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第四十二話 魔法が使える理由
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「シャーロット、朝だよ。そろそろ起きて」
「んん……」
体を小さく揺さぶられる感覚に反応して目を開けると、そこにはにこやかに笑うルーク様の姿があった。
わざわざ起こしに部屋まで来て……違う、昨日から城の部屋じゃなくて、小屋で寝るようになったのよね。
昨晩は、まだ本調子じゃないルーク様にベッドで寝てもらったから、ソファーで寝たのだけど……思ったよりも眠れたわ。
ちなみに、ベッドをどっちに使ってもらうかと、一悶着あったのだが、わざわざ蒸し返す必要は無いわよね。
「こうしてシャーロットの寝顔や寝起き姿を見られるなんて、まさに役得だね。これなら、最初から城じゃなくて、こっちで休んでもらえばよかったかな」
「は、恥ずかしいからあまり見ないでくださると……」
いつもルーク様に会う前は、最低限の身だしなみをしている。しかし、寝起きは当然そんなことは出来ないため、みっともない姿を見られてしまう可能性がある。
「そんなに気にすることはないじゃないか。将来的には一緒に寝るんだよ?」
「い、一緒に!? そんな……わ、私……困りますわ……」
「もしかして、嫌だったかな? あはは、つい先走りすぎちゃったかな」
笑ってはいるが、明らかに残念そうだ。私のせいでそんな悲しそうな顔をさせたと思うと、胸が張り裂けそうになる。
「ち、違いますわ! 嫌というわけではなくて……その、想像したら恥ずかしいといいますか……絶対に、毎日緊張と嬉しさで眠れなくなるといいますか……」
自分で言っていて、顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。
だって、毎日寝る時に隣にルーク様がいるのよ? それも、心臓の鼓動や寝息が聞こえるくらい、ぴったりくっついて!
……あっ、よく考えたら、くっついてたら絶対に眠りにくいわね……わ、私ったら勝手に盛り上がって、なんてハレンチな妄想を……!?
「ふふっ、ここで出会った時から綺麗な人だとは思っていたけど、以前よりも感情表現を沢山してくれるからか、愛らしさまで加わっているね」
「う、うぅぅぅぅ……! わ、私……外に顔を洗ってきます!」
「ああ、いってらっしゃい」
全く余裕が無い私とは対照的に、余裕たっぷりのルーク様に見送られて小屋を飛び出し、今日もキラキラと美しく輝く湖にやってきた。
「もう、ルーク様ったら……以前から、遠慮なしに感情表現をする節はありましたが、急激にストレートになりすぎですわ……」
少しでも頭を冷やすために、いつもより多めに水を顔にかける。おかげで、少しだけ落ち着けた……気がする。
「このまま戻ったら、またルーク様にドキドキさせられそうですし……朝食の前に、少し魔法の練習をしていきましょう」
私はいつもの様に杖を出すと、これまたいつもと同じやり方で魔法の準備に入る。すると、いつもとは明らかに違う感じがした。
「こ、これは……!?」
以前、ようやく初めての成功を収めてから、進展はなかった魔法だったのだが……あの時とは比にならないくらい、杖に力が集まっていくのが分かる。
その力は強大で、今にもここで大爆発を起こしてしまうのではないかと錯覚するくらいだ。
「ま、不味いですわ……!」
私は、急いで杖に集まっていた力を、一斉に湖に向かって放つと……溜め込んだ大きな力が、湖の上で大爆発を起こした。
その振動は凄まじく、辺りに地響きを起こしながら、大きな波まで発生させるほどだった。
「な、なにごとだ!?」
「ルーク様! こちらは危険です!」
急いで逃げようとしたところに、血相を変えたルーク様が見に来てくれた。それとほぼ同時に、波が間近にまで迫ってきていた。
この非常事態に、ルーク様はすかさず反応して魔法でどうにかしようとしてくれたが、まだ本調子ではないようで、反応が鈍い。
このままでは、二人共波に飲み込まれてしまう。私がどうにかしないと!
