【完結済】逆恨みで婚約破棄をされて虐待されていたおちこぼれ聖女、隣国のおちぶれた侯爵家の当主様に助けられたので、恩返しをするために奮闘する

ゆうき

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第十七話 再会

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 ウィルフレッド様や使用人と一緒に会場の中に入ると、そこは煌びやかなダンスホールだった。魔法によって眩い光を放つシャンデリアや、キラキラと輝く大きなピアノや装飾品が、更に豪華さを際立てている。

 って、いけないいけない……思わず会場に見惚れてしまった。教わった通りに振舞わないと。

 それにしても、パーティーと聞いていたから、てっきり食事でもしてゆっくりする感じだと思っていたのだけど、この会場を見てる感じだと、舞踏会と言った方が正しそうだ。

 ……舞踏会? え、もし私の考えが正しかったら……体が不自由なウィルフレッド様は、踊れないで恥ずかしい思いをするんじゃ……?

「あの、一応確認なんですけど……今日のパーティーって踊るんですか?」
「ええ、それが主体ですね。後は談笑をしたりして、貴族同士が交流をするのです」
「そんな……」
「申し訳ない。舞踏会だと伝えたら、エレナ殿が余計に心配されると思って、直前まで伏せさせていただいてました」

 ……そうね、きっとウィルフレッド様の想像通りだと思う。だって、みんなが楽しく踊っている中、一人で隅っこで見てるのを想像するだけで、凄く悲しくなるもの。

「ほら、また笑顔が無くなってますよ。元々ちゃんとわかって来てるのですから、何も気にする必要はありません」
「気にしますよ! だって――」
「おやおや、随分と楽しそうにおしゃべりをしているようだ」

 突然聞こえてきた、もう聞きたくもない声に反応して体を強張らせた私は、ゆっくりと振り向く。

 すると、そこには金の髪をかき上げながら不敵な笑みを浮かべるアーロイ様と、私を見下すように見つめるジェシーの姿があった。

「これはレプグナテ家のご子息殿。息災そうでなにより」
「ええ、おかげさまで。あなたもその壊れた体で生きていられたようで、感心してますよ。それと、今はもうボクが当主ですよ」
「…………」

 心配するのではなく、あくまでウィルフレッド様を馬鹿にするような言い方をするアーロイ様。

 どうしてさっきの人達もそうだけど、もっと優しい言葉をかけてあげられないの? 一人の人間として、品性を疑うわ。

「それにしても……エレナ、無事でなによりだよ。ボク達の華々しくて幸せな結婚式を終えて帰ったら、いなくなっていて驚いたし、心配したよ。なあジェシー」
「ええ、そうですわねアーロイ様。帰ったら友人のエレナと、何をして遊ぼうか楽しみにしていたのに」

 心配? 友人? 一体何を言って……ああ、そうか。ここで変なことを言ったら、周りの貴族に変な風に見られる可能性があるから、それを避けているのね。

「アーロイ殿。あまり大きな声では言いませんが……私は事情を全て聞いております。これ以上は……言わなくてもおわかりでしょう?」
「ほう、そうでしたか。それで、ボクを脅すつもりですか? 無様に地位に縋りつこうとする、愚か者の分際で」

 車椅子に座るウィルフレッド様に、わざわざ顔を近づけて馬鹿にするアーロイ様の態度が気に入らなくて……思わず間に割って入った。

「あなたに何がわかるんですか。大切な人が亡くなっても、残った人達や家を守るために、ウィルフレッド様はたくさん頑張っているんです。私や母さんを逆恨みして、陰湿な仕打ちをしてきたあなたとは違うんです」
「エレナ殿!」

 ウィルフレッド様の制止する声が聞こえたけど、こんなに酷いことを言われて、黙っているなんて……私には出来ない。

「ほう……随分と言うようになったな。それにその目、まるでお前の母がまだ生きていた頃のような、生気に満ちた目だ」
「そもそも、これは私達貴族のやり取りだというのに、部外者の汚い女がなんで絡んでくるの?」

 ジェシーは私から婚約者を奪って貴族の妻になっただけなのに、なんでそんなに偉そうにしているのかと思いつつも、私は胸を張って答える。

「私はウィルフレッド様の専属の聖女になったの。仕えている人が馬鹿にされてたら、庇うのは当然のことよ」
「専属……? は、あんたが……?」

 ぽかーんとした表情で、アーロイ様とジェシー様は見つめ合うこと数秒後、二人は突然タカが外れたかのように、大きな声を上げて笑い始めた。

「あはははははっ! これは傑作だ! あの無能聖女が、死にかけの騎士様の専属だなんて、こんな滑稽な話があるか!?」
「くくっ……そ、そんなに笑ったら恥ずかし……だ、駄目! 面白過ぎて堪えられないわ!」

 腹を抱えて笑う二人の声に反応して、周りの貴族達も一斉に私達に注目する。

 ただ注目するだけならまだしも、ヒソヒソと話をしている人や、哀れむように目を細める人だったりと、正直不快に見える人ばかりだ。

「え、エクウェス家に聖女だって……!?」
「まさか、あの体を治すつもりなの? さすがに無理だと思うけど……」
「でも、聖女を見つけて仕えさせるなんて、伊達に侯爵家じゃないわね……なんとかうちに引き抜けないかしら?」
「ご苦労なことだ。そもそも、あんな壊れた体に触れたら、触った側も魔法で呪われて壊されたりしてな?」

 どこからか飛んできた、心無い言葉が浴びせられても、ウィルフレッド様は何も言い返さない。

 でも、私は見逃さなかった。強く拳を握る左手から、赤い液体が流れていたのを。

 ……ごめんなさい、ウィルフレッド様。私……やっぱり何か良い返さないと、気が済まないです。でも安心してください、あなたに迷惑をかけるような暴言は吐きませんから!

「なにがおかしいのですか。何が無理ですか。私は絶対に彼を治してみせます。そして、彼に浴びせられる心無い言葉を、驚きと祝福の声に変えてみせます」
「あんたなんかに出来るわけないでしょ、落ちこぼれ。所詮は偉大な聖女の母を持っただけにすぎないのに!」
「その通りだな、ジェシー。こいつは母子揃ってボクの母を助けられなかった死神だ。お前よりも、ボクのジェシーが治療した方が、まだ可能性があるだろうな! まあ……ジェシーの力を貸すなんて、死んでもお断りだが!」

 ジェシーの肩を抱きながら、高らかに宣言するアーロイ様。それは、自分だって聖女と一緒にいて、ジェシーの方が優れていると誇示しているかのようだ。

 悔しいけど、確かにジェシーの方が、私よりも聖女としての能力は高い。所詮、私は落ちこぼれの聖女なのだから。

 そう思っていると……ウィルフレッド様が、静かに口を開いた。

「申し訳ないが、その口をいい加減閉じてもらえますか?」
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