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シリル・イグリットの場合②
エドワード・スティングレイの不安
「違うんだ!僕は誰かにハメられたんだ!」
目が覚めたら自室のベッドだったが、部屋の様子が様変わりしていた。
窓という窓には鉄の格子がはめられていて、部屋の鍵も何故か外からかけられる仕組みに変わっていた。
元々、王太子であるエドワードの部屋には、お風呂もトイレも併設されている。
だから生活には困らないが、食事はかつては両親と食堂で摂っていたのに、部屋に運ばれて来るようになった。
理由は分かっている。
あの日、フミナを抱いたからだ。
だが、あの反応は媚薬のせいだ。
エドワードはフミナを可愛いとは思っていたが、抱くつもりなどなかった。
自分に好意を寄せるフミナ。
抱いたら間違いなく「私はエドワード様に選ばれた」などと勘違いする。
冗談ではない。
たかが子爵令嬢が、王太子である自分の隣に立つなどあり得ない。
可愛いから愛でてはいるが、それはあの態度の可愛くない婚約者への当てつけでもある。
薬を盛られたのだと、しかも朝の薬が効いていなかったのだと、何度訴えても、返ってくるのは妊娠が発覚するまでは謹慎という答えだけ。
妊娠など冗談じゃない!
だが、媚薬でおかしくなっていたエドワードは、避妊薬を飲まなかった。
行為後にフミナが飲まなかったら?
エドワードと結ばれたいと願っているフミナなら、避妊薬を飲もうとするわけがない。
あとは、侍従たちが飲ませたことを願うだけだが、そもそも一度目に欲を吐き出してから、どれだけの時間が経っていた?
女性側が行為後に飲む避妊薬の効果は、行為後一時間以内で七十パーセントの確率だ。
しかもエドワードは、ここ数日夫人たちに相手をしてもらえていなくて、欲を吐き出していない。
妊娠・・・
王族に嫁げるのは、伯爵家以上。
今のスティングレイ王家には、エドワード以外の後継者はいない。
だから好き勝手して来たが、側妃も愛妾も許されていないこの国で、王太子妃に出来ない女性を妊娠させた場合、どうなるのか。
エドワードは、言いようもない不安に押しつぶされそうになっていた。
同じ妊娠させるにしても、婚約者なら問題は・・・
そこまで考えて、ハッとする。
婚約時の条件。
婚約者のイグリット伯爵令嬢から付け加えられた条件。
妊娠させた場合、エドワードの有責で婚約破棄!
婚約がなくなるのは別にかまわないが、エドワード有責というのはマズイ。
当然、国王陛下である父親たちが払ってくれるわけがない。
エドワードの私費も、国民からの税金だ。それを使わせてくれないかもしれない。
エドワードは血の気が引く気がした。
目が覚めたら自室のベッドだったが、部屋の様子が様変わりしていた。
窓という窓には鉄の格子がはめられていて、部屋の鍵も何故か外からかけられる仕組みに変わっていた。
元々、王太子であるエドワードの部屋には、お風呂もトイレも併設されている。
だから生活には困らないが、食事はかつては両親と食堂で摂っていたのに、部屋に運ばれて来るようになった。
理由は分かっている。
あの日、フミナを抱いたからだ。
だが、あの反応は媚薬のせいだ。
エドワードはフミナを可愛いとは思っていたが、抱くつもりなどなかった。
自分に好意を寄せるフミナ。
抱いたら間違いなく「私はエドワード様に選ばれた」などと勘違いする。
冗談ではない。
たかが子爵令嬢が、王太子である自分の隣に立つなどあり得ない。
可愛いから愛でてはいるが、それはあの態度の可愛くない婚約者への当てつけでもある。
薬を盛られたのだと、しかも朝の薬が効いていなかったのだと、何度訴えても、返ってくるのは妊娠が発覚するまでは謹慎という答えだけ。
妊娠など冗談じゃない!
だが、媚薬でおかしくなっていたエドワードは、避妊薬を飲まなかった。
行為後にフミナが飲まなかったら?
エドワードと結ばれたいと願っているフミナなら、避妊薬を飲もうとするわけがない。
あとは、侍従たちが飲ませたことを願うだけだが、そもそも一度目に欲を吐き出してから、どれだけの時間が経っていた?
女性側が行為後に飲む避妊薬の効果は、行為後一時間以内で七十パーセントの確率だ。
しかもエドワードは、ここ数日夫人たちに相手をしてもらえていなくて、欲を吐き出していない。
妊娠・・・
王族に嫁げるのは、伯爵家以上。
今のスティングレイ王家には、エドワード以外の後継者はいない。
だから好き勝手して来たが、側妃も愛妾も許されていないこの国で、王太子妃に出来ない女性を妊娠させた場合、どうなるのか。
エドワードは、言いようもない不安に押しつぶされそうになっていた。
同じ妊娠させるにしても、婚約者なら問題は・・・
そこまで考えて、ハッとする。
婚約時の条件。
婚約者のイグリット伯爵令嬢から付け加えられた条件。
妊娠させた場合、エドワードの有責で婚約破棄!
婚約がなくなるのは別にかまわないが、エドワード有責というのはマズイ。
当然、国王陛下である父親たちが払ってくれるわけがない。
エドワードの私費も、国民からの税金だ。それを使わせてくれないかもしれない。
エドワードは血の気が引く気がした。
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※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています