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第四十四話 手に入れた幸せ
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ウィルフレッド様が治った日から数日。疲れでずっと寝てばかりだったけど、ようやく動けるようになった私は、ウィルフレッド様にお願いして、とある場所へと行っていた。
「ほう、そんなことがあったとは。こんな短期間でやり遂げるとは、少しは褒めてやるぞい」
目的地の主である老婆――ラピア様は、今日も葉巻を楽しみながら、私の報告に耳を傾けていた。
ラピア様には色々とお世話になったから、直接報告をしたくて、ウィルフレッド様にお願いして馬車を出してもらった。
ちなみにだけど、今日はウィルフレッド様はいない。自由に動けるようになったからか、今まで以上に多忙になってしまったようだ。
「これもラピア様の協力があったからです。本当にありがとうございます!」
「ふん、儂が懇切丁寧に教えてやったのだから、当然じゃな。本当ならもっと盛大な礼の品を用意しろと言いたいところじゃが、直接伝えに来た誠意に免じて許してやろう」
自慢げに笑うラピア様。その姿は、以前会った時から何も変わっていなくて、不思議な安心感を覚える。
「その治ったことを記念して、近いうちに屋敷でパーティをするんです。身内だけなんですけど、ラピア様にはお世話になったので、よければどうでしょうか?」
「わざわざそんなことを言いに来たのかい? そんな騒がし場所はお断りだよ」
そっか……来てくれないだろうなとは思っていたけど、少しは期待していたから、残念だわ。
「それで、お前はこれからどうするつもりじゃ?」
「もちろんウィルフレッド様の専属聖女として、共に生きるつもりです。あ、でも……母さんみたいに、色んな人を助ける聖女として活動もしたいです」
「別に治ったのだから、もう専属としてやっていく必要は無いじゃろ。むしろ、独り立ちした方が、人助けはしやすいのでは?」
ラピア様の言うことはもっともだ。でも、私は……どうしてもウィルフレッド様の元を離れたくない。ウィルフレッド様と一緒に、これからもずっとずっと一緒にいたい。
「ふむ、なるほどのぅ……へっぽこ聖女の小娘が、どうしてこんなに早く治せたのか、わかった気がするわい」
「え、本当ですか? どうしてなんでしょうか? 言われた通りに練習もしましたし、治した時にウィルフレッド様のことを強く想ったのは確かですが、まさか動かなかった体がこんなに早く治るのは、想定外だったんです!」
「馬鹿者め、それくらいは自分で気づかんか」
「いたっ」
なぜかしかめっ面になったラピア様に、おでこを小突かれた。
うぅ、どうして教えてくれないのかしら……別にそれくらい教えたっても良いと思うのだけど……自分で気づかないと意味が無いことなのかもしれないわ。
「それで、用はもう終わりか?」
「あ、はい」
「ならとっとと帰れ。儂は忙しいんじゃ」
「ご主人様~! さっきご主人様が丹精込めて焼き始めたケーキが焼けましたよ~! きっと喜んでくれますね!」
「ばっ!? 余計なことを言うんじゃないよ! 次余計なことを言ったら、ただのホウキにしてやるからね!」
「ひぃぃぃぃ!? と、とにかくこちらです~!」
ホウキは凄く怖がりながら、持っていた袋を私に手渡してくれた。
中には、とても美味しそうなケーキが入っている。やや形が崩れたり、焦げてるところもあるけど、それも味があっていいじゃない? 私は大好きよ。
「あはは……それじゃあ、名残惜しいですがそろそろ帰ります。ケーキは帰ったら食べますね」
「あー帰れ帰れ。小僧には適当によろしく言っておけ。それと、次来る時はちゃんと連絡をよこさんか、馬鹿者め」
「駄目ですよ。急に来ないと、私を見た時に一瞬嬉しそうにするラピア様が見れないですし」
「なっ……!? 小娘、いつからこの儂をからかうようになった!?」
「ふふ、いつでしょうね? それじゃあまた突然来ますね~!」
私は手を大きく振りながら馬車に乗ると、そのまま走りだした。
「二度度来るな、馬鹿小娘が! まったく……どうなることかも思ったが……お前の娘は、大層立派に、そして幸せそうじゃぞ……我が友よ」
****
「おかえりーエレナお姉ちゃん!!」
夕方ごろに屋敷に帰ってくると、ルナちゃんが勢いよく私の胸に飛び込んできた。
ルナちゃんも私と同じようにずっと眠っていたのだけど、私よりも少し早くに起きたのよ。特に怪我もなくて、見ての通り元気一杯。
使用人の人達も、多少は怪我をしていたけど、私が治したから特に問題は無かったわ。
