59 / 105
59.初めての・・・
しおりを挟む
どーなつと呼ばれるお菓子を、リュカと並んでいただく。
リュカは全部食べても良いと言ったけど、せっかくだし二人で食べたいわ。
こんなふうに、カフェでもないのに外で食事をするなんて、生まれてから一度もなかった。
貴族って面倒なのよね。
私は特に公爵家の娘だし、王太子殿下の婚約者だったから、余計に人の目があって行動には注意してた。
だから、こうしてリュカと二人で、公爵令嬢という目を気にしないで過ごせるのって、すごく楽しいわ。
リュカが甘いものをあまり得意でないのは知ってるけど、リュカってば四つも買うんだもの。食べてもらわなきゃ、私だけでは残ってしまうわ。
「これ、どうやって食べるのかしら?」
串に刺さってるけど、こんなところにお皿もないしどうすれば良いの?
周囲を見渡すと、先ほどの二人組が近付いて来た。
「あ、あの、代金ありがとうございます!」
「いえ、気にしないで。親切にしていただいたお礼だから。それよりも、これどうやって食べれば良いの?」
「こうやってガブって・・・む、無理ですよね。えっと、手は汚れますけど半分に割ったら・・・」
え?直接口を持っていくの?
隣に立つ男性は、串に付いたどーなつを一口で食べてしまっていた。
え。私、リュカに半分こしましょうと言ったし、私は一口では無理よ。
「え、えとっ、か、紙か何かもらって来ましょうか?」
女性の親切な言葉に、とても嬉しくなる。
打算の感じられない親切って、本当に気持ちいいわ。
ありがたい申し出に、にっこりと微笑んでお礼を言った。
「ありがとう。でも、郷に入れば郷に従えとこの国では言うのでしょう?こ、こう齧ればいいのよね」
「お嬢、無理しなくても・・・」
ハンカチを膝の上に乗せて、クマの耳を齧ろうとしたら、リュカが不安そうに声をかけてくる。
失礼ね!かじるくらいできるわ。
耳先を齧ると、ほんのり甘い生地が口の中に広がった。
「美味しいわ!」
「わー、良かったです!あ、その先に手を洗うところありますから。じゃあ、ありがとうございました!」
「丁寧にありがとう。気をつけてね」
二人組はペコリと頭を下げると、立ち去って行った。
あら。あの二人も手を繋いでいるわ。
ふふっ。私とリュカもあんなふうに見えてたのかしら。
「お嬢、紙をもらって来て半分に割りますよ?」
「いいえ、こうやって食べるのが美味しい気がするわ。それに、ここには私の行動を咎める人はいないもの。はい、リュカ」
もう片方の耳を齧ったあと、リュカに差し出した。
顔を齧るのは、ちょっとかわいそうだから、リュカ食べてね。
リュカは全部食べても良いと言ったけど、せっかくだし二人で食べたいわ。
こんなふうに、カフェでもないのに外で食事をするなんて、生まれてから一度もなかった。
貴族って面倒なのよね。
私は特に公爵家の娘だし、王太子殿下の婚約者だったから、余計に人の目があって行動には注意してた。
だから、こうしてリュカと二人で、公爵令嬢という目を気にしないで過ごせるのって、すごく楽しいわ。
リュカが甘いものをあまり得意でないのは知ってるけど、リュカってば四つも買うんだもの。食べてもらわなきゃ、私だけでは残ってしまうわ。
「これ、どうやって食べるのかしら?」
串に刺さってるけど、こんなところにお皿もないしどうすれば良いの?
周囲を見渡すと、先ほどの二人組が近付いて来た。
「あ、あの、代金ありがとうございます!」
「いえ、気にしないで。親切にしていただいたお礼だから。それよりも、これどうやって食べれば良いの?」
「こうやってガブって・・・む、無理ですよね。えっと、手は汚れますけど半分に割ったら・・・」
え?直接口を持っていくの?
隣に立つ男性は、串に付いたどーなつを一口で食べてしまっていた。
え。私、リュカに半分こしましょうと言ったし、私は一口では無理よ。
「え、えとっ、か、紙か何かもらって来ましょうか?」
女性の親切な言葉に、とても嬉しくなる。
打算の感じられない親切って、本当に気持ちいいわ。
ありがたい申し出に、にっこりと微笑んでお礼を言った。
「ありがとう。でも、郷に入れば郷に従えとこの国では言うのでしょう?こ、こう齧ればいいのよね」
「お嬢、無理しなくても・・・」
ハンカチを膝の上に乗せて、クマの耳を齧ろうとしたら、リュカが不安そうに声をかけてくる。
失礼ね!かじるくらいできるわ。
耳先を齧ると、ほんのり甘い生地が口の中に広がった。
「美味しいわ!」
「わー、良かったです!あ、その先に手を洗うところありますから。じゃあ、ありがとうございました!」
「丁寧にありがとう。気をつけてね」
二人組はペコリと頭を下げると、立ち去って行った。
あら。あの二人も手を繋いでいるわ。
ふふっ。私とリュカもあんなふうに見えてたのかしら。
「お嬢、紙をもらって来て半分に割りますよ?」
「いいえ、こうやって食べるのが美味しい気がするわ。それに、ここには私の行動を咎める人はいないもの。はい、リュカ」
もう片方の耳を齧ったあと、リュカに差し出した。
顔を齧るのは、ちょっとかわいそうだから、リュカ食べてね。
518
あなたにおすすめの小説
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?
青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。
けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの?
中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。
その結婚は、白紙にしましょう
香月まと
恋愛
リュミエール王国が姫、ミレナシア。
彼女はずっとずっと、王国騎士団の若き団長、カインのことを想っていた。
念願叶って結婚の話が決定した、その夕方のこと。
浮かれる姫を前にして、カインの口から出た言葉は「白い結婚にとさせて頂きたい」
身分とか立場とか何とか話しているが、姫は急速にその声が遠くなっていくのを感じる。
けれど、他でもない憧れの人からの嘆願だ。姫はにっこりと笑った。
「分かりました。その提案を、受け入れ──」
全然受け入れられませんけど!?
形だけの結婚を了承しつつも、心で号泣してる姫。
武骨で不器用な王国騎士団長。
二人を中心に巻き起こった、割と短い期間のお話。
断罪された公爵令嬢に手を差し伸べたのは、私の婚約者でした
カレイ
恋愛
子爵令嬢に陥れられ第二王子から婚約破棄を告げられたアンジェリカ公爵令嬢。第二王子が断罪しようとするも、証拠を突きつけて見事彼女の冤罪を晴らす男が現れた。男は公爵令嬢に跪き……
「この機会絶対に逃しません。ずっと前から貴方をお慕いしていましたんです。私と婚約して下さい!」
ええっ!あなた私の婚約者ですよね!?
【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。
曽根原ツタ
恋愛
ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。
ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。
その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。
ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?
婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜
みおな
恋愛
王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。
「お前との婚約を破棄する!!」
私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。
だって、私は何ひとつ困らない。
困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる