嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな

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意外な訪問者

「え?」

 その日、滞在しているトライデント公爵家に、予想もしていなかった訪問者が現れた。

「王弟殿下がね、ジュエルさんに会いたいっておっしゃるのよ。どうする?お会いしたくないなら、お断りしましょうか?」

 マーガレット様は、頬に手を当ててそんなことを言われた。

 は?お断り?え?

 確かに同じ公爵位だけど、王弟殿下よね?
 国王陛下の弟君よね?

 え?断っても良いの?

「い、いえ、お会いします」

 伯爵令嬢にすぎない私は小心者だから、断るなんて選択肢は無理よ。

 それに、王弟殿下はルイス様のお父様。

 私を気遣い距離を置いてくれるルイス様に、お伝えしたいことがあるの。

「そう?今日はフレグランスさんもいないし、私が同席しましょうか?」

「大丈夫です。リラとララも外してね?」

「「わかりました」」

 もし、王弟殿下が私に何かキツい言葉をかけたとして、リラやララが反論したりしたら不敬だと言われるかもしれないわ。

 リラとララはもちろん、トライデント公爵家にも迷惑はかけたくない。

 何か酷いことを言われたとしても、今だけ我慢すればいい。

 嫌だと思えば、ローゼン王国に帰ればいいのだから。

 私は覚悟?を決めて、王弟殿下がお待ちになっている応接室へと向かった。

「お初にお目にかかります。ローゼン王国リビエラ伯爵家次女、ジュエルと申します」

 カーテシーをして、王弟殿下のお声がけを待った。

「ああ。急に訪問して申し訳ない。楽にしてくれるかい?ジェスト・ウィングバードだ。ルイスの父親だよ」

 顔を上げると、ルイス様とよく似た・・・きっとルイス様がお年を召したらこんなふうになるのだろうと想像できる、紳士がそこにいた。

 黒髪に、黒い瞳。
ルイス様って、お父様似なのね。

 呑気にそんなことを考えてしまう。

「今日は、謝罪をさせてもらおうと思ってね」

「謝罪、ですか?」

 王弟殿下に謝ってもらうようなこと、何もないわ。

 そう顔に書いてあるのがわかったのだろう。
 王弟殿下は、苦笑された。

「甥が・・・ダニエルが迷惑をかけたね。アレも悪い人間ではないのだが、どうしてもラウンディ嬢至上主義でね。実際問題、ダニエルを御せるのは伯母上とラウンディ嬢だけなんだ。だが今回の件は、アレが先走りすぎた。本当にすまなかった」

「・・・」

 どう返せばいいのかわからなくて、目を伏せた。

 私は・・・
王太子殿下が悪いとは思っていない。

 まぁ、本人をすっ飛ばして権力者が婚約を言い出したことは、褒められたことではないけど、あの状況は周囲から見てもと勘違いされても仕方なかった。

 それに王太子殿下が、というより、私の気持ちの問題なのよ。
 
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