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第七十一話 全て殺してやる
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「きゃあぁぁぁ!?」
せっかく張った障壁は、マーガレットの影から生まれた触手に、粉々に粉砕されてしまった。その衝撃は障壁だけでは防ぎきれず、私達は大きく吹き飛ばされてしまった。
「くぅ……はぁ、はぁ……」
これまでの戦いで、既に疲労は相当溜まってきている。だというのに、マーガレットの影からは、一切疲れは見られない。
「いたっ……!?」
立ち上がろうとして足に力を入れた瞬間、強い痛みが右足に走る。どうやら、吹き飛ばされた際に足をくじいてしまったようだ。
その隙を、マーガレットの影が見逃すはずが無かった。全ての触手を私に向けて伸ばし、確実に私を仕留めに来た。
もちろん、ただでやられるつもりは毛頭ない。こちらに伸びてくる触手に魔法で迎撃する……が、数が多すぎて全てを防ぎきれない。
このままでは、やられてしまう……! 早く、次の魔法の準備をしないと……!
「やらせるか!」
先程私に使ったのと同じものと思われる魔法で飛んできたルーク様は、小さいが強度のある障壁を展開して触手を防ぐ。
一回、二回と攻撃をされても、ルーク様の障壁はビクともしない。しかし、マーガレットの影は攻撃することを止めず、さらに触手を伸ばして攻撃してくる。
「まったく、随分と執念深いね……」
「ルーク様、体が……!」
私達を守るこの障壁に、相当魔力を使っているのだろう。障壁が攻撃されるたびに吐血をし、体の至る所から血が噴き出ている。
きっと、私の想像なんてつかないほどの苦しみが、ルーク様を襲っているのだろう。しかし、どれだけ苦しくても、痛くても……ルーク様は魔法を止めることは無かった。
「や、やめてください……このままでは、ルーク様の体が耐えられません……!」
「大丈夫。君は僕が必ず守る。僕は未来の王として、未来の君の夫として、君を一生守る責務がある!」
「ルーク様……!」
「僕よりも、目の前の敵に集中するんだ! 必ず隙が生まれ――」
言葉を言い切る前に、ついに限界が来てしまったのか、ルーク様の体が大きく揺れた。同時に、障壁も破られ……一本の触手が、ルーク様の胸を貫いた。
「あ、あぁ……ルーク、さま……?」
ルーク様は、私の呼びかけに答えることなく、操り人形の糸が着れたかのように、ぱたりと倒れ……真っ赤な血だまりを地面に広げ始めた。
「ルーク様? 嘘ですよね? し、しっかりしてください、ルーク様!」
抱き抱えて体を揺すってみても、ルーク様は目を開けない。代わりに、とめどなく溢れる真っ赤な血が、物言わぬ肉塊になっていくことへの証拠だ。
「あ、あはっ……あははは……ねえ、起きてくださいよ……ルーク様、こんな時に悪い冗談はやめてくださいよ……嘘でしょう? 嘘と言ってよ!!」
何度呼び掛けても、何度体を揺すっても、ルーク様はピクリとも動かない。
私は、やっと手に入れた大切なものを、また家族に奪われるの? ただ好きな人と過ごして、好きな人の支えたいだけなのに、どうしてそんなことも許してくれないの?
どうして? どうして?? どうして……??
「っ……!!」
絶望に打ちひしがれる私と、冷たくなるルーク様に向かって、一斉に触手が伸びてくると、私達が逃げられないように、何重にも重なってきた。
このまま、私達を圧死させるのか、それとも取り込んでしまうのか……もう、どうでもいい。私のやることは決まっている。
「……殺してやる」
おぞましい言葉が自然と口に出た瞬間、私の中で、何かがプツンっと切れた。
私の大切なものを奪ったこいつを殺してやる。相手がマーガレット本人じゃないとか、そんなの関係ない。私の大切なものも、幸せも、全てを奪ったこいつを殺してやる。
そして、こんな事態を巻き起こしたハリーも、それを手伝っていると思われるアルバートも、徹底的に痛めつけて殺してやる。
いや、あの外道どもをこの世に生み出し、ずっと野放しにしていた国王も、それを支持した民も殺してやる。
ルーク様はそんなことを望まない? ルーク様の目指していたものとは真逆? 復讐心は克服された? そんなの、知ったことではない。どうして私やルーク様だけ苦しんで、他の人間はのうのうと生きていられるの?
