私に用があるアルバート様……間違いない、確実に彼……いえ、彼らは私に何かしようとしている!
魔法で何とか対抗をしようにも、私の魔法なんて子供騙しの域にしか達していない。それなら、早く逃げるしかないが……窓からは逃げられないし、出入り口もアルバート様の後ろだ。逃げられるとは思えない。
残った方法はただ一つ……この部屋にある裂け目を通って、逃げるしかない。
そう思い、私は杖を出して振ることで、裂け目を出そうとした。
「……ど、どうして……?」
いつもと同じようにしているのに、何故か裂け目が開かれない。何度も何度も試すけど、結果は同じだ。
「どうしてですの!? ひ、開きなさい!」
「無駄無駄ぁ~。この部屋にはね、とある魔道具を使って、ルークお兄ちゃんの魔力を阻害しているんだよぉ」
阻害ですって? そ、そうか! だから突然ルーク様の人形の接続が切れたり、裂け目が開かなくなったのね!
「そこまでして、私に一体何の用があるのですか!」
「そんなに怯えないでよぉ。ちょ~っとぼく達に協力してほしいだけだからさぁ」
「さ、触らないでください!」
アルバート様は、じりじりと私に詰め寄り、私の顎をクイっと持ち上げた。
ルーク様と同じ瞳の色で、少しだけクリッとした目は、一見すると純粋な子供のような目が、突然ぼんやりとピンク色に染まりだし……私の頭も、次第にぼんやりとしはじめた。
「は、なに……これ……あ、頭が……」
「ふふっ、すごいでしょ~。ぼくの魅了魔法はね、どの属性にも属していない、珍しい魔法なんだよぉ。ほぉら、だんだんとぼくのことが魅力的になってきたねぇ」
「あ、あぁ……」
魅了魔法? なんなのそれ、そんな魔法……聞いたことも……だ、だめ……頭が……ボーっとして……だんだん、アルバートさまが……あはっ、アルバートさまぁ……。
「そうそう、良い子だねぇ。そうやってぼくに身も心も委ねて……ルークお兄ちゃんのことなんて考えずに、ぼくだけを見て……そして、ぼくのものになるんだ……それが、君のとっての幸せだよぉ……」
わたしの、しあわせ……そうよね……このひとのものになれば……わたし、しあわせ……。
しあわせ……しあわせ……しあわせ……。
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