【完結】お飾りの婚約者としての価値しかない令嬢ですが、少し変わった王子様に気に入られて溺愛され始めました

ゆうき

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第四十三話 照れまくり、失敗しまくり

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 その日から、私の魔法の猛特訓が始まった。今までは魔法を発動させるための練習だったが、今は地脈の力をうまくコントロールし、魔法として制御できるようになるための練習だ。

「駄目だ、まだ力が大きい! もっと地脈の力を小分けにして、一つずつ打ち出すんだ!」

「はいっ!」

 特訓は想像以上に地味で、でもとてもつらいものだった。手順としては、地脈の力を杖に溜め込み、それを一気に放つのではなく、細かくして的に当てるというものだ。

 言葉にすると、さほど難しいようには聞こえないかもしれないが、強大な地脈の力を保つこと自体が難しいのに、それを小分けにして一つずつ打ち出すというのが、あまりにも負担が大きい。油断すると、力が抑えきれなくなってしまう。

 これだけ大変な特訓を、既に二週間は続けているというのに、まだ結果には繋がっていない。

「ぜぇ……はぁ……な、なかなかうまくいきませんわね……」

「本格的に力が使えるようになったのは今日からなんだから、仕方がないさ。これですぐに魔法がコントロールできるようになったら、僕は嫉妬で狂ってしまうよ」

 体中から滝のように汗を流して座り込む私に、ルーク様は冗談を言いながら水が入った水筒を手渡してくれた。

「たくさん練習したから、長めに休憩をした方が良い。もしよければ、僕が飲ませてあげようか?」

「もう、また冗談を……」

「冗談じゃないんだけどなぁ」

「……ちなみにですが、飲ませるってどうやるのですか?」

 少し気になって問いかけると、ルーク様は私から水筒を受け取り、中の水を口に含んだ。そして、そのまま私に近寄ってきて……。

「ちょ、お待ちくださいませ! さすがにそれは恥ずかしすぎますから!」

「ごくんっ……あはは、照れて顔を真っ赤にして、シャーロットは可愛いなぁ」

 顔どころか、きっと耳まで真っ赤になっているに違いない。それくらい、ルーク様がやろうとしていたことは、恥ずかしすぎる。

 だって……確実に口移しで飲ませようとしていたもの。

「とにかく、自分で飲みますから」

「わかったよ。はい、どうぞ」

「ありがとうございます。ごくっ……ごくっ……ふぅ」

 あっ……これって、思い切り間接キスだわ……ま、まあ直接キスはしているのだから、今更間接程度で……うん、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい……。

「ルーク様、そろそろ公務の時間なのではありませんか?」

「大丈夫、もう少しいられるよ。少しでも、君と一緒に過ごしたいからね」

「……わ、私も同じ気持ちではございますが……うぅ、恥ずかしい……」

 ここに来た時は、こんな気持ちになるだなんて、思ってもなかったのに……。

「このまま君の愛らしい姿を堪能したいけど、出発前に少し研究をしたいから、杖を貸してもらえるかな?」

「あ、はい。もちろんです」

 手に持っていた杖をルーク様に手渡した瞬間、私はとても重要なことに気が付いた。

 私は今、過酷な練習のせいで酷く汗をかいている。当然、手汗も酷い。その汗が、たくさんついている杖をルーク様に……!

「そ、そんな恥ずかしいこと、耐えられませんっ!」

「しゃ、シャーロット??」

 私は杖を抱えるようにその場を走りだし、水位が低くなってしまった湖に杖を勢いよく浸けると、ジャバジャバと洗った。

 いきなり変な行動をして、ルーク様に変なふうに思われてしまったかもしれないけど、私の汗が染みこんだ杖を渡すよりかはいいだろう。

「お待たせしました」

 綺麗になった杖を、持ってきているタオルで綺麗に拭きとった後、改めてルーク様に差し出した。

「あ、ありがとう。それにしても、急に洗ってどうしたんだい?」

「えっと……わ、私の汗で汚れているかと思いまして……」

「そんなこと、気にしなくてもいいのに」

「私が気にしますの! はい、どうぞ!」

 ルーク様に杖を半ば押し付けるように手渡してから、先に小屋の中に戻る。

 はぁ、お付き合いをするようになってから、ドキドキさせられる頻度が格段に増えている。何とか慣れないと、身が持たなさそうだ。

「すー……はー……おちつくのよ、私……あれ……よく考えたら、あのタオルって……」

 深く深呼吸をしたおかげで、冷静さを取り戻したところまではよかったが、とあることに気がついてしまった。

 私は、いつも魔法の練習をする時に、汗をかいても良いように、タオルを常備している。
 もちろん、今日もそのタオルは使っていて……汗がたくさん染みついたタオルで、杖を……ふい、て……!?

「う、うぅぅぅぅ……!?」

 自分のしてしまったことが、むしろ逆効果になっていることに気がついてしまった私は、声にならない声を漏らしながら、隠れるようにベッドの中に飛び込み、掛け布団を頭からかぶった。

 この行為が、極限まで恥ずかしくなった私への、とどめの一撃にあるとは知らずに……。

「あっ……このベッド……ルーク様の……ま、間違えた……!?」

 ルーク様が元気になった後、ソファーで眠っていたのだが、さすがにずっとするのは良くないと私が伝えた結果、今ではベッドが二つ置いてある。

 本当なら、自分の布団に飛び込むはずだったのだが、恥ずかしさで頭が回っていなかった結果、ルーク様のベッドに潜り込んでしまった。

「る、ルーク様の匂いがしますわ……ま、まるでルーク様に、身体全部を包み込まれているみたい……」

 そう考えたら、ついに恥ずかしさの限界に達した私は、きゅう……と変な声を漏らしながら、意識を手放した。

 ……余談だが、この後にすぐに目が覚めたのだけど、いつも見る悪夢ではなく、ルーク様と……その、仲睦まじくしているすごい夢を見るのだが、この時の私は知る由もなかった。

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