そんなの許さない。殺して、殺して、殺して……そして、私も死ぬ。ルーク様がいない世界なんて、悲しくて、憎いだけだもの。
「お前から殺してやる」
私は滅茶苦茶に風の刃を飛ばして、覆い被さる触手を切り裂く。
復讐に完全にとらわれているせいで、精霊の妨害にあい、魔法に酷いムラが生まれている。威力の強弱や、刃の大小が定まらず、方向もメチャクチャだ。
……だから、なに? 精霊如きの力で、私の復讐の炎を抑えることなんて、出来ると思っているの?
「はぁぁぁぁぁ!!」
私は、杖を使って無理やり地脈の力をこちらに引っ張ってきて、もう一度同じ魔法を使って職種を切り刻む。使っている魔法は同じなのに、桁外れの威力と数を誇っている。
代わりに、体中に耐えがたい激痛が走り、一瞬で意識を持っていかれそうになったが、ルーク様だって、さっきはこんな苦痛と戦ったのだから、自分だって耐えられると思う気持ちと、復讐心で無理やり耐えきってみせた。
「ほら、死んで。死んでよ! 早く私の前からいなくなってよぉ!!」
完全に覆いかぶさってきた触手を対処した後、接近しながら魔弾で攻撃し、こちらに向かってきた触手は、的確に障壁で防ぐ。
完全にこちらのペースになっているはずなのに、忌々しい影は無尽蔵に触手を生み出し、私の息の根を止めようとしている。
さらに、奴はルーク様を取り込みたいのか、しきりにルーク様に触手を伸ばしてくる。それも当然の様に対処をしなければならない。
「これ以上、私のルーク様に触れるなぁぁぁぁ!!」
魔法と触手がぶつかり合う轟音の中に、私の雄たけびが響き渡る。
私が力尽きるのが先か、魔法陣の解除が出来るのが先か……殺し合いの決着は、間もなくつくだろう。
せっかく張った障壁は、マーガレットの影から生まれた触手に、粉々に粉砕されてしまった。その衝撃は障壁だけでは防ぎきれず、私達は大きく吹き飛ばされてしまった。
「くぅ……はぁ、はぁ……」
これまでの戦いで、既に疲労は相当溜まってきている。だというのに、マーガレットの影からは、一切疲れは見られない。
「いたっ……!?」
立ち上がろうとして足に力を入れた瞬間、強い痛みが右足に走る。どうやら、吹き飛ばされた際に足をくじいてしまったようだ。
その隙を、マーガレットの影が見逃すはずが無かった。全ての触手を私に向けて伸ばし、確実に私を仕留めに来た。
もちろん、ただでやられるつもりは毛頭ない。こちらに伸びてくる触手に魔法で迎撃する……が、数が多すぎて全てを防ぎきれない。
このままでは、やられてしまう……! 早く、次の魔法の準備をしないと……!
