【完結済】逆恨みで婚約破棄をされて虐待されていたおちこぼれ聖女、隣国のおちぶれた侯爵家の当主様に助けられたので、恩返しをするために奮闘する

ゆうき

文字の大きさ
33 / 45

第三十三話 いざ小さな大冒険へ

しおりを挟む
■アーロイ視点■

 今日も面倒な仕事を終わらせたボクは、自室で待つ愛する妻の元へと向かう。

 毎日毎日仕事をさせられて、ボクは心も体も疲れ切っているが、愛する妻の姿を見ると、それらが全て無くなったかのように感じるんだ。

 あの女がいた時も、いたぶって発散する楽しみ方もあったが……こちらの方が、より満たされる。たまにはあの女をいたぶりたくもなるが。

「あ、おかえりなさいアーロイ様!」
「ただいま、ジェシー」

 ボクの胸に飛び込んできたジェシーは、そのままの勢いでボクの唇を奪ってきた。

 やれやれ、毎日のこととはいえ、この勢いには勝てる気がしないな。

「お仕事お疲れ様ですわ! 私が癒してあげますわ」
「いや、大丈夫だよ。君の方が疲れているだろう? 今日だって、聖女として治療をしてきたと聞いている」
「ええ。最近は仕事が多くて、魔力の消費が早くてしょうがないわ。お肌も荒れちゃうし……」
「それは一大事だ。早くあれが見つかればいいんだが……」

 あれというのは、おとぎ話として伝わる、願いを叶える泉のことだ。その泉の正体は、魔力濃度が異常に高い水という噂もある。

 元々その話自体は聞いたことがあったが、どうせ嘘だろうと思っていた。しかし、最近ジェシーの疲れが目立ち始めたから、水を触媒にしてジェシーの負担を減らすため、そしてレプグナテ家の繁栄のために探している。

 泉があるという大森林に、兵を派遣しているのだが……なぜか同じ場所を回ってしまい、いつまでたってもたどり着けないそうだ。

 まったく、たかが泉一つ探すのにどれだけ苦労しているんだ。どいつもこいつも使えない連中だ……まるであの出来損ない女のようだ。それとも、所詮はただの噂ということか?

「失礼します!」
「なんだ。近衛兵風情が、ボク達の夫婦の時間を邪魔するのか」
「申し訳ございません! ご報告がございまして!」
「言ってみろ」
「現在調査中の泉ですが……」

 まだ近衛兵が話している途中だというのに、ジェシーは身を乗り出しながら口を開いた。

「ええ!? ついに見つかったの!?」
「それが、一向に見つかる気配が無く、調査は難航しております。魔法に精通している学者が言うには、強固な結界が張られているそうで」
「なによそれ! さっさとぶっ壊しちゃいなさい!」
「強固な物なので、そう簡単にはいかないかと……」

 結界か……これは想像以上に期待できそうだな。その水でジェシーを助けるどころか、更にとんでもない聖女になるかもしれない。

 もしジェシーが、どんな怪我や病気でも治せる――それこそ死人さえ蘇らせるようになれば、もう我がレプグナテ家に逆らえるものはいなくなる。最高じゃないか。

「泉の調査はこれからも続けろ。そして、もし何かしら進展があったら、すぐに連絡できるようにしておくことと、僕らがすぐに迎えるように、転移魔法陣を張るのを忘れるな」
「はっ!!」

 勇ましい返事を残して、近衛兵は部屋を去っていった。それを見計らって、ジェシーは再びボクに抱きついてきた。

「泉が見つかれば、君はもっと凄い聖女になれるよ。それこそ……エレノアよりもね」
「それは楽しみですわ! もしそうなったら……もっと愛してくれますか?」
「当然だろう? なんなら今からでも……」
「あっ……アーロイさま……」

 ボクはジェシーをベッドに押し倒すと、今度は自分の方から、ジェシーの唇を奪ってやった。

 ――ボク達の熱い夜は、まだ始まったばかりだ。


 ****


■ルナ視点■

 無事に深夜になった! 寝ておいたおかげで、全然眠くない! コックにお願いして作ってもらった卵サンドウィッチも完璧!

