57 / 82
第五十七話 極悪非道
しおりを挟む
突然の襲撃を受けた私は、正体不明の存在に吸い込まれ、文字通り目の前が真っ暗になってしまった。
一体何があったのか、今の存在は何だったのか。それを知ることも無いまま、私はこのまま深淵に落ちてしまうの?
冗談じゃない。何とかして脱出をしないと……でも、どうやって脱出をすればいいの?
そんなことを考えていると、突然私を呼ぶ声が聞こえてきた。
「シャーロット!!」
私の名前を呼ぶ声に反応して、恐る恐る目を開けると、そこには私を守るように立つ、ルーク様の姿があった。
一方のローブを着た人間は、地面から突き出た鋭い岩に貫かれ、二度と動くことはなくなっていた。
「シャーロット、無事か!?」
「る、ルーク様? は、はい……なんとか。でも、吸い込まれたはずじゃ……」
「完全に吸い込まれる前に、僕が引っ張り上げたんだよ。無事で本当に良かった」
そ、そうだったのね……一体何が起こったのかさっぱりわからない。驚きで胸がバクバクと高鳴っている。
「ルーク様、助けてくださり、ありがとうございます。急に襲われてしまって、どうすればいいかわからなくなってしまいました……」
「どういたしまして。中庭に異質な魔力……いや、悪意と言った方が良いかな。とにかく気味の悪いものを感じて、急いで来たんだ。まさか、こんなものがいるとは思ってなかったけどね」
「これは一体何なのでしょう?」
「見た目は大きなローブを着た人間に見えるけど、そうじゃない。これは魔法で作られた、悪趣味な人形のようなものさ」
魔法で出来ている……なるほど、そう言われるとしっくりくる。なにせ、ローブの下が底の知れない漆黒なんて、普通の人間なはずがないもの。
「これに飲み込まれると、奈落の底に引きずり込まれて封印される。そして、永遠に苦しみを味わうと言われているが、詳しいことはわからない。なにせ、このおぞましい魔法は禁術に指定され、代々の王家によって封印されてきた魔法なんだ」
「そんな魔法が、どうして私に……待ってください。王家が封印してきたってことは……まさか!?」
「そのまさかだろうね。ハリー達が邪魔者である君を、本格的に排除しに来ているとみて間違いない」
私達が話をしている間に、ローブの人間……いえ、人形は黒いヘドロのような形になり、そのまま地面へと溶けていってしまった。
「消えてしまいましたわ……」
「役目を終えたら、こうやって消えるようになっているんだよ……本当に忌々しい魔法だ」
「ルーク様……?」
「ああ、すまない。つい感情的になってしまった。なにせ、この魔法は効果もさることながら、発動するのも最悪な魔法なんだよ」
「発動でございますか? どう見ても五属性の魔法ではありませんし……特殊なものなのはわかりますが……」
「特殊だけど、ある程度の魔法の才能があれば、手順を踏めば簡単に発動できるんだ。その手順というのが……生贄だ」
生贄。その言葉を聞いた瞬間、背筋が冷たくなるのと同時に、私の前で亡くなったお母様のことを思い出した。
……私のお母様も、身勝手な人間のせいで怒り狂った精霊を静めるための、生贄だったから。
「魔法の発動のために、生きた人間を捧げることで、この魔法は発動される」
「この一回のためだけに、尊い命を奪ったというのですか!?」
なんてこと……それが人間のすることなの!? あまりにも邪悪すぎて、怒りを通り越して、形容しがたい感情が沸き起こっている。
「ルーク様、すぐにこのことを委員会や国王様に報告いたしましょう!」
「そうしたいのは山々だが、生憎証拠がない。僕達が話したことは、あくまで推測の域を出ないからね」
「そんな……! 被害に遭っている人がいるのに!?」
「僕もこんな暴挙は許せない。だが、彼らを咎める方法が無い以上、どうすることも出来ない。正義を貫くには、悪人を追い詰める力が無いといけないんだ」
「…………」
感情をむき出しにしている私よりも、ずっと落ち着いているルーク様だって、きっと悔しいに決まっている。なのに、私ばかり感情的になって……。
「ごめんなさい。ルーク様の仰る通りですわ」
「シャーロット……」
「ルーク様、絶対にあなたが国王になってください。あんな極悪非道な人が国王になったら、この国は終わってしまいますわ」
「ああ、もちろんだ。一緒にこの国を良くしていこう」
元からそのつもりであったが、今回の件でその気持ちは大いに高まった。
それと同時に、ハリー様やアルバート様、そして彼らに加担していると思われる家族に対して、更に強い憎しみを抱くようになった……。
一体何があったのか、今の存在は何だったのか。それを知ることも無いまま、私はこのまま深淵に落ちてしまうの?
冗談じゃない。何とかして脱出をしないと……でも、どうやって脱出をすればいいの?
