拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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執拗なる尋問。

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「まず、貴女の名前を言ってください」

 尋問が始まった。
この魔道具の効果は自白剤と同じで、本人の意識はちゃんとあるのに、言いたくないことも問われたら答えてしまうというものらしい。

「キティ・・・キティ・レグディア」

「レグディア男爵家の養女ですね?」

「そうよ」

「引き取られるまではどこにいましたか?」

 魔法師の方は淡々と彼女に質問し、それを隣で書記官が記録している。

 いきなり核心を突くわけじゃないのね。

「レグディア男爵夫人が実の母親だと知っていましたか?」

「・・・一ヶ月前に聞いたわ」

「彼女の前の夫、つまり貴女の父親ですね、その人を知っていますか?」

「・・・知ってるわ。引き取られるまでは一緒に暮らしてたもの」

 そう答えるレグディア男爵令嬢の顔は、歪んでいる。

 口が勝手に話してしまう、そんな表情だ。

「抵抗しても無駄ですし、しない方がいいですよ。言いたくないと思えば思うほど、頭が痛むでしょう?貴女方が使っていた薬物と違い、後遺症は出ませんがその分、抵抗すれば痛みが出るようにしてあるんですよ」

「ッ!」

「さて、そろそろ本題に入りましょうか。貴女の父親、そして貴女が所属している組織の首領の名前を言ってください」

「それは・・・ゔっ、あああっ!」

 彼女は体を捩るように暴れ、大声で呻き声をあげる。

 それを、魔法師の方は見つめながら、淡々と同じ質問を繰り返す。

「大丈夫なの?」

「言わないように抵抗してるから、激痛が走ってるんだよ。すごいよね、人というのは痛みに弱いものなんだ。しかもどんどん痛みは増していく。死ぬことはないけど、痛みで狂ってしまうことはある。狂ってしまえば、どれだけ抵抗しても真実を語ってしまう。だから、抵抗自体が無駄なんだけどね」

 シリルの説明に、レグディア男爵令嬢に視線を向ける。

 それほどの痛みに耐えれるものなの?
 彼女は、元平民の男爵令嬢なのに?

 闇組織の一員ではあるけど、単なる下っ端ではないのかしら?

「抵抗するのは自由ですが、痛い思いが長引くだけですよ?どれだけ抵抗しても痛みで気を失えばその口は真実を語ります。ああ、そんな不満そうなお顔をされてもね。貴女方がして来たことを思えば、こちらは相手なので罪悪感はありませんよ?」

「ぐぅぅ!」

「さて、もう一度お伺いします。貴女方の組織の首領の名前をおっしゃって下さい」

「・・・ゔっ、ぅあああ!きっ、キティ!キティ・ラマダ!」

 キティ・ラマダ?
え?レグディア男爵令嬢と同じ名前?
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