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シリル・イグリットの場合②
エドワード・スティングレイの失墜
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「エディ、仕事だぞ」
「はい」
呼ばれて控え部屋から出る。
エディ。
かつてエドワード王太子殿下と呼ばれていた男は、ここでは男娼のエディだ、
廃籍され、王族の種を薬で殺されたエドワードは、高級娼館の男娼として働いている。
お客は、高位貴族の夫人がほとんどで、かつてエドワードが欲を吐き出すために付き合っていた夫人もいた。
だが、あの頃と違い、今の夫人たちは大切なお客様だ。
褒め、媚び、尽くし、また指名してもらえるような仕事をしなければならない。
最初は、荒れて仕事を放棄したエドワードだが、そうすると無理矢理風呂に入れられて、支配人の男に抱かれたのだ。
王太子であった自分が、同じ男の手で体を触られ暴かれ、いいように使われる。
それ以来、エドワードは反抗せずに仕事をするようになった。
元々、容姿が優れ所作も綺麗なエドワードである。
ちゃんと仕事と割り切った言動をすれば、かつての遊び相手たちはエドワードを指名してくれる。
かつて自分がいた場所には、キングレイ侯爵家の次男が立っている。
一度、客としてやって来た母親・・・王妃殿下が話してくれた。
父親である国王陛下が王妃である自分を廃妃にするのを拒否して、婚外子をもうけたこと。
子を産んだ訳ありのご令嬢は、平民となったこと。
あくまでもエドワードに何かあった時のスペアなため、今回のことがあるまで彼らは自分の父親が国王陛下だとは知らなかったこと。
それから、あの後のフミナのことも話してくれた。
フミナは、王家の監視下に置かれていたが、子供は三ヶ月目を前に流れたのだそうだ。
ショックで精神鬱状態になり、修道院で静養し、今は少しずつ併設された孤児院の子供たちの面倒を見ているそうだ。
母親ははっきりとは言わなかったが、おそらく子は薬で流されたのだろう。
もう王族ではないとはいえ、エドワードの血を引く子供を世に出すわけにはいかない。
エドワードは、自分の行いのせいで生まれてくる子を死なせてしまったことに、ショックを受けた。
もう二度と、エドワードは自分の血を引く子供を授かることはない。
同時に目の前の母親にも、自分の血を引く孫を抱かせることはないのだと、改めて気付いた。
もう二度と顔を見ることはないが、体にだけは気を付けて、と王妃殿下は王宮へと戻って行った。
帰り際に、幼い頃エドワードが好きだった母親手作りのクッキーを手渡して。
もう二度と食べることのないクッキーの甘さに、エドワードの瞳から涙が溢れた。
「はい」
呼ばれて控え部屋から出る。
エディ。
かつてエドワード王太子殿下と呼ばれていた男は、ここでは男娼のエディだ、
廃籍され、王族の種を薬で殺されたエドワードは、高級娼館の男娼として働いている。
お客は、高位貴族の夫人がほとんどで、かつてエドワードが欲を吐き出すために付き合っていた夫人もいた。
だが、あの頃と違い、今の夫人たちは大切なお客様だ。
褒め、媚び、尽くし、また指名してもらえるような仕事をしなければならない。
最初は、荒れて仕事を放棄したエドワードだが、そうすると無理矢理風呂に入れられて、支配人の男に抱かれたのだ。
王太子であった自分が、同じ男の手で体を触られ暴かれ、いいように使われる。
それ以来、エドワードは反抗せずに仕事をするようになった。
元々、容姿が優れ所作も綺麗なエドワードである。
ちゃんと仕事と割り切った言動をすれば、かつての遊び相手たちはエドワードを指名してくれる。
かつて自分がいた場所には、キングレイ侯爵家の次男が立っている。
一度、客としてやって来た母親・・・王妃殿下が話してくれた。
父親である国王陛下が王妃である自分を廃妃にするのを拒否して、婚外子をもうけたこと。
子を産んだ訳ありのご令嬢は、平民となったこと。
あくまでもエドワードに何かあった時のスペアなため、今回のことがあるまで彼らは自分の父親が国王陛下だとは知らなかったこと。
それから、あの後のフミナのことも話してくれた。
フミナは、王家の監視下に置かれていたが、子供は三ヶ月目を前に流れたのだそうだ。
ショックで精神鬱状態になり、修道院で静養し、今は少しずつ併設された孤児院の子供たちの面倒を見ているそうだ。
母親ははっきりとは言わなかったが、おそらく子は薬で流されたのだろう。
もう王族ではないとはいえ、エドワードの血を引く子供を世に出すわけにはいかない。
エドワードは、自分の行いのせいで生まれてくる子を死なせてしまったことに、ショックを受けた。
もう二度と、エドワードは自分の血を引く子供を授かることはない。
同時に目の前の母親にも、自分の血を引く孫を抱かせることはないのだと、改めて気付いた。
もう二度と顔を見ることはないが、体にだけは気を付けて、と王妃殿下は王宮へと戻って行った。
帰り際に、幼い頃エドワードが好きだった母親手作りのクッキーを手渡して。
もう二度と食べることのないクッキーの甘さに、エドワードの瞳から涙が溢れた。
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