聖女の地位も婚約者も全て差し上げます〜LV∞の聖女は冒険者になるらしい〜

みおな

文字の大きさ
90 / 134

え、気持ち悪い

しおりを挟む
「やるぞ?その岩の上に乗っていろよ?」

 地面に雷魔法を放つために、隣の岩の上に乗ったシキに頷く。

 多分大丈夫な気もするけど、私が感電したら笑い話にならないからね。

 シキが雷撃を流すと、しばらくしてボコボコと土が盛り上がって来た。

「来ますよ」

 ドゴッと大きな音を立てて土が抉れ上がる。

 そこに現れたのは・・・

「あれ、なんでしょう?」

「・・・ダンゴムシに似てるな」

 モシャモシャとたくさんの足が蠢いていて、確かにダンゴムシっぽい。

 ドラゴンに亀に、ダンゴムシ?
段々、見た目ランクが落ちてるんだけど。

 ちっとも強そうじゃないし。

 アレ、異常種かなぁ。
というか、ダンゴムシタイプの魔獣っているんだ。

 魔獣・・・獣じゃないじゃん。

 どうしよ、この先虫とかばっか出てきたら。

 私、ダンゴムシは平気だけど、毛虫とかムカデとか蜘蛛とか嫌いなんだよね。

 どのくらい嫌いかというと、見つけた途端に火魔法で消し炭にする程度?

 ダンゴムシは、私たちの姿を認めると、その体を丸めて・・・

 やっぱダンゴムシかぁ。

 ものすごい勢いで、こちらに転がって来た。

「気持ち悪ぅ」

 急いで、近くの木の上に飛び上がる。

 私が乗っていた岩が、ダンゴムシにぶつかられて粉々に砕け散った。

「見た目は愉快だが、力は馬鹿にならないぞ」

「ちっとも愉快じゃないですよ。あー、あのモシャモシャした足、気持ち悪い!」

 丸まってる時は見えないから良いけど、岩にぶつかったあと、仰向け?に転がるので、足がワサワサと動いているのが見えて、本気で気持ち悪い。

 イライラ指数が溜まりそう。

「燃やします」

「ちょ、ちょっと待て!ここでそんな火魔法を使えば、農作物も全て燃やし尽くしてしまうぞ」

「野焼きだと思えば」

「あれは早春にするものだろう!氷、氷魔法で凍らせるからちょっと待て」

 ええ~。消し炭にすれば早いのに。
あー、でも土壌は癒すにしても、残ってる農作物を燃やし尽くしたら、やっぱり駄目だよね。

 仕方ない。

「じゃあ、シキが凍らせて下さい。私、その後砕くので」

「・・・そんなに虫が嫌いか」

「虫が、というより、足がたくさんあるのと、足がないのが嫌いなんです」

 怖いとかではなくて嫌いなのだ、と続けると、シキが笑う。

「足がないとなると蛇か。たくさんあるのは蜘蛛やムカデとかだな。足は四本までか?」

「そうですね。蝶やトンボ、カエルやトカゲとかは平気です。あ。足はないですけど、魚は平気ですよ」

 というか、魚に足あったら逆に気持ち悪い。半魚人じゃん。

「分かった。今度からこの類の魔獣は率先して倒すとしよう」

 シキはそう言うと、ダンゴムシを氷漬けにした。
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

処理中です...