「やり方なんてわからないけど……お願い、私の魔法! 私の大切な人を守って!!」
杖に力を込めて掲げると、杖の先に魔法陣が描かれた。その魔法陣は私達の足元で移動して巨大に広がり……巨大な岩の壁となった。
「なんですの、これは……とにかく、このまま持ってくださいませ!」
私の声に応えるように、壁はさらに強固なものとなり、無事に波を防ぎきってくれた。
とりあえず一安心ではあるけど……一体、何がどうしてこうなったのだろうか。いくら自分達は無事とはいえ、辺りはビショビショだし、湖の水がだいぶ減ってしまった。
『あはは、面白いね! あんな爆発、初めてみたよ! それに、慌ててる顔が面白いや!』
『いいじゃない、可愛くて! ここに来た時の、復讐で頭がいっぱいだった時より、よっぽど親近感が湧くわ!』
「えっ……?」
自分の身に起こったことに困惑していると、湖の方から二つの小さな光がフワフワと飛んできて、私達の周りを飛び回る。
それも、この光達と思われる話し声が、しっかりを聞こえてきている。
「あ、あなた達は……!?」
『ありゃ、見つかっちゃった! 逃げろ逃げろ~!』
『ちょっと、待ちなさいよ~!』
「ま……待って!!」
私の呼びかけも虚しく、光達は瞬く間に消えてしまい、声も聞こえなくなってしまった。
「シャーロット、大丈夫か!?」
「はい、私は何とも……ごめんなさい、私のせいで……」
「シャーロットのせい? どうしてだい? 君はあんな凄い魔法を使って、僕を守ってくれたじゃないか。むしろ、謝るのは僕の方だ。君が危険だというのに、一瞬反応が遅れて――」
「違うんです! さっきの地響きも、ここに迫ってきた波も、私が原因なんです!」
「はっ……? しゃ、シャーロットが……? なにかの冗談だろう?」
ルーク様が驚くのも無理はない。使用者である私が全くわかっていないのだから。
とはいえ、何も説明をしないわけにはいかない。だから、私のわかる範囲での説明をした。
「突然魔法が使えて、精霊と思われる姿を見て、声も聞こえた……」
「信じていただけないと思いますが、事実なのです」
「君を疑うわけがないだろう……といいたいが、この目で実際に見てみたい。なにかあったら僕が対処するから、もう一度魔法を使ってもらえるかい?」
「わかりました」
私は、先程と同じように魔法の詠唱を行うと、やはり杖にどんどんと大きな力が集まり始めた。
このままだと、また先ほどの様に抑えきれなくなり、爆発を起こしてしまう。
しかし、そこはさすがのルーク様だ。どういった魔法かはわからないが、指をパチンっと鳴らすだけで、杖に集まっていた力は霧散し、消えていった。
「ありがとう。どういうことかわからないが……確実に、精霊の邪魔が減っているのはわかった」
「どうしてでしょう? 精霊に許してもらえるようなことって、なにかあったでしょうか?」
初めて使えた時と今回で、なにか精霊に許されるようなことをしたか考えていると、とあることが頭に浮かんだ。
「以前使えるようになった時の話なのですが……お恥ずかしながら、あなたに対して、明確な好意を持って間もない頃でした。それで、今回はお付き合いをするようになってから間もなく……これって、何か関係があるのではないでしょうか?」
「ふむ……ちなみに、その精霊と思われる生き物は、何か言っていたかい?」
「確か、面白いとか、復讐で頭がいっぱいの時よりも、親近感が湧くと……」
「なるほど。これは仮説だが……君は今まで、復讐に囚われていた。しかし、僕に好意を持ってくれたり、交際を始めたことで、憎しみが薄れた結果、精霊に多少は好かれるようになった……とか?」
……確かに、ここに来る前は復讐のことしか頭に無かったが、今はルーク様のことばかり考えている気がする。もちろん、復讐するのは忘れたことはないけど。
「なんにせよ、これでシャーロットはどんどん魔法が使えるようになるね! いやぁ、本当におめでとう!」
ルーク様から、お祝いのハグをしてもらったというのに、私は喜んだり照れたりせず、難しい顔をしていた。
それに気が付いたのか、ルーク様は小首を傾げた。
「どうしたんだい?」
「いえ……改めて、魔法というのは、使い方を間違えるとこうなるんだって思ったら……」
やり方を間違えた結果、下手したら大惨事になってしまうところだった。そう思うと、体が恐怖ですくみ上がってしまったの。