「やらせるか!」
先程私に使ったのと同じものと思われる魔法で飛んできたルーク様は、小さいが強度のある障壁を展開して触手を防ぐ。
一回、二回と攻撃をされても、ルーク様の障壁はビクともしない。しかし、マーガレットの影は攻撃することを止めず、さらに触手を伸ばして攻撃してくる。
「まったく、随分と執念深いね……」
「ルーク様、体が……!」
私達を守るこの障壁に、相当魔力を使っているのだろう。障壁が攻撃されるたびに吐血をし、体の至る所から血が噴き出ている。
きっと、私の想像なんてつかないほどの苦しみが、ルーク様を襲っているのだろう。しかし、どれだけ苦しくても、痛くても……ルーク様は魔法を止めることは無かった。
「や、やめてください……このままでは、ルーク様の体が耐えられません……!」
「大丈夫。君は僕が必ず守る。僕は未来の王として、未来の君の夫として、君を一生守る責務がある!」
「ルーク様……!」
「僕よりも、目の前の敵に集中するんだ! 必ず隙が生まれ――」
言葉を言い切る前に、ついに限界が来てしまったのか、ルーク様の体が大きく揺れた。同時に、障壁も破られ……一本の触手が、ルーク様の胸を貫いた。
「あ、あぁ……ルーク、さま……?」
ルーク様は、私の呼びかけに答えることなく、操り人形の糸が着れたかのように、ぱたりと倒れ……真っ赤な血だまりを地面に広げ始めた。
「ルーク様? 嘘ですよね? し、しっかりしてください、ルーク様!」
抱き抱えて体を揺すってみても、ルーク様は目を開けない。代わりに、とめどなく溢れる真っ赤な血が、物言わぬ肉塊になっていくことへの証拠だ。
「あ、あはっ……あははは……ねえ、起きてくださいよ……ルーク様、こんな時に悪い冗談はやめてくださいよ……嘘でしょう? 嘘と言ってよ!!」
何度呼び掛けても、何度体を揺すっても、ルーク様はピクリとも動かない。
私は、やっと手に入れた大切なものを、また家族に奪われるの? ただ好きな人と過ごして、好きな人の支えたいだけなのに、どうしてそんなことも許してくれないの?
どうして? どうして?? どうして……??
「っ……!!」
絶望に打ちひしがれる私と、冷たくなるルーク様に向かって、一斉に触手が伸びてくると、私達が逃げられないように、何重にも重なってきた。
このまま、私達を圧死させるのか、それとも取り込んでしまうのか……もう、どうでもいい。私のやることは決まっている。
「……殺してやる」
おぞましい言葉が自然と口に出た瞬間、私の中で、何かがプツンっと切れた。
私の大切なものを奪ったこいつを殺してやる。相手がマーガレット本人じゃないとか、そんなの関係ない。私の大切なものも、幸せも、全てを奪ったこいつを殺してやる。
そして、こんな事態を巻き起こしたハリーも、それを手伝っていると思われるアルバートも、徹底的に痛めつけて殺してやる。
いや、あの外道どもをこの世に生み出し、ずっと野放しにしていた国王も、それを支持した民も殺してやる。
ルーク様はそんなことを望まない? ルーク様の目指していたものとは真逆? 復讐心は克服された? そんなの、知ったことではない。どうして私やルーク様だけ苦しんで、他の人間はのうのうと生きていられるの?
そんなの許さない。殺して、殺して、殺して……そして、私も死ぬ。ルーク様がいない世界なんて、悲しくて、憎いだけだもの。
「お前から殺してやる」
私は滅茶苦茶に風の刃を飛ばして、覆い被さる触手を切り裂く。
復讐に完全にとらわれているせいで、精霊の妨害にあい、魔法に酷いムラが生まれている。威力の強弱や、刃の大小が定まらず、方向もメチャクチャだ。
……だから、なに? 精霊如きの力で、私の復讐の炎を抑えることなんて、出来ると思っているの?
「はぁぁぁぁぁ!!」
私は、杖を使って無理やり地脈の力をこちらに引っ張ってきて、もう一度同じ魔法を使って職種を切り刻む。使っている魔法は同じなのに、桁外れの威力と数を誇っている。
代わりに、体中に耐えがたい激痛が走り、一瞬で意識を持っていかれそうになったが、ルーク様だって、さっきはこんな苦痛と戦ったのだから、自分だって耐えられると思う気持ちと、復讐心で無理やり耐えきってみせた。
「ほら、死んで。死んでよ! 早く私の前からいなくなってよぉ!!」
完全に覆いかぶさってきた触手を対処した後、接近しながら魔弾で攻撃し、こちらに向かってきた触手は、的確に障壁で防ぐ。
完全にこちらのペースになっているはずなのに、忌々しい影は無尽蔵に触手を生み出し、私の息の根を止めようとしている。
さらに、奴はルーク様を取り込みたいのか、しきりにルーク様に触手を伸ばしてくる。それも当然の様に対処をしなければならない。
「これ以上、私のルーク様に触れるなぁぁぁぁ!!」
魔法と触手がぶつかり合う轟音の中に、私の雄たけびが響き渡る。
私が力尽きるのが先か、魔法陣の解除が出来るのが先か……殺し合いの決着は、間もなくつくだろう。
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