【完結】 ずっと夫を信じて暴力や暴言に耐えてきましたが、もう耐えられません ~あなたが離婚を望むなら、喜んで受け入れます~

ゆうき

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第十五話

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 目的地である村に向けて、馬車に揺られること一時間。私達はミヌレーボ国にある、小さな村へとやってきた。

 この辺りは他の場所と比べて、多少は植物が目立つ。特に、一面の小麦畑は圧巻の一言だ。

 ただ……あまり実りが良いとは言いにくいかも。なんていうか、元気が無いっていうか……これでは、収穫をしても、あまり量は取れないと思う。

「エメフィーユ、到着したよ。俺は一緒に来た学者達と一緒に、村長と話をしてくる。それまで、村を自由に見てもらって構わない」

「わかりました。あ、もし何かお手伝いが出来ることがあったら、しててもいいですか?」

「ありがとう、とても助かる。もし何かしてくれる時は、近くにいる村人の許可をもらうのと、何をしてくれたか、後で報告してくれるとありがたい」

「わかりました! サン、行こっ!」

「ウキッ!」

 サンを肩に乗せてから、どこかでお手伝いが必要な場所を探していると、何人かの村の人とすれ違った。

 食糧問題のせいか、みんな痩せこけていて、血色も良くない。それに元気もなくて、見ているだけで私まで悲しい気持ちになってくる。

「ミヌレーボ国の問題は、本当に深刻なんだね……」

 王家がこれだけ頑張って取り組んでいる問題だから、その重大性が大きいかは理解してるつもりだったけど、現実を目の当たりにすると、私の理解なんて甘いものだったと痛感する。

「あれは……」

 村の中を歩いていると、荒れた土地を前にして、何かを考えている人を見つけた。話を聞いてみよう!

「あの、どうされたのですか?」

「あ、あなたは?」

「私は、リオン様と一緒にここに来た者です」

「やや、これは失礼しました。この村は、小麦を育てているのですが、実りが良くなくて……なので、この辺りに新しい畑を作ろうとしているのですが、村の若い連中は出稼ぎに出ているので、人手が足りなくて……」

「畑を耕すのって、重労働ですもんね……」

 私も何度もしたことがあるから、よくわかる。あれって全身の筋肉を使うから、見た目以上に疲れる仕事だ。満足にごはんが食べられていない人には、あまりにも荷が重いと思う。

「でしたら、私がやりますよ!」

「いやいや、王子様のお連れの方に、そんなことをさせるわけには……」

「大丈夫です! 今日はみなさんのお手伝いをするために、ここに来たんですから!」

「そ、そういうことでしたら……決してご無理はされないでくださいね」

 私は、少々強引ではあったが、村の人からクワを受け取ると、端から畑を耕していく。

「せいっ! やぁ! そりゃっ!」

「て、手際が良い……!?」

 この辺りの土は、少し硬めなのかな? 故郷でしていた時と比べて、少し力がいるみたい。でも、岩石や岩盤が相手じゃなければ、なんとかなる!

「おりゃおりゃおりゃーっ!!」

 クワを振り上げて振り下ろし、少し移動してから同じ動作をする。それを繰り返し行い、どんどんと畑を耕していく。

 久しぶりにやると、思ったよりも動きが鈍いって実感するなぁ。以前の自分だったら、多分これよりも早く出来たのに。

「とりあえずこの辺はこれでいいかな。向こうの方もやりたいけど、結構雑草とか石が多いかも……あの、邪魔なものは端っこに寄せておけばいいですかー!?」

「え、ええ!」

「わかりましたー! あ、カゴをお借りしてもいいですか?」

「ど、どうぞ!」

 今度は、中腰になった状態で、雑草を抜く! 抜く!! 抜く!! そして、抜いた雑草は背負っているカゴにポイッ!

 地道な作業だけど、簡単にできる方法なんて無い。畑仕事は、地道に一歩ずつ!

「とりあえず、畑の半分の雑草は抜けたかな。あともう半分……って、終わってる!?」

「ウキッウキッ!」

 引っこ抜かれたであろう雑草の上で、サンが楽しそうに踊っている。

 もしかして、サンがこれを全部引っこ抜いて、端に片付けておいたのかな? 昔から、手伝いは良くしてくれていたから、あまり驚きはしないけど、今日も小さい体で頑張るなぁ……と関心はする。

「私も負けていられないね! てりゃっ! そいやっ!」

 せっかく雑草や石が無くなったのだから、どんどんと耕していかないとね! このクワの一振りが、みんなのごはんと幸せ、そしていつかは私の幸せになると信じて!


 ****


 無事にこの辺りの畑を耕し終えた私は、額に流れる汗を、貸してもらったタオルでぬぐった。

「これでよしっと。次は、多少でも実っている畑の様子を見に行かなくちゃ!」

「あ、ありがとうございます! このご恩は、決して忘れません!」

「そんな、大げさですよ~! もう少しこの村にいるので、何かあったら呼んでくださいね!」

 回収した雑草や石が入ったカゴを置いて、最初に見た大きな小麦畑に移動した私は、そこの農家の人の許可を貰って、雑草抜きと害虫駆除を行った。

 とはいっても、手入れはちゃんとされているみたい。あまり雑草は無かったし、害虫もそこまで酷いものじゃなかった。

 これで育ちが悪いってなると、やっぱり土地柄の問題なのかなぁ……こればっかりは、すぐにどうにかできるものじゃないし……。

「土地で抱えてるハンデを補えるように、こっちから成長を促せればいいんだけど……そうだっ!」

 とあることを思いついた私は、急いでリオン様がいる村長の家へとやってきた。

「エメフィーユ、どうした? そんなに息を切らせて……」

「リオン様、この辺りの小麦畑には、なにか水の他に与えているものってありますか?」

「いや、特には無いな。以前は一般的に普及している栄養剤を使っていたが、効果がなくて今は使っていない」

「でしたら、いいものがありますよ! 紙とペンってどこにありますか?」

「それならここにある」

「ありがとうございます!」

 リオン様からそれらを受け取った私は、さらさらとペンを走らせ、メモを書いた紙を手渡した。

「ここに書いてあるものを使った液体を小麦にかけると、よく育ちますよ! あと、小麦を荒らす害虫も減るそうです!」

「なんだって? エメフィーユ、どうして君がこんなことを知っているんだ?」

「小麦畑を管理している人が友達にいる知り合いが、教えてくれたのを覚えていたんです。その人が長年かけてつくりあげた、とっておきのものだそうですよ!」

「な、なるほど……すまない、これを見てくれないか?」

「はい、どれどれ……ふむ、これは……?」

 リオン様は、私が渡したメモを、一緒に来ていた学者の人と難しい顔で見つめながら、なんだか難しい話を始めた。

 聞いたことも無い単語が色々と出てきて、聞いているだけで頭が痛くなりそうだよ。

「とりあえず、一度戻って試薬を作り、試してみないと何とも言えません。なにせ、この薬の配合は、初めて見るものですから」

「ふむ、そうか……」

「とっておきとは言っていましたけど、そんなに特別なものなんですか?」

「ええ。集めた資料には書いていないやり方でした。まさに、現場の方の経験と知識が生み出したものでしょうね」

 そんなにすごいものだったなんて、全然知らなかった。まだ絶対に役立つとはわからないけど、伝えられてよかったよ。

「私、リオン様の役に立てているでしょうか?」

「ああ、とっても役に立っている。感謝しかないよ」

「よかったぁ……でも、これならもっと早くに手伝うって申し出ていれば……」

「君は、色々あって追い詰められていたのだから、仕方がないことだ」

 確かに故郷に帰って吹っ切れる前までは、頭が回っていなかったけど、それを言い訳にはしたくない。

「その分を取り返す意味でも、もっと頑張りますね! では、畑周りにいってきまーす!」

 私は元気よく村長の家を出ると、サンとクワを肩に乗せて走りだした。

 さあ、国と民、そして私の未来の幸せのための農作業、頑張らなくちゃ!
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