【完結】 ずっと夫を信じて暴力や暴言に耐えてきましたが、もう耐えられません ~あなたが離婚を望むなら、喜んで受け入れます~

ゆうき

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第三十九話

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「うぅ……うわぁぁぁぁぁん!!」

 目の前で、家族のように暮らしていたサンが消えてしまった。その悲しみについに耐えきれなくなった私は、膝から崩れ落ちる。

 私は、また大切な家族を失ってしまった。私がもっとしっかりしていれば、サンがこんな目に合わなくて済んだのかもしれない。
 ううん、サンだけじゃない……お母さんだって、今も生きてくれていたかもしれない。

「私、私のせいで……もっと私がしっかりしていれば……お母さんも、サンも……!」

「エメフィーユのせいじゃない。君は何も悪くない」

「り、リオン様……!」

 ギュッと抱きしめて私を慰めてくれるリオン様の優しさが嬉しくて、でもサンを失った悲しみを抑えきれなくて。私は、リオン様にしがみついて涙を流し続けた。

 お母さんのことを聞いた時にも感じた、胸が大きく抉られたかのような痛み、そして体中の力を全て失ったかのような喪失感は、何度経験しても慣れる気がしない。

「薬師殿、申し訳ないがお二人の容体の確認をお願いできますか?」

「は、はい!」

 私の代わりに、リオン様が彼に指示を出す。ここまでずっと私を助けるため、私を守るために頑張って疲れているはずなのに。

「これは……症状が消えている! なんてことだ……解毒薬も使わずに治すだなんて、奇跡としか言えない!」

「……うっ……」

「こ、国王様! お目覚めになられましたか!?」

 今までずっと苦しそうに眠っていた国王様は、ゆっくりと体を起こした。

 国王様が無事で、本当に良かった……きっと、サンも喜んでくれているはずだよね。

 ……サンが文字通り命を張ってまで頑張ってくれたのに、私だけ泣いているわけにはいかないよね。つらいけど……凄くつらいけど、頑張らなきゃ。

「余は……そうだ、食事をしていたら急に苦しくなって、そのまま意識を……一体何があったのだ?」

「彼女達が、助けてくださったのです!」

「彼女? おお、そなたはエメフィーユに、リオン殿? どうして余の私室に?」

「突然の訪問に驚かれたことでしょう。誠に申し訳ございません。実は、色々とございまして……」

「……私が、説明します」

「エメフィーユ、大丈夫なのか?」

「はい。泣いてばかりはいられませんから」

 本当は、全然大丈夫じゃない。でも、サンの頑張りを無駄にしないためにも、私だって頑張らないといけないもの。

「何か訳ありのようだな。聞かせてほしい」

「実は――」

「国王様、ご無事ですか!!」

 私が話そうとした瞬間、たくさんの兵士が、なだれ込むように部屋の中に入ってきた。その中の一人は、侵入者の一人……ヴァレア様を拘束している。

「も、申し訳ありませんわ……さすがに、全員は抑えきれませんでした……」

「姉上、怪我は!?」

「この程度、舐めておけば治りやがりますわ……」

 心配をかけないようにしてくれているが、明らかに傷だらけなのが見て取れる。早く治療をしないと、取り返しがつかないことになるかもしれない。

 ……せっかくここまで来たと言うのに、このまま捕まってしまったら、意味もない……どうすればいいの?

「静まれ!兵達よ、剣を収めよ!」

「こ、国王様!? お目覚めになられたのですね!」

「うむ。皆にはとても心配をかけてしまって申し訳なかった。彼女達が、余を救ってくれたのだ」

「どういうことですか? この者達は、城に侵入したものと、地下牢から脱獄した者ですが……」

「侵入? 地下牢? 何がどうなっているというのだ。エメフィーユ、それも含めて説明を求める。兵達は持ち場に戻れ! それとそなたは、大至急ヴァレア殿の治療を行うように!」

『はっ!!』

 今まで問答無用で襲い掛かってきた兵士の人達は、国王様の言葉一つで部屋を去り、薬師の人はヴァレア様を連れて部屋を後にした。

「ヴァレア殿のことは、彼に任せておけば大丈夫だ。さあ、話してくれ」

「はい。全てをお話します」

 今まで私がマルセムにされてきたことは、基本的に国王様は知らされていない。だから、私は文字通り、知っていることや、マルセムにされたことを全てを国王様に伝える。

 全てを話し終えると、国王様は顔を青ざめさせながら、頭を抱えた。

「なんということだ……まさか、マルセムが裏でそんな惨いことを……」

「マルセム殿は、ミヌレーボ国に攻め入るような話もされていました。このまま放っておけば、歴史に残るようなことが起こってしまうかもしれません」

「事情は理解した。愚息がかけた数々の非礼、心の底から詫びさせてほしい。本当に、申し訳なかった」

 まだ病み上がりだというのに、国王様はよろめきながら私達の前に来ると、なんと膝を床につけ、そのまま額も床にこすりつけた。

「こ、国王様!? 頭を上げてください! 国王様が悪いわけではありませんから!」

「いや、全て余の責任だ。一人息子だからと甘やかし、優秀さに甘んじてマルセムの本質を見ようとしなかったが故に招いたこと! こんなことで、そなたの家族が戻ってくるわけでもない。民達の苦しみを取り除くことも出来ない。それでも、謝らせてほしい。本当に、本当に申し訳ない……!」

「国王様、今のあなたに出来ることは、償いだけではありません。これ以上被害を出さないためにも、あなたにしか出来ないことがあります」

「リオン殿……」

 顔を上げてくれた国王様に、私がしてほしいこと……王族の権限と王位継承権を剥奪し、未来永劫マルセムが王様に慣れないようにしてほしいと伝えると、重々しい雰囲気のまま、首を縦に振った。

「……うむ、今回のことを考えると、それが妥当だろう。わかった、国王としてマルセムのことを対処すると、ここに誓おう」

「ありがとうございます。ご自分の息子様にそんなことをするのは、つらいと思いますけど……国王様にしかお願いできなんです」

「父として、愚息の後始末をするくらいはさせてほしい。それで、マルセムはどこにいる?」

「確か、国王様の代わりにパーティーに出席していると、記憶しています」

「わかった。奴が帰って来たら、ここに呼び出して話をしよう。その席に、そなた達も同席してほしいのだが……最初は隠れていてほしい」

 隠れる? よくわからないけど、それでマルセムをどうにかできると言うなら、いくらでも隠れよう。

 ……隠れる、か……子供の頃、サンとよく森の中でかくれんぼをして遊んだっけ……ダメダメ、落ち込んでいても仕方がない。お母さんやサンが安心して見守れるように、頑張らなきゃ。

 マルセムとの決着まで、あと一歩だ……!
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