「聖女のお婆ちゃんは元気だった?」
「ええ、いつも通りだったわ」
「そっか! ルナはね、お兄様に遊んでもらいたかったんだけど、お仕事で忙しいからって断られちゃった……」
「ルナちゃん……」
「うん。でもいいの! お兄様が凄く元気にしてくれるだけで、ルナ嬉しいの!」
満面の笑みを浮かべるルナちゃん。これが太陽のように眩しい笑顔というやつだろう。見ているだけで、こちらの気持ちまで明るくなる。
ルナちゃんもだけど、屋敷にいる人達全員の表情が、あの日からとても明るくなった気がするわ。
そうそう。一緒に行ってくれた人達と合流した時とか、帰ってきた時、使用人の全員が泣いて回復を喜び、私に何度もお礼を言ってくれた。傍から見たら、凄い光景だったでしょうね。
あと、ルナちゃんが元気になったウィルフレッド様を見た時、色々大変だった。ひっくり返って頭をぶつけたり、花瓶を落としてびしょ濡れになったり、魔力が暴走して部屋が散らかったりと、大変だったのよ。
でも、そんなになるくらい嬉しかったってことね。実際にウィルフレッド様に抱きつきながら沢山泣いて、感情を爆発させていたわ。
「それじゃあ、お姉ちゃんと一緒に遊ぶ?」
「うんっ! 今日はおままごと……をしたいけど、二人だけだと役が少ないよね?」
「そうかもしれないわね。みんなはまだ起きない?」
「うん……呼びかけても、返事をしてくれないの。でもでも、エレナお姉ちゃんが言ってたように、きっと疲れて寝ちゃってるだけだから、いつかまた一緒に遊んでくれるよ!」
普段はシーちゃんが一緒にいたし、呼ぼうと思えば他の精霊も呼べたのに、今では誰もその声に応える者はいない。
いくらウィルフレッド様が元気になったのが嬉しいとはいえ、いつも一緒にいた精霊がいなくなるのは、きっと寂しいわよね……出来る限り、ルナちゃんが寂しくならないようにしてあげないとね。
「それじゃあ、お絵かきでもしましょうか。丁度夕日が綺麗だから、それでも描かない?」
「うん、いいよ! それじゃあ道具を持ってくるから、お姉ちゃんは部屋で待ってて!」
元気よく走り去るルナちゃんを、私や近くにいた使用人達が笑顔で見送る。
今までもずっと平和で穏やかな時間を過ごしていたけど、ウィルフレッド様が治ったからなのか、今まで以上に幸せに感じられる。
……母さん、見ててくれた? 私、やり遂げたよ……母さんみたいな素晴らしい聖女に、ちょっとは近づけたかな……?
「ほう、そんなことがあったとは。こんな短期間でやり遂げるとは、少しは褒めてやるぞい」
目的地の主である老婆――ラピア様は、今日も葉巻を楽しみながら、私の報告に耳を傾けていた。
ラピア様には色々とお世話になったから、直接報告をしたくて、ウィルフレッド様にお願いして馬車を出してもらった。
ちなみにだけど、今日はウィルフレッド様はいない。自由に動けるようになったからか、今まで以上に多忙になってしまったようだ。
「これもラピア様の協力があったからです。本当にありがとうございます!」
「ふん、儂が懇切丁寧に教えてやったのだから、当然じゃな。本当ならもっと盛大な礼の品を用意しろと言いたいところじゃが、直接伝えに来た誠意に免じて許してやろう」
自慢げに笑うラピア様。その姿は、以前会った時から何も変わっていなくて、不思議な安心感を覚える。
「その治ったことを記念して、近いうちに屋敷でパーティをするんです。身内だけなんですけど、ラピア様にはお世話になったので、よければどうでしょうか?」
「わざわざそんなことを言いに来たのかい? そんな騒がし場所はお断りだよ」
そっか……来てくれないだろうなとは思っていたけど、少しは期待していたから、残念だわ。
「それで、お前はこれからどうするつもりじゃ?」
「もちろんウィルフレッド様の専属聖女として、共に生きるつもりです。あ、でも……母さんみたいに、色んな人を助ける聖女として活動もしたいです」
「別に治ったのだから、もう専属としてやっていく必要は無いじゃろ。むしろ、独り立ちした方が、人助けはしやすいのでは?」
ラピア様の言うことはもっともだ。でも、私は……どうしてもウィルフレッド様の元を離れたくない。ウィルフレッド様と一緒に、これからもずっとずっと一緒にいたい。
「ふむ、なるほどのぅ……へっぽこ聖女の小娘が、どうしてこんなに早く治せたのか、わかった気がするわい」
「え、本当ですか? どうしてなんでしょうか? 言われた通りに練習もしましたし、治した時にウィルフレッド様のことを強く想ったのは確かですが、まさか動かなかった体がこんなに早く治るのは、想定外だったんです!」
「馬鹿者め、それくらいは自分で気づかんか」
「いたっ」
なぜかしかめっ面になったラピア様に、おでこを小突かれた。
うぅ、どうして教えてくれないのかしら……別にそれくらい教えたっても良いと思うのだけど……自分で気づかないと意味が無いことなのかもしれないわ。
「それで、用はもう終わりか?」
「あ、はい」
「ならとっとと帰れ。儂は忙しいんじゃ」
「ご主人様~! さっきご主人様が丹精込めて焼き始めたケーキが焼けましたよ~! きっと喜んでくれますね!」
「ばっ!? 余計なことを言うんじゃないよ! 次余計なことを言ったら、ただのホウキにしてやるからね!」
「ひぃぃぃぃ!? と、とにかくこちらです~!」
ホウキは凄く怖がりながら、持っていた袋を私に手渡してくれた。
中には、とても美味しそうなケーキが入っている。やや形が崩れたり、焦げてるところもあるけど、それも味があっていいじゃない? 私は大好きよ。
「あはは……それじゃあ、名残惜しいですがそろそろ帰ります。ケーキは帰ったら食べますね」
「あー帰れ帰れ。小僧には適当によろしく言っておけ。それと、次来る時はちゃんと連絡をよこさんか、馬鹿者め」
「駄目ですよ。急に来ないと、私を見た時に一瞬嬉しそうにするラピア様が見れないですし」
「なっ……!? 小娘、いつからこの儂をからかうようになった!?」
「ふふ、いつでしょうね? それじゃあまた突然来ますね~!」
私は手を大きく振りながら馬車に乗ると、そのまま走りだした。
「二度度来るな、馬鹿小娘が! まったく……どうなることかも思ったが……お前の娘は、大層立派に、そして幸せそうじゃぞ……我が友よ」
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「おかえりーエレナお姉ちゃん!!」
夕方ごろに屋敷に帰ってくると、ルナちゃんが勢いよく私の胸に飛び込んできた。
ルナちゃんも私と同じようにずっと眠っていたのだけど、私よりも少し早くに起きたのよ。特に怪我もなくて、見ての通り元気一杯。
使用人の人達も、多少は怪我をしていたけど、私が治したから特に問題は無かったわ。
「聖女のお婆ちゃんは元気だった?」
「ええ、いつも通りだったわ」
「そっか! ルナはね、お兄様に遊んでもらいたかったんだけど、お仕事で忙しいからって断られちゃった……」
「ルナちゃん……」
「うん。でもいいの! お兄様が凄く元気にしてくれるだけで、ルナ嬉しいの!」
満面の笑みを浮かべるルナちゃん。これが太陽のように眩しい笑顔というやつだろう。見ているだけで、こちらの気持ちまで明るくなる。
ルナちゃんもだけど、屋敷にいる人達全員の表情が、あの日からとても明るくなった気がするわ。
そうそう。一緒に行ってくれた人達と合流した時とか、帰ってきた時、使用人の全員が泣いて回復を喜び、私に何度もお礼を言ってくれた。傍から見たら、凄い光景だったでしょうね。
あと、ルナちゃんが元気になったウィルフレッド様を見た時、色々大変だった。ひっくり返って頭をぶつけたり、花瓶を落としてびしょ濡れになったり、魔力が暴走して部屋が散らかったりと、大変だったのよ。
でも、そんなになるくらい嬉しかったってことね。実際にウィルフレッド様に抱きつきながら沢山泣いて、感情を爆発させていたわ。
「それじゃあ、お姉ちゃんと一緒に遊ぶ?」
「うんっ! 今日はおままごと……をしたいけど、二人だけだと役が少ないよね?」
「そうかもしれないわね。みんなはまだ起きない?」
「うん……呼びかけても、返事をしてくれないの。でもでも、エレナお姉ちゃんが言ってたように、きっと疲れて寝ちゃってるだけだから、いつかまた一緒に遊んでくれるよ!」
普段はシーちゃんが一緒にいたし、呼ぼうと思えば他の精霊も呼べたのに、今では誰もその声に応える者はいない。
いくらウィルフレッド様が元気になったのが嬉しいとはいえ、いつも一緒にいた精霊がいなくなるのは、きっと寂しいわよね……出来る限り、ルナちゃんが寂しくならないようにしてあげないとね。
「それじゃあ、お絵かきでもしましょうか。丁度夕日が綺麗だから、それでも描かない?」
「うん、いいよ! それじゃあ道具を持ってくるから、お姉ちゃんは部屋で待ってて!」
元気よく走り去るルナちゃんを、私や近くにいた使用人達が笑顔で見送る。
今までもずっと平和で穏やかな時間を過ごしていたけど、ウィルフレッド様が治ったからなのか、今まで以上に幸せに感じられる。
……母さん、見ててくれた? 私、やり遂げたよ……母さんみたいな素晴らしい聖女に、ちょっとは近づけたかな……?
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