聖女の地位も婚約者も全て差し上げます〜LV∞の聖女は冒険者になるらしい〜

みおな

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その表情はズルい

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「ありがとうございます、ティア様。娘と息子も喜ぶと思います」

 アルヴァン様にお土産を渡したら、とても良い笑顔でお礼を言われた。

 まぁ、いつもお世話になってるし、迷惑もかけてたりするかも?だから、喜んでもらえて良かった。

 魔獣さん、ありがとう。
君たちの尊い犠牲のおかげで、喜んでもらえたよ、うん。

 王宮のみんなも、お菓子をとても喜んでくれた。

 ちなみにナイトとクロには、あの織物の店でリボンタイプの首輪を買った。

 ナイトはシキの色の深紅。クロはその瞳と同じエメラルド。

 ちなみにシキは、現在目の前で黙々と書類に目を通して玉璽を押している。

 ある程度の書類はアルヴァン様がさばいてくれてたけど、どうしても皇帝陛下でないとダメな書類もある。

 たまったソレを、シキは文句も言わず、言えず?に片付けている。

 付いてくると言ったのはシキだけど、結果として付いてきてくれたことで助かったので、何か手助けしたいけどはっきり言って出来ることが何にもない。

 なので、アルヴァン様にシキがいてくれて助かったことを延々と語り、アルヴァン様のご機嫌を取った。

 結果。

「お疲れ様でした、陛下。陛下の決裁の必要なもの以外は、私が片付けておきますので、明日はお休みくださってもかまいませんよ」

 アルヴァン様のお許しが出た。
二人きりになった執務室で、シキが苦笑混じりにお礼を言ってきた。

「ふぅ。ティアのおかげで明日はゆっくり出来そうだ。ありがとう」

「シキのおかげで助かったのは事実なので。それで、あのですね・・・」

「ん?」

「コレ、ええとお礼です」

 差し出したのは、あの日グレン王国で買った、タイリボン。

 シキの漆黒の髪と深紅の瞳と同じ、シキを彷彿させるリボン。

 アルヴァン様に差し上げたカフスと同じ値段がしたそれは、滑らかな手触りと品の良い光沢、繊細な刺繍がとても素敵だった。

「これ・・・は」

「グレン王国の特殊な染粉を使っているそうです。シキに似合うなって思ったので。呪詛の件、本当にシキがいてくれて助かりました。ありがとうございます」

「・・・」

 シキはリボンを見つめたまま、何も言わない。

 気に・・・いらなかったかな?

 実はアントワナ様が私用にと、全く同じリボンの細めなのを買ってくれた(自分のを買うお金は残ってなかった)んだけど・・・

 気に入らないなら私が使う、かな。

「あの・・・お気に召さなかった・・・ら・・・シキ?」

 リボンを手にしたままのシキは、その顔を真っ赤にしていた。

 え?
耳まで赤い。

 え?

「僕にまで買ってくれるとは思わなくて・・・あ、ありがとう」

「・・・い、いえ」

 私たちは微妙な空気の中、お互い顔を赤らめていた。

 
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