そんなことを考えていると、突然私を呼ぶ声が聞こえてきた。
「シャーロット!!」
私の名前を呼ぶ声に反応して、恐る恐る目を開けると、そこには私を守るように立つ、ルーク様の姿があった。
一方のローブを着た人間は、地面から突き出た鋭い岩に貫かれ、二度と動くことはなくなっていた。
「シャーロット、無事か!?」
「る、ルーク様? は、はい……なんとか。でも、吸い込まれたはずじゃ……」
「完全に吸い込まれる前に、僕が引っ張り上げたんだよ。無事で本当に良かった」
そ、そうだったのね……一体何が起こったのかさっぱりわからない。驚きで胸がバクバクと高鳴っている。
「ルーク様、助けてくださり、ありがとうございます。急に襲われてしまって、どうすればいいかわからなくなってしまいました……」
「どういたしまして。中庭に異質な魔力……いや、悪意と言った方が良いかな。とにかく気味の悪いものを感じて、急いで来たんだ。まさか、こんなものがいるとは思ってなかったけどね」
「これは一体何なのでしょう?」
「見た目は大きなローブを着た人間に見えるけど、そうじゃない。これは魔法で作られた、悪趣味な人形のようなものさ」
魔法で出来ている……なるほど、そう言われるとしっくりくる。なにせ、ローブの下が底の知れない漆黒なんて、普通の人間なはずがないもの。
「これに飲み込まれると、奈落の底に引きずり込まれて封印される。そして、永遠に苦しみを味わうと言われているが、詳しいことはわからない。なにせ、このおぞましい魔法は禁術に指定され、代々の王家によって封印されてきた魔法なんだ」
「そんな魔法が、どうして私に……待ってください。王家が封印してきたってことは……まさか!?」
「そのまさかだろうね。ハリー達が邪魔者である君を、本格的に排除しに来ているとみて間違いない」
私達が話をしている間に、ローブの人間……いえ、人形は黒いヘドロのような形になり、そのまま地面へと溶けていってしまった。
「消えてしまいましたわ……」
「役目を終えたら、こうやって消えるようになっているんだよ……本当に忌々しい魔法だ」
「ルーク様……?」
「ああ、すまない。つい感情的になってしまった。なにせ、この魔法は効果もさることながら、発動するのも最悪な魔法なんだよ」
「発動でございますか? どう見ても五属性の魔法ではありませんし……特殊なものなのはわかりますが……」
「特殊だけど、ある程度の魔法の才能があれば、手順を踏めば簡単に発動できるんだ。その手順というのが……生贄だ」
生贄。その言葉を聞いた瞬間、背筋が冷たくなるのと同時に、私の前で亡くなったお母様のことを思い出した。
……私のお母様も、身勝手な人間のせいで怒り狂った精霊を静めるための、生贄だったから。
「魔法の発動のために、生きた人間を捧げることで、この魔法は発動される」
「この一回のためだけに、尊い命を奪ったというのですか!?」
なんてこと……それが人間のすることなの!? あまりにも邪悪すぎて、怒りを通り越して、形容しがたい感情が沸き起こっている。
「ルーク様、すぐにこのことを委員会や国王様に報告いたしましょう!」
「そうしたいのは山々だが、生憎証拠がない。僕達が話したことは、あくまで推測の域を出ないからね」
「そんな……! 被害に遭っている人がいるのに!?」
「僕もこんな暴挙は許せない。だが、彼らを咎める方法が無い以上、どうすることも出来ない。正義を貫くには、悪人を追い詰める力が無いといけないんだ」
「…………」
感情をむき出しにしている私よりも、ずっと落ち着いているルーク様だって、きっと悔しいに決まっている。なのに、私ばかり感情的になって……。
「ごめんなさい。ルーク様の仰る通りですわ」
「シャーロット……」
「ルーク様、絶対にあなたが国王になってください。あんな極悪非道な人が国王になったら、この国は終わってしまいますわ」
「ああ、もちろんだ。一緒にこの国を良くしていこう」
元からそのつもりであったが、今回の件でその気持ちは大いに高まった。
それと同時に、ハリー様やアルバート様、そして彼らに加担していると思われる家族に対して、更に強い憎しみを抱くようになった……。
18
あなたにおすすめの小説
お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました
さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア
姉の婚約者は第三王子
お茶会をすると一緒に来てと言われる
アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる
ある日姉が父に言った。
アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね?
バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た
【完】婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました
さこの
恋愛
婚約者の侯爵令嬢セリーナが好きすぎて話しかけることができなくさらに近くに寄れないジェフェリー。
そんなジェフェリーに嫌われていると思って婚約をなかった事にして、自由にしてあげたいセリーナ。
それをまた勘違いして何故か自分が選ばれると思っている平民ジュリアナ。
あくまで架空のゆる設定です。
ホットランキング入りしました。ありがとうございます!!
2021/08/29
*全三十話です。執筆済みです
拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
さこの
恋愛
ある日婚約者の伯爵令息に王宮に呼び出されました。そのあと婚約破棄をされてその立会人はなんと第二王子殿下でした。婚約破棄の理由は性格の不一致と言うことです。
その後なぜが第二王子殿下によく話しかけられるようになりました。え?殿下と私に婚約の話が?
婚約破棄をされた時に立会いをされていた第二王子と婚約なんて無理です。婚約破棄の責任なんてとっていただかなくて結構ですから!
最後はハッピーエンドです。10万文字ちょっとの話になります(ご都合主義な所もあります)
田舎者とバカにされたけど、都会に染まった婚約者様は破滅しました
さこの
恋愛
田舎の子爵家の令嬢セイラと男爵家のレオは幼馴染。両家とも仲が良く、領地が隣り合わせで小さい頃から結婚の約束をしていた。
時が経ちセイラより一つ上のレオが王立学園に入学することになった。
手紙のやり取りが少なくなってきて不安になるセイラ。
ようやく学園に入学することになるのだが、そこには変わり果てたレオの姿が……
「田舎の色気のない女より、都会の洗練された女はいい」と友人に吹聴していた
ホットランキング入りありがとうございます
2021/06/17
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!
真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう
さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」
殿下にそう告げられる
「応援いたします」
だって真実の愛ですのよ?
見つける方が奇跡です!
婚約破棄の書類ご用意いたします。
わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。
さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます!
なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか…
私の真実の愛とは誠の愛であったのか…
気の迷いであったのでは…
葛藤するが、すでに時遅し…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる