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第三十五話 少女と愉快な三精霊
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■ルナ視点■
屋敷を出発してから二十分程で、目的地の森へと到着できたよ! でも、着いたといっても……森は凄く広いから、とりあえず森の入口に降りなきゃだね。
「ふぅ、ふぅ……疲れましたぁ~……」
森の入り口にまで連れてきてくれたシーちゃんは、いつもの姿に戻った。
「本来の姿になるの、疲れるよなぁ……オレ様もわかるぜ」
「ありがとう、シーちゃん! 少し休憩してて!」
ここまでずっと頑張ってくれたシーちゃんを抱っこしたルナは、目の前にある森の入口を見つめる。
月明かりが全然差し込まない暗い森は、見ているだけで怖いけど……ルナには強い味方がいるもん!
「ダーちゃん、明るく出来る?」
「できねーわけじゃねえけどよ、火事を防ぐためにかなり小さい炎しか出せねーんだよ」
「無いよりいいよ!」
「それもそうか。ちょっと待ってな」
ダーちゃんが指をパチンっとカッコよく鳴らすと、ダーちゃんの指先に火が灯った。まるでロウソクの火みたいに小さくて可愛い火だね!
「さてと、とりあえず目的地に着いたわけだが……具体的な位置はわかるのか?」
「ぜーんぜん!」
「知ってた。お前がそんなことを考えてるわけないと思ってたぜ」
「ダー、ご主人様に失礼ですよ……!」
「へいへい悪かったよ。とりあえず、願いを叶えるなんていうくらいだから、魔力が濃そうだ。魔力探知をすりゃ、近くに行くことくらいはできるんじゃねーか?」
なるほど、ダーちゃんってば凄く賢いよ! ルナ、そんなやり方は全然思いつかなかった!
「言うのは簡単ですけど……どうやって魔力探知をするんですか……?」
「そんなの、あいつに頼むのが手っ取り早いだろ」
「あいつって誰のこと~?」
「いつも昼寝ばかりしてる、グータラ女のことさ」
「あー! わかった、すぐに呼ぶね!」
ダーちゃんの言っていることを理解したルナは、深呼吸をしながら意識を集中して、茶色の魔法陣を足元に作り出した。
「ルナの声に応えて、この地にケンゲンせよ! 大地の精霊、ピグミー!!」
ルナの声に反応して、足元の魔法陣が光りだす。すると、ダーちゃんの時と同じ様に出てきた煙と共に、茶色の髪と服が特徴的な、小さな精霊が出てきた。
「すー……すー……」
「こいつ、相変わらず寝ていやがるな……」
「ピグちゃん、起きて~!」
「むにゃ……ふぁ~……あれぇ~ルナちんじゃ~ん……一緒にお昼寝しにきたのかなぁ?」
フワフワと浮いたまま、気持ちよさそうに寝ているピグミー……ううん、ピグちゃんをつっつくと、大きな欠伸をしながら目を開けた。
この子はいつもお昼寝をしている、とってものんびりした子なの! 前はよく一緒に遊んでいたんだけど、いつも眠そうにしててかわいそうだから、あまり呼ばなくなっちゃったんだ。
本当は、三人と一緒に遊びたいんだけどなぁ。だって、ルナはみんなが大好きだからね!
「――というわけでな。お前に場所を探してほしいっつーわけよ」
「にゃるほどねぇ。とりあえず事情は把握しましたよ~。眠いしお断りっていいたいけど~……アタシもそこまで鬼じゃないし、パパっと探しますかぁ」
「ありがとうピグちゃん!」
えへへ、やっぱりピグちゃんも優しくて良い子だね! こんな可愛くて優しい精霊に囲まれて、ルナはとっても幸せだよ!
「むむむ~……む??」
体をほんのりと光る茶色の光に包まれたピグちゃんは、急にキョトンとした顔になった。
「み、見つかりましたか……?」
「いやぁ、これは何ていえばルナちんに伝わるかな~?」
「なんだよ、はっきり言えよ!」
少し垂れた可愛い目を閉じながら、ん~……と考えるピグちゃん。一体何を見つけたんだろう?
「簡単に言っちゃうと、魔力探知出来ない場所があってね~。そこ以外には、それっぽい場所は見つからなかったねぇ」
「そういえば……屋敷のお爺様が、泉は誰もたどり着けたことが無いと言ってましたね……」
「それが関係してるのかな? とにかく、そこに行ってみようよ! 何か見つかるかも!」
「だな。ルナ、足元に気を付けろよ!」
ダーちゃんにうんっ! と力強く頷いてから、森の中へと入っていく。
中に入ってみると、ルナが思っていたより暗いし寒いし、おばけが出てきそうで……急に怖くなってきちゃった。うぅ……ちょっと帰りたくなってきたかも……。
「ダーってば、そんなことを言ってると、お父さんみたいだねぇって思われるよ~?」
「仕方ねえだろ! シーはバテてるし、お前はいっつもアホ面で昼寝ばかりしてて、イマイチ信用できねーし」
「さすがに酷すぎな~い?」
「ケンカは――」
ケンカはダメだよと言おうとした時、グギャアアア!! という変な声と一緒に、辺りの木がバサバサと音を立てた。
その音にビックリしちゃって、その場で尻もちをついちゃった……。
「ふぇ……うっ……うぅ……」
今の音で、急にすごく怖くて、心細くなっちゃった……お兄様、エレナお姉ちゃん……みんなぁ……。
「ありゃ、変な声の鳥が驚かしにきたみたいだねぇ。大丈夫だよ~ルナちん、あれはおばけとかじゃないからね~」
「だな。オレ様達がいるから大丈夫だぜ!」
「だから……泣かないでください……ねっ?」
「ぐすんっ……」
怖くて泣いちゃったルナに、三人はルナを励ましながら、頭を撫でてくれたり、涙を拭ってくれた。それだけなのに、ルナの怖いって気持ちは、スーッと消えちゃった。
そうだよね、ルナは一人ぼっちじゃないから、怖くないよね! それに、ルナはお手伝いをするためにここに来たんだから、泣いてちゃダメだよね!
「みんな、ありがとう! ルナはもう大丈夫!」
「にしし、ルナちんは強い子だねぇ。でも迷子になっちゃったらダメだから、アタシに乗るといいよん」
ピグちゃんはルナから少し離れると、その姿を人から大きな白いトラさんへと変化させた。
さっきのシーちゃんと同じように、ピグちゃんも本当の姿があるんだよ! それが、このカッコいいトラさんなの!
「んだよ、お前も母親みたいなことをしてるじゃねーか」
「おやおや~? 火傷するのを防ぐために触れない、炎の精霊君の僻みですかな~?」
「やかましいわ! さっさと行くぞ!」
プリプリと怒るダーちゃんは、ルナ達よりも先に行っちゃった。
早くダーちゃんを追いかけないとだよ! ピグちゃんの背中に乗ってっと……えへへ、ピグちゃんの背中はフサフサしてるし暖かいから、乗ってて気持ちがいいんだ~!
「まったく~ダーちんも相変わらずだねぇ。ルナちん、アタシの背中はどうかな?」
「うんっ、フワフワで気持ちいいよ! それに……なんか安心する!」
「それはよかった~あっ、ダーちんに追いついたぞ~」
「はやっ!? もう追いついたのかよ!」
「そりゃトラの姿の時は、一歩の幅が広いですからねぇ~」
トラさんになったピグちゃんは、ルナが乗っても全然余裕なくらいの大きさになるの。そんな大きさだと、歩いてるのにルナが走ったよりも全然速いんだよ!
でもね、ルナが思っていたよりも森の中ってせまいっていうか……木が沢山あるし、枝とか葉っぱがあるから、おっきくなったピグちゃんだと、ちょっと歩きにくそう……。
「ピグさん、枝とか踏んで怪我をしないでくださいね……」
「心配してくれてありがとね、シーちん。アタシの体は頑丈だから、ちょっとやそっとじゃ……むむっ?」
しばらくゆっくりと進んでいると、ピグちゃんが急に歩くのをやめた。
どうしたんだろう? なにかあったのかな……?
「お? ピグ、なんか見つけたか?」
「見つけちゃったねぇ。この先……相当強力な結界が張られているっぽいよ」
屋敷を出発してから二十分程で、目的地の森へと到着できたよ! でも、着いたといっても……森は凄く広いから、とりあえず森の入口に降りなきゃだね。
「ふぅ、ふぅ……疲れましたぁ~……」
森の入り口にまで連れてきてくれたシーちゃんは、いつもの姿に戻った。
「本来の姿になるの、疲れるよなぁ……オレ様もわかるぜ」
「ありがとう、シーちゃん! 少し休憩してて!」
ここまでずっと頑張ってくれたシーちゃんを抱っこしたルナは、目の前にある森の入口を見つめる。
月明かりが全然差し込まない暗い森は、見ているだけで怖いけど……ルナには強い味方がいるもん!
「ダーちゃん、明るく出来る?」
「できねーわけじゃねえけどよ、火事を防ぐためにかなり小さい炎しか出せねーんだよ」
「無いよりいいよ!」
「それもそうか。ちょっと待ってな」
ダーちゃんが指をパチンっとカッコよく鳴らすと、ダーちゃんの指先に火が灯った。まるでロウソクの火みたいに小さくて可愛い火だね!
「さてと、とりあえず目的地に着いたわけだが……具体的な位置はわかるのか?」
「ぜーんぜん!」
「知ってた。お前がそんなことを考えてるわけないと思ってたぜ」
「ダー、ご主人様に失礼ですよ……!」
「へいへい悪かったよ。とりあえず、願いを叶えるなんていうくらいだから、魔力が濃そうだ。魔力探知をすりゃ、近くに行くことくらいはできるんじゃねーか?」
なるほど、ダーちゃんってば凄く賢いよ! ルナ、そんなやり方は全然思いつかなかった!
「言うのは簡単ですけど……どうやって魔力探知をするんですか……?」
「そんなの、あいつに頼むのが手っ取り早いだろ」
「あいつって誰のこと~?」
「いつも昼寝ばかりしてる、グータラ女のことさ」
「あー! わかった、すぐに呼ぶね!」
ダーちゃんの言っていることを理解したルナは、深呼吸をしながら意識を集中して、茶色の魔法陣を足元に作り出した。
「ルナの声に応えて、この地にケンゲンせよ! 大地の精霊、ピグミー!!」
ルナの声に反応して、足元の魔法陣が光りだす。すると、ダーちゃんの時と同じ様に出てきた煙と共に、茶色の髪と服が特徴的な、小さな精霊が出てきた。
「すー……すー……」
「こいつ、相変わらず寝ていやがるな……」
「ピグちゃん、起きて~!」
「むにゃ……ふぁ~……あれぇ~ルナちんじゃ~ん……一緒にお昼寝しにきたのかなぁ?」
フワフワと浮いたまま、気持ちよさそうに寝ているピグミー……ううん、ピグちゃんをつっつくと、大きな欠伸をしながら目を開けた。
この子はいつもお昼寝をしている、とってものんびりした子なの! 前はよく一緒に遊んでいたんだけど、いつも眠そうにしててかわいそうだから、あまり呼ばなくなっちゃったんだ。
本当は、三人と一緒に遊びたいんだけどなぁ。だって、ルナはみんなが大好きだからね!
「――というわけでな。お前に場所を探してほしいっつーわけよ」
「にゃるほどねぇ。とりあえず事情は把握しましたよ~。眠いしお断りっていいたいけど~……アタシもそこまで鬼じゃないし、パパっと探しますかぁ」
「ありがとうピグちゃん!」
えへへ、やっぱりピグちゃんも優しくて良い子だね! こんな可愛くて優しい精霊に囲まれて、ルナはとっても幸せだよ!
「むむむ~……む??」
体をほんのりと光る茶色の光に包まれたピグちゃんは、急にキョトンとした顔になった。
「み、見つかりましたか……?」
「いやぁ、これは何ていえばルナちんに伝わるかな~?」
「なんだよ、はっきり言えよ!」
少し垂れた可愛い目を閉じながら、ん~……と考えるピグちゃん。一体何を見つけたんだろう?
「簡単に言っちゃうと、魔力探知出来ない場所があってね~。そこ以外には、それっぽい場所は見つからなかったねぇ」
「そういえば……屋敷のお爺様が、泉は誰もたどり着けたことが無いと言ってましたね……」
「それが関係してるのかな? とにかく、そこに行ってみようよ! 何か見つかるかも!」
「だな。ルナ、足元に気を付けろよ!」
ダーちゃんにうんっ! と力強く頷いてから、森の中へと入っていく。
中に入ってみると、ルナが思っていたより暗いし寒いし、おばけが出てきそうで……急に怖くなってきちゃった。うぅ……ちょっと帰りたくなってきたかも……。
「ダーってば、そんなことを言ってると、お父さんみたいだねぇって思われるよ~?」
「仕方ねえだろ! シーはバテてるし、お前はいっつもアホ面で昼寝ばかりしてて、イマイチ信用できねーし」
「さすがに酷すぎな~い?」
「ケンカは――」
ケンカはダメだよと言おうとした時、グギャアアア!! という変な声と一緒に、辺りの木がバサバサと音を立てた。
その音にビックリしちゃって、その場で尻もちをついちゃった……。
「ふぇ……うっ……うぅ……」
今の音で、急にすごく怖くて、心細くなっちゃった……お兄様、エレナお姉ちゃん……みんなぁ……。
「ありゃ、変な声の鳥が驚かしにきたみたいだねぇ。大丈夫だよ~ルナちん、あれはおばけとかじゃないからね~」
「だな。オレ様達がいるから大丈夫だぜ!」
「だから……泣かないでください……ねっ?」
「ぐすんっ……」
怖くて泣いちゃったルナに、三人はルナを励ましながら、頭を撫でてくれたり、涙を拭ってくれた。それだけなのに、ルナの怖いって気持ちは、スーッと消えちゃった。
そうだよね、ルナは一人ぼっちじゃないから、怖くないよね! それに、ルナはお手伝いをするためにここに来たんだから、泣いてちゃダメだよね!
「みんな、ありがとう! ルナはもう大丈夫!」
「にしし、ルナちんは強い子だねぇ。でも迷子になっちゃったらダメだから、アタシに乗るといいよん」
ピグちゃんはルナから少し離れると、その姿を人から大きな白いトラさんへと変化させた。
さっきのシーちゃんと同じように、ピグちゃんも本当の姿があるんだよ! それが、このカッコいいトラさんなの!
「んだよ、お前も母親みたいなことをしてるじゃねーか」
「おやおや~? 火傷するのを防ぐために触れない、炎の精霊君の僻みですかな~?」
「やかましいわ! さっさと行くぞ!」
プリプリと怒るダーちゃんは、ルナ達よりも先に行っちゃった。
早くダーちゃんを追いかけないとだよ! ピグちゃんの背中に乗ってっと……えへへ、ピグちゃんの背中はフサフサしてるし暖かいから、乗ってて気持ちがいいんだ~!
「まったく~ダーちんも相変わらずだねぇ。ルナちん、アタシの背中はどうかな?」
「うんっ、フワフワで気持ちいいよ! それに……なんか安心する!」
「それはよかった~あっ、ダーちんに追いついたぞ~」
「はやっ!? もう追いついたのかよ!」
「そりゃトラの姿の時は、一歩の幅が広いですからねぇ~」
トラさんになったピグちゃんは、ルナが乗っても全然余裕なくらいの大きさになるの。そんな大きさだと、歩いてるのにルナが走ったよりも全然速いんだよ!
でもね、ルナが思っていたよりも森の中ってせまいっていうか……木が沢山あるし、枝とか葉っぱがあるから、おっきくなったピグちゃんだと、ちょっと歩きにくそう……。
「ピグさん、枝とか踏んで怪我をしないでくださいね……」
「心配してくれてありがとね、シーちん。アタシの体は頑丈だから、ちょっとやそっとじゃ……むむっ?」
しばらくゆっくりと進んでいると、ピグちゃんが急に歩くのをやめた。
どうしたんだろう? なにかあったのかな……?
「お? ピグ、なんか見つけたか?」
「見つけちゃったねぇ。この先……相当強力な結界が張られているっぽいよ」
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