【完結】お飾りの婚約者としての価値しかない令嬢ですが、少し変わった王子様に気に入られて溺愛され始めました

ゆうき

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第七十話 妹の影

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「させるか!」

 もう駄目だと目をギュッと閉じた私の耳に、頼もしい声が聞こえてくる。それとほぼ同時に、ガキンッ!! という、何かが硬いものにぶつかったような音が聞こえた。

 一体何が起こったのか。それを確認するためにそっと目を開けると……私と巨大な黒い人間との間に入ったルーク様が、頑丈な障壁を作って攻撃を止めてくれていた。

「合体するとは恐れ入った。そうやって自分達を強くして、こちらの度肝を抜かせるつもりなのだろうが……」

 ルーク様は障壁を張りながら、巨大な黒い人間の周りに白い魔法陣を沢山出現させると、そこから白い棘を出して巨体を貫く。
 それだけではなく、貫かれた場所以外のところからも、次々と白い棘が現れて、巨体を隅々まで貫く。

「思ったより硬いし、コアも複数あるのか。面倒だが……全部壊せばいいだけだね」

 先程の白い棘が糸のようなものに変化させ、巨大な黒い人間を動けないように縛り上げたルーク様は、右の手のひらを敵に向ける。すると、雷が巨大な黒い人間を襲う。

 私も雷の魔法は使えるが、こんな出力のものは使えない。無理やり発動すれば、それこそ地脈の力のコントロールに失敗し、命を落とすだろう。
 そんな規模の魔法を、ルーク様は使いこなしている。本当に魔法に関してハンデがあるのか、疑ってしまわれてもおかしくない。

「これでよし」

 ルーク様の言葉通り、コアは破壊できたようで……今度こそ、物言わぬ泥へと変化した。

「ルーク様、助けてくださり、ありがとうございます。それと、油断をしてしまい、申し訳ございません」

「互いが無事だったからいいじゃないか。でも、次からは油断しないようにね。一歩間違えれば、一瞬で負けてしまうような相手だから」

 ルーク様の言う通りだ。油断のせいで負けて死んでしまいましただなんて、そんなの冗談じゃないわ。

「それよりも、怪我はないかい? 大丈夫そうなら、早く先に進もう」

「私は大丈夫ですが、ルーク様は? あんな凄い魔法を使ったら、体に悪影響が……」

「実は、日頃から君の杖を使って研究をしたおかげで、だいぶ反動無しで魔法が使えるようになっていてね。さすがに乱発は勘弁してもらいたいけど」

 私を心配させないための、優しい嘘の可能性も否定はしきれないが、顔色は良いし、冷や汗もかいていない。本当に大丈夫そうだ。

「さて、お互いに大丈夫なら先に進もう。目的地はもうすぐだ」

「わかりました」

 逸る気持ちを抑え、慎重に進んでいくと、急に当たりの空気がずしっと重くなったような、凄く嫌な感覚に襲われた。

「近いね……淀んだ魔力を感じるよ」

「この嫌な感じは、魔力の淀みなのですか?」

「ああ。これも禁術の影響だよ。体調が悪くなるから、あまり長居はしない方がいい」

「はい……あれ? ルーク様、あれをご覧ください!」

 ここまでずっと森が続いていたのに、突然開けた場所に出た。辺りの木々はなぎ倒され、地面が抉れ、血生臭い悪臭に満ちている。淀んだ魔力の影響もあってか、とてつもなく気分が悪くなる場所だ。

「……ルーク様、この辺りにある赤い水溜まりって……」

「あまり見ない方がいい。僕達が見なければいけない相手は、もう目と鼻の先にいるのだから」

「ごくりっ……」

「ここには隠れられる場所が少ない。いつも以上に周りに気をつけて進もう」

 ゆっくりと経過しながら、荒れ果てた地を進んでいくと、その中心に事件の根源である魔法陣が、真っ黒な光を放っている。その大きさは、ルーク様が住んでいる城と大差ないくらいの規模だ。

