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私は私らしく
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「ティア?」
シキの問いかけにも、私は答えることが出来なかった。
クラウドの言ったことが、頭の中で繰り返される。
私がフリーでいることは、思っているより危険?
私が相応しくないと思っている立場は、思っているより相応しい?
「・・・」
「どうした?ティア。クラウドたちに何を言われた?」
クラウドの言っていることが理解できない。
そう言えれば良かったのに・・・
どこかで理解出来ている自分がいる。
私の桁外れな能力は、他人に・・・権力者に知られれば捕まえられて利用される。
例えばクロを人質にされれば、私はこの力を望まぬ形で振る舞わなければならない。
例えば・・・クロの命と引き換えにシキを殺せと言われたら?
ぐらりとして倒れそうになり、そのまま壁に手を付いた。
「ティア!」
「大丈夫です。それよりも、マリアベルたちを呼んで、今後の話をしましょう」
「いや、少し休め。アイツらが何を言ったかは知らないが、ヤツらが言ったことなど気にしなくていいから」
シキは私の腕を取ると、執務室の中へと引き入れ、ソファーへと無理矢理座らせた。
「そこで横になっていろ。後で何か飲み物を運ばせる」
「・・・シキ」
そう言って出て行こうとするシキのシャツを掴んだ。
「どうした?ティア」
「・・・」
「ティア、大丈夫だ。どんなことがあっても僕は・・・カルディア帝国はティアの味方だ。必ず助けてやる。だから、ティアは自分の思うようにしたいようにすればいいんだ」
グレンやクラウドが考えることは、きっとシキも思ったはずだ。
それでも、私のしたいように生きればいいと言ってくれる。
私が、ずっと自由に生きたいと言ってきたから。
「・・・うん。ありがとう、シキ」
「今度、アイツらの婚約者たちと一緒に、街に買い物に出かけたらどうだ?美味しいお菓子の店に案内してやるといい」
「そうする」
「少し休め。お茶を持ってくるから。クロ、ティアを頼むぞ」
「にゃー」
シキは笑ってクロの頭を撫でると、執務室を出て行った。
私はソファーに深く沈みながら、クロの頭を撫でる。
私はずっとシンクレア王国から出ることができなかったから、好きなことをして生きたいと思っていた。
クロさえいれば良かったし、大切なものはクロだけだった。
でもカルディア帝国に来て、たくさんの人たちと知り合って、いろんな人に親切にされて・・・
クロだけいれば良いと思っていたのに、そばにいると心地よい人が出来た。
「クロ、クラウド様の言うことも分かるんだよ。でも、私は私らしくいられるかなぁ」
「にゃん」
「そうだよね。やる前から尻込みしてウジウジするなんて、私らしくないよね」
自分の思うようにやってみる。ダメだった時はその時に考える。
私らしく。
シキの問いかけにも、私は答えることが出来なかった。
クラウドの言ったことが、頭の中で繰り返される。
私がフリーでいることは、思っているより危険?
私が相応しくないと思っている立場は、思っているより相応しい?
「・・・」
「どうした?ティア。クラウドたちに何を言われた?」
クラウドの言っていることが理解できない。
そう言えれば良かったのに・・・
どこかで理解出来ている自分がいる。
私の桁外れな能力は、他人に・・・権力者に知られれば捕まえられて利用される。
例えばクロを人質にされれば、私はこの力を望まぬ形で振る舞わなければならない。
例えば・・・クロの命と引き換えにシキを殺せと言われたら?
ぐらりとして倒れそうになり、そのまま壁に手を付いた。
「ティア!」
「大丈夫です。それよりも、マリアベルたちを呼んで、今後の話をしましょう」
「いや、少し休め。アイツらが何を言ったかは知らないが、ヤツらが言ったことなど気にしなくていいから」
シキは私の腕を取ると、執務室の中へと引き入れ、ソファーへと無理矢理座らせた。
「そこで横になっていろ。後で何か飲み物を運ばせる」
「・・・シキ」
そう言って出て行こうとするシキのシャツを掴んだ。
「どうした?ティア」
「・・・」
「ティア、大丈夫だ。どんなことがあっても僕は・・・カルディア帝国はティアの味方だ。必ず助けてやる。だから、ティアは自分の思うようにしたいようにすればいいんだ」
グレンやクラウドが考えることは、きっとシキも思ったはずだ。
それでも、私のしたいように生きればいいと言ってくれる。
私が、ずっと自由に生きたいと言ってきたから。
「・・・うん。ありがとう、シキ」
「今度、アイツらの婚約者たちと一緒に、街に買い物に出かけたらどうだ?美味しいお菓子の店に案内してやるといい」
「そうする」
「少し休め。お茶を持ってくるから。クロ、ティアを頼むぞ」
「にゃー」
シキは笑ってクロの頭を撫でると、執務室を出て行った。
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「クロ、クラウド様の言うことも分かるんだよ。でも、私は私らしくいられるかなぁ」
「にゃん」
「そうだよね。やる前から尻込みしてウジウジするなんて、私らしくないよね」
自分の思うようにやってみる。ダメだった時はその時に考える。
私らしく。
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