拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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幼い王女の初恋。

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「レシピエンス王国の王女殿下は・・・シリル殿下に一目惚れしたのだそうよ」

「え?」

 予想外の言葉に、思わずお母様の顔を凝視してしまった。

 いえ。シリルは確かに容姿も優れているわ。一目惚れされてもおかしくないわよね。

「お会いしたことが?」

「会ったというよりは見た、かしら。殿下が九歳の誕生日パーティーでクロエと話しているシリル殿下を見て惹かれたらしいわ」

 私も招待された誕生日パーティーなら、王族としてシリルもご挨拶はしている。

 だけどその挨拶ではなく、私と話している様子を見て好きになったということ?

「クロエと話す優しい笑顔に惹かれて、でもその笑顔が向かう先がクロエだからと理解して、口には出さなかったそうよ。だけど、マキシミリオン王国側からの婚約打診があって、王女殿下付きの侍女が国王夫妻に話したらしいわ」

「可愛らしいだけでなく、幼いのにしっかりされた方なのですね」

「そうね。レシピエンス王国の国王夫妻は、正しく子供たちを導いている方たちだと思うわ。お兄様である王太子殿下も誠実で勤勉な方と聞くわ」

 正直言って、私は皇女としても女性としても、リルラ王女殿下と比べると中途半端だわ。

 情けないけど、それが事実なのだから受け入れて、これから精進するしかないわね。

 私をあんなに思ってくれていたシリルには申し訳ないけど、私とだとシリルはシリルのいいところが潰されてしまうと思う。

 シリルが失敗するたびに、私は情のない人間のような対応をして、彼を傷つけてしまう。

 これでも、シリルには幸せになって欲しいと思う程度には、シリルのことを好きなのよ。

「あの二人の処置の後、シリルが立太子して王位を継ぐまでは、王位はどうされるのですか?」

「あの国は男性しか王位を継げないから、王位継承権を放棄しているけど、国王陛下の弟である大公に代行をお願いするらしいわ。あくまでも中継ぎならと受けて下さるそうよ」

「閣下にお子様は?」

 閣下にそのつもりがなくても、子供はわからないわよね?

「大公夫人は、お子を授かれないのだそうよ。だから、早々に王位継承権は放棄されたの。夫人以外を娶るつもりはないからって。兄である国王陛下の言動に思うところがあったらしくて、シリル殿下が王としてちゃんと立てるようになるまでは、手を貸して下さるそうよ」

 それを聞いて、ホッとした。

 私とのことで、シリルには望まぬ王太子、そして国王という重責を背負わせることになる。

 優しいシリルには、兄や父を排除して立つ地位は重荷だろう。

 だけど、王妃殿下や王太子妃殿下、王弟殿下である大公閣下、そしてレシピエンス王国の王女殿下が支えてくれるならと思った。
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