「ルナ調査隊! みんなのために、泉を発見しにいきます!」
「本当に大丈夫でしょうか……外は真っ暗ですし……」
「暗いなら、明るい子を呼べばいいんだよ!」

 ルナは地面に真っ赤な魔法陣を生み出して魔力を流すと、魔法陣は赤く光り始めた。

「ルナの声に応えて、この地にケンゲンせよ! 炎の精霊、サラマンダー!!」

 私の呼びかけに応えるように、ポンっと音を立てて出た小さな煙と共に、真っ赤でツンツンした髪と赤い服が特徴的な、小さな精霊が出てきた。

「あぁ……? おお、ルナじゃねーか! オレ様を呼ぶなんて珍しいな!」
「えへへっ、久しぶりだねダーちゃん!」
「お久しぶりです……」
「なんだシーもいたのか。ったく、相変わらず辛気臭い顔で、ルナの近くをブンブン飛んでるな」
「い、いいじゃないですかぁ……あなたこそ、暑苦しい雰囲気は変わってないですよ?」
「おうよ! この熱さこそ、オレ様の生きる証!」

 サラマンダー……ううん、ダーちゃんはグッと握った拳を上げながら、堂々と答える。

 ダーちゃんは凄く元気な子なんだけど、炎の精霊っていうだけあって、いるだけなのに、たまに周りの物を燃やしちゃう時があるから、あんまり呼べないんだ。

 シーちゃんとはよくケンカっていうか……言い合いをしてるけど、とっても面白いし、元気で明るい子だから、本当はもっと一緒に遊びたいんだけどなぁ。

「んで、こんな夜中に呼び出してどうしたよ?」
「実はですね……」

 ルナの代わりに、シーちゃんが今まであったことを話してくれた。

「ほー……そんなすげえ泉が本当にあんのか?」
「絶対あるよ! だっておじいちゃんが言ってたもん!」
「おじいちゃんって、あのボケーっとしてる爺さんだろ? なんだか信用できねえな」

 おじいちゃんにも見せた絵本をパラパラと読むダーちゃんは、あんまり信じていないみたい……。

「それに、こんな時間に出掛けたら、あとで叱られるぞ? きっと遊び禁止、おやつ禁止、絵本禁止とかになるぞ~?」

 ひぃ!? それはあまりにも怖い罰だよ! 遊べないとつまんないし、甘いおやつも絵本もダメだって言われたら、泣いちゃうと思う!

 ……でもっ!

「ルナは行くよ! ルナだってお手伝いしたいもんっ!」
「ったく、こりゃ何を言っても聞かねえな。イマイチ信じられねえが……シー、覚悟を決めてオレ様達で主人を送り届けるしか無いようだぜ」
「……みたいですね。一緒に頑張りましょう!」

 えへへ、今日は二人が仲良しで良かった! せっかく一緒に行くのにケンカしてたら、楽しくないもんね!

「さてと、シーから聞いた目的地は、それなりに遠いみたいだな。オレ様が運んでやってもいいが……かなり目立っちまうし、炎で森が火事になりかねぇ。シー、お前がやれ」
「それが一番よさそうですね……ではっ」

 シーちゃんは窓から部屋の外に出ると、小さな体が白く光りだした。それからすぐ……シーちゃんの姿が変わった。

 今までは蝶々みたいな羽が生えた、小さな人って見た目だったシーちゃんは、大きな龍になっている。スラッとした薄い緑色の龍で、カッコいいんだよ!

「こ、この姿になるのも……久しぶりですね」
「はんっ、その見た目になると、それなりに見られるようになるな。ま、オレ様の方が百倍カッコいいけどよ!」
「どっちもカッコいいよ?」
「さすがお優しいご主人様です。誰かさんとは大違いです……では行きましょうか」
「うんっ!」

 シーちゃんの背中に乗ると、シーちゃんはゆっくりと羽ばたく。すると、シーちゃんの体はふわりと浮かんだ。

「で、では行きますよ……!」
「ちょっと待て。行く前にオレ様はやることがある」
「早くしないと……見つかってしまいますよ?」
「んなの、言われなくてもわかってるっての。目的地のことを、もう少し知っておきたいだけだ」

 そう言うと、ダーちゃんは絵本を開いた。それからすぐに本を閉じると、ルナの隣に来た。

「よし……おいシー! オレ様も背中に乗せやがれ!」
「あ、あなたは飛べるじゃないですか……それに、あなたが乗ったら火傷をしちゃうので」
「くっそ~!」

 二人が言い合いをしてるのを眺めながら、ルナは目的地である森の方をジッと見つめる。

 お兄様、エレナお姉ちゃん、待っててね。絶対にルナが泉の水を取ってくるから! さあ、冒険の始まりだ~!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。

和泉鷹央
恋愛
 聖女は十年しか生きられない。  この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。  それは期間満了後に始まる約束だったけど――  一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。  二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。  ライラはこの契約を承諾する。  十年後。  あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。  そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。  こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。  そう思い、ライラは聖女をやめることにした。  他の投稿サイトでも掲載しています。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります

秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。 そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。 「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」 聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

処理中です...