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聖女覚醒編
探索2《カイ視点》
「お待たせしましたっス」
ジグルが戻って来たのは、ヤツが部屋を出て行ってから、ちょうど1時間後だった。
「報告しろ」
「昨日の朝、通学途中の聖女様に声をかけたのが、最近西区に入ってきた新入り達っす。ソイツらは、馬車に聖女様を押し込め連れ去ったそうっす。馬車は、ベラドンナ男爵家の馬車で、西区のソイツらの溜まり場にある小屋に連れ込まれたようっす」
「ベラドンナ男爵家。最近、平民に産ませた娘を引き取ってたな。主犯はベラドンナ男爵家か?」
「娘みたいっす。セリオさんもご存知の通り、ベラドンナ男爵は貴族らしからぬ優しい方っすから」
ベラドンナ男爵に引き取られた平民の娘は、少し前から学園に通っている。
聖女様も平民だが、ご身分を弁えた方だった。しかし、平民から貴族になると、急に自分が偉くなったような、勘違いをする輩がいる。
その娘もその口か?
公爵家ご令嬢であるアニエス様とお親しいことで、聖女様を除外しようとしている?
「その娘の処置はともかく、すぐにでも聖女様をお救いしたい」
「ジグル、必要な人間集めて、行け。それから、新入り達は俺のところへ連れて来い。貴族に言われたからって、秩序を乱した奴には灸を据えなきゃならないからな」
「了解っス。カイさん、もう少し待ってて下さいっす」
「いや、ジグル。俺も行く。お救いしたら、すぐにでもお嬢様のところへお連れしたい。それに、殿下たちにもお知らせしなければならないからな」
ジグルたちが、王太子殿下にお声がけすることは出来ない。
だが同じ平民でも、リリウム公爵令嬢の侍従で、何度もお目にかかっている俺ならば、お伝えすることもできるだろう。
「へぇ。カイが行くなら、俺も行くかな。じゃあ、ジグル、2~3人連れて来い。すぐに出るぞ」
「はいっス」
西区は、この王都から西側にある、工業区だ。
ハイドランジア王国王都は、中央に学園や教会、騎士団の拠点などがある。
そして、北側に商業区。南側に居住区。東側に農業区という風に大きく分かれている。
西区の小屋に向かう途中で、セリオから、最近西区に他国から流れてきたヤツらが住み着いているのだと聞いた。
「住みやすいハイドランジアに来たい気持ちは分かるから、少々のことは目を瞑っていてやっていたんだが」
セリオは優しい。
他国から来たなら、この国に知り合いもなく、うまく人に頼ることもできないに違いない。
おそらく、食べ物を盗んだりしているのだろうが、セリオが口を利いて穴埋めしてやっていたのだろう。
だが、セリオは責任ある立場に立っている。施しを甘受しているヤツらを救うために、大切な仲間を窮地に立たせるわけにはいかないのだ。
ジグルが戻って来たのは、ヤツが部屋を出て行ってから、ちょうど1時間後だった。
「報告しろ」
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「ベラドンナ男爵家。最近、平民に産ませた娘を引き取ってたな。主犯はベラドンナ男爵家か?」
「娘みたいっす。セリオさんもご存知の通り、ベラドンナ男爵は貴族らしからぬ優しい方っすから」
ベラドンナ男爵に引き取られた平民の娘は、少し前から学園に通っている。
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その娘もその口か?
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「ジグル、必要な人間集めて、行け。それから、新入り達は俺のところへ連れて来い。貴族に言われたからって、秩序を乱した奴には灸を据えなきゃならないからな」
「了解っス。カイさん、もう少し待ってて下さいっす」
「いや、ジグル。俺も行く。お救いしたら、すぐにでもお嬢様のところへお連れしたい。それに、殿下たちにもお知らせしなければならないからな」
ジグルたちが、王太子殿下にお声がけすることは出来ない。
だが同じ平民でも、リリウム公爵令嬢の侍従で、何度もお目にかかっている俺ならば、お伝えすることもできるだろう。
「へぇ。カイが行くなら、俺も行くかな。じゃあ、ジグル、2~3人連れて来い。すぐに出るぞ」
「はいっス」
西区は、この王都から西側にある、工業区だ。
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そして、北側に商業区。南側に居住区。東側に農業区という風に大きく分かれている。
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「住みやすいハイドランジアに来たい気持ちは分かるから、少々のことは目を瞑っていてやっていたんだが」
セリオは優しい。
他国から来たなら、この国に知り合いもなく、うまく人に頼ることもできないに違いない。
おそらく、食べ物を盗んだりしているのだろうが、セリオが口を利いて穴埋めしてやっていたのだろう。
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