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立つ鳥跡を濁さず

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 ライアンとランスロットが、婚約者を決めることを決意した。

 それはルーナに、あることを決意させた。

 王妃ヘスティアは、ルーナを諦めないだろう。

 リリアナとランスロットが婚姻すれば、フィオレンサ公爵家との縁はできる。

 アナは聖女だ。
身分こそ男爵令嬢だが、王太子妃、王妃として努力も出来る問題ない存在だ。

 そしてライアン自身がアナを望み、きっとこの先どんなことがあっても二人は手を携えて乗り越えていけるだろう。

 だが、それでもヘスティアは諦めないだろうとルーナは思っていた。

 今のヘスティアは、ルーナを王太子妃にということしか考えていない。

 ライアンが大切な息子だからとか、フィオレンサ公爵家との縁だとか、そんなことはもう頭にはなく、ただルーナを王太子妃にという「自分が決めた未来」へのこだわりしか残っていない。

 国王アダムスやマーガレットが甘やかして来たツケだといえばそれまでだが、精神的に危ういとルーナは感じていた。

 月子だった時に、ブラックな会社に翻弄され、心を病んでいった後輩や同僚と似たものをヘスティアに感じる。

 王妃として、表舞台に立っていられる時間は少ないかもしれない。

 そのためにも、ライアンには早く立太子してもらい、アナに王太子の婚約者としての教育を受けさせなければならない。

 リリアナは降嫁することになるから、王妃の座が空いたとしても、しばらくは王族として国王の手助けは出来るだろう。

 もう少し学園生活を普通の生徒として楽しみたかったであろうアナには申し訳ないが、ヘスティアの暴走を抑えられる限度が近付いて来ているとルーナは思っている。

 それから、偽ヒロインのシシリーにもそろそろお灸を据えなければならない。

 あの日ライアンから拒絶されて、ダグラスたちとその場から逃げたシシリー。

 このまま大人しくしていれば、ルーナも見逃してもいいと考えていたが、どうやらそのつもりはないらしい。

 最近、ヘリオがアナのを色々と周囲に言っていると耳にしていた。

 最初こそ、元平民ということやランスロットやライアンが側にいるということで、周囲からやっかまれていたアナだが、ルーナが特に気にかけていることとアナ自身の性格の良さで、周囲も今はアナを認めている。

 だから事実無根の噂を心配して、ルーナに知らせて来てくれたのだ。

 まぁ、ヘリオの独断ということも考えられるが、おそらくはシシリーがお願いしたのだろう。

 ライアンの婚約が発表されれば、何か動きを見せるかもしれない。

 もうライアンが魅了にかかることはないだろうが、アナを害しようとする可能性もある。

 転生者だろうが何だろうが、この世界に存在する限りは、この世界のルールに従ってもらうつもりだ。
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