「大丈夫! 僕の体調が全快したら、僕が隣でしっかり見ているからさ!」
「それだと、杖の研究が……」
「研究は君が休んでいる時に出来るし、問題ないよ。それよりも、君には試験というタイムリミットがあることを、忘れてはいけないよ」
そうだ、最近色々あって頭から抜けていたが、刻一刻と宮廷魔術師の試験の日は近づいている。それまでに、この暴れん坊の魔法を完全に制御できるようにならないといけない。もっともっと頑張らないと。
「んん……」
体を小さく揺さぶられる感覚に反応して目を開けると、そこにはにこやかに笑うルーク様の姿があった。
わざわざ起こしに部屋まで来て……違う、昨日から城の部屋じゃなくて、小屋で寝るようになったのよね。
昨晩は、まだ本調子じゃないルーク様にベッドで寝てもらったから、ソファーで寝たのだけど……思ったよりも眠れたわ。
ちなみに、ベッドをどっちに使ってもらうかと、一悶着あったのだが、わざわざ蒸し返す必要は無いわよね。
「こうしてシャーロットの寝顔や寝起き姿を見られるなんて、まさに役得だね。これなら、最初から城じゃなくて、こっちで休んでもらえばよかったかな」
「は、恥ずかしいからあまり見ないでくださると……」
いつもルーク様に会う前は、最低限の身だしなみをしている。しかし、寝起きは当然そんなことは出来ないため、みっともない姿を見られてしまう可能性がある。
「そんなに気にすることはないじゃないか。将来的には一緒に寝るんだよ?」
「い、一緒に!? そんな……わ、私……困りますわ……」
「もしかして、嫌だったかな? あはは、つい先走りすぎちゃったかな」
笑ってはいるが、明らかに残念そうだ。私のせいでそんな悲しそうな顔をさせたと思うと、胸が張り裂けそうになる。
「ち、違いますわ! 嫌というわけではなくて……その、想像したら恥ずかしいといいますか……絶対に、毎日緊張と嬉しさで眠れなくなるといいますか……」
自分で言っていて、顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。
だって、毎日寝る時に隣にルーク様がいるのよ? それも、心臓の鼓動や寝息が聞こえるくらい、ぴったりくっついて!
……あっ、よく考えたら、くっついてたら絶対に眠りにくいわね……わ、私ったら勝手に盛り上がって、なんてハレンチな妄想を……!?
「ふふっ、ここで出会った時から綺麗な人だとは思っていたけど、以前よりも感情表現を沢山してくれるからか、愛らしさまで加わっているね」
「う、うぅぅぅぅ……! わ、私……外に顔を洗ってきます!」
「ああ、いってらっしゃい」
全く余裕が無い私とは対照的に、余裕たっぷりのルーク様に見送られて小屋を飛び出し、今日もキラキラと美しく輝く湖にやってきた。
「もう、ルーク様ったら……以前から、遠慮なしに感情表現をする節はありましたが、急激にストレートになりすぎですわ……」
少しでも頭を冷やすために、いつもより多めに水を顔にかける。おかげで、少しだけ落ち着けた……気がする。
「このまま戻ったら、またルーク様にドキドキさせられそうですし……朝食の前に、少し魔法の練習をしていきましょう」
私はいつもの様に杖を出すと、これまたいつもと同じやり方で魔法の準備に入る。すると、いつもとは明らかに違う感じがした。
「こ、これは……!?」
以前、ようやく初めての成功を収めてから、進展はなかった魔法だったのだが……あの時とは比にならないくらい、杖に力が集まっていくのが分かる。
その力は強大で、今にもここで大爆発を起こしてしまうのではないかと錯覚するくらいだ。
「ま、不味いですわ……!」
私は、急いで杖に集まっていた力を、一斉に湖に向かって放つと……溜め込んだ大きな力が、湖の上で大爆発を起こした。
その振動は凄まじく、辺りに地響きを起こしながら、大きな波まで発生させるほどだった。
「な、なにごとだ!?」
「ルーク様! こちらは危険です!」
急いで逃げようとしたところに、血相を変えたルーク様が見に来てくれた。それとほぼ同時に、波が間近にまで迫ってきていた。
この非常事態に、ルーク様はすかさず反応して魔法でどうにかしようとしてくれたが、まだ本調子ではないようで、反応が鈍い。
このままでは、二人共波に飲み込まれてしまう。私がどうにかしないと!
「やり方なんてわからないけど……お願い、私の魔法! 私の大切な人を守って!!」
杖に力を込めて掲げると、杖の先に魔法陣が描かれた。その魔法陣は私達の足元で移動して巨大に広がり……巨大な岩の壁となった。
「なんですの、これは……とにかく、このまま持ってくださいませ!」
私の声に応えるように、壁はさらに強固なものとなり、無事に波を防ぎきってくれた。
とりあえず一安心ではあるけど……一体、何がどうしてこうなったのだろうか。いくら自分達は無事とはいえ、辺りはビショビショだし、湖の水がだいぶ減ってしまった。
『あはは、面白いね! あんな爆発、初めてみたよ! それに、慌ててる顔が面白いや!』
『いいじゃない、可愛くて! ここに来た時の、復讐で頭がいっぱいだった時より、よっぽど親近感が湧くわ!』
「えっ……?」
自分の身に起こったことに困惑していると、湖の方から二つの小さな光がフワフワと飛んできて、私達の周りを飛び回る。
それも、この光達と思われる話し声が、しっかりを聞こえてきている。
「あ、あなた達は……!?」
『ありゃ、見つかっちゃった! 逃げろ逃げろ~!』
『ちょっと、待ちなさいよ~!』
「ま……待って!!」
私の呼びかけも虚しく、光達は瞬く間に消えてしまい、声も聞こえなくなってしまった。
「シャーロット、大丈夫か!?」
「はい、私は何とも……ごめんなさい、私のせいで……」
「シャーロットのせい? どうしてだい? 君はあんな凄い魔法を使って、僕を守ってくれたじゃないか。むしろ、謝るのは僕の方だ。君が危険だというのに、一瞬反応が遅れて――」
「違うんです! さっきの地響きも、ここに迫ってきた波も、私が原因なんです!」
「はっ……? しゃ、シャーロットが……? なにかの冗談だろう?」
ルーク様が驚くのも無理はない。使用者である私が全くわかっていないのだから。
とはいえ、何も説明をしないわけにはいかない。だから、私のわかる範囲での説明をした。
「突然魔法が使えて、精霊と思われる姿を見て、声も聞こえた……」
「信じていただけないと思いますが、事実なのです」
「君を疑うわけがないだろう……といいたいが、この目で実際に見てみたい。なにかあったら僕が対処するから、もう一度魔法を使ってもらえるかい?」
「わかりました」
私は、先程と同じように魔法の詠唱を行うと、やはり杖にどんどんと大きな力が集まり始めた。
このままだと、また先ほどの様に抑えきれなくなり、爆発を起こしてしまう。
しかし、そこはさすがのルーク様だ。どういった魔法かはわからないが、指をパチンっと鳴らすだけで、杖に集まっていた力は霧散し、消えていった。
「ありがとう。どういうことかわからないが……確実に、精霊の邪魔が減っているのはわかった」
「どうしてでしょう? 精霊に許してもらえるようなことって、なにかあったでしょうか?」
初めて使えた時と今回で、なにか精霊に許されるようなことをしたか考えていると、とあることが頭に浮かんだ。
「以前使えるようになった時の話なのですが……お恥ずかしながら、あなたに対して、明確な好意を持って間もない頃でした。それで、今回はお付き合いをするようになってから間もなく……これって、何か関係があるのではないでしょうか?」
「ふむ……ちなみに、その精霊と思われる生き物は、何か言っていたかい?」
「確か、面白いとか、復讐で頭がいっぱいの時よりも、親近感が湧くと……」
「なるほど。これは仮説だが……君は今まで、復讐に囚われていた。しかし、僕に好意を持ってくれたり、交際を始めたことで、憎しみが薄れた結果、精霊に多少は好かれるようになった……とか?」
……確かに、ここに来る前は復讐のことしか頭に無かったが、今はルーク様のことばかり考えている気がする。もちろん、復讐するのは忘れたことはないけど。
「なんにせよ、これでシャーロットはどんどん魔法が使えるようになるね! いやぁ、本当におめでとう!」
ルーク様から、お祝いのハグをしてもらったというのに、私は喜んだり照れたりせず、難しい顔をしていた。
それに気が付いたのか、ルーク様は小首を傾げた。
「どうしたんだい?」
「いえ……改めて、魔法というのは、使い方を間違えるとこうなるんだって思ったら……」
やり方を間違えた結果、下手したら大惨事になってしまうところだった。そう思うと、体が恐怖ですくみ上がってしまったの。
「大丈夫! 僕の体調が全快したら、僕が隣でしっかり見ているからさ!」
「それだと、杖の研究が……」
「研究は君が休んでいる時に出来るし、問題ないよ。それよりも、君には試験というタイムリミットがあることを、忘れてはいけないよ」
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