129 / 215
兄と弟①〜ハデス視点〜
しおりを挟む
「兄上・・・お久しぶりです」
記憶の中の姿より、随分と大きくなった気がする。
でも、そうか。ゼウスももう十四歳だ。学園にも通っているんだよな。
ウェルズ公爵家の次男、ゼウス。
嫡男である俺の五歳年下で、父親譲りの金髪に母親譲りの銀の瞳をしている。
俺が留学と称して国を出たのは、十三歳の頃だから、もう六年も前か。
「ゼウス、元気そうだ。悪かったな、呼びつけて」
「いえ。兄上と一度ちゃんとお話するべきだと、国王陛下にも言われましたし、僕も兄上のお気持ちが知りたかったので」
次男ばかりを優遇して甘やかす両親だが、ゼウスはとても真っ直ぐに素直に育ったみたいだ。
確かに可愛げのない長男よりも、可愛がる気持ちはわからないでもないな。
「ゼウス。俺に遠慮せずに正直なことを言って欲しい。俺も、正直に話すから」
「はい」
「俺は、エレメンタル帝国で暮らしたいと思っている。ゼウスお前のことは可愛い弟だと思うが、両親のことははっきり言って他人だと思っている。あの人たちの後を継ぐどうこうより、そばにいたくない。俺の勝手な行動の尻拭いをお前にさせるようで悪いが」
エレメンタル帝国の皇帝陛下にお願いすれば、男爵位くらいなら貰えるだろう。
爵位にこだわらない、むしろ高位貴族に嫁ぐことを避けている彼女は、男爵なら受け入れてくれるだろうか。
彼女のご両親と、何よりあの妹ラブの姉は認めてくれるだろうか。
ゼウスは俺の告白に、少し考えこむような様子だった。
俺としても五歳年下の弟に全て押し付けるような真似をしたいわけじゃないが、両親にも俺にも似ず、マトモなゼウスなら立派な公爵になれると思う。
「兄上・・・ひとつお聞きしても?」
「ああ、なんだ?」
「兄上はウェルズ公爵家をどう思っていらっしゃいますか?僕の記憶では、物心ついた頃にはすでに両親は兄上をまるでいないもののように扱っていました。そんな両親を他人だという気持ちはわかります。いっそ潰れてしまえとは思わないのですか?」
ゼウスの問いかけに苦笑してしまう。
「俺は確かに両親がどうなろうと何の興味もないが、ウェルズ公爵家に仕えてくれている使用人たちには感謝している。留学するまで、彼らは両親に隠れて俺の誕生日を祝ってくれた。彼らにとっては大切な給金なのに、みんなで持ち寄ってプレゼントを買ってくれた。彼らは俺にとって親以上に家族だった。彼らがいたから腐らずにいられた。それに、領民たちのこともある。潰れろとは思わないよ」
記憶の中の姿より、随分と大きくなった気がする。
でも、そうか。ゼウスももう十四歳だ。学園にも通っているんだよな。
ウェルズ公爵家の次男、ゼウス。
嫡男である俺の五歳年下で、父親譲りの金髪に母親譲りの銀の瞳をしている。
俺が留学と称して国を出たのは、十三歳の頃だから、もう六年も前か。
「ゼウス、元気そうだ。悪かったな、呼びつけて」
「いえ。兄上と一度ちゃんとお話するべきだと、国王陛下にも言われましたし、僕も兄上のお気持ちが知りたかったので」
次男ばかりを優遇して甘やかす両親だが、ゼウスはとても真っ直ぐに素直に育ったみたいだ。
確かに可愛げのない長男よりも、可愛がる気持ちはわからないでもないな。
「ゼウス。俺に遠慮せずに正直なことを言って欲しい。俺も、正直に話すから」
「はい」
「俺は、エレメンタル帝国で暮らしたいと思っている。ゼウスお前のことは可愛い弟だと思うが、両親のことははっきり言って他人だと思っている。あの人たちの後を継ぐどうこうより、そばにいたくない。俺の勝手な行動の尻拭いをお前にさせるようで悪いが」
エレメンタル帝国の皇帝陛下にお願いすれば、男爵位くらいなら貰えるだろう。
爵位にこだわらない、むしろ高位貴族に嫁ぐことを避けている彼女は、男爵なら受け入れてくれるだろうか。
彼女のご両親と、何よりあの妹ラブの姉は認めてくれるだろうか。
ゼウスは俺の告白に、少し考えこむような様子だった。
俺としても五歳年下の弟に全て押し付けるような真似をしたいわけじゃないが、両親にも俺にも似ず、マトモなゼウスなら立派な公爵になれると思う。
「兄上・・・ひとつお聞きしても?」
「ああ、なんだ?」
「兄上はウェルズ公爵家をどう思っていらっしゃいますか?僕の記憶では、物心ついた頃にはすでに両親は兄上をまるでいないもののように扱っていました。そんな両親を他人だという気持ちはわかります。いっそ潰れてしまえとは思わないのですか?」
ゼウスの問いかけに苦笑してしまう。
「俺は確かに両親がどうなろうと何の興味もないが、ウェルズ公爵家に仕えてくれている使用人たちには感謝している。留学するまで、彼らは両親に隠れて俺の誕生日を祝ってくれた。彼らにとっては大切な給金なのに、みんなで持ち寄ってプレゼントを買ってくれた。彼らは俺にとって親以上に家族だった。彼らがいたから腐らずにいられた。それに、領民たちのこともある。潰れろとは思わないよ」
1,949
あなたにおすすめの小説
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
【完結】愛してました、たぶん
たろ
恋愛
「愛してる」
「わたしも貴方を愛しているわ」
・・・・・
「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
「いつまで待っていればいいの?」
二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。
木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。
抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。
夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。
そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。
大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。
「愛してる」
「わたしも貴方を愛しているわ」
・・・・・
「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
「いつまで待っていればいいの?」
二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。
木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。
抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。
夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。
そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。
大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。
【完結】彼の瞳に映るのは
たろ
恋愛
今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。
優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。
そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。
わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。
★ 短編から長編へ変更しました。
【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに
おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」
結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。
「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」
「え?」
驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。
◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話
◇元サヤではありません
◇全56話完結予定
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる