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第二十八話 お世話になりました!
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翌日の早朝、私達はこれ以上ラピア様のお邪魔をするのは申し訳ないということで、屋敷に帰ろうとしていた。
昨日の一件のせいで、おでこがまだ痛むわ……でも、回復魔法を使わなくても我慢できそうだから、このままでいいかしらね。
「はぁ、やっとうるさい連中がいなくなって、清々するわい」
憎まれ口をたたきながら、ラピア様は今日も葉巻を吸っている。
この二日間で、ラピア様は実は良い人だけど、今までの経験のせいでちょっと素直になれなかったり、やり方が少し人と違うだけで、私達のことを考えてくれているのがわかった。
それがわかったから、今みたいなことを言われても、動じなくなったわ。
「小僧」
「はい」
「儂は今まで様々な人間を見てきたが、小娘のような人間は中々いない。せいぜい大事にしてやるんじゃぞ」
「もちろんです。私は彼女に多大な恩がある……これからも彼女を大切にすると約束します」
「ウィルフレッド様……」
堂々と胸を張って宣言するウィルフレッド様は、とても格好良くて、ドキドキが止まらない。
「かーっ、儂にこれ以上砂糖を吐かせるでない! さっさと帰らんか馬鹿者!」
「ラピア様、お世話になりました! 私、絶対に上達してウィルフレッド様を治してみせます!」
「ありがとうございました、ラピア殿」
私達は深々と頭を下げてから、小屋を出て外に置いておいた馬車に乗りこむ。すると、少し慌てた様子のホウキが馬車に乗りこんできた。
「ラピア殿のホウキ? どうかされましたか?」
「これ、よかったら帰り道に食べてください!」
ホウキが渡してくれたのは、小さな麻袋。そのの中には少し形の悪いクッキーが入っていた。若干焦げが目立っている。
「ご主人様が、帰り道で腹が減ってはいかんだろうって、作ってたんです! って……あっ! これは言っちゃいけないんだった! えーっとえっと……ホウキ達で作ったんでしゅ!!」
「ふふっ、そうでしたか。ありがとうございます。ラピア様にもよろしくお伝えください」
「わかりました! ご主人様はあんな感じでちょっと捻くれてますけど……また遊びに来てくださいね! きっとご主人様も喜ぶと思うので! では……さようなら!」
ホウキはピョンッと馬車から飛び降りると、その場で何度もジャンプをして私達を見送ってくれた。
突然来たと言うのに、最初から最後まで気を遣わせてしまった。何かしらの形でちゃんとお礼をしないといけないわ。
まあ……ちょっぴり素直じゃないラピア様だから、嫌がる素振りを見せてくるかもしれないけどね。
「ラピア様、とっても良い人でしたね」
「ええ。聞いていた話から想像していた方とは全然違った、優しい方でした。やり方は少々手荒いですが」
「本当ですよ! ウィルフレッド様は見てないからわからないと思いますけど、目の前で偽物のウィルフレッド様が倒れた時、本当に焦っちゃって!」
「私が逆の立場だったら、私も取り乱すでしょう。でも大丈夫、私はちゃんとここにいます」
重ねていた手で私の手を強く握りながら、微笑を浮かべるウィルフレッド様。
本当に、ウィルフレッド様が死んでしまわなくて良かった。彼を失ったらと思うと、胸が張り裂けそうになるわ。
「ありがとうございます。あれ……ウィルフレッド様にそう言ってもらえたからかな……安心して、眠くなってきちゃいました……」
「それは奇遇ですね。私も少々眠気が……」
「まだ屋敷までは時間がかかるので、それまでお休みになられてはどうですか?」
「はい、そうさせてもらいます……」
一緒に来てくれた使用人に答えてから、ゆっくりと瞼を閉じると、睡魔は更に強くなっていき、私はそのまま眠りについた。
ウィルフレッド様と手を繋いだままだったからだろうか? その時は自分でも驚くくらい、ぐっすり眠れた――
****
■ウィルフレッド視点■
無事に屋敷に帰ってきた俺は、エレナと別れて自室へと帰ってきた。
さほど屋敷を離れていた訳じゃないのに、随分と屋敷を離れていたような気がするな……って、机の上に書類の山が。
「俺がいない間に、随分と仕事が溜まっているようだ」
事情が事情だったから、これは仕方がないな。数日は誰かに会う予定は入れていなかったが、こういった書類の類は、知らないうちに溜まってしまうものだ。
「これはしばらく仕事に集中しなければいけないな……エレナ殿や、ルナと一緒の時間を増やしたいが、こればかりは仕方がない」
エレナ殿にはたくさん世話になっているし、ルナには寂しい思いをさせてしまっている。だから、何かで返してあげたい。
だが、今回のようにまとまった時間を確保するのは、いつになるかわかったものじゃない。今回はたまたまタイミングが良かったから、すぐに時間を取れただけだからな。
「困ったな……む? どうぞ」
書類の山を前に腰を降ろすと、扉をノックする音が聞こえてきた。扉が開くと、そこにはエレナ殿のことを相談した、初老の使用人が立っていた。
「失礼致します。おかえりになられたと耳にしたもので」
「丁度今戻ってきたんだ」
「左様でしたか。ご挨拶と様子を見に伺わせていただいたのですが……お疲れでしょうし、今日はもうお休みになられた方がよろしいのでは?」
「いや、大丈夫だ。疲れていないよ」
「いえ、ワタクシの目は誤魔化されませんぞ。だいぶお疲れですし、また何か悩まれておりますね」
……まいったな。彼には本当に隠し事が出来ない。したところで、こうして一発でバレてしまう。
「疲れているのは確かだけど、ちょっと悩んでいてね」
「聖女探しが上手くいかなかったのですか?」
「そっちは問題無かったよ。ただ……」
俺は溜息を一つしてから、エレナ殿やルナのことを話す。すると、彼はふむ……と何か思案してから、静かに口を開いた。
「なにも難しいことを考える必要は無いのではありませんか? お二人共、一緒にいてさしあげるだけで、とてもお喜びになられるかと」
「それは……そうかもしれないが」
「以前、恋には様々なやり方があるとお伝え致しましたよね? 感謝を伝える方法も同様に、色々やり方がある……大掛かりなものじゃなくても、気持ちは伝わりますよ」
大掛かりなものじゃなくても、か……すぐには思い浮かばないが、あまり凝り固まった考えをしないで、些細なことでも良いから、二人に何かできることを考えてみよう。
……だが、その前にこの目の前の書類を片付けなくてはな。さて……やるとするか!
昨日の一件のせいで、おでこがまだ痛むわ……でも、回復魔法を使わなくても我慢できそうだから、このままでいいかしらね。
「はぁ、やっとうるさい連中がいなくなって、清々するわい」
憎まれ口をたたきながら、ラピア様は今日も葉巻を吸っている。
この二日間で、ラピア様は実は良い人だけど、今までの経験のせいでちょっと素直になれなかったり、やり方が少し人と違うだけで、私達のことを考えてくれているのがわかった。
それがわかったから、今みたいなことを言われても、動じなくなったわ。
「小僧」
「はい」
「儂は今まで様々な人間を見てきたが、小娘のような人間は中々いない。せいぜい大事にしてやるんじゃぞ」
「もちろんです。私は彼女に多大な恩がある……これからも彼女を大切にすると約束します」
「ウィルフレッド様……」
堂々と胸を張って宣言するウィルフレッド様は、とても格好良くて、ドキドキが止まらない。
「かーっ、儂にこれ以上砂糖を吐かせるでない! さっさと帰らんか馬鹿者!」
「ラピア様、お世話になりました! 私、絶対に上達してウィルフレッド様を治してみせます!」
「ありがとうございました、ラピア殿」
私達は深々と頭を下げてから、小屋を出て外に置いておいた馬車に乗りこむ。すると、少し慌てた様子のホウキが馬車に乗りこんできた。
「ラピア殿のホウキ? どうかされましたか?」
「これ、よかったら帰り道に食べてください!」
ホウキが渡してくれたのは、小さな麻袋。そのの中には少し形の悪いクッキーが入っていた。若干焦げが目立っている。
「ご主人様が、帰り道で腹が減ってはいかんだろうって、作ってたんです! って……あっ! これは言っちゃいけないんだった! えーっとえっと……ホウキ達で作ったんでしゅ!!」
「ふふっ、そうでしたか。ありがとうございます。ラピア様にもよろしくお伝えください」
「わかりました! ご主人様はあんな感じでちょっと捻くれてますけど……また遊びに来てくださいね! きっとご主人様も喜ぶと思うので! では……さようなら!」
ホウキはピョンッと馬車から飛び降りると、その場で何度もジャンプをして私達を見送ってくれた。
突然来たと言うのに、最初から最後まで気を遣わせてしまった。何かしらの形でちゃんとお礼をしないといけないわ。
まあ……ちょっぴり素直じゃないラピア様だから、嫌がる素振りを見せてくるかもしれないけどね。
「ラピア様、とっても良い人でしたね」
「ええ。聞いていた話から想像していた方とは全然違った、優しい方でした。やり方は少々手荒いですが」
「本当ですよ! ウィルフレッド様は見てないからわからないと思いますけど、目の前で偽物のウィルフレッド様が倒れた時、本当に焦っちゃって!」
「私が逆の立場だったら、私も取り乱すでしょう。でも大丈夫、私はちゃんとここにいます」
重ねていた手で私の手を強く握りながら、微笑を浮かべるウィルフレッド様。
本当に、ウィルフレッド様が死んでしまわなくて良かった。彼を失ったらと思うと、胸が張り裂けそうになるわ。
「ありがとうございます。あれ……ウィルフレッド様にそう言ってもらえたからかな……安心して、眠くなってきちゃいました……」
「それは奇遇ですね。私も少々眠気が……」
「まだ屋敷までは時間がかかるので、それまでお休みになられてはどうですか?」
「はい、そうさせてもらいます……」
一緒に来てくれた使用人に答えてから、ゆっくりと瞼を閉じると、睡魔は更に強くなっていき、私はそのまま眠りについた。
ウィルフレッド様と手を繋いだままだったからだろうか? その時は自分でも驚くくらい、ぐっすり眠れた――
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■ウィルフレッド視点■
無事に屋敷に帰ってきた俺は、エレナと別れて自室へと帰ってきた。
さほど屋敷を離れていた訳じゃないのに、随分と屋敷を離れていたような気がするな……って、机の上に書類の山が。
「俺がいない間に、随分と仕事が溜まっているようだ」
事情が事情だったから、これは仕方がないな。数日は誰かに会う予定は入れていなかったが、こういった書類の類は、知らないうちに溜まってしまうものだ。
「これはしばらく仕事に集中しなければいけないな……エレナ殿や、ルナと一緒の時間を増やしたいが、こればかりは仕方がない」
エレナ殿にはたくさん世話になっているし、ルナには寂しい思いをさせてしまっている。だから、何かで返してあげたい。
だが、今回のようにまとまった時間を確保するのは、いつになるかわかったものじゃない。今回はたまたまタイミングが良かったから、すぐに時間を取れただけだからな。
「困ったな……む? どうぞ」
書類の山を前に腰を降ろすと、扉をノックする音が聞こえてきた。扉が開くと、そこにはエレナ殿のことを相談した、初老の使用人が立っていた。
「失礼致します。おかえりになられたと耳にしたもので」
「丁度今戻ってきたんだ」
「左様でしたか。ご挨拶と様子を見に伺わせていただいたのですが……お疲れでしょうし、今日はもうお休みになられた方がよろしいのでは?」
「いや、大丈夫だ。疲れていないよ」
「いえ、ワタクシの目は誤魔化されませんぞ。だいぶお疲れですし、また何か悩まれておりますね」
……まいったな。彼には本当に隠し事が出来ない。したところで、こうして一発でバレてしまう。
「疲れているのは確かだけど、ちょっと悩んでいてね」
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「そっちは問題無かったよ。ただ……」
俺は溜息を一つしてから、エレナ殿やルナのことを話す。すると、彼はふむ……と何か思案してから、静かに口を開いた。
「なにも難しいことを考える必要は無いのではありませんか? お二人共、一緒にいてさしあげるだけで、とてもお喜びになられるかと」
「それは……そうかもしれないが」
「以前、恋には様々なやり方があるとお伝え致しましたよね? 感謝を伝える方法も同様に、色々やり方がある……大掛かりなものじゃなくても、気持ちは伝わりますよ」
大掛かりなものじゃなくても、か……すぐには思い浮かばないが、あまり凝り固まった考えをしないで、些細なことでも良いから、二人に何かできることを考えてみよう。
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