「あんな大きな魔法陣、見たことがありませんわ……」

「僕達を抹殺するために、ハリーは随分と手の込んだこ準備したようだね。これほどの大きさの魔法陣を準備するのは、相当大変だったろうに」

 怒り半分、呆れ半分といった具合のルーク様は、深々と溜息を吐いた。

「どうすれば、あの魔法陣を停止させられるのでしょうか?」

「あの魔法陣の中心に立って、魔力を流し込めば停止するようになっているよ。ただ……それを簡単にさせてくれるかは、別問題だけどね」

 魔法陣の至る所から、ボコボコと泥が湧き出て、それが人型の形となっていく。

 一体や二体とかならともかく、数十体も一気に作られるとなると、相当骨が折れそうだわ……。

「ここまでくれば、出し惜しみをする必要は無い。一気に突破しよう!」

 ルーク様は、その場に自分の人形をいくつも作りだし、人形達を一斉に向かわせる。さすがに一体ごとの力は本体には劣るが、足止めはしっかりしてくれている。

「そんなに人形を作って大丈夫なのですか!?」

「大丈夫、これも研究の成果さ!」

 人形を一体作るのに、どれだけの魔力を使うか、私にはわからないが、見た感じではルーク様に変化は見られない。

「私も負けていられませんわ! えーい!」

 ここに来るまでと同じように、魔弾でコアの場所を特定してから、威力の高い魔法でコアを破壊していく。

 倒しても倒しても、湯水のごとく湧いてくるのは面倒ではあるが、少しずつ中心部に向かって進めている。このままいけば、無事に魔法を止めることが出来そうだ。

「……っ! 包囲網に抜け道が出来た! シャーロット、一気に行こう!」

「はいっ!」

 互いの魔法の轟音が響く中、私達は一斉に魔法陣の中心に向かって走り出す――が、それを阻むように、突然魔法陣が強い光を放ち始めた。

「この魔力は……シャーロット、気をつけて!」

 魔法陣に呼応するように、コアを破壊されてただの泥になったものが、魔法陣の中心にどんどんと集まっていく。

 もしかしたら、また巨大化するために集まっているのかもしれない。今度こそ驚いてないで、対応できるようにしないと。

 ……そう思って身構えていると、私達の前に現れたのは……杖を持った、人型の黒い人間だった。

「一体だけ? そんな馬鹿な……それに、あの人型……どこかで見たことがあるような……」

 真っ黒だからわかりにくいけど、あれには見覚えがある。私よりも少し大きくて、短く揃えた髪に、抜群のプロポーション……そんな、まさか……。

「ま、マーガレット……?」

 間違いない。今私達の前に立っている人型は、マーガレットの形を模している。
 立っている時の仕草もそっくりで、マーガレットはまだ生きていて、私達の前にいるんだと錯覚してしまうくらいだ。

「シャーロット、あれはマーガレットの姿を模しているだけだ。本人じゃない!」

 ……そうよ、マーガレットはもうこの世にいない。あれがどういう意図でマーガレットの姿を模しているかわからないが、気にせずに倒す以外の道は無い。

「なんて悪趣味なのかしら……さしずめ、マーガレットの影といったところね。もう会わなくて済むと思っていたのに。申し訳ございませんが、退いてもらいますわよ!」

 魔弾を飛ばしてコアの場所を見つけようとするが、マーガレットの影も同じ様に魔弾を使い、私の攻撃を全て相殺させた。

 今までの人達は、こんな魔法なんて使わなかったのに……! そんなところまで、マーガレットに似せなくていいのよ!

「でも、マーガレットの魔法ならある程度ならわかりますわ。手の内が分かっていれば、対処はできる! ルーク様、私があれを引きつけますから、その間に魔法陣を!」

 マーガレットの影は、両手に剣を作り出し、私に突進してくる。

 この攻撃は、試験の時に見ている。あれの切れ味は確かに凄いが、近づかれなければ問題無い。そう判断した私は、距離を取りながら、色々な属性の魔弾を飛ばした。

 これならとりあえず対処は出来る。そう思ったのに、思った以上にマーガレットの影の動きが早く、徐々に距離を詰められていく。

 もっと速く動きたいが、こちらは生身の肉体。動ける速度には限界があるし、ずっと動いていれば疲れてくる。それに、魔法を使いながら全速力で動くというのは、とても過酷だ。

「あっ……!」

 魔法と回避に夢中で、一瞬足がもつれてしまった。転倒することは無かったが、その一瞬の時間に、マーガレットの影の攻撃が届く距離にまで近づかれてしまった。

 どうする? なんとか反撃をする? それとも防御をする? どちらも絶対に防げる保証はない。

「シャーロット、後ろに飛ぶんだ! 早く!」

「は、はいっ!」

 体勢が崩れている状態で後ろに飛んだって、大した距離は稼げない。しかし、ルーク様がそうしろと言うのだから、きっと理由がある。そう拡散できるほど、私はルーク様に絶対に信頼を置いている。

 その信頼は、間違っていなかった。少しだけ足に力を入れただけなのに、私の体は面白いくらい後ろに飛んでいった。まるで、体が羽になったかのような軽やかさだ。

「す、すごい。一体何が起きたの?」

「肉体強化の魔法を、僕のオリジナルの改良を施したものさ。強くなっても体に負荷がかかっては意味が無いから、逆に弱くして負荷を減らしたんだ」

 弱く? だから、少しの足の力で、体が一気に後方に飛んだということ? さすがルーク様……とても自由な発想の魔法だ。一口に魔法と言っても、この世界には色々な魔法があるのね。

「ありがとうございます、ルーク様。おかげで助かりました」

「気にしないで。魔法は解除しておいたから、同じ感覚で飛ばないでね」

 もうあの跳躍が出来ないのは少し残念だが、先程の言葉から考えるに、あの魔法は逆に弱くなってしまう魔法だ。そんな魔法を発動させっぱなしというのは、あまりにもよろしくない。

「君が引きつけてくれたから、なんとか禁術を解除しようとしたが、彼女の立ち回りに隙がない。強引に行こうとしても、対処できる位置をしっかり陣取っているようだ。無理に行けば可能性はあるかもしれないが、リスクも大きいかな」

「止められても、私達が無事でなければ何の意味もございませんわ。それにしても、あんなに動けるだなんて……」

 たくさんいた黒い人間が一体だけになり、一見するとこちらに分があるように見えるが、今までの相手とは比べ物にならないくらい厄介だ。

 ただ身体能力が高いだけならともかく、他の黒い人間がと違い、マーガレットの影は、考えを持って行動をしている節がある。

 これも、マーガレットが元になっているからなのか、はたまた魔法陣を守る、最終防衛ラインなのか……それを知っているのは、術者であるハリー様と、魔法の製作者だけでしょうね。

「やはりここは、一緒に彼女の相手をした方が良さそうだね」

「そうですわね……え? あ、あれは一体?」

 マーガレットの影の背中の部分が、お湯が沸いたかのように、ボコボコなっている。

 あれは一体……とにかく、よくないことなのは確かだろう。今のうちに叩いて止める? それとも大人しく待つ? うぅ、なにが正解かなんて、咄嗟に判断できないわ。

「何か仕掛けてくる。シャーロット、用心して」

 ボコボコが終わると、マーガレットの影の背中から、うねうねと動くものが無数に生えていた。

 あれはなに? 触手……? 見ていてあまり気分がいいものではない。あれを伸ばして攻撃してくるのだろうか?

「影が魔法を使うのも驚いたが、あんな触手を出すのも聞いたことがない。僕の知らない力があるということか……?」

 警戒をしていると、マーガレットの影が、静かに髪を耳にかきあげた。

 あの仕草は……もし本当にマーガレットを完全に真似ているとしたら……!

「ルーク様、危ない!!」

 私は、咄嗟に防御をするための障壁を展開し、最大出力になるまで力を注ぎ込む。
 それから間も無く、先ほどの触手が、先端を鋭利な刃物のような形に変化しながら、目にも止まらぬ早さで攻撃してきて、障壁とぶつかった。

 やっぱり攻撃してきたわね。マーガレットのあの仕草は、私に魔法で酷いことをする時に、いつもする癖のようなものだ。
 それを覚えていたから、きっと魔法で私に酷いことをする……つまり、何かしらの攻撃をすると読んだの。

「うぐっ!?」

 読めたのはいいけど……な、なんて威力の攻撃なの!? 障壁越しから、ものすごい衝撃が伝わってくる!
 全力で防御してよかった。とりあえず障壁で防いでおこうなんて、甘い考えだったら、一撃で破壊されていてもおかしくなかったわ!

「シャーロット、油断するな! まだ攻撃は終わっていない!」

「えっ……」

 完全に防ぎきったと思っていた。だが、触手の勢いは止まるどころか、ぶるぶると震える程力が込められていき……障壁は、いとも容易く破られてしまった。
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